ヘキサー持って列車に
東郷町の取材を終えた後、日向市駅から普通列車に乗る。家族が一足先にクルマで串間市の石波海岸へ向かっており、ぼくはその後を列車で追いかける形だ。
出発まで少し時間があったので、ヘキサーを首からぶら下げて日向市駅前をぶらぶらする・・・・。ほどのこともない。ぶら・・・くらいでおしまいになってしまう。大きなスーパーが一軒、中華料理屋が一軒、ちょっとしたカフェが一軒、カメラ屋が一軒あるほかは、ちょこちょことした店が並ぶだけで路地もなく陰影もなく、なんにもない。空だけが青い。
そんな街並みでも、カメラをぶら下げて歩くだけで、すべての風景が何か特別なものに見えてくる。こういう気持ちはデジカメにはなかった。なぜなんだろうなあ。風景がきわめて私的なものになってくるのだ。
12時54分発の日豊本線で宮崎へ。そこから日南線に乗り換えて南郷へと向かう。ずっと普通列車だが、選んでそうしたのではなく、それしかないのだ。特に日南線は、日に一本、快速が走るだけで急行も特急もない。宮崎から志布志に至る日南線は、それでも27駅91.5kmある。この間、ずっと普通なものだから、この91.5kmを走るのに3時間20分もかかることになる。自動車の倍だ。なんたる非効率と思うが、走っているだけでもありがたいというものなのだろう。
志布志から西都城へ至る志布志線、同じく国分へ至る大隈線はそれぞれ87年に廃線となり、かつて日南線と合わせて三つの路線が交錯した志布志駅は、今や地の果てどんづまりの駅となってしまった。大隈半島の海岸線を走った大隈線の車窓は、錦江湾がおだやかで桜島なんぞも見えて、美しかっただろうなあ。
とりとめもないことを思いつつ、普通列車はどんどん進む。GWのせいだかどうだか、けっこうな客であって座席はほぼいっぱい。常に子供が騒いでうるさいが、こちらは最近の鉄道がどのような事情になっているのか知らないので、なるべく静かな席を求めてあちこち移動する。といっても二両しかない。
ニフティに鉄道フォーラムという、がんばっているコミュニティがあり、ここを通じて、ぼくは世に「鉄ちゃん」と呼ばれる人種があることを知った。なんでも列車に乗ることそのものが、旅の目的になる人たちのことを「鉄ちゃん」というのだそうだ。ニフティ前社長の渡辺武経さんも鉄ちゃんであり、オフ会にも参加されたりしたそうだが、九州育ちのぼくには、よくわからない世界だった。列車に乗って駅弁を食べたりするのは、いいなあと思うけどね。その日豊本線の車両はキハ40系であった。
最近、「一番もてないのはジャズファンと鉄道ファンだ」というタモリの発言を読んだ。危ない。ぼくは、少しだけジャズファンであり、さらに鉄道ファンも兼ねてしまうようなことになると、先はないではないか。
とりとめもないことを思いつつ、日南線となる。青島、内海、伊比井など日南海岸線を走り、それから山手に向かって北郷、飫肥、日南ときて、油津では24分停車。24分停車ですぞ。そんな長い時間、何をせいちゅうのじゃ。でも、１分半であのようなことが起こる時代に平気でこれだけ待たせるというのは、太い話だ。田舎ならではだ。いいですなあと憧れる人だっているだろう。まあ、ぼくだって24分で何がどうなるという人生を送っているわけでもない。
駅で午後の紅茶を買い、トイレに行き、ホームをうろうろし、観光案内所でパンフをもらい、写真を撮り、時が止まったかのようなひと時に耐えた後、ようやく動いたかと思うと、あっという間に目的地の南郷に着いた。時に16:02分。行程120km、所要時間3時間8分。こんなに長い時間普通に乗っていたのは初めてだ。
南郷駅には妻がクルマで迎えに来ていた。それを見て、ぼくの旅が終わったことを知る。とりとめもなき浮遊感。なのだろうな。鉄ちゃんたちの心というものは。
コメント
＞鉄道ファン、ジャズファン、鮎師、投げ師、オーディオマニア、銀塩カメラ
＞パソ通あがりで、しかもシスオペ、誌を書いていた、小学校では合唱部(^^;)。
＞フライはちょっとやってやめたのが救いですか(^^;)。
うーん。これはいかん。
人生、軌道修正せねばなあ。
Posted by ＪＵＮ at 2005年5月 8日 15:14
＞だからさ。オクサンの顔を見た瞬間に、男の旅は終わるわけですよ。
いや、そのとおりなんですけど、そーゆー書き方ってＪＵＮさん初めてじゃないですか？ もてなくなりますよ(^^;)。
で、ヤンキーですけど、グラサンするなら４５度で決めて欲しいですな。ま、ファッションだけヤンキーってのはまだ良いけど、本職のヤーさんも結構多かったりしますね、鮎。
