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新コミュニティ(掲示板)オープンのお知らせ

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[▲前のスレッド]

[4828] 5000>嬉しいのでプレゼント 
2003/2/20 (木) 07:29:15 小西英人HomePage
▼ みなさん

 【さかなBBS】を立ち上げて一年とちょっと、あまりにもマニアックな内容なので、ほとんど無理だろうと思っていました。

 JUNさんと、じゅん坊さんが、図鑑と連動したBBS構想を、ぼくに話して、ぼくは、ふつうの釣り人が、魚に、こういう興味を持つはずもなく、だいたい写真を軸にコミュニケーションをはかるなんて不純である。ぼくはパソコン通信の王道である、フォントだけのコミュニケーションしか信じないなどと、大見得を切っていたのですが、とにかく、器を作るから、たのむと押し切られたのでした。

 この前の東京会議で、ぼくは、ふたりに、悪い奴に「おもちゃ」を与えるから、こうなるんだ。【さかなBBS】と【WEBさかな図鑑】だけで遊ぶからね、後は知らないよ。などとほざいて、顰蹙をかっております。

 おかげで、三人で相談していて、ぼくが、それは無理だと反対すると、英さんが反対するから大成功だと、ふたりにからかわれます。

 いいもんね!!

 嬉しい誤算だから、ここで遊んでいるもんね。

 ぼくの想定以上に、魚好きの釣り人が多くて、ぼくは嬉しいし、心強くも思っております。

 いま、魚類学会や、あらゆるシンポジウムにでても、釣り人の評判は、あまり芳しくない。いや、釣り人名指しで非難するような講演もあります。

 しかし、水辺で、魚を見つめ、その命を、責任を持って見続けているのは、釣り人と、漁師と、研究者しかいないと思っています。このうち、漁師と研究者は、絶滅危惧種です。見守られるのは、釣り人しかない。

 だからこそ、魚を見つめていきたいと願っています。

 そういう中で、たくさんの人が参加してくれて、400種以上の図鑑に育ち、発言も5000に、なんなんとしようとしています。

 ぼくは感激です。

 みなさんの、おかげです。

 そこで、嬉しいから、ちょうど5000番の発言者に、『新さかな大図鑑』『釣魚検索』『釣魚図鑑』の、ぼくの図鑑三部作をプレゼントしちゃいます。

 みなさん。どんどん発言してくださいね。

 ただし、番号とりみたいなのはきらいだから、なにか、きちんと書いてくださいね。こんちわ、こんばんわ、だけの発言は駄目よ。思うことでも、近況報告でも、なんでもいいから書いてね。

 しかし、番号とり、番号鳥、なんて、懐かしいな。草創期のパソコン通信、PC−VANのチアリSIGでは、これが名物だったからなあ。ぼくは、はじめてのPDSとここで出合ったのでした。西田さんのつくったSKYFREEという通信ソフトでした。あのころはプログラム系は、クロード・チアリさん、文科系は高田正純さんが、グローバル・ビレッジを率いていて、この両巨頭だけの時代でした。ぼくはグローバル・ビレッジから、パソコン通信を始めたのでした。

 「走りながら考えろ!」とか「明日に向かって叩け!」などと、ときどき口走るかもしれませんが、そのころのグローバル・ビレッジの合い言葉だったのです。

 いまはなき、PC−VANの話になっちゃったな。    英人

[4829] Re:5000>嬉しいのでプレゼント 
2003/2/20 (木) 08:25:09 bonchan
うわーほしいな「釣魚図鑑」は有るけど(息子の愛読書)、「新さかな大図鑑」は高価すぎて手が出ません。
おさかな釣りは、子供から大人まで楽しめる趣味です。
しかも、おさかな釣りが終わって家に帰っても楽しめる。
このとき西潟さんの本は役に立ちますね。自分の創作おさかな料理の基本になってます。
最高ですね。5000めざそーっと!!

[4830] Re2:5000>嬉しいのでプレゼント 
2003/2/20 (木) 09:35:40 小西英人HomePage
▼ bonchanさん

 息子さんは、ほんとうに魚好きのようですね。羨ましいな。

 うちの子供らは、釣りとか、魚に、興味を示しません。  英人

[4833] Re2:5000>嬉しいのでプレゼント 
2003/2/20 (木) 14:08:22 西潟正人
▼ bonchanさん
なんだか、お恥ずかしい。小西さん、ご迷惑でなかったら「漁師直伝」も付けちゃいますが・・・ハハハ。

[4834] 5001>多謝!!>西潟さんお願いします 
2003/2/20 (木) 19:03:45 小西英人HomePage
▼ 西潟正人さん

 いやあ、嬉しいですね!

 西潟正人著『漁師直伝』を、5001番発言の人にプレゼントしてあげてください。お願いします。

5000番=『新さかな大図鑑』『釣魚検索』『釣魚図鑑』
5001番=『漁師直伝』

 ということで、みなさん、よろしく。     英人

[4835] Re:5001>多謝!!>西潟さんお願いします 
2003/2/20 (木) 19:35:14 bonchan
と言うことは、立て続けに2つのカキコしないといけないか?

西潟さんの「漁師直伝」は、文字だけでも料理の仕方がわかる不思議な本ですね。

さあがんばって5000と5001をゲットせねば!!

