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[12851] 地方名>タイ科>まとめます 
2004/8/13 (金) 14:45:43 小西英人HomePage
▼ みなさん

 さてさて、中断していました、地方名、別名、英名、漢字名のまとめやります。

 次はタイ科でやりましょうか。

 ぼくの経験と文献からやります。意見や注文をお願いします。

 さてさて、日本産タイ科、何種あるかご存じですか?

 1)ヘダイ Sparus sarba Forsskal,1775
 2)クロダイ Acanthopagrus schlegelii (Bleeker,1854)
 3)キチヌ Acanthopagrus latus (Houttuyn,1782)
 4)ナンヨウチヌ Acanthopagrus berda (Forsskal,1775)
 5)ミナミクロダイ Acanthopagrus sivicolus Akazaki,1962
 6)オキナワキチヌ Acanthopagrus sp.
 7)タイワンダイ Argyrops bleekeri Oshima,1927
 8)マダイ Pagrus major (Temminck and Schlegel,1844)
 9)チダイ Evynnis japonica Tanaka,1931
 10)ヒレコダイ Evynnis cardinalis (Lacepede,1802)
 11)ホシレンコ Cheimerius matsubarai Akazaki,1962
 12)キダイ Dentex tumifrons (Temminck and Schlegel,1844)
 13)キビレアカレンコ Dentex sp.

 以上の13種が『日本産魚類検索 第2版』(中坊徹次編・2000年・東海大学出版会)には記載されています。少ないと感じましたか?多いと感じましたか?

 例によって漢字名を書きます。漢字表記に決まりはありませんからね。当て字ですからね。

■平鯛●ヘダイ●漢字●(ヘダイの漢字)
■黒鯛●クロダイ●漢字●(クロダイの漢字)
■黄茅渟●キチヌ●漢字●(キチヌの漢字。茅渟は茅渟の海、和泉国と淡路国との間の海の古称からきているといわれる。現在の大阪南部、大阪湾のこと)
■南洋茅渟●ナンヨウチヌ●漢字●(ナンヨウチヌの漢字)
■南黒鯛●ミナミクロダイ●漢字●(ミナミクロダイの漢字)
■沖縄黄茅渟●オキナワキチヌ●漢字●(オキナワキチヌの漢字)
■台湾鯛●タイワンダイ●漢字●(タイワンダイの漢字)
■真鯛●マダイ●漢字●(マダイの漢字)
■血鯛●チダイ●漢字●(チダイの漢字。鰓蓋の後縁が赤く血の色のようだからという説があるが異説も多い)
■鰭小鯛●ヒレコダイ●漢字●(ヒレコダイの漢字。ヒレコダイは田中茂穂博士によって命名されたが由来は書いていない。田中博士によると東京では、ちこと呼んでいたらしい)
■星連子●ホシレンコ●漢字●(ホシレンコの漢字。ホシレンコは赤崎正人博士により新種記載された、体側に散在する青紫色の大きな円斑の状態から和名提唱したと書いている。れんことは、キダイの西日本の地方名、れんこだいから来ていて、連子は当て字である)
■黄鯛●キダイ●漢字●(キダイの漢字)
■黄鰭赤連子●キビレアカレンコ●漢字●(キビレアカレンコの漢字。1984年に赤崎正人博士により和名提唱されているが、小笠原諸島の、あかれんこなどと研究中とされたままになっている。学名は決定されていない。背鰭、臀鰭がキダイにくらべて黄色いために命名された)
■豪州真鯛●スクワイアーフィッシュ●漢字●(ゴウシュウマダイという標準和名がつけられてもいるが、ここではフィッシュベースの英名に従う。オーストラリア・ニュージーランドに分布するが、日本のマダイと遺伝学的に似ていて、2000年にはマダイと亜種になるという論文も発表された。マダイの学名が変わる可能性もあるので、外国産魚だがいれておく)

