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[15460] 書籍紹介>学名の意味が分かる本など3冊 
2004/12/23 (木) 10:34:09 小西英人HomePage
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■"Dictionary of Word Roots and Combining forms" Borror,1988

▼ みなさん

 ロクセンフエダイ Lutjanus quinquelineatus (Bloch,1790) って、ブロッホは、種小名にラテン語で、「五線」って、つけているんだ…なんて、書いちゃうと、ぼく、ラテン語などに通じているように聞こえて、かっこいいですが、違うんですよね。

 「あんちょこ」があります。それなど、ちょっと紹介しましょうか。

 学名は、ギリシャ語をラテン語化するかラテン語で、表記してきました。いまは、何語でもよくて、ラテン語で表記すればいいのですが…。

 カワムツ Zacco temminckii (Temminck and Schlegel,1846) の属名の Zacco は日本語の雑魚です。東京大学の田中茂穂の師、アメリカのジョルダンが名づけています。ジョルダンは、けっこう日本語でつけています。また、テミンクとシュレーゲルは、オランダのライデン博物館で、シーボルトコレクションを記載した、ファウナ ヤポニカ で有名ですが、シーボルトが、長崎出島で採集するときに日本名を、よく拾っているので、彼らも、けっこう日本語で名づけています。ハナアナゴ Ariosoma anago (Temminck and Schlegel,1846) キジハタ Epinephelus akaara (Temminck and Schlegel,1842) など多いです。キジハタの種小名は、「赤あら」です。江戸時代の長崎での呼び名が分かりますね。前にも書いたけど、アオハタ Epinephelus awoara (Temminck and Schlegel,1842) を、なぜ「青あら」としたのか、よく分かりませんけどね。あれは青くない、黄色なら分かるけど…。

 ああ、脱線脱線。

 とにかく、何語でもラテン語表記(簡単に言えばローマ字表記です)すればいいといっても、属名と種小名を組み合わせるときに、ラテン語の文法に縛られます。簡単に言うと、ラテン語やギリシャ語の名詞は性(gender)があり、男性(masculine)、女性(feminine)、中性(neuter)のいずれかになっちゃいます。属名は名詞であって、これには性があり、それを修飾する種小名の語尾変化は属名の性と一致させなければなりません。

 ややこしいな。

 そんなこんなで、分類屋さんたちは、やはり、ラテン語には強くなります。自分らで名づけていかなければいけないもんね。文法をミスったりすると、九州大学に、怖い怖いお人がいて、怒られちゃったりしますから。

 連中と飲みに行っていると、ときどき、どこかの誰かさんに、学名をつけて、からかったりしています。酔っぱらって、ラテン語の学名を渾名につけて、みんなで大笑いしてはしゃぐという、えらい高尚なことやるから、ぼくなど、はじめは、意味がわからなくて笑えませんでした。

 いつやら、学生、教授、名誉教授など、さまざまな人の呑んでいて、だんだん減りながら3次会くらいになり、ひょっと気が付くと、6人で、ぼく以外は、みんな博士さま、OO君、何か頼んで…と、こき使われているのが助教授クラスなんて、恐ろしいこともありました。

 これについていくために…。いあいや違うなあ。学名をデータベースにしたり、いろいろいじっているうちに、ちょっとだけでも見えてくると、面白いもんだから、学名の意味もちょっと勉強したりします。

 でも、とっつきが、なかなかです。ラテン語辞書とか、ギリシャ語辞書とか、高いし、英語のしかないし、難しいし…。

 まあ、学名が、あるていどわかる、「あんちょこ」があるんですよね。

 これを教えてもらって、いろいろ調べるようになり、ちょっと学名に親しみがわきました。ぼく、1985年に出版した『さかな大図鑑』をつくったとき、研究者に、あっ、学名の原稿は、そっちでつくっておいてね。あんたが間違えたら直すからね…、なんていわれて、あのころワープロなどもなく、収録魚の学名を、せっせせっせと原稿に筆写したのですが、ターヘル・アナトミア、解体新書を初めて見た、前野良沢や杉田玄白の絶望感を感じたものです。意味が分からないから、とにかく、一字づつ写していくというのは大変でした。

 いまは、ぼくのATOKは、学名を覚えていて、何でも、そのままでてきますけどね。
 シロギス? Sillago japonica Temminck and Schlegel,1842

