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新コミュニティ(掲示板)オープンのお知らせ

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[13782] ウミタナゴはベラ亜目??? 
2004/10/3 (日) 18:58:12 けん
ウミタナゴはスズキ亜目だと思ったんですけど・・・。どっちなんでしょうか?

[13786] ウミタナゴ>スズキ亜目orベラ亜目 
2004/10/3 (日) 20:42:07 小西英人HomePage
◆画像拡大
"Fishes of the World 3rd Edition" Joseph S. Nelson,1994

▼ けんさん

 写真は、Nelson,1994 ネルソン(1994) という形で魚類分類学では、よく引用される本です。ネルソン教授は、カナダのカナダ、アルバータ大学の魚類分類学者です。

 分類学の系統樹や、配列順などは、進化の道筋を追って美しく配列されているように思われがちですが、残念ながら、そうではありません。

 進化の道筋を反映したものを自然分類とか系統分類といいます。形態などから無理に推定して並べたものを人為分類といいます。

 人為分類から脱却しようと、いろいろ苦闘の歴史がありますが、現在の分類は、まだまだ人為分類の軛から脱却できていません。

 ミトコンドリアDNAや、核ゲノムを、アルコール標本からでも、解析できるようになったのは、ほんとうに、ここ数年のことなのです。それまでは、形態から推定するしかなかったし、遺伝子の分析にしても、アイソザイムによる推定しかなかったのです。

 いま、眼の前で、いままでの分類が根底から破壊されて、新しい分類体系と、それの新しい表現法の模索が始まっています。

 去年の京都大学で開かれた日本魚類学会で、『カサゴ目魚類の系統と分類』という、シンポジウムが開かれています。単系統群で比較的まとまっていると信じられていたカサゴ目魚類でも、遺伝子解析をすると、多系統群だったのです。興味がある人は、下の、ぼくのエッセイを読んでみてください。

【怪投乱麻】vol.105●魚類学会シンポジウムより
大いなる混沌が姿あらわしたぞの巻
http://fishing-forum.org/hideto/ranma/2003/105/105.htm

 ちょっと回り道したね。

 とにかく、いまの分類体系は、崩してしまわなければいけないのですが、ほんとうに崩してしまえるほど、新しい研究が進んでいるわけでもないのです。

 崩せ!破壊せよ!などと叫ぶ、分岐分類学者は多いのですが、崩してしまうと、魚類図鑑などの配列をどうしていいか分からないというのが、現状なのです。

 そこで、分類屋さんたちは、とりあえず、やや改良された分類体系にしかなっていないと思われるのですが、とにかくネルソン(1994年)の体系を元にすることが多いのです。この本が、冒頭の本です。

 ネルソンを元に、おかしいと思うところを、自分流に改造するというのが、いちばん多い、とりあえずの分類体系なのです。

 スズキ目のベラ亜目は、ふつう、ベラ科、オダクス科、ブダイ科の3科を含めることが多いのです。ところが下咽頭骨の形状から、ネルソンは、カワスズメ科、ウミタナゴ科、スズメダイ科も、ベラ亜目に入れたのです。

 中坊徹次は『日本産魚類検索 第2版』(2000年・東海大学出版会)で、ネルソンのこの変更に、「十分な論拠があるといいがたい」として、スズキ目ベラ亜目には、ベラ科とブダイ科だけ認め(オダクス科 Odacidae は日本には産しません)ウミタナゴ科などは、スズキ目スズキ亜目のままにしています。

 この辺の議論は難しいので、【WEB魚図鑑】は、中坊に従います。ただ、亜目とか、亜科とか、そういう補助的な分類群は研究者によって、意見がかなり違いますので、【WEB魚図鑑】では扱わず、綱、目、科、属、種、亜種、だけで扱うようにしています。そのために亜目の議論は、本図鑑では無用のこととなりますけど…。

 おわかりでしょうか?

 ネルソン(1994)に従うなら、ウミタナゴ科は、スズキ目ベラ亜目になります。ふつうには、スズキ目スズキ亜目と考える人が多いでしょう。

 ただし、スズキ目とか、スズキ亜目とかは、引き算した残りのようなところがあり、特徴のはっきりしない、あいまいな分類群ではあります。そのうちに、かいさんのような若き分類屋たちが、まったく新しい体系を打ち立ててくれるのではないかと期待していますけどね。

 ちなみに、ネルソンは、この1994年の第3版から、四足類を、硬骨魚類の肉鰭亜綱の下に入れています。これはサメ・エイ類とマダイやスズキなどより、人類と、マダイやスズキの方が近いということです。

 おもろいでしょ!                  英人

ps
 ネルソンを、簡単に翻訳したような本がでています。

『魚の分類の図鑑』(上野輝彌・坂本一男著・1999年・東海大学出版会・定価2800円+税)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4486014979/qid=1096803370/sr=1-1/ref=sr_1_8_1/249-3639817-6813112

[13797] 参考>ベラ亜目>オダクス科の魚 
2004/10/4 (月) 08:03:15 小西英人HomePage
◆画像拡大
ブルーウィードホワイティング■オダクス科 Haletta semifasciata (Valenciennes,1840)

▼ けんさん

 オダクス科の魚っていわれても、日本にはいないから、ぴんと来ませんよね。

 これは南オーストラリアのカンガルー島で釣れた、オダクス科 Odacidae の魚のです。

 まあ、ベラの仲間には見えるでしょう?       英人

[13806] Re:参考>ベラ亜目>オダクス科の魚 
2004/10/4 (月) 14:05:42 けん
▼ 小西英人さん
わあ!いつも詳しくありがとうございます。
分類などの意見の食い違いは統一されないのですね・・・。難しい・・・。魚類学の授業をとろうかな。知れば知るほど首を突っ込みたくなります。

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