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[14011] 書評>『性転換する魚たち』 
2004/10/16 (土) 19:19:03 小西英人HomePage
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『性転換する魚たち』桑村哲生著・岩波新書・定価780円+税

 性転換する魚…というのは、みなさん、よく知っていますよね。

 だけど…。

 知ってるつもりになっていませんか?

 なぜ、性転換するのでしょうか?

 なぜ、雄から雌に性転換する魚と、雌から雄に性転換する魚がいるのでしょうか?

 これらの答えをを探るための、気の遠くなるような研究手法をご存じですか?

 行動生態学で、性転換の第一人者の著者が、ほんとうに丁寧に分かりやすく書いてくれている、本書を読むと、よく分かると思います。

 性転換を知るためには、性的2型と、性淘汰を知らなければなりません。

 ふつうの人には、あまり知られていないことですが、性淘汰というのは、あの『種の起源』のダーウィンが最初に考えついています。種の起源で、自然淘汰を説いたのですが、これで説明できない現象があったのです。

 なぜ、派手な雄が多いのか? 目立って捕食されやすくなるだろうに…。自然淘汰では性的2型を説明できません。

 これの答えとして、ダーウィンは1859年に『種の起源』を出版したあと、1871年に『人間の由来と性淘汰』として発表しています。性淘汰の発見ですね。

 しかし、これが完全に受け入れられ、精妙な理論として組み立てられたのは、比較的近年のことであり、その理論を検証するための、行動動物学的な研究はほんとうに大変ですが、面白そうでもあります。

 1972年の7月、京都大学4年生だった著者が、和歌山県白浜の瀬戸臨海実験所に立つところから、本書は始まります。

 今西錦司の強烈なリーダーシップのもと、サルの社会の研究をするために大学院に進学したいと思っていた著者は、ホンソメワケベラと出会い、魚にとひかれていく。

 そして、サルの研究で飛躍的な進歩をもたらした、個体識別による行動生態観察を、海でやりはじめるのです。

 海の中を区切って、マップをつくって、そのなかのすべての個体を識別して…。

 そういう研究から、なぜ性転換するのかという、進化の謎に切り込んでいきます。

 こういう海に潜水して、生態を粘り強く観察するような研究は、このころから始まっています。それからの、世界のさまざまな研究者たちによる、さまざまな研究、そして提出されるさまざまな理論、それへの批判、議論。性淘汰の研究の、近年の始まりから、最先端まで、わくわくするような人間ドラマとして描いています。一研究者のパーソナルヒストリーが、性転換の研究史として、書かれているのです。

 詳しい内容は書きません。

 難しいことを、ほんとうに、やさしく、また誤解されないように、著者は注意深く書いています。岩波新書としては、ちょっとやさしすぎないかと思うほどです。

 なぜ、魚は性転換するか、これで分かると思います。

 どうぞ読んでみてください。            英人

[14020] 書評>『魚類の社会行動3』 
2004/10/17 (日) 10:45:15 小西英人HomePage
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『魚類の社会行動3』(幸田正典・中嶋康裕 共編 海游舎 2004年 定価2600円+税)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4905930790/qid=1097974597/sr=1-3/ref=sr_1_8_3/249-0959025-2737906

 性淘汰を、動物行動学から解き明かしていく桑村哲生博士の岩波新書の新刊『性転換する魚たち』を紹介しましたが、その桑村博士も編集委員をしている『魚類の社会行動』の3巻目が、このほど刊行され、シリーズが完結しています。

 第2巻が出たのが、2003年の4月でしたから、1年半かかっていますね。もう出ないのかななんて思っていましたら出てきました。

 第1巻と第2巻の内容が、どんなものだったか…。魚類学会のHPに簡単な紹介がありますので、そちらを見てください。

 http://www.fish-isj.jp/publication/book.html

 さて、第3巻。

 簡単にいうと、水中に潜って、個体識別して、生態を観察して、社会行動を考察する研究を集めています。論文というより、初めのテーマ設定から、いろいろな試行錯誤、そして現状と、ひとつの研究テーマのさまざまな裏話を描いて、研究とはどういうものかを生き生きと教えてくれます。もちろん、いまの最先端の考え方や、批判、反省などなども盛り込まれています。

 タイトルだけ書いていきます。

 1)カザリキュウセンの性淘汰と性転換 狩野賢司
 2)なぜシワイカナゴの雄は縄張りを放棄するのか 成松庸二
 3)クロヨシノボリの配偶者選択 高橋大輔
 4)なわばり型ハレムをもつコウライトラギスの性転換 大西信弘
 5)サケ科魚類における河川残留型雄の繁殖行動と繁殖形質 小関右介
 6)シベリアの古代湖で見たカジカの卵 宗原弘幸

 おもしろそうでしょう?!

