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[162] 魚あれこれ>色覚について 
2002/2/6 (水) 12:53:24 小西英人
 視覚の次は色覚です。

 この色覚は『釣魚図鑑』を出版した後で『磯釣りスペシャル』に書いたので、『釣魚図鑑』には載せていません。

                   英人


■『磯釣りスペシャル』2001年1月号より転載
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魚あれこれ
ぎょぎょ事典 番外

それは青い世界で虹を追っている! のかもしれない。
色覚■

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■金がいいか、銀がいいか、赤がいいか、黒がいいかと話題になることがある。鉤のことである。石鯛鉤は、伝統的に黒がいいと思っている。サザエの身の黒い部分にまぎれるからだろうか。たまに金の石鯛鉤を見ると驚く。しかし、妖しく光る鉤先を見ていると、これがいいようにも思ったりもする。ぐれ鉤は金が多いだろう。赤鉤があったりするとオキアミがくっきり赤く見えていいか…と心惹かれたりする。ルアーの色などになると、もっと色々あって、釣り師も色々悩む。しかし肝心なことを忘れてはいないだろうか。
■魚は色を見分けるのか?
       ■
■青い珊瑚礁とか、エメラルドグリーンの海とかいう。ぱあっと色のイメージが頭にひろがると思う。しかし、海の水を汲んで見ても色など着いていない。もしほんとうに青かったり緑だったら気持ち悪いだろう。その海域によりプランクトンなどの光反射で微妙に固有の色はあるが、なぜ海は青いのだろう。
■海中に入った光は散乱して一部が空中にでてくる。波長が短いほどよく散乱するので、青い光ほど散乱して海から飛びだしてくる。空中から見て海が青いのはそのためである。光の波長は長くなると赤くなり赤外線はヒトには見えなくなる。また短くなると青くなり紫外線はヒトには見えなくなる。水はまた波長の長い光を、より吸収する性質がある。いいかえれば海は青い光を通すフィルターである。海中に潜るとまわりが青くなるのはそのためで、水深が30bにもなると「赤」は「赤」ではなくなる。魚とは、そういう特殊な色の環境に棲んでいる。
■青信号とか、青葉とかいうけど、信号は緑であるし、青い葉などもしあると気持ちが悪いだろう。それでも言葉に違和感はない。色というのは、ある意味非常に心理学的な問題である。日本人男性のおよそ5l、女性の0・2lに赤緑色覚異常があるという。色盲などと呼ばれ色が分からないという偏見もあったが、色覚異常は色の感じ方が違う人が大半であって、その感じ方の説明は不可能だ。信号機の赤、青、黄は色覚異常であっても識別できる。ぼくの「青」とあなたの「青」が同じかどうか誰にも分からない。事実、ヒトの赤色を感じる遺伝子に多型があり、ある人は557ナノメーターの波長を赤と感じて、ある人は552ナノメーターという、どちらかといえば橙色を赤と感じているのだという。文字通り、色々な色の「夕陽」をわれわれは、それぞれ見ているのかもしれない。共通した色なんてないのかもしれない。たぶん「色」とは、そういう非常に曖昧な「もの」なのであろう。
       ■
■魚に色覚があると初めて証明したのは、1925年、フリッシュで、コイ科の淡水魚に一定の色に対して褒賞を与えるという学習実験から、色彩を見分ける能力があることが分かった。網膜には桿体と錐体という二種類の光の受容器(視細胞)があり錐体が色彩視に関わっているのだろうと古くから推定されていたが、1965年にマークスが金魚の錐体に3種あることを証明した。青、赤、緑の三原色に対応していた。コイの網膜から錐体の電位記録をとるのに成功したのは富田で、1965年だった。視細胞につながった水平細胞から記録される緩電位は1953年にスヴェティヒンが発見し、頭文字をとってS電位という。このS電位に必ず負の方向に応答するものがあり、これは量的な変化を記録したものでL型(明暗型)と呼ばれる。もうひとつ正と負の両方向に応答するものがあり、これは刺激の質を記録していると思われC型(色覚型)と呼ばれる。L型は3種、C型は4種のパターンがあるが、それが何を意味するのか詳しいことは分かっていない。とにかくL型しか記録されなければ色覚はなくて、C型がひとつでも検出されれば色覚がありC型が多ければ色彩感覚が優れているといわれている。
