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[6152] ベラ科の魚? 
2003/4/27 (日) 23:00:43 よっちゃん
◆画像拡大
いつもお世話になってます。
今日のお昼に和歌山・加太の大波止で釣れた魚です。12センチです。
キュウセンのような感じですが、体高が少し高いのと特徴が違うような気がします、他種の魚の幼魚でしょうか?

[6155] ベラ科>ホシササノハベラです 
2003/4/28 (月) 06:04:31 小西英人HomePage
▼ よっちゃん

 ベラ科のササノハベラ属、ホシササノハベラです。背鰭に黒斑ができて、腹部の白色斑が消えているので、ターミナル・フェイズ 雄型だと思います。

 【WEBさかな図鑑】だとこれです。

■ホシササノハベラ
http://fishing-forum.org/cgi-bin/zukan/zkanmei.cgi?sel_no=16&mas=000036

 ホシササノハベラとアカササノハベラは、ササノハベラという種の中の2型だと思われていました。それが1997年、当時京都大学にいた馬渕浩司博士らによって分離されて、ホシササノハベラは新種記載されました。学名で書くと

■ホシササノハベラ
Pseudolabrus sieboldi Mabuchi et Nakabo,1997

 となります。馬渕博士と中坊博士で記載したのです。

 この分離された当時に、ぼく、馬渕さんから聞いてまとめた見分けのキーは以下の通りです。また、最後に、この馬渕さんと大阪市立大学の松本一範さんが、ササノハベラの生態観察から、2種いることに気がついたのですが、そのレポートを週刊釣りサンデーに書いていますので転載しておきましょう。

英人

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 ■ホシササノハベラ■
 Pseudolabrus sieboldi Mabuchi et Nakabo,1997
 ■見分けのためのキー■
 ■眼の下縁を通る褐色線はまっすぐで鰓蓋中
  央部までしか達しない(雌※)または胸鰭
  の上方を通過し体側中央部まで達する(雄)
 ■2列の白斑が側線より上にある(雌)では
  腹部にも白斑列がある
 ■(雄)の体色は緑がかり(深いところにす
  むものはレンガ色)背鰭棘条部の第4棘と
  第6棘の間に大きな黒斑がある

 ■アカササノハベラ■
 Pseudolabrus eoethinus (Richardson,1846)
 ■見分けのためのキー■
 ■眼の下縁を通る褐色線は斜めで胸鰭基底上
  部に達する
 ■白斑はない(生時に興奮すると出ることも
  ある)
 ■(雄)の体色は背鰭第4棘より後ろで黄色
  く背鰭に黒斑はない。深いところにすむも
  のは赤みが強い

※ベラ類のほとんどは雌から雄への性転換を行い、それに伴って体色を変化させる。はじめの体色をイニシャルフェイズ(IP)、後の体色をターミナルフェイズ(TP)といい、ここでは簡単にIPを雌、TPを雄とした。しかし、厳密に言うと、種類によっては、体色はIPであっても機能的には雄である個体(1次雄という)が存在し、一概にIP個体イコール雌とは言えない場合がある。ここで紹介したササノハベラ類2種も、少ないながら1次雄が存在するので、上の(雌)には、このような雄も含まれている。
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■ササノハベラをめぐる冒険■週刊釣りサンデーより
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 ササノハベラをめぐる、ふたりの研究者の努力と冒険を、追ってみよう。
 1994年秋、愛媛県の由良半島の荒樫というところで、タカノハダイの水中観察をしていた大阪市立大学理学部動物社会学研究室の松本一範さんは、タカノハダイが捕食しようとした小型のエビ類を横取りするササノハベラに気がついた。ところが、このササノハベラ、どうもふたつのタイプがいる。
 ササノハベラに変異が多いのは知られていたが、それは、内湾と黒潮域という生息環境の違いによる「型」だと思われていた。しかし、同じ所にいて、同じようにタカノハダイのおこぼれを、失敬しにくる。
 んっ?!
 というわけで、同じ研究室の馬渕浩司さん(現在はササノハベラ属の分類学的研究をすすめるために京都大学大学院農学研究科応用生物学専攻)と、このササノハベラの産卵行動を水中で観察することにした。
 荒樫で55X40bの場所を設定して、その中を5X5bに区切り、ササノハベラの雄を中心に個体識別をした。
 黄色い雄が5個体。これを仮にA。緑っぽい雄が7個体。これを仮にB。
 この12個体の縄張りと求愛産卵行動を、1994年の10月から翌年1月中旬まで追った。
 なわばりは、同一タイプでは重ならない。しかしAとBでは平気で重なる。
 産卵はA、Bとも11月中旬〜12月中旬の日中。
 求愛行動は
 @雌の背や頭をつつく
 A鰭をたて、ふるわせながら雌のそばを上下に泳ぐ
 産卵行動は
 @ペアで素早く泳ぎあがる
 A上で反転するとき放卵放精する
 B素早く底に戻る
 というもので、A、Bともまったく同じ。どちらもペア産卵で、まれに雌の形をした雄(1次雄)がストリーキングした。ストリーキングとは、ぶっちゃけていうと、ペアが高まり、いざというときに、雌の形をした雄が、わっと泳いでいって、ぱっぱとだして、自分の子孫を残そうとすること。大変です、ササノハベラの世界も。
 356回のペア産卵行動が見られて、AとAが338回、BとBが18回。ストリーキングはAとAが9回、BとBが1回、そして、AとBの違うものどうしの産卵は、ストリーキングが1回だけだった。
 つまり、55X40bの狭い世界で、ごっちゃにいて、同じ時期に同じように産卵するAとBのササノハベラは、AとBが交雑するようなペアをつくらなかったのである。
 生殖的な隔離があった。

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世界初?

