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[1211] マアジ>種、亜種、型、系群などなど 
2002/6/14 (金) 07:31:59 小西英人
▼ 西潟正人さん

 アジ科は難しい部類群なんですが、なかでもマアジ属は難物中の難物です。その味の違いとか、形の違いとか、昔から研究者は知っているのですが、詳しく研究すると、形態の計数形質の差異があまりないのです。

 ここで、簡単に「種」って何かと書きますね。ほんと簡単ですよ。これ生物学上の大命題で、これだけで大部の教科書が書けるくらいなのですから…。

 種って、いまの生物学では定義できないのです。だから存在しないのです。

 なんて、1行ですませたいけど、そんなこと言っていたら、図鑑なんか存在しなくなるもんな。仕方がないから、とりあえず、E.W.マイア(1940,1969)による生物学的種概念(biological species concept)でいこうということになっています。

 これは、相互に交配しあい、かつ他のそうした集合体から生殖的に隔離されている自然集団の集合体を「種」とするのです。生殖的隔離があるかないか…。一発やって子供ができるかできないか…で判断するのですね。もちろん子供ができれば同種、できなければ異種です。

 しかし育種などで、無理に交配することは可能です。これはもちろん同種とは判定しません。そして、生殖的隔離があるかないかの判定をするなど、自然界では無理です。マハタとマハタモドキなど、どう判定するんでしょう。

 それで形態学などで推定するという形をとってきたのです。近年では、核DNAや、ミトコンドリアDNAを使って、遺伝子から推定することも可能になってきました。もちろん、産卵期とか、生態とか、分布とかを気にするのは、生殖隔離の推定につながるからです。

 とにかくマイアの論文の古さを見てください。はじめは戦前、次でも1969年、これで種など説明できないのはわかっていても、種の説明をもとめられると、これをあげざるを得ないのです。その無理が、わかっているから、分類屋は説明しないのではないかと疑ってしまいます。たぶん、みなさんは、マイアの「生物学的種概念」とか「生殖隔離」とか聞いたことがないと思うのです、「種」は聞いたことがあってもね。

 ある分類屋が、酒をのみながら、「俺の仕事は、いじいじいじいじ種を分けていって、記述していって、死ぬときに、ぜんぶほっぽりなげて、わっはっは、種なんてないんだ。ぜんぶ無意味だったんだと大笑いしてやることだ」なんて言っていましたっけ。矛盾だらけなんですよね。矛盾を証明するために積み上げているようなところがあるのです。

 ああ、そうそう。マアジ、マアジ。

 マアジは南日本を中心に日本近海にいますが、おもな地方系群だけでも東シナ海の九州北部群、東シナ海中部群、東シナ海南部群、九州南方域群、高知沖群、関東伊豆付近群、瀬戸内海群、日本海北部群などがあります。

 地方系群とは、同じ遺伝子プールを共有するグループで、同じ産卵場で、同じ生活史を持つグループです。系群が離れて長くなり、形態に差異が生じるけれども、生殖的な隔離はないと判断されると、亜種とされます。形態に差異が生じ、生殖的な隔離ができると種と判断され、これらは、種分化のメカニズムのひとつではないかと考えられていますが、それを証明した人はいません。

 とにかく、マアジは系群が多いのです。これらのうち、東シナ海の3系群は、よく研究されているのですが、産卵期が違い、鱗の隆起線の乱れの位置、耳石の透明帯の幅、臀鰭軟条数に違いが見られるといいます。

 それらの系群のなかにそれぞれ、「きあじ型」と「くろあじ型」があります。
きあじは黄鰺で、体高が高く、背部が淡黄褐色で多くの褐色横帯があって、内湾や沿岸の瀬に定着する瀬付き群だとされています。くろあじは黒鰺で、体高が低く、背部はほぼ一様に暗黒色で、沖合回遊群だとされています。くろあじの方が大きくなると言われています。

 若狭湾では、「きあじ」は周年カタクチイワシを主食として、「くろあじ」は夏に甲殻類、冬にコウイカ類を主食とするそうです。生態の違いが食性の違いになっているのですね。

 さてさて、長くなりました。まとめます。

 西潟さんの見ているマアジは関東伊豆付近群、JUNさんのは九州南方域群。どちらも、きあじ、くろあじタイプは含まれています。少なくとも、この場合、系群が違っても存在するタイプは、種内変異なのでしょうね。

 西潟さんのいう味の違いは、同種でもでます。生活が違うのですから食べ物が違う可能性があります。それならば味も違ってくるでしょう。この生活パターンの違う遺伝子が遺伝子プールにあり、それがメンデル遺伝するのならば、これは同種でしょう。

 と簡単に書きましたが、マアジの中で「きあじ」「くろあじ」に分かれるメカニズムは、いまのところ謎です。

 もうひとつ別の話を書いておきましょう。

 西潟さん、『新さかな大図鑑』の158ページ、ニュージーランドマアジを見てください。これは1983年に形態的に差異があるとしてマアジと別種にされたのですが、1988年に遺伝的にみて亜種のレベルであるという研究結果が発表されています。

 これ、ほんと形態的に見分けはなかなかつきません。

 アジ科マアジ属の難しいところです。

                           英人
ps
 ややこしく書いたね。分からないところは聞いてね。