でも、僕はどっちかっていうとフライマンの方がもてないっていうか、オタク度高いと思う。もてないってより、気持ち悪い。
ということで、もてないのは、鉄道ファン、ジャズファン、フライマンということで良いでしょうか？ アキバ系に通ずるような雰囲気。カメラっていうのも、ちょっと危ない感じですね(^^;)。
鉄道ファン、ジャズファン、鮎師、投げ師、オーディオマニア、銀塩カメラ、パソ通あがりで、しかもシスオペ、誌を書いていた、小学校では合唱部(^^;)。フライはちょっとやってやめたのが救いですか(^^;)。
これだけ読むと、かなりきてますね(^^;)。バリバリのオタクですよね。
さて、ＪＵＮさんに会ったことのないここの読者にお伝えしておきますけど、実物はまったくオタク系のカケラもありません。どっちかっていうとインテリ入った体育会系って感じですかね？
Posted by しん at 2005年5月 8日 14:59
たぬきさん＞
だからさ。オクサンの顔を見た瞬間に、男の旅は終わるわけですよ。これ以上、徹底的な終わり方はないと思うな(~_~;)。
Posted by ＪＵＮ at 2005年5月 7日 23:14
ほんと、かつて鮎バブル華やかなりし頃の、鮎プロたちのファッションてのは、ヤンキー路線でしたね。高松重春氏とか、サングラスというよりも、グラサンという感じで^_^;。
ぼく、鉄道ファンでもなんでもないのだけれど、あのキハ系というのは、何かちょっとした愛着があります。それから、九州ではすでに絶滅した夜行急行というやつ。昔、「かいもん」というのに何度か乗りました。通称、家出列車。夜中、長距離を移動するのに急行というのは、いいリズムだったのです。
そうそう。宮崎OLMの画像をアップしてみました。マイフォトの練習のつもりだったのだけれど、コメント入れるのが面倒ですね。
Posted by ＪＵＮ at 2005年5月 7日 20:24
もちろん僕も鉄っちゃんだったわけでありまして、対ＳＬではかなりギリギリ際どいところに居たりして興味を持ち始めたのは良いけどどんどん現役から退いていきましたから。
小坊、中坊の頃ですから遠征も出来ずにせいぜい夜行日帰りでね。
「乗ってるだけで幸せ」な感覚は今全くありません。多分。
苦痛以外の何者でもないかも。
ＮＨＫで関口ヒロシのせがれが鉄道を使って長い旅をする番組を友達の家で見て「俺なら３日で気が狂う」と思いましたね。
でもＪＵＮさん、最後が良く無い。
鉄道で始まった旅は鉄道で終わらせないと。
ましてや嫁さんが車で執着駅に来たんじゃ駄目っしょ？(^^;
お水な生活の管理人さんのコメント最高ですな。
FFISHを彷彿とさせてくれます。
自分のとこ更新しないでここで遊んでようかな。(^^ゞ
Posted by たぬき at 2005年5月 7日 19:21
鉄っちゃんって絶滅種だと思うと、そうでもないんですよね。
実は鉄ちゃんだった・・って人、けっこう居ました、僕の周り。
いや、「僕の周りには、実は鉄ちゃんだったという人がけっこう居ました」
が正しい言い回しか(^^;)。オンライン。
でも、ホントの鉄人は、景色とか風景とか、そんなものに目もくれずに、ひたすら車両に執着する人たちだとすると、まあＪＵＮさんはせいぜいこてっちゃんなんじゃないの(^^;)？ しかし、電車がカッコイイっていう感覚、僕にはないなぁ。ぜんぜん的はずれなこと書いてるのかな？
高速バスって乗ったことあります？ あれはつまらないものですよ。最近の高速道路は、騒音防止のためのフェンスが張られてたりして、そうなるともう最悪。壁が流れていくのしか見えないんですから。浮遊感があるといえばあるか(^^;)。
そこいくと、宮崎空港から串間に行くバスのなんと豊穣なことよ。あれ、景色良いですよね。お水な人間(^^;)には特に。
朔太郎に「空気枕のくちがねを緩めて、そっと息を抜いてみるおんな心」っていうフレーズがありますよね。仏蘭西かな？ これ、絶対電車ですよね。っていうか汽車。誌の中に電車を匂わせる描写ってあったかな？ 汽車がナントカを過ぎる時 ってありましたね。きっと。オンライン(^^;)。
ところで、ジャズファン、鉄道ファンももてないかも知れないけど、投げ釣りファンとか、ぶっこみファンってのももてなそうですぜ(^^;)。鮎師も似たようなモンでしょうね。鮎師のファッションって、ヤンキー路線ですもんね(^^;)。佐賀ならもてるか(^^;)。
Posted by しん at 2005年5月 7日 07:14
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