さかなBBSトップ
魚のことならおまかせ。WEBさかな図鑑
釣具の通販・Gear-Lab
HOME 似たもの検索  携帯版  | Gear-Lab

新コミュニティ(掲示板)オープンのお知らせ

WEB魚図鑑では、2013/7/25より新しいコミュニティをオープンしました。 「このお魚何?」というQ&A専用のページもあります。是非新しいコミュニティを使ってみてください。新コミュへの投稿はズカンドットコムへのアカウント登録が必要です。2013年1月以前にWEB魚図鑑へ投稿したことのある方はアカウントの引き継ぎを行うことができます。


[このスレッドを表示]

[174] 魚あれこれ>深奥の眼…もうひとつの視覚 
2002/2/8 (金) 06:22:17 小西英人
 魚あれこれ。

 嗅覚にでもしようかなと思ったけれど、俗に「第三の眼」とも呼ばれる「松果体」のことを書いたものが視覚に関連するので、紹介しましょう。この「第三の眼」って言い方がおかしくて、言うのならば「第二の眼」になるのになあ…なんて思っています。

 アユ師のみなさん!

 アユの松果体窓を知っていますか?

 もうひとつの眼があるんですよ…。

 あなたの脳の中にもね。


■『釣魚図鑑』(小西英人編著・週刊釣りサンデー・2000年)より転載
========================================================
魚あれこれ
ぎょぎょ事典@