 内容は書かないもんね。読んでみてください。

 といいながら、ちょっとだけ。

 カザリキュウセンは「ルーズなハレム」を形成するらしいのだけど、そのハレムの雄が消えると、大きな雌が、あたかも雄のような産卵ディスプレイを小さな雌に対してはじめて、小さな雌も応じて、産卵行動をはじめるといいます。すわ、レズビアンか…。なんて研究者は思わないよね。

 また、雄を戻すと、とたんに、大きな雌は雌として行動をはじめるといいます。

 雄がいなくなると、それが引き金になって、そう社会的な動機で、アルファ雌(大きな雌)が性転換をはじめるのは、ふつうなのですが、なぜ性転換をはじめてもいないし、雌の姿のままなのに、雄として振る舞いはじめるか…。この研究と論考は面白いですよ。

 また、カザリキュウセンの雄の消失率には、思わず同情してしまいます。

 沖縄で4月から10月までの繁殖期間で、4月にいた雄のうち、無事にシーズンを終えるのは5%だそうです。ハレムを持って、女の子に好かれるように派手に振る舞うと、それだけエソなどに食べられちゃうんですね。

 珊瑚礁魚類の厳しさの一端を数字で見られます。

 クロヨシノボリの配偶者選択というと、なにか、ぴんとこないかもしれませんが、女の子の選り好みなんですよね。いつも男は、これに泣かされます。

 性淘汰と書きましたが、この性淘汰のひとつに、雌の選り好みがあるのです。大きい雄を好むとか、派手な模様の雄を好むとか、産卵行動時の、こういう選り好みに勝って、雌が獲得でき、子孫を残せるように、雄は、大きくなったり、派手になったりしてしまうのです。自然淘汰では説明できない進化をしてしまうのですね。

 種によって、何を好むかは、まあ女の子のことですから、いろいろあるのですが、それでも、大きいとか、派手だとか(派手な奴は生存リスクが大きいのですが、それに打ち勝てるのですね。強い。また寄生虫などにやられると体色などくすんでしまうようで、健康のバロメーターにもなります)だいたいの好みは決まっています。

 ところが、クロヨシノボリの雌は、大きさでもなく、派手さでもなく、なんかわからんけど、選り好みをしているのですね。

 ここからの推論と、実証研究は、ほんと面白いですよ。

 クロヨシノボリの女の子は、流れの強いところにいる男の子を好むのです。

 なぜでしょう?!

 あんまり書いちゃうと、もったいないなあ。

 とにかく、魚が見えてきて面白い。          英人

[14021] 書評>『性転換する魚たち』>岩波新書のHP 
2004/10/17 (日) 11:12:13 小西英人HomePage
▼ みなさん

 岩波新書のHPに、この『性転換する魚たち』の紹介と目次が入っていますので、どうぞ参考にしてください。

http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn0409/sin_k193.html

 それにしても。

 生態屋さんは、『魚類の社会行動』もそろったし、岩波新書で、いい教科書ができて羨ましいなあ。

 なんやかやいっても、岩波新書、ブランドはブランドであって、ここのラインナップには感心します。

 行動生態屋さん…『性転換する魚たち』

 分子生物屋さん…『生物進化を考える』

 生物地理屋さん…『イワナの謎を追う』

 そして絶版になっていて残念ですが

 初期発生屋さん…『稚魚を求めて』

 なんて、それぞれの分野に名著がそろっていて羨ましいです。

 『生物進化を考える』これが、新書で、安くて手にはいることを、日本は世界に誇ってもいいと思います。木村資生は、日本より、世界で有名であって、いま何万年前に分岐したなどと、見てきたようなことを研究者たちが議論できるのは、木村のおかげなのです。早死にして残念でした。生きていればノーベル賞をもらっていたと、ぼくは信じています。

 遺伝子による、進化論が分からないという人は、とにかく、この本からはじめたらよろしい。

 『イワナの謎を追う』これ、大分前に読んだので、ちょっと忘れてもいますが、とにかく主に北海道のイワナ属の斑紋から、だんだんだんだん話は壮大なドラマになっていって、生物地理学的な考え方というのを、この本から学んだように思います。

