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[1846] Re2:スズキ目. 
2002/8/11 (日) 06:20:25 小西英人
▼ 西潟正人さん

> 3900種もスズキ目だったですか!

 3900種が日本産全魚種です。そのうちの1934種がスズキ目ね。

 しかし、このスズキ目っていうのも、なんていうのか、ふつうにスズキをイメージしてしまうと意味がありません。

 たとえばスズキ科というのは、いままで Percichthyidae にはいっていました。これが、まあパーチ、まあホタルジャコ、まあオヤニラミ、まあケツギョなどの類であって、なんとなくすっきりしていませんで、ほんと、こういう言い方をすると分類屋は嫌がるのですが、分けられないのを放りこんでおくという「ゴミ箱」のようなものでした。

 それで『日本産魚類検索第2版』から中坊徹次は、スズキ科を大きく見直し、ジョンソン(1984)にしたがって、それぞれ独立の科に移したりして、結局、スズキ科は スズキ、ヒラスズキ、タイリクスズキのスズキ属だけにして、日本語ではスズキ科と変わらないんですが、学名では Moronidae に移しました。これはストライプドバスなどの仲間になります。そして、いちおうここにいれながら、スズキ属は Moronidae にふくまれるかどうか、検討の要ありと注記を入れています。

 スズキ目と日本語ならそうなりますが、学名で言うと Perciformes であり、パーチ・フォームで、パーチのことを指しています。

 だいたい国際動物命名規約では、学名は科と属と種と亜種しか決めないのですが、名前の付け方の規則だけのことであって、その名前が系統分類を表すようにしなさいなどとは書いていませんし、実際にできません。

 Perciformesを、スズキ目と訳した人が誰か、ちょっと不勉強で知りません。また、勉強しておきます。

 しかし、昔の系統分類は、あまり変化しにくい安定した形質と考えらていた、たとえば骨学などをもとに、組み立てられています。

 ここ数年、ミトコンドリアDNAのさまざまな場所をもとに系統類縁関係を研究することが可能になってきて、いま、東京大学海洋研究所の西田睦博士らを中心に、ひじょうにダイナミックに上位分類の見直しを進めています。

 いちぶの成果が学会などで発表されていますが、ひえええひえええと驚きますよ。常識から何からひっくり返され、かなりのことが変わってしまうのではないかと思われます。やはり形態から分けた系統分類は無理があったようです。

 あまり上位分類群だと難しくなるので、科の単系統群で、京都大学が研究しているところを、ちょこっと書きますと、たとえば、タカベ科、ユゴイ科、イシダイ科、イスズミ科、カゴカキダイ科、メジナ科などがミトコンドリアDNAを解析すると非常に近く、単系統群を形成するようです。

 イシダイ師も、メジナ師も、怒ってね!

 タカベやらユゴイやらカゴカキダイやらイスズミやらが、お仲間だというのだもの。

 単系統群とは、これ、ぼくのようなものでは説明できず、分類屋は定義をめぐって殴り合いの喧嘩になりかねないのですが、ぶっちゃけて、素人が言うと、どういったらいいのかな、同じ「ところ」から生まれてきた家族、親戚かな。

 どれくらい、ややこしいかを知るためだけに、岩波の『生物学辞典』から、「単系統」の説明のほん一部を抜いてみましょう。読まなくてもいいです。

 W.ヘニック(1950,1966)は,厳密な単系統性を基盤とする論理的秩序体系としての(*)系統分類を追求する分岐論の立場から,‘ある一群の種が単一の幹種(stem species)に由来し,かつその幹種に由来したすべての種を含んでいるとき,その種群は単系統群(monophyletic group)である’と定義した.P.D.Ashlock(1971,1972)は,進化分類学派の立場から,ヘニックの定義した単系統が伝統的な意味からはずれていることを批判し,ヘニックの意味での単系統を完系統(holophyly)と名付け直し,その完系統と側系統とがいわゆる伝統的な意味での単系統の両側面をなし,これらと多系統とを対比した.単系統性および関連概念(多系統性,(*)側系統性)の定義・内容は多様であるが,それは主として理論性と実用性との評価をめぐって生じているものである.分岐学派は,厳密な単系統群だけが分類において意味をもつとして,非単系統群を分類から排除しようとする.一方,進化分類学派は,側系統群をも単系統群とみなし,分類に残そうとする.そしてこの点が,両者の分類哲学における大きな違いともなっている.

 と、恐ろしげな世界になるんです。

 まあ、分類とは、ただただ記載していくだけではなく、進化の系統樹を反映しようとする、簡単に言えば「自然分類」を目指しています。

 しかし、進化の過程を表せる方法も、推定の方法も、実証の方法もなかったので、とりあえず組み立ててみたのです。人為分類ですね。

 ところが、近年、直接DNAを解析して、それをコンピュータで解析して、類縁関係を推定する研究が、本格的になりつつあります。まだまだ、方法やら評価やらで、不安定なところもあるのですが、形態からでてくる思いこみを排除して、とにかく驚くような系統樹がダイナミックに描かれつつある激動期を迎えています。

 というようなところを理解してくださいね。

 スズキ目は、驚くほど激しく種分化して、そういう意味では非常に成功したグループなんでしょう。しかし、どれが中心的なグループで、どう種分化してきたのか、いっさい分かっていません。スズキ目という名前でくくられる、大きなグループがあるのであって、スズキから派生してきたのでも、スズキが偉いのでも、スズキが中心であるのでもありません。

 また、いつやら、ある研究者に、スズキ目は激しく種分化して成功しているんですね…と質問したら、たとえば軟骨魚類(サメやエイ類)も、長いこと残ってきていて、そういう意味では成功者であって、いまを見て、成功か失敗か論ずることに意味はないと諭されました。

 なるほどです。

 スズキ目は激しく種分化したのだなあと、よく分からないなんだなと、とりあえず素人の立場としては、そう感心するのが正しいようです。

                              英人