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[13] 変異に潜む謎とおもしろさ 
2002/1/25 (金) 06:33:28 小西英人
▼ 朱理さん

 はじめまして。

 魚類図鑑って、基本的にいえば、教科書であり、その種の典型的な個体を載せます。しかし、人も魚も同じで、個性的なのですよね。すごく変異の幅があります。この変異は研究者さえ悩ませて、その変異の中に別種が潜んでいたり、進化の謎が隠されていたりして、それがまた、おもしろいこともあるのです。

 また図鑑用に写真を撮ると、光線の具合や状況によって、まったく印象が違ったりします。写真によって同定するのは、ほんとうに難しいのです。

 年末に、ある釣り人から、オキナメジナに似ているけど白くて変な魚だという写真が送られてきて、ぼくはイサキ科のコショウダイ属で、クロコショウダイで、ほぼ間違いないと、その魚を見たこともないのに思いました。ただ、写真では決め手がなかったので、京都大学総合博物館の中坊徹次博士のところに、現物を送るようにお願いしました。「ははは。英さん、エリアカコショウダイやったで」と中坊さんから連絡があり、ぼくは赤くなって2002年は写真だけ見て、へなま同定はしないと、かたく誓ったのでした。やはり写真同定は難しいのです。

 それでも、朱理さんが、おっしゃるように、毒があるか、食べられるかなど、同定は必要ですよね。基本的にフグをのぞいて食べられない魚は、ほとんどないのですが、その魚の情報は知りたいものです。

 静岡って、黒潮の影響で、けっこう、いろいろな魚が入り、けっこう、いろいろな稚魚がはいります。稚魚の見分けは、ぼく苦手ですが、朱理さんからの魚の情報、どんな魚がくるか、ぼくも楽しみにしていますね。

                          英人
ps
 ぼくのつくった『新さかな大図鑑』は、典型的な個体だけではなく、変異をいっぱいあつかった、写真変異図鑑とでもいうようなものです。なぜ、そういう図鑑をつくったかということを書いた、快投乱麻がありますので、転載しておきますね。長くなってごめん。

■快投乱麻Vol.29■週刊釣りサンデー2000年9月3日号から
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魚に遊ぶ。新世紀の釣りは楽しく