[4853] Re2:5001>多謝!!>西潟さんに質問 
2003/2/20 (木) 23:39:42 渡辺謙司
▼ 西潟さん
本の事でお伺いしますね。頑張って色々あたったのですが入手不能です。

『漁師の磯料理』西潟正人著 (徳間書店 1997.7月発行)
逗子「魚屋」主人が見つけた旬の味 サイズ:B6版/253P
漁師に学んだ釣りと磯料理。三浦の海で自ら釣り糸を垂れ漁船に乗り込んで漁師たちと酒を酌み交わしながら会得した知識と極意のすべてを地魚料理専門店「魚屋」の主人が明かす。ひと味違うレシピ付き。(ソフトカバー)

[注文不能]在庫なし、重版予定/未定

以前に図書館で借りた事はあるのですが、現在入手不能です。
『漁師直伝』と、春からのNHK「男の食彩」登場で更に全国的にブレイク。
問い合わせ殺到で重版決定になるまで待ってなきゃだめなんですかね?

[4855] うん。 
2003/2/20 (木) 23:59:32 西潟正人
▼ 渡辺謙司さん
・・・・・・・・・・・・・・・・・・何とも、言えません。魚好きな人たちの素直な雑言が、私の糧になっております。「さかなBBSに多謝!」

[4862] 5001>『漁師直伝』って 
2003/2/21 (金) 09:21:21 小西英人HomePage
◆画像拡大
■漁師直伝■−魚の食べ方は漁師に聞こう−■西潟正人著・生活情報センター・定価1300円+税

 西潟正人さんの最新刊ね。ぼくのほうから、目次を引用しておきますので、どんな苦労をして創ったか、西潟さん、紹介してあげてね。恥ずかしがらずに。

                            英人

■生活情報センター
http://www.j-fic.co.jp/index01.html

 から、目次を引用

新刊 漁師直伝 ー魚の食べ方は漁師に聞こうー
西潟 正人著

片岡鶴太郎氏絶賛!

〜ふらっと海へ行き、魚の絵を描き、夜には食べる。最高の幸せです。〜

●第1章 魚類 アンコウ・イサキ・カサゴ・カツオ・カワハギ など全62種類を掲載。
●第2章 貝類 アサリ・アワビ・サザエ・バテイラ・ボウシュウボラ・マテガイ・ミルクイ
●第3章 海老・蟹類 アカザエビ・イセエビ・磯のカニ・タカアシガニ
●第4章 蛸・烏賊・軟体動物 アオリイカ・アカウニ・スルメイカ・ナマコ・マダコ
●第5章 海草類 テングサ・ハバノリ・ヒジキ・ワカメ

◎14種類の魚介類の「さばき方」ガイド

◎魚料理、鮮度、旬、漁師町の暮らし、磯遊びなどについてのコラム

◎片岡鶴太郎「出版おめでとう」

◇著者紹介

著書に「漁師の磯料理」(徳間書店)、 「魚で酒菜!四季の漁師料理」(徳間文庫)があり、好評発売中。 「日刊ゲンダイ」「神奈川新聞」にコラムを連載中。テレビ・ラジオの出演多数。逗子の地魚料理店「魚屋」主人。

[4856] 5000>『新さかな大図鑑』って 
2003/2/21 (金) 07:19:23 小西英人HomePage
◆画像拡大
■新さかな大図鑑■小西英人編・荒賀忠一・望月賢二・中坊徹次・小西和人・今井浩次著■週刊釣りサンデー・1995年・B5判・560ページ・収録魚種845種・定価6700円(税込み)

 ちょっと宣伝めくから厭だったのですけど、あたりまえのように『新さかな大図鑑』とかいわれても、知らない人もいるでしょうから、ちょっと、ぼくの図鑑三部作を簡単に書いておきます。

 ぼくは1985年に『さかな大図鑑』というのを編んでいますが、このときは荒賀忠一さんに、おんぶにだっこで、図鑑を創らせていただいたようなものでした。この図鑑はベストセラーになったのですが、まあ、ぼくとしては、そうそう魚にのめりこんだわけでもありませんでした。

 その、しんどさを知っていたのに、勇気あるというか、また1995年にやろうとしたのが本書です。

 これは、ぼくの転機になりました。『新さかな大図鑑』を編むまでは、ぼくはただの釣り師であって、とりたてて魚に詳しいと言うことはありませんでした。釣りフォーラムの連中は、よく知っていますが、ぼくが魚魚魚と、寝ても覚めても、魚と言いだしたのは、これ以降です。ぼくは生物学を勉強したこともありませんし、どちらかといえば文科系です。

 これのおかげで、変な釣り師になったのです。渡辺さん、恨むのなら、ぼくではなくて『新さかな大図鑑』を恨んでね。

 まあ、新版を創るといっても、柳の下に、そうそうい泥鰌はいませんし、2号機というのは苦しみます、ほんと苦しみます。苦しみながら、とことんやって、いろいろあって、ついには編集を5週間でやらなければいけないほど日程につまって、事務所で頭が割れるほど痛くなって手が震えだしたら椅子の上で寝るというような、むちゃをやりまして、とうとう高熱を出し、肺炎になり、それでもがんばって、印刷の立ち会いまで40度の熱に浮かされながらこなし、印刷を見届けてから入院して、一週間かかって、やっと熱が下がったら結核菌が検出されて、そのまま療養所、4ヶ月だしてもらえず、やっとでたら、こんどは喫煙による肺気腫と巨大ブラーが見つかって再入院、右肺上葉切除手術をうけて一ヶ月の入院、それから半年の自宅療養と、ぼろぼろになったのでした。

 『新さかな大図鑑』のあがりは、閉じこめられた病室で見たのでした。

 本書の、ぼくの序文と、荒賀忠一さんの序文を引用して紹介を終わりましょう。

                              英人
■新さかな大図鑑■序
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■もの言わぬ魚たちが饒舌に語る”もの”   小西英人