 クロダイ? Acanthopagrus schlegelii (Bleeker,1854)

 しかし、こう簡単に学名変換するのもいけないけどね。中坊さんには、和名は省略して書くな、学名は、いつでも書け、とにかく書くと覚えるからと、厳しく言われました。ぼくの学名変換辞書は、中坊さんには内緒なのです。メールで、ええかっこうして、Scorpaenidae ですけど…なんて書いて、それの返事に、いっぱいの科名を学名で書かれて、往生して調べまくったりして、けっこう大変ですけど。知ったかぶりも疲れます。

 Scorpaenidae これ、フサカサゴ科ね。こういうのも辞書に入れてあります。とにかく、こういうのを覚えておくと、外国の図鑑を見ていて、やはり便利がいいですよ。

 あああ。きょうは脱線ばかりしているなあ。

 物書きとして、自分の「ネタ本」、あんちょこをばらすのは、よくないのだけど、ぼくも、人から教えてもらったのですから、書いておきましょう。

"Dictionary of Word Roots and Combining forms" Borror,1988
$10.75
http://www.amazon.com/exec/obidos/ASIN/0874840538/qid=1103759123/sr=2-1/ref=pd_ka_b_2_1/104-6069249-9352756

 ぼくが、「あんちょこ」を手に入れたときは、ほんと苦労して、洋書屋で注文したり、汗をかきつつ、英語の得意な奴に頼んで手紙を書いてもらったりしたものですが、あっというまに便利になったね。アマゾンの日本の洋書にはなかったけど、アメリカのアマゾンサイトには、みんなあるんだものね。

 それと、驚いたのは、アメリカのアマゾンは、中身がサンプルで読めます。凄いです。どういいう印面か、分かっちゃうのです。紹介する3冊とも、見本があります。見てくださいね。

 これは小冊子です。ちっちゃく薄い本ですけれど、役に立ちます。簡単な意味しか書いていませんけど、どうせ英語で、がちゃがちゃ書かれても分からないから、ちょうどいいです。

 ロクセンフエダイ Lutjanus quinquelineatus (Bloch,1790)

 の種小名を見るのなら、

 quinqu,-e (L).Five
 lin,-ea,-eo,,-o (L). A line

 となっています。これでラテン語で「五線」だってわかります。属名の フエダイ属 Lutjanus は難しいですね。これはでてきません。たぶんブロッホの原記載 "Naturgeschichte der auslandischen Fische" Bloch,1790. を見れば分かるのかな? その辺は知りませんけど、荒俣宏は、マレー語の「フエダイ」の仲間を表す言葉をラテン語化したものだと書いてはります。

 あんちょこがあっても、分からない言葉はたくさんあります。

"Source-Book of Biological Names and Terms" Jaeger,1978
$68.95
http://www.amazon.com/exec/obidos/tg/detail/-/0398009163/qid=1103759366/sr=1-1/ref=sr_1_1/104-6069249-9352756?v=glance&s=books

 これは、先ほどのよりは詳しくなっていまして、たいていの分類屋さんは、学生のころに買っているのではないでしょうか。ぼくの持っているので3版6刷になっています。ハードカバーのしっかりした本です。

"Composition of Scientific Words: A Manual of Methods and a Lexicon of Materials for the Practice of Logotechnics" Brown,2000
$27.95
http://www.amazon.com/exec/obidos/ASIN/1560988487/ref%3Dnosim/bookfindercom0e/104-6069249-9352756

 これは、スミソニアンからでているもので、専門家向きです。ラテン語やギリシャ語で学名をつけたいときに便利で、英語の単語に対応する、ギリシャ語ラテン語を中心とした各国語が並んでいます。ジェンダーもいれてくれています。ぼくの持っているのはハードカバーですが、2000年にペーパーバックの、このタイプが出たようですね。

 以上、学名に興味を持たれたら、まあ、手に入れてみてください。

                       英人
ps
 ぼくは、偉そうに書いているけど、生物学系の勉強をしたことがありません。

 図鑑を編集者としてつくりながら勉強したのです。

 学校名を書くと、その学校に失礼ですから、書かないけど、関西の、某無名私大の社会学部卒です。4回生のときに釣り週刊誌を立ちあげたので、いっていません。そのまえの3年も、釣りばかりいって、ほとんど学校にはいっていません。それでも、卒業できたのですから、奇跡ですよね。

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