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[13630] アユカケ・カマキリ 
2004/9/24 (金) 18:25:36 けん
これは両方とも和名となるのでしょうか?

ブラックバス、オオクチバスはどっちを和名とするのでしょうか?

教えてください。

[13631] ちょっと待ってね 
2004/9/24 (金) 20:51:34 英人@携帯電話
いま、沖縄にいます。帰ってから、書きますね。

[13697] 標準和名>2名あるものどうするか? 
2004/9/29 (水) 16:30:27 小西英人HomePage
▼ けんさん

 遅くなりました。和名、まあ、標準和名のことについてでしたね。

 ■カマキリvsアユカケ

 ■ブラックバスvsオオクチバス

 でしたね。どちらが、ほんとうの和名なのか、簡単に書きます。

 これから書くのは、【WEB魚大図鑑】の編者としての、本図鑑の考え方を書きますからね。一般論ではありませんので、そのへんよろしく。標準和名は、ちょっと事情が分からなければ理解しにくい名前ではあります。本図鑑のお魚エッセイに、ぼく標準和名のこと書いていますから、参考に、読んでおいてくださいね。

学会■標準和名とは 小西英人
■標準和名。紳士協定なんだけどな
http://fishing-forum.org/zukan/hideto/sakana/sakana3.htm

 それと、これにでてくる「日本魚類学会標準和名検討委員会」のURLは変更されて、したのものになっています。
http://www.fish-isj.jp/info/030416.html

■カマキリvsアユカケ

 まず、標準和名の始まりとも言える、"A Catalogue of the Fishes of Japan" Jordan,D.S. S.Tanaka J.O.Snyder,1913 を見てみましょう。これ、ぼくのエッセイで、ジョルダン、田中、スナイデルの『日本魚類目録』と書いているものと同じです。大正12年に英文で出版されています。

 これには Kamakiri(Tosa) となっていて、土佐の地方名であるカマキリを採用したことがはっきりと分かります。学名は先取権の原則、つまり早い者勝ちという重要なルールがあるのですけれど、「紳士協定」の標準和名に、それはありません。先取権を認めたらいいと言う研究者もいることはいますけど、それはそれで、大問題になるので、ぼくは標準和名に先取権の原則は必要ないと考えています。

 とにかく始まりは、カマキリ。そのあとの、いろいろな図鑑を調べてみました。ちょっと引用するのが大変なので省略しちゃうけど、カマキリが多く、いつからか「あゆかけ」がはいってきて、カマキリ(アユカケ)と2名併記してる図鑑も、けっこうあります。

 【WEB魚図鑑】が原則的に準拠している『日本産魚類検索 第2版』(中坊徹次編・2000年・東海大学出版会)も、カマキリ(アユカケ)の2名併記です。ぼくは、2名併記は認めない主義なので、うちの図鑑は、カマキリだけで表記しています。

 始まりはカマキリだったのですが、アユカケと入り混じってしまい、なぜかは分からないのですが、日本魚類学会標準和名検討委員会設置前のガイドラインによると、カマキリとアユカケは、合理的な選択ができない名前だから委員会による処理が必要とされています。

 アユカケを提唱した研究者を知っている人は、教えてください。

 とにかく、ふつうに考えると、まあ、カマキリから始まっていますので、カマキリでいいのですが、これ、昆虫のカマキリと同じになるので、異物同名(ホモニム)の関係になってしまいます。学名は、動物どうしでのホモニムを認めません。標準和名はどうするかという話になりますが、あまり認めるのは、よくないとは思います。植物のヒイラギと魚のヒイラギまで、ホモニムを言うとややこしいのですが、動物どうしでは、認めないほうが混乱がないかもしれません。

 それで、アユカケにかえてもいいかなと思います。

 この辺の判断は、難しいですよね。日本魚類学会標準和名検討委員会に、きちんと決めていただきたいなと思っています。それまで、ぼくは、カマキリを使います。

 カマキリvsアユカケは、これでいいでしょうか?

■ブラックバスvsオオクチバス

 これは、ジョルダン・田中・スナイデルにはでてきません。記録の始めは、やはり東京帝國大学の田中茂穂博士のようで、1933年に、クロマス科のクロマスとしてはります。田中博士は、のちに、箱根ではバスをもじってマスとし、この魚を黒鱒といっていると書いています。また、クロマスには、大口と小口とがあり、芦ノ湖にいるのは、そのちょうど中間で、多少大口に近いと書き、学術上面白い現象だと書いています。それはないよなあなんて思いますけど、ちょっとわかりません。とにかく田中博士は、コクチバスと、オオクチバスを混称して、クロマスとしているようです。

 つぎは岡田彌一郎、中村守純の『日本の淡水魚類』(1948年)で、サンフィッシュ科とし、オオクチバス属とオオクチバス、コクチバスを新称で使ってはります。

 まあ、これが素直にいえば標準和名かなあと思います。

 ところが『日本産魚類検索 第2版』では、ブラックバス(オオクチバス)と2名併記されています。著者は、林公義さんです。この標準和名変更は、議論がなされておらず、瀬能宏さんは、日本では、ブラックバスは、オオクチバスとコクチバスを含むオオクチバス属の通称として理解されており、種名は、オオクチバス、コクチバスを使うほうが混乱しないと、『日本産魚類検索』を批判してはります。

 林さんに聞いたことがないですが、編者の中坊徹次さんに聞きますと、標準和名は、なじみのあるものにすべきであって、誰も、オオクチバスなんて使わないから、なじみのあるブラックバスを使った方がいいといいます。

 ぼくは、どちらも一理あると思っています。【WEB魚図鑑】は、『日本産魚類検索』に準拠して、ブラックバスにしました。どちらも一理あるとは思うのですが、なじみのある魚名にしたほうがいいと思っています。

 瀬能さんのおっしゃるのは正論ですが、いちぶの研究者は、ブラックバスは、学術的な名称をオオクチバスという…などと、ふりかぶって書く人も多く、ぼくは、こういうの、厭だなあと思っています。

 ただ、魚類学会の自然保護委員として、マスコミや、ふつうの人と話し合うことの多い瀬能さんが、その枠組みに正確さを求めて、そういうのは、ほんとうに理解できます。

 まあ、中坊博士も、瀬能博士も、日本魚類学会標準和名検討委員会の委員なのだから、話し合いで、きちんと決めていただければ、ぼくは、何も言わずに、それに従います。

 いまは、ブラックバスでやりますが、もし決まれば決まった名前に変えます。

 ややこしい話を書きましたが、2名ある和名の問題、これでいいでしょうか?

                      英人

[13721] Re:標準和名>2名あるものどうするか? 
2004/9/29 (水) 20:48:21 けん
▼ 小西英人さん
なるほど・・・。詳しくありがとうございます。参考になりました!
僕らは図鑑に掲載されてる文字しか見えませんが、その裏にいろいろあるんですねぇ・・・。シビアな面があったり曖昧な面があったり・・・。ほんと難しいです。

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