 魚たちは美しい。
 たとえばクロダイの美はシンプルの美だと思う。無駄のない形。あらゆる魚の基本形に近い形。釣り人に騙され、怒り、鰭をいっぱいに張ったとき、釣り人はたまらない。モノクロームの輝き。真っ黒ではない黒がにぶく輝くとき、釣り人は勝利に酔い、ただただ息をのんで見つめることしかできない。
 しかし、そのシンプルの中に、混沌が潜んでいることに、気づいている釣り人は多いのだろうか。
 クロダイは、その体形や、色彩に、さまざまな変異がある。細長いの、丸いの、四角いの、かっこええの、かっこわるいの、さまざまな形をしている。色にいたっては、黒だと思っていた中に、赤いの、茶色いの、黄色いの、青いの、驚くほど多様だ。
 鰓蓋の上部に、黒斑のあるクロダイもいるということは知っていただろうか。その黒斑がインディゴブルーに輝くクロダイもいるといえば、信じてもらえるだろうか。
 釣り人は魚の玄人だから、無意識に、クロダイのようなシンプルな魚を好む。そして、その無意識の眼で、基本の中のさまざまな形、黒の中のさまざまな色を眺めている。混沌はクロダイに限らない。すべての魚がそうだ。自然とは、混沌なのだ。
 すべての魚の、その多様性、そのさまざまな個性を、無意識であったとしても、ほんとうに知っているのは釣り人しかいない。
 いや、釣り人は、ひとりぼっちではない。
 魚類図鑑というのは何かというと、魚類分類学のひとつの成果である。魚類分類学のテーマはさまざまではあるが、大命題のひとつに、なぜ生命は多様な形態をとったのかということがある。いま、遺伝子、生態、行動、生理、さまざまな方向から研究がおこなわれているが、その基本は形態である。
 生命の形態や、色、模様は、自然の厳しい圧力と均衡を保っている。その圧力こそ自然選択なのだ。つまり、形態は自然選択の実際の目に見える姿のひとつなのだ。
 人がその圧力をちょっと変えるだけで、生命はその形態をさまざまに変えてしまう。タガが外れてしまう。厳しい自然選択の圧力の中で、さまざまに形態を変えてきたのが生命であり、生命は、いつも、いまも、変わろうとしている。
 この図鑑を編集する前に、釣りサンデーに眠る膨大な写真のファイルの中から、十万点以上の写真を選びだして、その中から二万点に絞り込み、三人の魚類学者と、ルーペで一点一点確認しながら、議論を尽くした。写真で確認できないものは標本集めもした。その作業は「同定会」と呼ばれ、議論は深夜におよび、時には、コンビニの弁当を食べながら、おおよそ2年にわたり続けられた。そこから最終的に2000あまりの写真が、本書に収められた。
 その作業は、とても、楽しいものだった。それは「釣り」そのものだった。魚類学者も、釣り人も、同じ「ただの魚好き」なのであった。
 よき釣り人は、よき眼を持っていて、ライバルの魚たちの、形、色から、さまざまな自然を読みとっている。無意識に自然にとけこめるからこそ、よき釣り人なのだ。よき魚類学者も同じなのだ。
 この図鑑に、もし功績があるとしたら、それは魚類学者と釣り人の接点を、はっきりさせたところにあると思っている。この図鑑は、大勢の釣り人と、大勢の魚類学者の協力があって、できあがった。
 おたがい、「ただの魚好き」だからこそ、魚をそのまま見ることができ、魚を通じて、自然を考えることができる。無意識であろうと、意識してであろうと、同じことをして楽しんでいる。
 魚は、美しく、多様であり、これこそが生命の最大の謎であって、その謎に、素直に酔えるのが、よき釣り人、よき魚類学者なのである。
 だからこそ。
 自然の美しさ、多様さを知り、豊饒さを知っているからこそ、それらが、われわれの目の前で急速に失われつつあることを知っている。
 数十億年の地球の遺産を、われわれが、一瞬で潰すかもしれない恐怖感に、密かに震えている。
 もの言わぬ魚たちが饒舌に語る”もの”を、はっきりと聞ける釣り人。われわれはひとりではなかった。魚類学者という仲間がいたのだ。
 われわれの魚が、これほど饒舌に語ってくれているのに、まったく聞こえない人たちが多い。われわれの社会の選択は、水圏の多様性を消してしまう方向に動いている。自然が厳しく押さえ込んでいる形態、そのタガを外そうとしている。生命のタガが外れたら、どうなるのか、それは誰も知らない。
 われわれの魚は、われわれが見つめて、われわれが守ろう。そうでなければ誰が守るというのだ。
 それに決意はいらない。魚の語ることに素直に耳を傾け、その美しさを、みんなに伝えていけばいいのだ。楽しめばそれでいいのだ。「ただの魚好き」が増えるだけで何かが変わる。そう思いたい。
 もっともっと魚を見つめよう。
 その美しさに酔おうではないか。未来のために。


