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[2064] トラウツボ>小さな疑問が… 
2002/8/28 (水) 19:15:12 小西英人
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トラウツボ■2002年8月8日、高知県東洋町水尻

▼ KOUJIさん

 白バックで生きている魚を撮影するというのは、ほんと根性だけの世界です。

 でも、誰も、あまりやっていないので、そうかと冷たくいわれておしまいです。KOUJIさんなら、苦労しているから、分かるやろうと、ちょっと褒めてもらいたくて、このまえ真っ暗の大荒れの砂浜で這いずり回って撮影したトラウツボの写真をスキャンしてみました。

 てなことで動機は不純だったんですが、トラウツボのこと書かないかんなあと、いろいろ調べていたら、まえから不思議に思っていた、小さな疑問が氷解したので、ちょっと書きとめておきましょう。

 小さな疑問とは、トラウツボの「虎」のことです。まあ、虎の模様に見えないこともないから、江戸の昔の人は、そう感じたのかなあ…と漠然と思っていました。しかし、もっと虎のようなウツボはいるのになあと思っていたのです。

 『図説有用魚類千種・正編』(田中茂穂・阿部宗明著・1955年)のトラウツボを読んでいますと、「トラウツボとはかつて私の命名したものである。これは本種の学名を意識したものである。前鼻孔にも後鼻孔にもやや長い髭があって、これを自在に動かすものである。後略」という田中博士の記載があったのです。

 田中茂穂博士とは、あの日本の標準和名の始まりになった『日本産魚類目録』(ジョルダン、田中、スナイデル・1913年)の田中博士です。この目録は、英文で、東京帝國大學理科大學紀要 第33冊第1編として出版され、"A Catalogue of the Fishes of Japan" というのがタイトルです。これを見ますとありますあります。Tora-utsubo となっています。田中博士が、このときに命名したのでしょう。1913年、大正2年のことです。

 学名を書きますと。

 Muraena pardalis Temminck et Schlegel,1846

 で、このまえアオハタの時に紹介した、シーボルトの『ファウナ・ヤポニカ』に長崎産のものを模式産地として記載されたのです。

 この学名を調べてみましょう。学名を調べるのには、いい本があるのです。この本、ぼくは、むちゃくちゃ苦労して手に入れましたが、いまはアマゾンコムで簡単に手に入るんだろうなあ。

 "A Source-Book of Biological Names and Terms" という本で、E.C.Jaeger が書いて、Charles C Thomas Publisher からでています。驚くことに、ぼくの持っているのは第3版第6刷です。初版は1944年、第3版第1刷が1955年、6刷は1987年というロングセラーのようです。

 まあ簡単にいえば生物学で使われる、ラテン語とギリシャ語の辞書です。

 Muraena pardalis の属名 Muraena は、ラテン語で「うつぼ」を指すようです。この属名は、学名の創始者、リンネが命名しています。

 問題は種小名です。pardalis ですね。これはラテン語の pardus からきており、英語では pard もしくは leopard をだそうです。

 もうもう、田中先生、学名は「虎」ではなくて「豹」やんか。たしかに、「ひょう柄」だもんね。

 と、大先生の誤訳を見つけてしまいました。

 まあ、誤訳といっても、学名にしても、標準和名にしても、ただの記号にすぎず、名前に意味はないので、トラウツボはトラウツボでいいわけで、間違えでも何でもないのですが、このように、ちょっと文献をあたって、先人たちの、ちょっとしたミスを見つけると、伝説の人物の息づかいが聞こえたようで、嬉しいのです。

 ただ、それだけのことなんですが…。

 マニアックでごめんね。

 そうそう、トラウツボは前鼻孔と後鼻孔の鼻管が長くなっているのが特徴なのですが、それを「髭」と書くのも、なんか変なんだなあ。

 でも、なんか嬉しい。               英人