それは脳の奥で泣いている! のかもしれない
深奥の眼■

========================================================

■あなたの頭の深奥には、もうひとつの「眼」がある。それはあなたが「魚の時代」だった、はるかはるか昔から、しっかりとそこにある。
■いまは、脳の奥のちっちゃなでっぱりに過ぎないのかもしれないけど、あなたの秘められた眼は、太陽を、海を、いまも探し求めているのかもしれない。いや、この「眼」のために、あなたは「ツリビト」と呼ばれるけったいな「ヒト」になってしまったのかもしれない…。
            ■
■「眼」ってなんなんだろう。受精卵という、ひとつの細胞から、どんどん体ができあがっていくのを「個体発生」というが、これは、われわれの体に残る数十億年の歴史の繰り返し、連綿とつながっている血脈の再現ドラマでもある。それを研究する「発生学」というのは重要だが、その発生学的に見てみると、脊椎動物の「眼」というのは脳の突出物である。生き抜くための基本を司る脳幹の一部、間脳がするするのびて表皮に接すると表皮は落ち込んで水晶体と角膜になる。のびた間脳は網膜になる。眼は「心」の窓というのは嘘ではない。正確にいうと眼は「脳」の窓、脳の外界認知センサーなのだ。
■間脳が前にのびると眼になるが、上にのびると「もうひとつの眼」になる。顱頂眼という眼がある。トカゲ類の一部で両眼の真ん中にある眼のことで、皮膚は透明になって、角膜の役目を果たす。役割はよく分かっていないが、太陽光線の線量計の機能を持つと考えられており体温調節に役立っているようだ。化石を調べてみると絶滅した多くの爬虫類や両生類に顱頂眼があったことがわかる。この顱頂眼は間脳が上にのびてできた。
■魚類の祖先の「なにものか」が脊椎を「発明」した。この「なにものか」の子孫たちを脊椎動物という。魚類や四足動物。両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類だ。このグループは、間脳の上に、大きかれ小さかれ「でっぱり」があり、そのでっぱりを松果体とか上生体という。この松果体が、一部の動物では、よく発達して「もうひとつの眼」になる。俗に「第三の眼」といわれる眼だ。
            ■
■古い形質を、よく残している魚、頭甲類には両眼の間に松果腺孔がある。松果体からのびる松果腺のための孔が開いているのだ。頭甲類とは、ヤツメウナギなどの仲間で、いまのヤツメウナギから「頭甲」などといわれると、ぴんとこないだろうがシルル紀やデボン紀に繁栄した頭に重装甲している魚たちを頭甲類といい、ヤツメウナギ類は大きく考えて、それらの生き残りである。
■アユの頭部を背面から見ると両眼の間に皮膚が半透明になっている「部分」がある。よく見ると皮膚や頭蓋を通して、橙色の「もの」が見えるが、これは脳である。松果体がうっすらと透けて見えているのだ。
■@皮膚の色素沈着を欠く。A筋肉組織の発達が見られない。B頭蓋に凹部もしくは孔がある。このような特徴があれば、それは「松果体窓」があるという。サケ・アユ・ニシン・ハダカイワシ・コイの仲間などに松果体窓が見られる。また、頭甲類や、一部のサメ類のように、そこに孔が開いていたり、カツオ・マグロ類のように筒状によく発達するのは、松果体窓の顕著な例である。
■魚類の松果体の機能は、よく分かっていない。1911年に両眼を摘出した魚の頭部周辺を光照射し体色黒化がおこることを確かめ、松果体の光感覚機能がはじめて示唆された。1963年にはニジマスの松果体から光に反応する電気応答が記録されて、光感覚機能が証明された。松果体には両眼のような視覚、つまり色彩や形態などの識別能力はないのだが、環境の光強度の識別はできる。その光の明暗情報から、体色変化や生殖腺を制御するホルモンを分泌し、光行動反応を起こしているらしい。また最近になって、体内時計と松果体には密接な関係があるらしいということが分かってきている。
■松果体をおおう皮膚には@色素胞がなく透明か半透明のもの。A不透明で光が通過しにくいと思われるもの。B色素胞の伸縮により通過光量を調節できると思われるもの。などの型があるという。@の型の魚類は強い走光性を示し、Aの型の魚類は光を嫌うという。松果体窓のある魚類は、光に向かって走るのだ。
■カツオ・マグロ類は、表面から見ためには分からないが、額の皮膚に半透明部があり、その半透明部がある前頭骨中央部から松果体にいたる筒状の腔がある。これを松果体筒ともいう。黒潮の中を大回遊しているカツオやマグロたち、彼らは「もうひとつの眼」で、しっかりと太陽を見すえながら泳いでいる。このことが、彼らの行動に大きな役割を果たしているといわれているが、実際に、どうなのかはよく分かっていない。
            ■
■多くの生物は活動期と休止期からなる生活のリズムを持っている。このリズムが昼夜をサイクルとすると24時間リズムという。太陽などを分からなくして24時間という時間的手がかりのない状態にしても、生物のリズムは続くことがある。このリズムが24±4時間の場合サーカディアンリズム(概日リズム)という。このサーカディアンリズムは約24時間で作動する自立的、内因的な「振動体」で制御されており、この「振動体」を生物時計、あるいは体内時計という。魚類の体内時計は一般的にはかなり不安定らしい。くるいやすい「時計」なのだ。
            ■
■太陽コンパス定位をご存じだろうか。ミツバチや渡り鳥では有名であり、サケ科魚類の海洋での大回遊を支えるのも、これではないかという説がある。1960年にブルーギルの幼魚を使って、実験的に方位の決定に太陽光を使っていることが証明された。太陽光で方位を知るには「時計」もいる。サーカディアンリズムが、この方位決定に関与しているらしい。ただし、サケの大回遊も、マグロの大回遊も、実際になにで方位を決定しているかはまったく分かっていない。地磁気だという説もある。
            ■
■ヒトはどうなのだろう。デカルトは、ヒトの松果体を「精神の座」と考えた。第3脳室にあり、扁平で、長さ8o、径5oほどの松の実状の小体である。7歳くらいまで、よく発育するが、それから退行傾向を示し年齢とともに石灰化物がたまる。この石灰化物はX線で明瞭に見え放射線医学では頭蓋の基準点にされる。ほかの脊椎動物同様、明暗変化に伴ってサーカディアンリズムに関係し、体色変化と生殖線に関与するらしい。
            ■
■賢いはずだぞ魚たち。脳を太陽に開いて、太陽を見すえながら、大海原を自在に泳ぎ回っているのだ。お天道さまと脳が、きっちりとつながっているのだ。
■ヒトは「もうひとつの眼」を頭の奥深くにしまいこんでしまった。そして、深奥の眼は「いし」になってしまったらしい。それでも光を感じ、何か叫んでいる。
■海辺の強い光を頭にあてて、われわれの眼を目覚めさせなければ。そして謙虚に魚たちに教えてもらおう。
■この水惑星のリズムを。
■太古変わらぬリズムを。

初出●『磯釣りスペシャル』1999年7月号