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■釣りマニアと魚マニアの図鑑        荒賀忠一

 「さかな大図鑑」で、写真集めに走り回り原稿用紙の山と格闘したのは、つい先日のように思えるが、早いものでもう10年がすぎ、このたび、週刊釣りサンデー創立20周年を記念して「新さかな大図鑑」に生まれかわることになった。これはひとえに読者の皆様のご支援のたまもので、心からお礼を申し上げたい。
 この10年間における魚類学の進歩は実にめざましいものがあり、その結果、旧版の記載の中にも改訂を要する箇所が少なからず見出だされた。本書では最新の業績にもとづき、記載を書き改めると共に、より詳しい情報を提供できるようにした。
 釣りサンデーのスタッフによるカラー写真の資料も、この20年間で膨大なものとなった。私たちが「同定会」と呼んだ作業では、毎回、会議室の大机に溢れかえる写真の山に、腰を抜かしそうになったが、そこは好き者同士、けっこう楽しみながら整理作業を進めた。
 魚類の標本写真は、釣り上げたばかりの生きているものを対象とし、それらの配列は釣りの分野ごとにまとめ、著名な釣り対象魚には多くのページをさくという、旧版の基本方針は本書でも踏襲されているが、次のような目新しい点も少なくない。
 収録動物の種類数のうち、頭足類と釣り餌などの動物は、旧版とほぼ同数であるが、魚類は188種増えて845種となった。
 旧版では、釣りサンデー社にない写真資料を、多くの方々のご好意で提供していただいたが、今回はそれが大幅に減り、言うなれば自前の写真がほとんどとなった。メジャーな釣り魚種に関しては、それらの形態や色彩の多様性に注目していただこうと、“これでもか”というほど、たくさんの写真を載せた。マイナーな釣り魚種や餌動物を加えたカラー写真の総数は2000点を上回り、釣り好き・魚好きの皆様には、必ず満足していただけるはずである。
 外国産魚も旧版よりかなり増えた。これは、近年増加しつつある海外に遠征する釣り人の便宜を考慮したものである。それらは旧版では巻末にまとめられていたが、本書では国内産の近縁種との比較がしやすいように、それぞれの釣り分野ごとに掲載した。各魚種の記載は望月賢二・中坊徹次・荒賀忠一の3名が担当した。科を主とする分類群ごとに分担を定め、各人が得意とする分類群を解説した。多岐にわたる収録種の中には、3人の誰もが不得手なものも少なくなかったが、標本や文献を精査し、専門家の意見も聞いて、手落ちのないように努めたつもりである。
 記載の内容は、旧版では形態よりも生態の紹介に重点をおいたが、図鑑の最も重要な役目である種の同定にさいして、写真では読みとれない形質も少なくないので、本書では形態の解説とくに類似種との区別点は、できるだけ詳しく述べるように心掛けた。さらに、主な釣り対象魚については、ページの許すかぎり多くの情報を盛り込むことにした。そのために、記載には専門用語をあえてそのまま用いた。それらの術語は巻末の「釣り人のための魚類学入門」に説明してあるので、ぜひ読んでいただきたい。
 スズキ科やメジナ科のように、分類学上の再検討が必要と考えられているグル−プに関しては、その問題点を指摘し、問題解決の糸口となるはずの多くの写真を掲載した。また、釣り人だけでなく、魚類学を志す学徒や専門家への便宜も考えて、巻末に魚類の「成長表」と「産卵期表」を付け加えた。
 このような内容は、従来の魚類図鑑では考えられてもいなかった「魚類学上の問題提起」の文献として、本書を位置づけるものと自負する次第である。 もう一つの新しい試みとして、主な釣り魚が含まれる分類群では、より正確な同定の一助として、絵解き式の検索表を掲げた。これを活用していただくことにより、従来ともすればあやふやだった釣り人の皆さんの、魚類の名称に関する知識が向上されれば幸いである。
 旧版の新機軸として、小西和人と今井浩次の「独断と偏見」でなされた五つ星による釣魚評価と食味評価も、その後にいただいた多くの読者や各界のご意見をとり入れ、かなりの修正を加えた。
 本書の編集は旧版と同様に、小西英人が1人で担当した。ここ数年、彼の魚類学に関する造詣はとみに深まり、専門家であるはずの私たちがやり込められることもしばしばであった。それだけに本書に対する彼の思い入れは並々ならぬものがある。編集者の熱意には執筆者も巻き込まれて当然。というわけで、本書の内容にかなりマニアックな点があることは否定できまい。
 とはいえ私たちの「思い入れ」が、良い意味で読者の皆様に受け入れられ、今まで以上に魚類の姿やかれらのすむ自然への思いを深めていただければ、執筆者一同の喜び、これに過ぎるものはない。
 また、数々の新しい試みを取り入れた本書には、不備な点も少なくないと思われる。将来、これをますます充実した内容にするため、読者の皆様の手厳しいご意見・ご指摘をお願いする次第である。

[4858] 5000>『釣魚検索』って 
2003/2/21 (金) 08:32:55 小西英人HomePage
◆画像拡大
■釣魚検索■小西英人編・中坊徹次監修・中坊徹次・岩田明久・波戸岡清峰・高崎冬樹・小西英人著■週刊釣りサンデー・1998年・AB判・208ページ・収録魚種625種・定価1900円+税

 これは、ムック、いわば雑誌形式であるし、図鑑としては小さい物だが、ある面で言えば、とても苦労しました。編集作業だけで、みっちり六ヶ月かかり、中坊さんとも、大喧嘩しながら創りあげたのです。しかし、中坊博士のような魚類分類学の泰斗が、釣り人のために、写真でキーを示しながら落としやすい本を、真剣に考えてくれたのは嬉しかったし、いっさいの手を抜かず、いっさいの妥協を許さず、ぼくと、がっぷり組んでくれたのは、ほんとうに嬉しかたのです。また、これほど知的興奮を味わいながら創った本も珍しい。

 『新さかな大図鑑』は釣り種別に魚を配置しました。ということは、同じフグ科でも、波止釣り、投げ釣り、船釣りなど、分散して収録されています。

 未知の魚を釣って同定するのが難しい本ではあるのです。

 『釣魚検索』は、その同定に特化した本です。分類群ごとに、部分写真でキーをたどりながら、二分岐で、選択をしていくと、自動的に目的の魚に落ちるという物です。解説は基本的にありません。『新さかな大図鑑』の解説ページをいれています。名前を知るための本と割り切ったのです。それでも、これは、ほんとうに本としてまとまるのかと、怖がりながら、それぞれの研究者と大喧嘩しながら、創りあげていきました。

