本>文楽の「あばらかべっそん」

「あばらかべっそん」(桂文楽 旺文社文庫 1980)。あまりにも有名な文楽の芸談エッセイなのだが、ずっと絶版になっていて、ようやく読むことができた。 生い立ちから横浜の薄荷問屋での奉公時代、桂小南への弟子入り、後の師匠である五代目左

本>ガダラの豚

『ガダラの豚』(中島らも 集英社文庫)。 なんとなく読みそびれていた。『今夜すべてのバーで』で、この人の小説家としての力量にたまげたものだけれど、この本では小説家以前に、もの書きとしての圧倒的な力とか、構成力、世界や人間への認識の深

本>寄席はるあき

『寄席はるあき』(安藤鶴夫著 河出文庫 2006)。68年に刊行されたものが、今年になって文庫化。やっぱ、落語ブームとやらはほんとの話らしい。 安藤鶴夫は直木賞作家だということだけど、子供の頃からバアヤに負われて寄席に通った寄席マニ

本>岩城宏之「森のうた」「フィルハーモニーの風景」

なんか岩城さんづいちゃったようで、2冊読んだ。この人は文章も天才的だという話は聞いていたけれど、これまで読んでなかった。 「森のうた」は、芸大時代の山本直純との、はちゃめちゃ青春記。戦後さほどたっていない時代、芸大の木造校舎を舞台に

黒鉄ヒロシを読む

黒鉄ヒロシの『赤兵衛』と『清水の次郎長(上/下)』を読む。このヒトの洞察力の深さというのは、志ん生とか芥川なみなので、次郎長は重たくて仕方ない。赤兵衛とセットで読まないと、どうにかなる。幕末の暗殺ものは、もっと暗くて重いらしいが、別

本>マネー・ボール

『マネー・ボール』(マイケル・ルイス著/ランダムハウス講談社) オークランド・アスレチックスのゼネラルマネージャー、ビリー・ビーンのお話である。ひさしぶりにわくわくする面白い本に出会った。 戦績的には名門といえるチームでありながら、

本>ホーンブロワーその後

フォレスターの『ホーンブロワー』、あれから一気に順を追って5巻まで読んだ。『海軍士官候補生(1)』『スペイン要塞を撃滅せよ(2)』『砲艦ホットスパー(3)』『トルコ沖の砲煙(4)』『パナマの死闘(5)』という流れ。 全10巻なのだけ

本>ホーンブロワー・シリーズ

夏になると、ベッドで海の本が読みたくなる。いわゆる海洋冒険小説が妙に恋しい。『女王陛下のユリシーズ号』や『孤独の海』、『駆逐艦キーリング』も、たしか夏に読んだ。 で、以前からタイトルだけは知っていた『ホーンブロワー・シリーズ』を読み

本>失踪日記

失踪したいくらい忙しいので、ここに逃げてきた。たいした酒飲みでなくて幸いである。 吾妻ひでおにいかれていたのは、1978年頃から数年間。『吾妻ひでおに花束を』(1979年)も、当然持っていた。『不条理日記』と『メチルメタフィジーク』

本>赤塚不二夫1000ページ

和田誠責任編集「赤塚不二夫1000ページ」である。1975年に発行されたベスト版なのだが、いいタイミングで出されたとしかいいようがない。それ以降の赤塚さんは・・・なのだから。 ギャグ漫画は時代に鋭く反応しながら、その時代その時代の笑

本>下落合シネマ酔館

こないだ浦安のやまさき十三さんを訪ねた時、この本をもらった。十三さんと赤塚不二夫の映画に関するスラプスティックな対談集である。 やまさき十三さんは、『釣りバカ日誌』の原作者であり、ちょっとジャック・ニコルソンに似た渋い風貌のお方であ