2005年6月21日

歯医者に行くこと

治療途中で放置してあったトガメが出て、上の左前歯が猛烈に痛みだした。

どのくらい痛いかというと、うんうんうなるほど痛い。夜、寝ていて痛みで目が覚め、よろよろと階段を降りてオクサンの寝室へ行き(知り合って長いが、まだ同じ部屋で寝たことがない)、「チンツウザイ、クダサイ」と泣きすがるほど痛い。すると見かねたムスメが、「はいはい、あたしが出すから」と起きてきて薬を差し出すほど痛い。

昼間は、痛いよ痛いよといいながら、オクサンの後ろをついてまわる。その間、ずっと、うなりどうしだ。しばらく薬で抑えていたのだが、おりあしく日曜日の朝に痛みがピークに達した。前歯が、熱をもって十倍くらいに腫れ上がったようで、息を吐いても吸っても痛い。痛いと思うともっと痛い。じっとしていると、痛みに意識が集中するので、よけいに痛い。しょうがないから、うろうろ歩き、空を見上げると、空の青さまで歯に響く。

ようやく月曜日となり、朝、歯医者に予約を入れると午後3時からだという。その時は痛みもおさまっていたのだが、人の心は弱いものである。もうすぐ病院に行けるという気のゆるみから、午後1時にまた猛烈に痛みだした。ソファに寝転がってうんうんいいながら耐え、ひいひいいいながら自転車を漕ぐと、今度は風が歯に響いた。

歯医者に入ると、さすがにプロだ。じっとこらえていたのに「痛みが出てるみたいですから、お熱はかりましょう」と体温計を出してきた。そんなことより早く治療室へ入れてくれ。麻酔を打ってくれ。

7番治療室担当の先生は(たしか15くらい部屋がある)、若くて賢そうな女医さんであった。このような行き場のない痛みにさいなまれている時に、これは運がよい。椅子が後ろに倒れて美容室状態になると、もう私、なんでもいうこと聞きますから、どうにかしてくだい。どうにでもしてくださいという気になる。大安心の境地である。親鸞がいった他力本願とはこのことだ。

「とりあえず痛みからなんとかしてくらはい」と、息もタエダエに訴えると、「はいはい」と歯ぐきに表面麻酔を塗り、続いて麻酔注射を打ってくれた。吾妻ひでお風にいえば「テクノロジーばんざい」である。嘘のように痛みが消え、もう後の作業(歯の蓋を取り、中を消毒するだけ)は、マッサージでも受けているような気軽さであった。

いやー、歯医者ってホントにいいものですね。と、あほなことを考えていた。

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