 じつは、このとき、まだまだ体調が悪かった。結核の後、右の腋をざっくり切って肺の摘出をしたのだから、予想以上に体はダメージを受けていました。いつまでも、ぐずぐずするのは厭だったので、リハビリもかねて、やろうということになったのです。それが、中坊さんとふたりで、打ち合わせを始めると、どんどん尖っていってしまいました。

 ぼくの敬愛する、ある編集者に献本したら、ある面、『新さかな大図鑑』より力仕事だったでしょう、凄いことするなあと礼状をもらい、分かる人には分かるんだなあと嬉しかったのです。

 これも、ぼくの序文と、中坊さんの序文を引用して、そのあとに図鑑類のことを書いた『快投乱麻』もいれておきましょう。

 そうそう。ぼくの序文の最後は、ほんとうは、…すべて善き釣り人たちよ。愛する神は「細部」に宿り給う。…としていました。自然科学者としての中坊博士に、徹底的に嫌われまして、自然科学の本に、言葉だけだといえども宗教を持ちこむなとおこられちゃったのでした。

                             英人

■序■小西英人

■釣り名人や漁師さんは、ぱっと見て魚を見分けます。長く海辺で過ごしてきたから、好きな魚も、嫌いな魚も、水面で暴れるのをちらりと見ただけで、どういう魚か、分かってしまいます。どこを見ているのか意識していないでしょう、ぱっと見たら魚が訴えます。印象です。
■風と波と潮と…。気まぐれな地球の刻々と変わる自然の中で、すいすい泳ぎまわっている魚たちを、そういう「勘」で読み解くには、それだけの「時間」がかかります。気の遠くなるような時間を、地球のリズムにゆだねて、やっと、ぼんやりとした勘が働くのです。魚を知るのに王道はありません。長い長い時を、海と過ごさなければなりません。
■「王道」はありませんが「ヒント」はあります。魚の全体印象というのはとても重要ですが、その印象は細部からきます。美術の分野で「ディテール」といいますが、「細部」こそ「全体」を決めてしまいます。マアジとマルアジに迷ったとき、ある研究者が「ぜんご」の違いを教えてくれました。眼から鱗がぼたぼたっと落ちたのです。それで全体も見えてきました。はじめは「ぜんご」に頼っていても、ぱっと見て分かるようになったのです。そう「細部」こそ最大の「ヒント」なのです。
■「ヒント」に満ちた魚の名の分かる本が欲しい。その時、強烈に思いました。ほんとうに魚が大好きで、いい眼を持つ善き釣り人が集えるように。それが「釣魚検索」です。この本にいっぱい詰まった部分写真は「細部」なのです。三人の研究者が、ぼくたちに分かるように、苦労して考えてくれた最高の「ヒント」最高の「細部」を、お届けします。
■すべて善き釣り人たち。細部から、魚、海、地球を見つめてみよう。


■序■中坊徹次

■名前を知ると、その魚に親近感を覚えませんか。「釣魚検索」は、できるだけ早く魚の名前を正確にしらべることができ、多くの人に魚に親しみを持っていただけるように作られています。
■海のなかにはいろいろな魚がいます。彼らをていねいに見てやると、お互いに大変よく似ているけれども別々の種類である、というのにしばしば出合います。魚に近づこうと思えば、名前を知ることが第一歩なのですが、そのためには、このようなものたちの違いを知らなければなりません。
■しかし、よく似ている種類を見分けるにはちょっとした知識と経験が必要です。この本は、そういう「知識と経験」を写真をつかった「検索」というやり方で、皆さんに提供しています。こうすると、なにも特別な知識と経験は要らなくなります。釣った魚を見て、「釣魚検索」を開くだけでいいのです。
■検索という耳慣れない言葉も、コンピューターの普及ですっかりお馴染みになっていますので、とくに説明は要らないと思います。鍵になる特徴を魚の部分写真で示してあります。それらをたどればいいのです。あるいは、終点に示した魚の全体写真から特徴を確かめながら、検索を逆にたどってもいいのです。いろいろなやり方で、魚の名前をしらべることができます。
■名前を知るということは、その魚を理解することです。釣りを通じて魚とつきあうには、相手をよく理解することが必要です。「釣魚検索」を使って釣った魚の正しい名前を覚えていただけることを願っています。


■快投乱麻■No.29週刊釣りサンデー2000年9月3日号より
====================================================================
魚に遊ぶ。新世紀の釣りは楽しく

