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[1558] 金星の夢>シロギス>『怪投乱麻』で書きました 
2002/7/10 (水) 05:44:54 小西英人
 ほんと、ぼくは観察眼がなかったと思います。

 シロギスに金星を背負っているものがいるとは知らなかった。

 みなさんのおかげで、いろいろ見えかけています。また、みなさんも、いろいろ見はじめたようです。

 それが、嬉しい。

 【さかなBBS】をたちあげた、甲斐があるというものです。ぼくらの魚は、ぼくらがしっかりと見ていきたいと思います。

 思いこみを排して、虚心に魚を見つめていきたいと思っています。

 『怪投乱麻』にまとめてみました。

                          英人


『怪投乱麻』Vol.74

■小西英人■週刊釣りサンデー7月28日号より転載
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金星の夢。白鱚の秘密に想い馳す


鳥取県
宝木海岸でわが友を見つめたぞの巻


■影よりほかに友はなし…。熱気がゆらゆらゆらめいている砂の上にいた。梅雨の晴れ間…日本がいちばん暑いとき。美しい砂色の砂が、目映くて熱帯の珊瑚礁の白砂のように見える。
■びしゅっ!
■後ろに錘を置いても、砂に筋をつけるだけ鉤に引っかかるようなごみも藻もない。静かで暑くて壮絶に美しい砂の中で、体の周りを回すように竿を思い切り振る。竿鳴りが心地よい。
■ぴしっ!
■沖で錘の吸いこまれる鋭くて小さな音がした。よしよし。
■竿を低く構え、白い砂底を夢想しながら竿先を引く。このごろリーリングで引くのが数釣りの先鋭だろうけど、竿先を見ながら、スピードを鱚に合わせていくのも楽しい。慌てることはない。何度でも引きながら鱚に聞くとよい。スピードや引き方は鱚がそっと教えてくれる。
■手前のかけあがり、ごごごごごごご、幽かな反応が伝わる。いたいた友がいた。影よりほかに友はいた。海の中に爽やかな友、砂色のシロギスがいた。いま鳥取県の宝木海岸にいる。
       ■
■それは広島県阿多田島沖で釣れた「金星きす」で始まった。それはインターネット【さかなBBS】で六月十六日二十二時七分十七秒、「シロギスの背中に?」という、岡山のKOUJIさんの投稿から始まった。引用しよう。「 釣ったキスをバケツに泳がせてて気が付いたんですが、背中に金星が有る奴が居ました。黄色じゃなくて金色に輝いてました。今まで見た事無いか、気が付いてないか、記憶に無いんですが、これは割と見られるんでしょうか?」添えられた写真の鱚は、背中に金星を背負って泳いでいたのだった。
       ■
■日本産キス科キス属魚類って何種いるかご存じだろうか?
■シロギスとアオギスとホシギスとモトギスとこたえる貴兄、なかなかの通だ。日本産キス科魚類は四種だとされていたもんね。それが二十世紀だった。
■二十一世紀になってすぐ、二〇〇一年一月二十日に、日本産第五のキス科キス属が報告されたのは知っていただろうか。
■KOUJIさん投稿の十分四十一秒後にアップした、ぼくの「アトクギス>まさか???」という返信から引用してみよう。
       ■
▼ KOUJIさん。
 アトクギスってご存じ?
 2000年くらいから西表島で見られるようになり2001年に『伊豆海洋公園通信』でアトクギスという和名が提唱された、シロギス、アオギス、ホシギス、モトギスに次ぐ日本産第五の鱚です。このアトクギス、フィリピン島からスマトラ島、東はソロモン諸島までの島嶼部で知られている鱚で特徴は…
 ●前鼻孔から吻端に向かって1暗褐色縦線がある。
 ●体背部に背鰭基底に沿って4対、淡色斑(生時に白)があり、最初の淡色斑は第1背鰭起部付近、2番目は第1背鰭第7〜8棘基部付近、3番目は第2背鰭第3軟条基部付近、4番目は第2背鰭第11軟条基部付近に位置する…というものです。
 KOUJIさんの「金星」まさにこのアトクギスの淡色斑の位置と合いますね。なんでやろ?
 ぼく、シロギスでは、こういう淡色斑を知りません。
 しかし、日本では西表島で発見されて報告されたばかりのアトクギスが、瀬戸内まで勢力を伸ばしているとは思えないし、なんなんでしょう? よくわからないけど、凄いな! 英人
       ■
■『伊豆海洋公園通信』というのは写真による日本産全種の魚類図鑑『日本産魚類大図鑑』を完成させた水中カメラマンの巨人、益田一さんの益田海洋プロダクションが発行している雑誌で、和文の学術雑誌として機能し、海水魚の日本初記録種の記載や、標準和名の提唱など、研究者にも、マニアにも欠かせない雑誌のひとつだ。二〇〇一年一月二十日に発行された二月号に「西表島で採集された日本初記録のアトクギス(新称)」という鈴木寿之、瀬能宏、細川正富の三氏の論文が載った。これに記載されたアトクギスの淡色斑の位置と一緒だったのだ。ぼくは、すぐに鈴木寿之さんに画像をメールし、「点の位置や大きさはアトクギスに似ていますね」というコメントをいただいた。しかし、背中の写真だけではどうにもならなかった。
■六月二十七日。備後のたっちゃんから鳥取の宝木海岸で背中に金星のあるきすが釣れたと報告があり、二十九日、KOUJIさんが宝木海岸に走り、背中に金星があるのを確認して京都大学総合博物館の中坊徹次教授に送った。七月二日には「残念ながらシロギスです。変異ですらありません。個体はすべて小さく、生きているときに金星がでるのでしょう」という中坊教授からのメールがはいった。鈴木さんからも宝木海岸の「金星きす」の写真を見て、アトクギスとは違うとメールが来た。アトクギスは、英名をビッグ・スケール・シラゴ、大鱗鱚と呼ばれるように、シロギスより鱗があらいのだ。研究者の先生たちの素早い対応と【さかなBBS】のみんなの行動力、そしてインターネット特有の時間の早さでとりあえず、金星きすはシロギスだとスピード解決を見た。
       ■
■ぼくは情けなかった。わが友シロギスを見ていなかった。友の背に金星が輝いているのなんて、ほんと知らなかった。
■ぼくは嬉しかった。全国の釣り人から【さかなBBS】に金星きすの情報が寄せられている。みんなでシロギスを、まじまじ見つめだしたのだ。日本海のほとんどのシロギス、また九州などでも金星を背負っているという。金の斑点は、はっきりした物は少なく。ふつうぼんやりしている。しかし、いちど斑点を見ると、それが薄くても心眼で認識できる。人の、こういう斑紋認識センサーの感度の良さに驚く。死ぬと消える。バケツで泳がすと光の角度によってはっきり見える。興奮斑かもしれないし、幼魚斑かもしれないし、個体変異かもしれないし、変異かもしれない。いま鈴木さんところに標本を送って調査してもらっている。なんらかかの結論がでるかもしれないし、謎として残るかもしれない。いいじゃないか。結論などでなくても、みんなでシロギスを見つめることが重要なことなのだ。
       ■
 ■宝木海岸で足下のバケツにシロギスを泳がせ、きらりきらり光る背の金星を見つめながら釣っている。金星はなにを訴えるのか、五官を澄まし、ただ感じようとしていた。これほど濃密な釣りは久しぶりだった。