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■S電位のL型(明暗型)とC型(色覚型)の出現頻度(百分率)を『魚類生理学』から少し引用してみよう。
■ネコザメ、ホシザメ、ドチザメ、オオセなどの軟骨魚類はL型しか記録されない。チダイ、マダイ、クロダイもL型しか記録されていない。色覚はないようだ。タイ科魚類に色覚がないというのは不思議な気もする。ひょっとしてタイ科は水深の深いところに適応していたのが沿岸浅所に勢力をのばしてきたのだろうか。アカエイはL=75、C=25、ちょっと色覚がある。どちらにしても軟骨魚類の色覚は弱いようだ。ブリはL=97、C=3でほとんど色覚なし、スズキはL=85、C=15でやや色覚あり、ボラが凄くて、L型の2種が記録されあわせて41、C型は4種すべてが記録されて、58・4にもなる。これほどたくさんのパターンが検出されるのはボラだけである。ボラの眼の良さ俊敏さの秘密は、こんなところにもあるのかもしれない。アマゴではL型が2種であわせて23、C型は1種で77と色覚に素晴らしい感度があると思われる。あとの淡水魚は省くが色覚は優れている。一般的には浅くて明るく色彩の豊かなところに棲む魚に、色覚は発達するようだ。田村保博士は『魚類生理学概論』のなかで、チョウチョウウオなど色彩の美しい魚でS電位の記録を試みたが水平細胞が小さくて電極が差しこめず結果はでていないと書いている。
■『魚との知恵比べ』で川村軍蔵博士によれば、「マグロは色を分かるんかね?」と鹿児島の漁師に聞かれて、マグロ類とカジキ類のS電位を記録してみたという。3年間船に乗ってキハダでいえば23個体の519の水平細胞からS電位を記録してL型しかでなかった。キハダ、メバチ、ビンナガ、クロカジキ、シロカジキ、マカジキに色覚はないようだ。漁師たちに、マグロ、カジキ類に色覚はないと報告すると、誰も信用してくれなかったそうだ。博士も書いているが、着色ルアーの釣果を色覚からは説明できないというだけで実際にどうなのかというのはまた別の話になる。ほかにもカツオ、スマ、ヒラソウダからはL型しか記録されていない。
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■コバンザメ、ヒラメ、メイタガレイなどは紫外線に反応するという。マダイ、クロダイ、コショウダイは紫外線に反応しない。昆虫などは紫外線を色光として感じるといわれていて、蝶の斑紋など紫外線で撮影するとまったく別の斑紋になる。ともかく魚に色覚はあったり、なかったりする。しかし彼らの見て感じている世界は、どういう世界なのかは分からないのだ。
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■いつやら鉤や鉤素、ルアーの色はどれがいいか熱く議論していると師匠は笑った。メーカーは魚を騙すより釣り人を騙したほうがいいんよ。釣り人が見て「いかにも釣れそうな色」「すぐに欲しくなる色」がいい色なんや…。けだし名言である。
■しかし、このごろ思うのである。色とりどりの仕掛けやルアーに思いを馳せ、夢見て楽しめるのもツリビトという「動物」の特権であるなあと。なんでも色々楽しまなきゃ損だなと。

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■参考文献リスト■ありがとうございました■
■『新版魚類生理学概論』田村保編集 恒星社厚生閣 1991年
■『魚類生理学』板沢靖男・羽生功編 恒星社厚生閣 1991年
■『魚との知恵比べ』川村軍蔵 成山堂書店 2000年
■『どうしてものが見えるのか』村上元彦 岩波新書 1999年
■『眼が語る生物の進化』宮田隆 岩波書店 1996年