間奏曲B
『釣魚図鑑』で書斎におこもりだぞの巻


■三十歳で『さかな大図鑑』を創った。四十歳で『新さかな大図鑑』を創った。そして四十三歳で『釣魚検索』を創り、四十五歳のいま『釣魚図鑑』を創ろうとしている。これほど図鑑にのめりこむようになるなど、夢にも思っていなかった…。
       ■
■釣り人は、「研究者は何も知らない」といいたがる。あれは「専門ばか」であり専門以外は何も知らないといいたがる。釣り人の、ほんとうに欲しい情報を教えてくれないという「もどかしさ」もあるのだろうか。
       ■
■生意気な釣り人、ぼくの頭をがつんと叩いてくれたのが『さかな大図鑑』だった。いや当時京都大学理学部付属瀬戸臨海実験所にいた荒賀忠一さんであった。右も左もわからない素人のぼくに、気長に懇切に魚の「いろは」を教えていただいた。
■魚のことについて「知った」といえるほど知っている人はいない。魚は「永遠の謎」だ。たとえばクロダイ、これほど身近な魚であっても、生態はわからないことの方が多い。海の中でどんな産卵をするのか、見た人は誰もいないのだ。
■知るための第一歩は、情報を整理して名前を知ること。それが魚類図鑑の役目なのだ。そんな「第一歩」さえ、ままならないのが「魚」なのである。
       ■
■かなり苦労したけれど『さかな大図鑑』はできあがった。六百五十七種の魚を、すべて写真でいれて、釣り人の好きな魚を大きく、嫌いな魚は小さくあつかうという「変てこ」な魚類図鑑を懸命に創ったのだった。
■大反響であった。うれしかった。ぼくの創ったもので、これほど「釣り人」が受け入れてくれたものもない。発売直後から増刷増刷増刷で、印刷を担当した図書印刷から「月刊誌」のようですなあと喜ばれた。
■二十刷までいき、十二万部を超える魚類図鑑としては日本の出版界でも空前のヒットとなった。もちろん売れたのは嬉しかったけれども、これだけ支えてくれた「釣り人」の熱い意気を実感でき編集者冥利、そして釣り人冥利につきると思った。
       ■
■図鑑は生きている。いまだに『さかな大図鑑』を見て問い合わせを受ける。嬉しくはあるのだが、さすがに「古く」なり、内容的にも無理がある。魚類図鑑の分類学的な知識は「変わらない」と思われがちだが、なんのなんの日進月歩で変わる。
■そこで『新さかな大図鑑』を企画した。ものを創ったことがある人はわかると思うが、「産みの苦しみ」というのもきついけれど、「パート2の苦しみ」というのは、もっときつい。
■悩みに悩んだ。荒賀さん、千葉県立中央博物館の望月賢二さん、京都大学の中坊徹次さん。研究者たちと何度も何度も議論し、とにかく『さかな大図鑑』でできなかった、細かいところをリファインするという地道な作戦にでた。写真を徹底的に洗いなおした。何度も何度もやった。成長論文をすべてあたり、成長表をつくるような作業もした。そのうちに見えてきたのは釣り人の苦手な「検索」をいれようということと種の「はば」を、つまり「変異」を写真で示せないかということだった。
■それは「遊び」からはじまった。膨大な写真の整理をしながら、ぼくと、中坊さんは、いつも遊んでいた。たとえばクロダイとキチヌの写真を似た形態の順に並べると、境界が消えてしまう。キチヌのようなクロダイもいれば、クロダイのようなキチヌもいる。典型的なクロダイから典型的なキチヌまで、ずらりと見事に並んでしまう。
■「おもろい、おもろい」
■いつも、ふたりで大騒ぎしていた。最終段階になったとき、これを目玉にしませんかと研究者に提案した。変異をずらりと並べる図鑑を創るのである。
■図鑑とは「教科書」であり、典型的な魚を示すのが筋だ。そんな「人心を惑わす」ようなことをしてはいけない…。荒賀さんのきついお叱りである。
■「悪戯」を叱られた小僧っ子のように「しゅん」となった。しかしアイデアを忘れられなくて、クロダイで二十四点、キチヌで十六点の写真をいれた「変異図鑑」とでもいうような試作品を内緒で創り、その色校正を研究者にいきなり見せた。
■「おもしろいやんか!」
■あのときの荒賀さんのぱっと輝いた笑顔を忘れない。八百四十五種の魚を千七百四十七点の写真で「表現」した『新さかな大図鑑』誕生の瞬間である。
■幸せなことに「パート2」も釣り人は受け入れてくれた。五年間で七刷、七万部を超えた。怪物『さかな大図鑑』が「みすぼらしく」見え、絶版させるのに十分のパワーがあった。
■一年以上、寝食を忘れ書斎にこもり写真と文献を渉猟し、釣りにも行けなかったが釣り以上に「エキサイティングな釣り」を、経験させてくれた。
       ■
■次に中坊さんと練った悪戯、「悪巧み」が『釣魚検索』だ。『週刊釣りサンデー』に『似たモン魚譜』というカラー連載をし『磯釣りスペシャル』に『ウオっち』という連載をしながら議論し研究した。世界でも初めてだと思われる写真による「キー」だけで「落として」いける写真図鑑である。これも苦しんだけど、中坊さんと、がっぷり四つに組ませていただき知的な興奮があった。これほど独創的な図鑑も珍しいと思うが、またもや受け入れてくれ十万部を超えてしまった。ぼくはほんとうに幸せな「釣り人」である。
       ■
■『釣魚検索』は徹底的に、そぎ落とした。六百二十五種の魚を同列にあつかい、見開きに一覧し、写真のキーで落とす。名前を知るという図鑑本来の目的に特化させた。いい物を安く。普及価格にする策でもあった。解説は『新さかな大図鑑』を見てもらえばいいと割り切り、それのページを示したのだ。
■これでいいのだろうが、釣り人が知っていなけりゃ「恥ずかしい」魚の解説を「気楽に」読みたいという声もあった。解説と、釣り人の重要な魚の「似たモン」の見分けに割り切った図鑑を創ろうと思いたった。『磯釣りスペシャル』に連載している『ぎょぎょ事典』と『ちぬ倶楽部』に連載していた『棘鯛の系譜』もまとめて、見て読んで楽しめる魚類図鑑を創ろう。
       ■
■釣り人としての、ぼくのライフワークは「釣り人」のみなさんが教えてくれた。新世紀を遊べる図鑑を創ろうと思う。これからまた「おこもり」である。しかし、これは、ぼくの釣り以上の「釣り」なのである。