 英名 common name ですね。例によって、フィッシュベースが、ほとんどの種に名前をつけていますので、【WEB魚図鑑】では、そのフィッシュベースネームを、英語のコモンネームとして採用します。

■フィッシュベース FishBase
http://www.fishbase.org/home.htm

■Goldlined seabream●ヘダイ●英名●(ゴールドラインドシーブリーム。ヘダイのフィッシュベースによる英名、シーブリームはタイのこと)
■Black porgy●クロダイ●英名●(ブラックポーギィ。クロダイのフィッシュベースによる英名、ポーギィはタイのこと)
■Yellowfin seabream●キチヌ●英名●(イエローフィンシーブリーム。キチヌのフィッシュベースによる英名、シーブリームはタイのこと)
■Picnic seabream●ナンヨウチヌ●英名●(ピクニックシーブリーム。ナンヨウチヌのフィッシュベースによる英名、シーブリームはタイのこと、なぜピクニックかわからない)
■Okinawa seabream●ミナミクロダイ●英名●(オキナワシーブリーム。ミナミクロダイのフィッシュベースによる英名、シーブリームはタイのこと)
■Okinawa-kichinu●オキナワキチヌ●英名●(オキナワキチヌ。学名が決定されていないのでフィッシュベースに英名はない。"Fishes of Japan"Nakabo,2002 から採録しておく)
■Taiwan tai●タイワンダイ●英名●(タイワンタイ。タイワンダイのフィッシュベースによる英名)
■Red seabream●マダイ●英名●(マダイのフィッシュベースによる英名。シーブリームはタイのこと)
■Crimson seabream●チダイ●英名●(クリムゾンシーブリーム。チダイのフィッシュベースによる英名。シーブリームはタイのこと)
■Threadfin porgy●ヒレコダイ●英名●(スレッドフィンポーギィ。ヒレコダイのフィッシュベースによる英名、ポーギィはタイのこと、直訳すれば糸鰭鯛)
■Hoshirenko●ホシレンコ●英名●(ホシレンコ。フィッシュベースによる英名、フィッシュベースでの英名は Hoshierenko とスペルが違っている)
■Yellowback seabream●キダイ●英名●(イエローバックシーブリーム。フィッシュベースによる英名。シーブリームはタイのこと、直訳すれば黄背鯛)
■Kibire-akarenko●キビレアカレンコ●英名●(キビレアカレンコ。学名が決定されていないのでフィッシュベースに英名はない。"Fishes of Japan"Nakabo,2002 から採録しておく)

 ご覧のように、タイは、英語ではシーブリームかポーギィを使うことが多いようです。学名が決定されておらす、フィッシュベースにないものは、無理矢理に英名をつけても仕方がないのですが、"Fishes of Japan"Nakabo,2002 から採りました。これは『日本産魚類検索 第二版』(中坊徹次編・2000年・東海大学出版会)の英語版で、原則的に和名のローマ字読みで載せられています。これが日本産魚の世界での基準になると思われますので、英名として採っておきますね。

 それでは、やっと地方名です。

 ヘダイは、文献には、いろいろありますが、わざわざ呼ばれていないのか、あまり有名なのはありません。とりあえずは採録せずにしておきます。

 クロダイは

 □かいず
 □けいず
 □ちぬ・茅渟
 □ちん
 □ちんちん
 □ほんちぬ・本茅渟
 □まちぬ・真茅渟

 が、すでに採録されています。あと、そうですねえ。

■つえ●クロダイ●三重●(三重でクロダイの老成魚をいう)
■かわだい・川鯛●クロダイ●北陸●(北陸でクロダイ)

 キチヌの「きびれ」は採録しています。これ以外、有名なのは少ないですねえ。

 ナンヨウチヌ、ミナミクロダイは、琉球列島だけになりますが、これは、「ちん」なんでしょうね。ナンヨウチヌを呼び分けているのかしら?

