2007年9月20日

D-18GEの弦について

ギターの弦、何にするかなあと考える時、メーカーや型番の前に、まずブロンズ弦と、フォスファー・ブロンズ弦のどちらにするか、という話になるんだろうと思うわけです。

大体、昔はフォスファー弦なんて見たことがなかったんだけど、気づかなかっただけだったのかな。マーチン弦といえば、今でいう無印のブロンズの「あの音」だったし、30年前に1200円くらいもしたから買えもしなかった。今では500円もしないけど。

今、楽器屋の店頭に並んでいるのは、フォスファー7割、ブロンズ3割。あるいはフォスファー8割、ブロンズ2割といった具合で、最近の若い衆はアコースティックギターの音といえば、フォスファー弦の音で認識しているんだろう。ぼくらの原体験にあるのは、ブロンズ弦であって、案外、この差は大きいのではないかなと思う。

ちなみにフォスファーとは、リンのこと。銅とスズの合金である「ブロンズ」に、少量のリンが入ると「フォスファー・ブロンズ」となり、音はずいぶんちがう。ブロンズは、ぼくらにとっては「普通の」ギターの音なんだけど、フォスファーは、それに華やか、きらびやか、シャリシャリ、きらきら、倍音、艶、といった傾向の要素が加わった音になる。

特に張ったばかりの時は、このフォスファー特有の付帯音が、うるさくて仕方がないのだけど、最近のヒトは、これを「いい音」として認識しているのかもしれない。ぼくは三日は経たないと、ギターらしい音にはならないと感じる。ラグタイムみたいな曲だと、すっかりへばったくらいの弦が一番いい。そもそも、そんな曲にはまっている間は、フォスファーは使わないだろうけど。

マーチンD-18GEを買った時は、こいつのサイド・バック板がマホガニーであることから「マホはブロンズ」という一般原則?に従って、マーチンのSP+らしきブロンズ弦が張ってあった。いい音だったと思う。次に、GHSのシグネチャーブロンズLJ-30Lを張ってみた。

なかなか高価で、入手もむずかしい弦なのだけど、幸い、サウンドハウスに在庫があった。ここは、マニアな弦も直輸入で入れてくれたりして、ありがたいお店だと思う。

音は、なんというのか、屈託なく、それでいてある深みを備えつつ「ポーン」と鳴る。普通に、素直に、ブロンズの音で、かつスケールの大きな音がする。なんだか本格派といった感じになる。人に媚びる音ではない。

ギターの本来の鳴りを邪魔せずに、いいところを引き出そうと、ワタシは弦として真っ正直に生きてきました。これからも生きていきます。みたいな音である。文句ない。のだけど、2弦が硬くて、チョーキングがむずかしかった。この時点で、ANJIしか弾けないぼくには不向きだとわかった。残念だ。

「マホにはブロンズ」は、確かに一理ある話ではあるのだけれど、D-18GEの場合、表面板が特殊であるという事情がある。アディロンダック・スプルースという、ニューヨーク州北部の山から伐り出された、かなり希少な材を使っていて、こいつは普通のスプルースよりも明るくて軽く、くっきりとした音を出す感じがする。

そうであれば、フォスファーもいけるのではないかと考えて、数日前にマーキスSP(MSP-2100)を張ってみた。「おお」という感じである。フィンガーのうまい人なら、ブロンズの方がいいかもしれないけれど、なんでもやって、人にウケようなどというヨコシマな考えのある人なら(おれだ)、こりゃもうフォスファーに転んでも仕方あるまい、というような艶のある音になった。

D-18GEにおけるブロンズとフォスファーの相性問題の目安としては、今のところ、本格派、ストイック、フィンガー、本質追求型のブロンズ、万能型、フォーク系、人々に伝わりやすい、人に喜んでもらえるフォスファーと、漠然と考えているのだが、これであっているのかどうかはサダカではない。

VGのギターが主力だった頃は、高級弦を試行錯誤したあげくに、アーニーボールの500円のブロンズに落ち着いていた。あれは、相当いい弦だったと思う。今、マーチンに張っても十分に使えるはず。

一時、高寿命が売りのエリクサーのコーティング弦を山ほど買い込んだけれど(高かった)、こいつはすぐに飽きた。どのギターに張ってもエリクサーの音しかしない。しかも、ちゃらちゃらするだけで、そんなにいい音ではないし、コーティングの滑りがいいので、指がフィンガーボードの上で、よく滑って転んだりした。

しかも、寿命が長いので、変えるタイミングがなかなかこない。というか、変えても音があまり変わらない(T_T)。頭にきて、人に全部あげた。あんなにせいせいしたことはない。フォーク飲み屋なんかで、客に弾かせるギターに張るにはいいんだろうけど。

SヤイリのYD-305を弾いていた時は、Dアンジェリコだった。硬くて弾きにくかったけど、音は迫力があった。あれでANJI も弾いていたけど、もうあの弦を(たぶんミディアム)、弾きこなせるパワーは、ぼくの指にはなさそうだ。右はともかく、左の薬指の腱を痛めて、この一本だけお年寄りのようによろよろしているんだもんなあ。

弦探しの旅は、まだまだ続く。

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.fishing-forum.org/mt4/mt-tb.cgi/2212

コメントする