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| ▼ みなさん
本日、日本魚類学会の『魚類学雑誌』Vol.51,No.2 と"Ichthyological Research" Vol.51,No.4 の2冊が届きました。
日本産フサカサゴ科オニカサゴ属魚類(Scorpaenidae:Scorpaenopsis)の分類学的検討 本村浩之 吉野哲夫 高村直人
トップにありました、ありました!
これを待っていたのです。ところが、日本語ですが、えらい大論文で、ちょっとゆっくり読めるときでないといけませぬ。
本村さん、ごくろうさまでした。バージョンアップ作業が、一段落したら、オニカサゴ属を直しますので…。すみません。
英文版、IR のほうに、かいさんたちの論文がありますね。クラカケトラギスに色彩2型あるのですが、ミトコンドリアDNAでやると、たがいに独立の種であるとなったようです。土佐湾です。ちょっと気をつけなければ…。これ、昔、さとうさんに標本を頼まれたのですが、ぼくは釣れませんでした。
トラギス科の Parapercis xanthozona (Bleeker,1849) の和名は使っちゃ駄目よというのもありました。これ、このまえ、ぼくが、うっかりしまくって、和名を使うのは問題ありなんて、WEB魚図鑑登録魚種なのに、うめいてしまった、コクテントラギスのことです。
これ、ややこしいのですが、とにかく蒲原先生が1938年に採って、コクテントラギスの和名をつけたのは、実は、コクテントラギス Parapercis xanthozona (Bleeker,1849) ではなくて、カモハラトラギス Parapercis kamoharai Schultz,1966 だったようなのです。そのために、日本産の Parapercis xanthozona (Bleeker,1849) が採れたときに、コクテントラギスの和名を使うと、ややこしくなるよと、そういうことです。
2003年に、日本産の Parapercis xanthozona (Bleeker,1849) を報告した今村博士が、この2003年の論文では和名に触れていないとして、新和名、オジロトラギスを提唱してはります。
ああ、ややこしく書いたかなあ。
コクテントラギスの和名は、オジロトラギス、でっせということです。
たぶん、こちらが採用されるでしょう。
オニカサゴ属の整理の時に、コクテントラギスも、オジロトラギスに直しておきます。
英人
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[15054] 魚雑>ピンジャロが鹿児島から記録されました | |
| ▼ みなさん
魚雑、ばらばら見ていますと、フエダイ科セダカタカサゴ属の、ピンジャロ Pinjalo pinjalo (Bleeker,1850) が、鹿児島から記録されて、日本産魚となり、チカメタカサゴになっています。
外国産の、ピンジャロを、日本産の、チカメタカサゴに直しておきました。解説に、下の一文を追加しておきました。
『魚類学雑誌』Vol.51,No.2,2004年11月号で、「チカメタカサゴ Pinjalo pinjalo の日本水域からの初記録」岩槻幸雄ほかという論文が載った。これは鹿児島県肝属郡佐多町伊佐敷沖合で採れた1個体が、Pinjalo pinjalo (Bleeker,1850) と同定され、成魚の日本初記録となったもの。日本産魚となったのでチカメタカサゴ」という和名がつけられた。このチカメタカサゴという名は、『南シナ海の魚類』久新健一郎ほか、1982年で、南シナ海から採られた個体に、新和名として提唱されていたものである。
いやあ、いろいろ動いているなあ。この世の中は…。 英人
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[15281] 魚雑>オニカサゴ属>8種が12種に大整理された! | |
| ▼ みなさん
このボードにも出入りしてくださっている、シドニー博物館の本村浩之博士の論文が発表されました。
本村浩之・吉野哲夫・高村直人『日本産フサカサゴ科オニカサゴ属魚類(Scorpaenidae:S.)の分類学的再検討』魚類学雑誌, 51(2):89-115 2004.11
これにより、日本産のフサカサゴ科オニカサゴ属は、7種+変異型だったのが、12種になり、新和名が5種について提唱されました。
この大整理に基づいて、【WEB魚図鑑】を修正しようと思いましたが、いま、ちょっとトラブルのあとなので、もうちょっとシステムの様子を見てから直します。
どのように修正するか…。ここに書いておきます。ややこしいでえ。
なお、本村さんたちは、オニカサゴ属を、原則的には頭部の棘の形状で分けています。この特徴は、非常に書きにくく、釣り人には理解しにくく、写真でも分かりにくいので、この特徴以外の形態を、論文から、お借りして解説していますので、ちょっと識別しにくいです。これらは、またデータが集まるたびに変えていこうと思っています。なにせ、ややこしくて…。
英人
■オニカサゴ属は、体色も、斑紋も、形態も、変異が大きく、分類学的に混乱していて、『日本産魚類検索』(中坊徹次編 2000年 東海大学出版会)で、中坊により以下のように整理されていた。
@ヒメサツマカサゴ Scorpaenopsis iop Nakabo, Senou and Masuda,1993
Aコガタオニカサゴ S. brevifrons Eschmeyer and Randall,1975
Bミミトゲオニカサゴ S. sp.