 『稚魚を求めて』これは稚魚屋さんのバイブルでしょう。日本で初期発生をはじめた巨人、内田恵太郎さんの青春譜が、生き生きと描かれていて、最後は思わず涙するほど感動したのを覚えています。学会でも、稚魚屋さんたちが、あんなに熱心なのは、この巨人、内田さんのおかげなんだろうなあと、ふと、思ったりします。

 あと、岩波新書では『アユの話』宮地伝三郎の名著もありましたねえ。

 魚類分類屋さんに知己が多く、また、のめりこんじゃったぼくとしては、こういう一般書に、分類屋さんのものが、まったくないのが残念で残念で、口惜しいですね。多士済々なのになあ。

 分類屋さんは、忙しいから、一般書を書けないから…なんていうと、他の分野の研究者に怒られそうです。

 分類屋さんは、基礎学問なのに、社会の理解がなく、大変だ大変だと、よくぼやきますが、やはり、一般書をきちんと書いて、分類というものを、やさしく広めて欲しいと思っています。どんなに忙しくてもね。

                            英人

[14044] Re: 書評>『性転換する魚たち』 
2004/10/18 (月) 09:04:06 BUNHomePage
英人さん、こんにちは。

 BUNです。ご無沙汰してます。
いつもご苦労様です。楽しく読ませて頂いてます。どんな質問にも
丁寧に答えておられるのには頭が下がる思いです。

 『性転換する魚たち』や『魚類の社会行動』の紹介を有り難う
ございます。楽しそうな本ですね。一度に買う金がないので、
1冊ずつ買って読みます(^^;

BUN(神戸市東灘区)

[14045] Re2: 書評>『性転換する魚たち』 
2004/10/18 (月) 09:37:32 小西英人HomePage
▼ BUNさん

 お久しぶりです。

 性淘汰って、面白いのですが、けっこう、ややこしいところもありますので、桑村さんの『性転換する魚たち』から読みはるほうが分かりやすいと思います。

 性淘汰って、おもしろいですから、たとえば、一般書では竹内久美子などが有名になりましたよね。療養所にいたとき、ひとり、本好きがいて、ぼくに性淘汰の議論をふっかけてくるのですが、かなりステレオタイプで、ぼく、いろいろ論破していたのです。そうしたら、おもしろおかしく書いた竹内の著書の受け売りだったのです。せめて長谷川真理子からはじめてよ…なんていいながら、そいつとは仲良くなりましたけどね。

 魚からはじめて、進化論に迷い込むのも、ほんと面白いと思いますよ。

 いいながら、このごろ、難しいことは考えずに生きていますけどね。ぼくは。

 このまえ、ぷいぷいユッケさんを、琉球大学の魚類学会懇親会で、中坊徹次さんに紹介したのですが、中坊さんは、『種の起源』を読めよと、酔っぱらって上機嫌にいっていました。

 中坊さんは、これからはじめろと、よく言います。

 ほんと、あの時代に、よくここまで考え抜いたなあと感心します。ダーウィンは、ウォーレスの業績を盗んだなどといわれたりしますが、あれほど緻密に理論を組み上げているのは、ほんとオリジナルです。

 ダーウィンは、大学教授かなんかだと思われがちですが、金持ちの偏屈じいさんだったようで、まあ偉大なるアマチュアの業績なんですよね。働かずに食べていけたようです。病気もあって、若いときのヴィーグル号はのぞいて、家に籠もって研究ばかりしていたようです。

 ちょっと、ばたばたしていて、しっかり本を読むことをしていなかったので、中坊さんが、若い学生に、そういうのを聞きながら、そうだ、ぼくも、また『種の起源』を読み直そうなんて思っていました。

                           英人

[14049] 買ってきました>『性転換する魚たち』 
2004/10/18 (月) 15:49:33 BUNHomePage
▼ 英人さん

 釣りには10年近くもご一緒してませんが、英人さんのウデは衰えてませ
んねえ。即、エサ(書評)に食いついた魚がいますよ。(←私のこと ^^;)
『性転換する魚たち』を買い求めてきました。(笑)

 パラパラっと見ただけですが、おっしゃるようにド素人の私にも気軽に
読めそうです。

> 魚からはじめて、進化論に迷い込むのも、ほんと面白いと思いますよ。

 ウ〜ん、進化論ねえ〜〜
本屋さんには岩波文庫で『種の起源』(上・下巻/各800円)があったの
ですが・・・。この歳にして諸事迷いまくってますので、ちょっと考えさせて
ください(^^;;;;