間奏曲B
『釣魚図鑑』で書斎におこもりだぞの巻

■三十歳で『さかな大図鑑』を創った。四十歳で『新さかな大図鑑』を創った。そして四十三歳で『釣魚検索』を創り、四十五歳のいま『釣魚図鑑』を創ろうとしている。これほど図鑑にのめりこむようになるなど、夢にも思っていなかった…。
       ■
■釣り人は、「研究者は何も知らない」といいたがる。あれは「専門ばか」であり専門以外は何も知らないといいたがる。釣り人の、ほんとうに欲しい情報を教えてくれないという「もどかしさ」もあるのだろうか。
       ■
■生意気な釣り人、ぼくの頭をがつんと叩いてくれたのが『さかな大図鑑』だった。いや当時京都大学理学部付属瀬戸臨海実験所にいた荒賀忠一さんであった。右も左もわからない素人のぼくに、気長に懇切に魚の「いろは」を教えていただいた。
■魚のことについて「知った」といえるほど知っている人はいない。魚は「永遠の謎」だ。たとえばクロダイ、これほど身近な魚であっても、生態はわからないことの方が多い。海の中でどんな産卵をするのか、見た人は誰もいないのだ。
■知るための第一歩は、情報を整理して名前を知ること。それが魚類図鑑の役目なのだ。そんな「第一歩」さえ、ままならないのが「魚」なのである。
       ■
■かなり苦労したけれど『さかな大図鑑』はできあがった。六百五十七種の魚を、すべて写真でいれて、釣り人の好きな魚を大きく、嫌いな魚は小さくあつかうという「変てこ」な魚類図鑑を懸命に創ったのだった。
■大反響であった。うれしかった。ぼくの創ったもので、これほど「釣り人」が受け入れてくれたものもない。発売直後から増刷増刷増刷で、印刷を担当した図書印刷から「月刊誌」のようですなあと喜ばれた。
■二十刷までいき、十二万部を超える魚類図鑑としては日本の出版界でも空前のヒットとなった。もちろん売れたのは嬉しかったけれども、これだけ支えてくれた「釣り人」の熱い意気を実感でき編集者冥利、そして釣り人冥利につきると思った。
       ■
■図鑑は生きている。いまだに『さかな大図鑑』を見て問い合わせを受ける。嬉しくはあるのだが、さすがに「古く」なり、内容的にも無理がある。魚類図鑑の分類学的な知識は「変わらない」と思われがちだが、なんのなんの日進月歩で変わる。
■そこで『新さかな大図鑑』を企画した。ものを創ったことがある人はわかると思うが、「産みの苦しみ」というのもきついけれど、「パート2の苦しみ」というのは、もっときつい。
■悩みに悩んだ。荒賀さん、千葉県立中央博物館の望月賢二さん、京都大学の中坊徹次さん。研究者たちと何度も何度も議論し、とにかく『さかな大図鑑』でできなかった、細かいところをリファインするという地道な作戦にでた。写真を徹底的に洗いなおした。何度も何度もやった。成長論文をすべてあたり、成長表をつくるような作業もした。そのうちに見えてきたのは釣り人の苦手な「検索」をいれようということと種の「はば」を、つまり「変異」を写真で示せないかということだった。
■それは「遊び」からはじまった。膨大な写真の整理をしながら、ぼくと、中坊さんは、いつも遊んでいた。たとえばクロダイとキチヌの写真を似た形態の順に並べると、境界が消えてしまう。キチヌのようなクロダイもいれば、クロダイのようなキチヌもいる。典型的なクロダイから典型的なキチヌまで、ずらりと見事に並んでしまう。
■「おもろい、おもろい」
■いつも、ふたりで大騒ぎしていた。最終段階になったとき、これを目玉にしませんかと研究者に提案した。変異をずらりと並べる図鑑を創るのである。
■図鑑とは「教科書」であり、典型的な魚を示すのが筋だ。そんな「人心を惑わす」ようなことをしてはいけない…。荒賀さんのきついお叱りである。
■「悪戯」を叱られた小僧っ子のように「しゅん」となった。しかしアイデアを忘れられなくて、クロダイで二十四点、キチヌで十六点の写真をいれた「変異図鑑」とでもいうような試作品を内緒で創り、その色校正を研究者にいきなり見せた。
■「おもしろいやんか!」
■あのときの荒賀さんのぱっと輝いた笑顔を忘れない。八百四十五種の魚を千七百四十七点の写真で「表現」した『新さかな大図鑑』誕生の瞬間である。
■幸せなことに「パート2」も釣り人は受け入れてくれた。五年間で七刷、七万部を超えた。怪物『さかな大図鑑』が「みすぼらしく」見え、絶版させるのに十分のパワーがあった。
■一年以上、寝食を忘れ書斎にこもり写真と文献を渉猟し、釣りにも行けなかったが釣り以上に「エキサイティングな釣り」を、経験させてくれた。
       ■
■次に中坊さんと練った悪戯、「悪巧み」が『釣魚検索』だ。『週刊釣りサンデー』に『似たモン魚譜』というカラー連載をし『磯釣りスペシャル』に『ウオっち』という連載をしながら議論し研究した。世界でも初めてだと思われる写真による「キー」だけで「落として」いける写真図鑑である。これも苦しんだけど、中坊さんと、がっぷり四つに組ませていただき知的な興奮があった。これほど独創的な図鑑も珍しいと思うが、またもや受け入れてくれ十万部を超えてしまった。ぼくはほんとうに幸せな「釣り人」である。
       ■
■『釣魚検索』は徹底的に、そぎ落とした。六百二十五種の魚を同列にあつかい、見開きに一覧し、写真のキーで落とす。名前を知るという図鑑本来の目的に特化させた。いい物を安く。普及価格にする策でもあった。解説は『新さかな大図鑑』を見てもらえばいいと割り切り、それのページを示したのだ。
■これでいいのだろうが、釣り人が知っていなけりゃ「恥ずかしい」魚の解説を「気楽に」読みたいという声もあった。解説と、釣り人の重要な魚の「似たモン」の見分けに割り切った図鑑を創ろうと思いたった。『磯釣りスペシャル』に連載している『ぎょぎょ事典』と『ちぬ倶楽部』に連載していた『棘鯛の系譜』もまとめて、見て読んで楽しめる魚類図鑑を創ろう。
       ■
■釣り人としての、ぼくのライフワークは「釣り人」のみなさんが教えてくれた。新世紀を遊べる図鑑を創ろうと思う。これからまた「おこもり」である。しかし、これは、ぼくの釣り以上の「釣り」なのである。

[4861] 5000>『釣魚図鑑』って 
2003/2/21 (金) 08:59:42 小西英人HomePage
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■釣魚図鑑■小西英人著■週刊釣りサンデー・2000年・AB判・160ページ・収録魚種277種・定価1900円+税