Cオニカサゴ S. cirrosa (Thunberg,1880)
Dオニカサゴ変異型 S. cirrosa (Thunberg,1880)
Eサツマカサゴ Scorpaenopsis neglecta Heckel,1837
Fセムシカサゴ S. diabolus Cuvier,1829
Gウルマカサゴ S. oxycephala (Bleeker,1849)
その後、世界的に、整理と新種の記載が続き、本村浩之・吉野哲夫・高村直人『日本産フサカサゴ科オニカサゴ属魚類(Scorpaenidae:S.)の分類学的再検討』魚類学雑誌, 51(2):89-115 2004.11 によって、日本産オニカサゴ属が整理されて、12種になり、そのうちの5種に、新和名が提唱された。
@ヒメサツマカサゴ S. cotticeps Fowler,1938 (シノニムとして学名変更)
Aヒュウガカサゴ S. venosa (Cuvier,1829) (※新和名)
Bイヌカサゴ S. ramaraoi Randall and Eschmeyer,2002 (※新和名)
Cコガタオニカサゴ S. vittapinna Randall and Eschmeyer,2002 (誤同定による学名変更)
Dマルスベカサゴ S. macrochir Ogliby,1910 (※新和名。小笠原産の1個体による日本初記録)
Eミミトゲオニカサゴ S. possi Randall and Eschmeyer,2002 (学名が確定、中坊の、ミミトゲオニカサゴと、オニカサゴ変異型は、この1種になった)
Fオニカサゴ Scorpaenopsis cirrosa (Thunberg,1880)
Gオオウルマカサゴ S. oxycephala (Bleeker,1849) (学名変更により、※新和名)
Hサツマカサゴ S. neglecta Heckel,1837
Iニライカサゴ S. diabolus Cuvier,1829 (セムシカサゴの改称。※新和名)
Jトウヨウウルマカサゴ S. orientalis Randall and Eschmeyer,2002 (ウルマカサゴとされていたものが新種記載された。※新和名)
Kウルマカサゴ S. papuensis (Cuvier, 1829) (学名変更)
このように、変わっていないのは、オニカサゴと、サツマカサゴだけという、大整理が行われている。
以下に、【WEB魚図鑑】に暫定的にいれる解説を列挙しておく。
■オニカサゴ Scorpaenopsis cirrosa (Thunberg,1880)
■眼隔域は浅く、体側面から見て目の上方の約4分の1が頭部の輪郭から突出する。最長背鰭棘は第4、5棘。臀鰭第2棘は第3棘より、やや長い。胸部と腹部をのぞく体と、各鰭に黒色斑点が散在する。
■千葉・新潟県以南〜鹿児島、伊豆諸島。中国、香港。東アジア固有種。沿岸域にすむ。
■ヒメサツマカサゴ Scorpaenopsis cotticeps Fowler,1938
■涙骨下縁の後方棘は単尖頭。胸鰭鰭条は16〜17,体高は高い。背鰭基底前方で体の背縁が隆起しない。最長背鰭棘は第4,5棘。臀鰭第2棘は第3棘より、やや短い。
■本種は、1993年に中坊らにより新種記載され、ヒメサツマカサゴ S. iop とされたが、2002年、ランドールらによって新参シノニムとされた。2004年、本村らもシノニムとし学名を変更したが、和名は、そのまま、ヒメサツマカサゴとするのが妥当とした。
■神奈川県三浦半島以南の黒潮域。〜西太平洋、西インド洋。
■ニライカサゴ Scorpaenopsis diabolus Cuvier,1829
■背鰭基底前方で体の背縁は著しく盛りあがる。胸鰭内側の上方、第1〜第6鰭条の間に楕円形の黒斑がある。最長背鰭棘は第3棘、臀鰭第2棘は第3棘より長い。
■本種は、1990年に高村により日本初記録として記載され、1993年に中坊によりセムシカサゴの和名が提唱された。しかし「せむし」は、身体障害者による差別用語であり、標準和名には不適切であるとして、2004年、本村らにより、ニライカサゴと改称が提唱された。「にらい」は沖縄の言葉で海の彼方を意味する。標準和名は、本来、混乱を避けるため改称は控えるように運用されてきた。しかし、差別用語などが問題となり、日本魚類学会でも2003年3月25日、評議員会により、日本魚類学会標準和名検討委員会が設置され、検討を始めた。標準和名の差別用語問題が提起がされてから、初めての論文による和名改称の提唱となった。
■小笠原、伊豆諸島、高知県以南、琉球列島。〜インド・太平洋域。
■マルスベカサゴ Scorpaenopsis macrochir Ogliby,1910
■背鰭基底前方で体の背縁は著しく盛りあがり、吻は短い。胸鰭内側の外縁付近に1黒色帯があり、この黒色帯は上方ほど濃くなる。胸鰭内側の基底には複数の黒斑がちらばる。最長背鰭棘は第4棘、臀鰭第2棘は第3棘より長い。
■サツマカサゴとよく似ており、それと誤同定されていた。2002年にランドールらによって日本で初めて記録され。2004年本村らによって標準和名が提唱された。本種の吻が短く、丸みを帯びた頭部から「まる」で、頭部の各棘が鋸歯状にならないので「すべ」で、マルスベカサゴと命名された。