                   BUN(神戸市東灘区)

[14050] Re:買ってきました>『性転換する魚たち』 
2004/10/18 (月) 17:27:37 小西英人HomePage
▼ BUNさん

 魚の社会のいろいろなこと知ると、なんか釣るのが可哀想になってきますよ。

 気をつけてくださいね。               英人

[14477] 書評>『種の起源(第6版)』 
2004/11/13 (土) 09:53:17 ぷいぷいユッケHomePage
▼ 小西英人さん

>  このまえ、ぷいぷいユッケさんを、琉球大学の魚類学会懇親会で、中坊徹次さんに紹介したのですが、中坊さんは、『種の起源』を読めよと、酔っぱらって上機嫌にいっていました。

この件、有り難うございました。
実は、4月にメールで「『種の起源』は必読本です」と伺っていたのですが、
読まなければと思いつつ、忙しくなかなか手を出せていませんでした。

学会から帰った10月から読み始めて、ようやく読み終わりました。
内容としては、難しいと感じました。じっくり読んでいかないと、なかなか頭に入ってこないです。

しかし、読んでよかったです。

あまり詳しいことを書くと、稚拙な文になるかもしれないので、
とにかく面白いと感じた文章は多くはなかったけど、
読んで損はしない、良かった!
とだけ述べておきます。

次は初版をパラパラと読み始めています。
第6版に比べると、文章量の少なさが目に留まりますが、
初版は第6版とは違った良さを見出せることを期待してます。

本当は、生命倫理関係や小西さんのこのツリーで紹介している本なども読みたいですが、
なかなか読むペースがあがらなくて困ります。(^_^;;

[14478] いま山陽自動車道です 
2004/11/13 (土) 10:02:00 英人@携帯電話
研究会に出るため走っていますが、中国道が事故で大渋滞、えらいめにあっています。ぷいぷいさん、感想をできたら書いてね。勉強になるよ!

[14182] 買ってしまった 
2004/10/26 (火) 21:56:10
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▼ 小西英人さん

痛っ!私も釣られてしまった(^^;

ちと抱き合わせで買ってしまった(笑)

「種の起源」で有名なダーウィンの「サンゴ礁の構造と分布」では
日本でビーチロックという言葉が定着したのは、鹿大の米谷さん以降だったと
思いますが、すでにビーチロックと思える文も「サンゴ礁の構造と分布」
では登場しているようですね。

お魚の本も、読んで!いろいろ考えさせられます・・・
他にも買って読んでいないのが幾つかあります
小西さんの紹介の本も一つ一つ読めたら良いかなと

「性転換する魚たち」を少し読んでみましたが面白いです
まさか!ファイティングニモーが登場するとは!
あまり本を紹介しないでね出費が増えます(笑)

    忠
ps
いろいろ勉強しなさいと!
奄美の貝類を作らされてしまった
http://kagoshima.cool.ne.jp/tdyk/index.html
お魚だけでも難しいのに・・・

[14183] Re:買ってしまった 
2004/10/26 (火) 22:26:14 小西英人HomePage
▼ 忠さん

 うわっ!

 貝もやるのですか。大変だなあ。ぼくは、頭足類に手を出しているのも、反省しきりなんだけど…。

 どれもそうだけど、貝も難しいよね。           英人

[14229] Re:書評>『性転換する魚たち』 
2004/10/30 (土) 18:39:45 小西英人HomePage
▼ みなさん

 読んだ人は、できるだけ、感想を書いてね。

 簡単でもいいから。                  英人

[14475] 『性転換する魚たち』買いました 
2004/11/12 (金) 23:38:59 マリトコ
▼ 小西英人さん

まだ、半分ほどしか読んでいませんが、過去ログ行き寸前だったので報告しておきます。

わかりやすくて、おもしろいですね。

来年の夏、海に潜ったときには、魚の行動を観察してみようという気分になりました。

[14476] Re:『性転換する魚たち』買いました 
2004/11/13 (土) 06:09:38 小西英人HomePage
▼ マリトコさん

 感想、ありがとうございます。

 京都大学瀬戸臨海実験所は、『磯魚の生態学』の奥野良之助博士など

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4422430068/249-8411938-8436356

 魚でも、いろいろ、面白く、また凄い人を輩出しています。

 桑村哲生博士も、難しい研究をしているのですが、これほどやさしく書いてくれていたら、読まなきゃ損だよね。ぼくたちとしては。

                              英人

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