 ぼくは昔気質の紙の編集者であります。

 いま編集者といっても、いろいろあって、ほんといろいろなんだな。

 けど、いちばん大事なことは、出版の企画です。いまは、これだけに特化した編集者が多くて、この編集者の号令のもとに、レイアウターやら、デザイナーやら、コピーライターやら、なんやかかんやら、ちゃらちゃら集めてプロデュースするのが、エディターであって、アートディレクターのようになってきています。カタカナでいって、かっこいいのが編集者というものであるらしい。

 けんども、編集者はディレクターとして、すべてに精通していなければいけないと思うし、できればやるべきだと、ぼくは思っているのです。

 ぼくは、わがままなのかもしれないとも思います。だいたいカメラマンになりたくて、フリーカメラマンについて修行したこともあるから、なんでも、自分でやりたがるのです。けど、いまの世の中で、ひとつの本の企画制作出版まで、ひとりでやれるということは、ほとんどありません。

 そういう意味では、図鑑を、ぜんぶ、企画、編集、デザイン、装丁、なにもかもやっちゃえるのは、幸せかもしれません。『さかな大図鑑』『新さかな大図鑑』『釣魚検索』すべて、そうです。

 『釣魚図鑑』は、記載までやっちゃったから、なにもかも、ぼくがやって、なにもかも、ぼくの責任です。

 まあ、機嫌良く、創らせてもらいました。

 これも序文と、できあがったときの『怪投乱麻』改めまえの『快投乱麻』から引用して紹介にかえますね。

                          英人

釣魚図鑑■序
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新世紀を言祝ぐ■
■小西英人

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■一月一日午前零時、慶応義塾で送迎会。一月二十二日イギリスのビクトリア女王が没し、三月十一日国木田独歩は『武蔵野』を発表し、四月二十九日裕仁親王が誕生され、九月七日義和団事件最終議定書が調印され、十月十八日海軍省は無線電信機を兵器として採用。ドイツのレントゲンはX線発見で第一回ノーベル賞を授与され、オランダのド・フリースは突然変異説を発表し、アメリカのスタンフォード大学初代総長、生物学者のジョルダンはスナイデルとともに、マガレイ、チョウチョウウオなど、七十七種の魚類の新種記載論文を発表した。明治三十四年。一九〇一年。かくして今世紀は始まった。
            ■
■釣りは楽しい。いま、太陽の下で弾けるように輝くことってあるだろうか。命を相手に思いっきり力をだしてへとへとになることってあるだろうか。そして釣り人の勝利は好敵手の死を意味する。最後の命を輝かせ断末魔にうちふるえる彼を見つめる。彼の死を無駄にはしないきちんと食べる。それが海洋民族日本人の心意気だ。
■いま日本人は「殺す」ことをしなくなった。自分の食べるものさえ「殺す」ことはなくなった。誰かが、どこかで殺してくれた「安全」なものを食べるのが、ふつうになってしまった。「殺す」ことを経験しない「新日本人」たちが増え自然と共生できるのだろうか。動物としての「ヒト」を忘れて生き残っていけるのだろうか。
■激動の二十世紀はX線発見の栄誉をたたえることから始まった。科学技術の勝利の世紀のはずだった。それが大量殺戮に向かい、地球環境の徹底的な破壊に走るなど想像もできなかっただろう。日本も上を向いて走ればよいころだった。ヒトはすべてに勝利するはずだった。
■魚を見つめたい。海で。そこから、なにか見えてくるのではないだろうか。魚の賢さに酔い、力に酔い、美しさに酔い、多様性に酔い、自然の精妙さに酔いしれたとき、新しい「地球共生系」の世紀が見えてこないか。
            ■
■新世紀を言祝ごう。新しい日本と海の姿を決めるのはぼくたちである。問題は山積している。しかし新しいキャンバスに新しい絵を、みんなで描こうではないか。
■一月一日午前零時。さてなにから始めていこうか…。
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■快投乱麻■No.37週刊釣りサンデー2000年12月24日号より
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民族技術。それを忘れたくはない