■小笠原父島、沖縄島。〜太平洋域。
■サツマカサゴ Scorpaenopsis neglecta Heckel,1837
■背鰭基底前方で体の背縁は著しく盛りあがる。胸鰭内側の外縁付近に1黒色帯があり、この黒色帯は上方ほど濃くなる。胸鰭内側の基底には複数の黒斑がちらばる。最長背鰭棘は第4棘、臀鰭第2棘は第3棘より長い。
■中部以南の黒潮域、琉球列島。〜西太平洋、東インド洋。
■トウヨウウルマカサゴ Scorpaenopsis orientalis Randall and Eschmeyer,2002
■胸鰭内側の基部上方には眼径とほぼ同大で神格の不明瞭な1黒斑がある。最長背鰭棘は第3棘、臀鰭第2棘は第3棘より、やや長い。
■1997年に小笠原諸島の個体が、2000年には宮崎県の個体が、S. oxycephala として報告されたが、2002年にランドールらによって新種記載された。2004年本村らによって、標準和名が提唱された。ウルマカサゴに似ているので命名された。
■小笠原諸島、宮崎県南郷町。
■オオウルマカサゴ Scorpaenopsis oxycephala (Bleeker,1849)
■胸鰭内側に顕著な顕著な色彩的特徴はない。最長背鰭棘は第3棘、臀鰭第2棘は第3棘はほぼ同長。
■1990年に高村が記載した S. oxycephala を、1993年に中坊は日本初記録種として、ウルマカサゴの和名を提唱した。しかし、これは S. papuensis であった。標準和名は学名に対応するのではなく、その種の実体に対応するため、ウルマカサゴという標準和名は、2004年本村らによって、S. papuensis に移され、本種には、オオウルマカサゴが提唱された。本種は標準体長が 340mm に達するので、「おお」がつけられた。
■沖縄島。インド・西太平洋域。
■ウルマカサゴ Scorpaenopsis papuensis (Cuvier, 1829)
■胸鰭内側に顕著な顕著な色彩的特徴はない。最長背鰭棘は第3棘、臀鰭第2棘は第3棘より、やや長い。
■「ウルマカサゴ」という標準和名は、S. oxycephala につけられていたが、2004年に本村らは、それを S. papuensis の誤同定とした。そして標準和名は、学名につけられるのではなく実体につけられるとして、ウルマカサゴを本種に移し、S. oxycephala にはオオウルマカサゴの標準和名を提唱した。
■和歌山県、琉球列島。〜インド・太平洋域。
■ミミトゲオニカサゴ Scorpaenopsis possi Randall and Eschmeyer,2002
■胸鰭内側に顕著な顕著な色彩的特徴はない。最長背鰭棘は第3、第4棘、臀鰭第2棘は第3棘より、やや長い。
■1993年に中坊は、耳棘に余分な棘を持つ標本を、便宜的にエシュマイヤーの記載していた Scorpaenopsis sp. として、ミミトゲオニカサゴの和名を提唱した。この標本は所在不明になっているが、2004年に本村らは、こういう特徴を持つものは、S. possi と同定し、学名を確定した。1993年に、中坊がオニカサゴ変異型とした標本も、本村らは、S. possi と同定した。
■伊豆諸島、対馬、琉球列島。〜インド・太平洋域。
■イヌカサゴ Scorpaenopsis ramaraoi Randall and Eschmeyer,2002
■上顎前部に、涙骨隆起が突出する。胸鰭内側に顕著な顕著な色彩的特徴はない。最長背鰭棘は第4棘、臀鰭第2棘は第3棘より、やや長い。
■2002年のランドールらが記載した S. ramaraoi と同定される、日本産の標本を、2004年本村らが日本産初記録として記載し、イヌカサゴの標準和名を提唱した。本種の上顎前部に突きだしている尖った涙骨隆起が、イヌの犬歯を連想させるので、イヌカサゴと命名された。
■ヒュウガカサゴ Scorpaenopsis venosa (Cuvier, 1829)
■胸鰭内側に顕著な顕著な色彩的特徴はない。最長背鰭棘は第3、第4棘、臀鰭第2棘は第3棘より、やや長い。
■2002年にランドールらは、宮崎県から得られた5個体の標本を本種とした。2004年本村らは、日本での分布地にちなんで、ヒュウガカサゴという標準和名を提唱した。
■高知、宮崎。〜インド・西太平洋域。大陸棚上にすむ。
■コガタオニカサゴ Scorpaenopsis vittapinna Randall and Eschmeyer,2002
■胸鰭と臀鰭に幅の広い黒色帯がある。最長背鰭棘は第4、第5棘、臀鰭第2棘は第3棘より、やや長い。
■1990年に高村が記載した S. brevifrons を、1993年に中坊は日本初記録種として、コガタオニカサゴの和名を提唱した。2004年本村らは、これを S. vittapinna とした。そのために学名が変更されている。S. brevifrons はハワイ諸島の固有種である。
■沖縄島。オーストラリアとハワイ諸島をのぞく、インド・太平洋域。
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