 たとえば別種であるとか同種であるとかいうときの「種」というのは、なんだろうか。
 いま、生物学は、残念ながらこういう基本的な問いに答えられない。仕方がないから、とりあえず、生殖的な隔離があれば「種」が違うことにしましょうということになっている。
 ことをいたして、子孫が残せれば同種、子孫が残せなければ別種にしようというわけだ。
 ところが、実際に生殖的隔離があるかないか、なかなか確かめられない。確かめられないまま「種」として魚類図鑑には記載されている。
 しかし、今回のAとBのササノハベラは同じ場所にいて、生殖的な隔離があると観察されたのだ。おそらく海産魚の自然状態で、生殖的隔離が観察された世界でも初めてのケースではないかと思われる。
 交雑するペア産卵行動をしないという観察は、生物学上ものすごい意味を持つのだ。
 Aはアカササノハベラ、Bはホシササノハベラと、馬渕さんは名づけた。
 アカササノハベラは体が大きく観察された雄では、すべて体長20a以上あり、体色は黄色っぽいか赤っぽい。
 ホシササノハベラは雄でも体長は10aを超えず、体色は緑っぽい。
 これらのことからササノハベラ類は、目で見て、サイズ、色彩、斑紋などから、おたがいを見分けていると思われる。

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新種って

 アカササノハベラとホシササノハベラの見分けは、後ろのカラーページをとくと見ていただきたい。
 簡単にいうと、眼の下を通る褐色線が胸鰭の付け根に達しているとアカササノハベラ、そうでなければホシササノハベラ。「新さかな大図鑑」をお持ちの方は、120ページをご覧いただきたい。ササノハベラとして8個体載せられているが、父島産と伊豆産の2個体だけがアカササノハベラで、あとはホシササノハベラ。
 アカササノハベラは、どちらかといえば外洋性で南日本の太平洋沿岸でごく普通に見られ、沖縄、小笠原、中国の南方沿岸と台湾にいる。
 ホシササノハベラは、どちらかといえば内湾性で、日本海沿岸でごく普通に見られ、南日本沿岸、済州島、台湾にいる。
 瀬戸内海などで、ごく普通に見られ、西日本の釣り人が「磯べら」やと、嫌がるのはホシササノハベラだと思われる。
 ところが、おもしろいことにこの、その辺に、ごろごろ転がっているホシササノハベラの方が新種になったのだ。
 いままで、馬渕さんが提唱した標準和名を使って書いてきたが、魚類学では学名を使う。別種だと観察で分かってからも大変で、馬渕さんの苦闘は続く。世界中の文献と標本を調べて、学名を確定しなければ、別種だとは認められないのだ。
 学名とはひとつの標本をさす名前で、ササノハベラならば、Pseudolabrus japonicus で、ホウトタインという人が、なんと1782年、216年前に記載した。残念ながら、標本は失われている。このホウトタインの記載を見て、日本のササノハベラはこれと同じだとしたのが1902年のジョーダンとスナイダー、この見解をみんなが続けて、日本のササノハベラは、Pseudolabrus japonicus だとされていた。しかし、今回の研究で、この学名は、日本産のどのベラ類とも一致しないことが分かった。消えたのだ。
 アカササノハベラの学名は、Pseudolabrus eoethinus で、これはリチャードソンが、1846年、黒船来航の7年前に記載して4月に出版した。じつは一月後の5月に、違う名前が出版されているのだが、学名は、早い者勝ちなので、リチャードソンが残ったのだ。このリチャードソンのは、標本も大英自然史博物館に残っている。
 ホシササノハベラの学名は、Pseudolabrus sieboldi で、馬渕さんと京都大学の中坊徹次教授が名づけた。日本のササノハベラ属をはじめて紹介したシーボルトに因んでつけられた。
 こちらもリチャードソンが1846年に記載していたのだがいろいろと混乱があり、国際動物命名規約に従い、不適格となって新しい学名がつけられた。こういう新しい学名がつくことを「新種」が出たという。
 「ササノハベラ」は宙に浮き消えた。そして和名のササノハベラは、属を指す和名、ササノハベラ属として残った。

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さあ出発

 「うわあっ、磯べらや」
 嫌がられるササノハベラ類だが、水中ではこのような求愛産卵のドラマが展開され、200年以上にわたる世界の分類屋さんの苦闘が浮かび上がる。
 松本さんはいった。
 「外道あなどるなかれ」
 ほんと、自然、生命の秘密というのは、その辺にころがっているものなのかもしれない。我々が、うっかりして気がついていないだけなのだ。
 「磯べら」…、こういうものにまで目を配ってやれるのは、研究者と釣り人しかいない。
 松本さんは、ササノハベラ類の捕食に関する動物行動学的な研究を始めている。
 馬渕さんは、ササノハベラ類の多型を遺伝子レベルで追いかける研究を始めている。
 ササノハベラをめぐる冒険はひとつの結論をだしたが、それはひとつの出発に過ぎない。それは始まったばかり。
 あなたも、ふたりの冒険に参加してみませんか?

[6158] Re:ベラ科>ホシササノハベラです 
2003/4/28 (月) 09:35:39 よっちゃん
▼ 小西英人さん

同定ありがとうございます。
ターミナル・フェイズということは、このサイズで立派な成魚なのですね?
私は魚を釣ったとき体色で判断してしまいがちですが、どの魚も環境と成長過程による個体差がかなりあるのですね。釣行は本命狙いが前提ですが「何だこりゃ?」という自分の知らない魚を釣り上げると「早速調べてみないと」という気持ちになり嬉しくなります。
また自分の知らない魚が釣れましたらよろしくお願いいたします。

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