 オキナワキチヌは、琉球列島で、なぜか幼魚とか、若魚とかがでません。釣れてくるのは大物ばかりです。これは生活史的なことがからむのだろうと思われますが、詳しいことは分かっていません。琉球列島で、ふつうに釣れるのはミナミクロダイで、オキナワキチヌは老成魚が多く、体が白っぽいので…。

■ちんちらー●オキナワキチヌ●沖縄●(沖縄でオキナワチヌのこと。ちんはクロダイという意味、しらーは白いという意味、大型を呼ぶ)

 タイワンダイはほとんど知られていなくて、地方名は少ないようです。沖縄だけ『原色沖縄海中動物生態図鑑』(白井祥平著・1977年・沖縄教育出版社)から拾っておこう。

■よなばるまじく●タイワンダイ●沖縄●(沖縄でタイワンダイ)
■まちく●タイワンダイ●知念●(沖縄の知念でタイワンダイ)

 マダイを見てみましょう。

■さくらだい・桜鯛●マダイ●瀬戸内●(瀬戸内一帯で産卵のために接岸してきたマダイをいう。ちょうど桜の咲く頃からになるのと、このころのマダイは桜色に輝くので、こう呼ばれる。旬のマダイのことである)

■むぎわらだい・麦藁鯛●マダイ●瀬戸内●(瀬戸内一帯で産卵後のまずいマダイのことをいう。ちょうど麦秋、初夏の麦刈りのあとになるのでこの名がある。麦秋に美味しい紀州の麦藁イサキの語感から、美味しい、いいマダイのことだと間違う人もいる)

■ちゃりこ●マダイ●紀州●(紀州でマダイの幼魚のこと)

■かすご●マダイ●紀州●(紀州でマダイの若魚のこと)

■たい・鯛●マダイ●各地●(各地でマダイ。真鯛などと真をつける必要もなかったのだろうが、あまりにも日本人に鯛が好まれ、タイ型の魚を、なんでも「たい」と呼ぶことが多くなって、真をつけるようになったのだろう。967年に施行された延喜式に名前がでており、平魚で、タヒとなっている。語源は、平たい魚というような意味であろうとされている)

 こうやってみてくると、マダイの地方名は、ほんと少ないね。

 チダイはいろいろあるけど、生きている名は、これくらいかな?

■はなだい・鼻鯛・花鯛●チダイ●関東●(関東でチダイ、釣り人が広めて、いまや各地で呼ぶようになった。田中茂穂博士は、東京ではチダイに名称がなく、マダイと区別していないが、祝儀用に使うときには両種を区別していると不思議がっている。チダイは関西方面の呼び名で、血鯛とあてられるが、小さな鯛の意味だという説もある。小さくても雄の前額部が張りだすせいか、各地で、鼻折鯛とか鼻鯛とか呼ばれていた。この呼称が、いつのまにやら関東の釣船で使われるようになり、花鯛と、華やかな名に変わってきたようである)

 ヒレコダイは、田中茂穂博士によると、東京で「ちこ」と呼ぶとあるが、ほとんど知られていない魚でしょうから、地方名は採録しないでおきましょう。

 ホシレンコは奄美大島近海にしかすまない固有種の稀種ですが、『私本 奄美の釣魚』(藤山萬太著・2004年)から引用します。キビレアカレンコも琉球列島固有ですが、同じ本から採録します。

■じだい●ホシレンコ●奄美●(奄美でホシレンコ)
■べんこだい●キビレアカレンコ●奄美●(奄美でキビレアカレンコ)

 沖縄の名を前掲書から引っぱります。

■ふかやーまじく●キビレアカレンコ●沖縄●(沖縄でキビレアカレンコ)
■まじく●キビレアカレンコ●沖縄●(沖縄でキビレアカレンコ)
■れんこ●キビレアカレンコ●知念●(沖縄の知念でキビレアカレンコ)

 ふう。

 たいしてなかったけど、疲れちゃったな。       英人

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