2005年6月 1日

DVD>チェット&ジェリー

チェットとジェリーのライブをDVDで観れる。そしてたぶん、ジェリー・リードの演奏中の映像というのは、今のところこの作品だけではないかと思われる。それだけで★5つなのだが、ちょっとだけ説明を。

グラミー賞を14回も受賞した”レジェンド”チェット・アトキンスはドク・ワトソン、マール・トラヴィスと並んで、カントリー系の(という言い方しかないのだが)、ギターの地平を拓いたスーパーギタリストの一人。そのミュートしたオルタネイトベースを土台にした流麗でお洒落なスタイルは、多くのプレイヤーに影響を与えつつ、誰もチェットそのものになろうとはしなかった。なることをあきらめた。ほどの、まあ、すごい人だったわけである。

カントリーミュージックとしては、もっともプログレッシブなスタイルをもつナッシュビルサウンドの創始者といってもいいと思う。ジェリー・リードは、日本風にいえば弟子筋にあたる。ハープのチャーリー・マッコイもそうだろう。

70年代、彼らを聴き始めた頃は、ナッシュビルの総帥・チェットと、若きエース、ジェリーという感じだったけれど、1992年のこのライブを観ていると、ジェリーもかつての名盤「カントリー・ピッキン」でみせたような切れ味の鋭さとか、正確無比の超絶テクといったものよりも、ぐっとリラックスして、気心の知れた叔父さんと甥っ子、のような感じになってきた。

ライブは、ゆるゆるの雰囲気で始まる。4曲目にジェリーが、今、釣りから帰ってきたという感じで登場し、こともあろうにディランの「くよくよするなよ」を始めた時、もう今宵はずっとゆるゆるなのだと覚悟した(笑)。

茶目っ気と洒落っ気。そして超絶テク。ものすごい二人が、ものすごいことを演っているのに、「どうだ。すごいだろう」というシーンが、ただの一瞬もない。これは、やはり、ものすごいことだろうと思う。

使用楽器は、チェットがエレガットとセミアコと、1曲だけ、フレットレス(と思われる)エレガット。ジェリーは、最後までエレガットだ。スチール弦にはない独特の温かみと粘りのあるサウンド。バック隊は二人で、ギターと時々、ハープが絡む。ベースもピアノもドラムもない。ギター4本使っているからといってすさまじいアンサンブルが展開されるわけでもない。(ように見えるが、やはりすさまじいことをやっている)。

2001年6月にチェット・アトキンスがこの世を去った今となっては、ジェリーのインスト盤の再発売を切望する。この人のインスト盤が一枚もないというのは、世界中のギタリスト、ギターファンにとってかなしいことだと思う。


『Chet Atkins & Jerry Reed In Concert at the Bottom Line』(1992)

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コメント

気に入るといいですね。ギターのインスト、以前に比べていろんな音源があるので楽しいです。

「GUITER MAN」別物だったんですか。
ま、でも大丈夫です。別の聞いてみます。
ジャケットは同じだったようですが。

う………。Joe's(ジョー)さん、ごめん。

もし、ぼくのを読んでジェリーの『GUITAR MAN』を買われたのでしたら、謝らなくてはなりません。あの『GUITAR MAN』と、ぼくが探し求めていた『ギター・マン』とは、同名ですがまったく別のアルバムのようです。

『GUITAR MAN』の方に曲名が入っていなかったので、当然、同じものだろうと思って注文したのですが、その後、曲名がわかりました。キャンセルがきくなら、キャンセルを(^_^;)。

あれま、Joe's(ジョー)さん、おひさしぶりです。
CD、買っちゃったんですね(^_^;)。

ジェリー・リードは、ほんとにギターがいいのですけど、
インスト盤がなくて、今、売っているのは、
ほとんどカントリーのボーカル曲ですので、
ちょっと聴きには、カントリーそのものに感じるかもしれません。

インスト盤、出るといいのですけどね。
ご紹介したDVDもいいですよ。

あと、たしかドク・ワトソンとチェットが二人でやってる盤が
あったかと思います。もしあれば、これもおすすめです。

JUNさん、こんにちは。
文章を読んでいて、無性にCDが欲しくなり、ジェリー・リードとチョット・アトキンスの「ギター・マン」をアマゾンに注文しました。届くのが楽しみであります。
カメラといい、マーチンのギターといい、青年時代の憧憬をいま力一杯満足させている。そんな貴兄の衝動性はよく分かります。

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