釣魚図鑑
分類学は元気いっぱい動いているぞの巻

■IT業界のような秒進分歩ではないが、魚類の分類学は日進月歩なのである…というと、へえと驚くあなたはふつうだ。生物の研究者の中でさえ、分類学というのは、よく知られていなくて、黴のはえた博物学、生物学ではなくて死物学、などなど陰口をたたかれてしまう。
■なんて、いつも偉そうに憤慨してたのにそれを『釣魚図鑑』で思い知らされちゃった。
       ■
■一九九五年。『新さかな大図鑑』は、八四五種の魚の解説と主要魚種の変異を並べ釣り人の魚類の基礎文献にしたかった。一九九八年。『釣魚検索』では六二五種の魚の写真検索と同定に力を入れた。素人による同定を可能にしたかった。
■いま。『釣魚図鑑』は「読んで楽しむ図鑑」にしようと思った。二七七種の基本的な魚の解説と最新情報。主要魚の似たものを並べて見分ける目を養うこと。そして週刊釣りサンデーの隔月刊誌『ちぬ倶楽部』に連載した日本産クロダイ属五種を詳しく解説した「棘鯛の系譜」を書き直して収録。もうひとつの隔月刊誌『磯釣りスペシャル』にいまも連載している「ぎょぎょ事典」を書き直して収録。魚類の分類学を中心に、生態学、薬理学、行動学、生理学、集団遺伝学、動物地理学、さまざまな分野の最新知見を簡単に紹介して読み物としてまとめた。
■釣り人のみなさんに「魚」を楽しんで欲しかったのだ。
       ■
■いま。海を体で感じ、なおかつ魚を殺している日本人といえば漁師さんと釣り人しかいなくなった。漁師さんはエリートでないとできない。釣り人ならぼくのような「ただのへぼ」でも好きならばやっていられる。ヒトは動物だ。食べるものは、自分で屠って自分で料理できなければいけないのではないか。
■ぼくはモンゴルの草原でモンゴルの人たちが、小さなフォールディングナイフ一本だけで羊を屠って解体したのに驚いた。三十分ほどですべて終わり、草原に血の跡ひとつ残さず、物欲しげにきた痩せこけた犬に投げ与えたのは脾臓だけ、あとはすべて食べるか利用する。それはいまもチンギスハーンの定めた作法通りに行われる。騎馬民族の技術であり、誇りだ。
■われわれ海洋民族の誇りは、魚の解体と料理と食べ尽くすことにあるのではないか。それこそ日本人のアイデンティティーではないのか。羊を三十分で解体するのと同じような凄い民族のテクニックをわれわれは持っている。これは世界に誇れる技術なのである。そう思う。それは釣り人が伝えなければ、プロのみの技術になり、民族としての技術ではなくなってしまうのではないか。そう思う。
■魚を釣って楽しみ、魚を食して楽しめば、新世紀、われわれの生きていく道は、おのずから拓けていくのではないか。ただでさえ楽しい釣りに魚をめぐる知識の輝きがあればもっといいのではないか。釣りを通して魚を多角的に、ただただ楽しんだだけでも、見えてくる大切なものがあるのではないか。
■それが、『釣魚図鑑』の基本的なコンセプトなのである。
       ■
■アユやカツオ、マグロなどに「第三の眼」がある。そしてそれはヒトにもあるという…。
■シガテラ中毒って聞くけど、いったいどんな毒だろう…。
■魚にいろいろ寄生虫がついているけど、これはいったい、どういう動物なんだろう…。
■放流はいいこととされるが問題ないか、また人工種苗の放流マダイは見分けられるの…。
■刺されて痛い毒って、どんな毒で治療法はあるのか…。
■魚の眼は前方を見つめてピントを合わせているらしい…。
■ふぐ毒って、どんな毒で、中毒すると、どうなるのか…。
■魚に耳はあるのか、また、どんな音を聴いているのか…。
■匂いと味を魚は、どのていどわかっているのだろうか…。
■こういう話題を追いかけたのが「ぎょぎょ事典」だ。
■オーストラリアキチヌ。クロダイの仲間の定義ってなんだろう。また世界にクロダイ属はどれくらいいるのだろうか…。
■クロダイ。クロダイとマダイの違いは。クロダイ属の起原と進化史は。性転換って…。
■ミナミクロダイ。オーストラリアキチヌとの違いは…。
■キチヌ。海水と淡水を行き来する魚の意義とは…。
■ナンヨウチヌ。これの学名から読みとれる、ある博物学者の情熱と紅海の悲劇とは…。
■クロダイをめぐる話を追いかけたのが「棘鯛の系譜」だ。
       ■
■この「棘鯛の系譜」でオーストラリアに棲むオーストラリアキチヌと、沖縄に棲むオーストラリアキチヌ、そしてミナミクロダイの関係は「いまのところ研究者でさえ、しっかりしたことは、なにもいえないという困りもの…」だと書いた。琉球大学理学部海洋自然科学科大学院生の粂正幸さん、吉野哲夫助教授、東京大学海洋研究所の西田睦教授によってオーストラリア産と沖縄産のオーストラリアキチヌとミナミクロダイとナンヨウチヌの遺伝子分析がされ、すべて同じ程度の遺伝的分化が確認された。つまりオーストラリアのオーストラリアキチヌと沖縄のオーストラリアキチヌはやはり別種であり、ミナミクロダイとも別種であると遺伝子からも確認された。(2000年度日本魚類学会年会講演要旨)
■この日本魚類学会年会は神奈川県立生命の星・地球博物館で十月六日〜九日まで行われた。そのポスターセッションという展示発表会場を歩いていたら声をかけられた。クロダイ属の話をするときに、眼を輝かせ、くりくりくりくり動かす好青年、琉球大学の粂さんだった。彼からオーストラリアキチヌとミナミクロダイの識別点をご教示いただいた。ただし、彼の研究は発表されていないので、まだ書けない。とにかく『釣魚図鑑』に書いたことは古くなりそうなのだ。また一九九七年に赤崎正人博士はオーストラリアキチヌを「おきなわきちぬ」という和名に変えようと提唱されたけどその提唱の方法が乱暴だから、しばらく使わないと書いた。しかし十二月二十日に出版されるであろう『日本産魚類検索・第二版』では、この赤崎博士の提唱を受けオキナワキチヌを採用したようだ。世紀末になってクロダイ属研究が動き始めた。
       ■
■今世紀は地球破壊の世紀になってしまった。新世紀は地球との共存の世紀にしなければ。生物としてのヒトを見直さなければならない。『釣魚図鑑』は、はや古くなりそうだけど世紀末に元気な分類学はうれしい。

[5016] 【祝】5000発言>ロイさん、おめでとう&ありがとう 
2003/3/2 (日) 13:21:45 小西英人HomePage
▼ みなさん

 5014発言に書いたけど、【5000発言賞】は、アメリカカリフォルニア州ロサンゼルスのロイさんがとりはりました。

 おめでとうございます。

 【5001発言賞】は、まだですよ。みなさん、がんばってね。

 ともかく、みなさまのおかげで、一年ちょっとで、5000発言になりました。ありがとうございます。

                        英人

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