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[233] 魚あれこれ>匂いと味…嗅覚と味覚について 
2002/2/17 (日) 09:52:43 小西英人
 魚の嗅覚と味覚について書いたものを転載しておきます。

 この『魚あれこれ』シリーズは、ちょっと難しいのかな。

                           英人


■『釣魚図鑑』(小西英人編著・週刊釣りサンデー・2000年)より転載
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魚あれこれ
ぎょぎょ事典H

それは臭いよと泣いている! のかもしれない
匂いと味■

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■海を見つめ、動かない浮子を眺め、太陽に馬鹿野郎と叫びたい衝動に駆られつつ、ゆったり煙草をふかしていて、ふと思った。そうだそうだ。これで釣れないんだ。なんでいままで気がつかなかったんだろう。ニコチンは猛毒なのである。そんな猛毒をたっぷりとつけた指で餌をつけたりしたら「あっちいけ、おまえとは遊んでやんないよ」って魚にいっているようなもんじゃないのか。魚の「鼻」って、とっても利くはずだぞ。
■わっはっは。魚が釣れないのは、やはり腕ではなかったんだ。この煙草さえやめられればね…。
            ■
■魚の嗅覚と味覚をあわせて、化学的感覚という。どちらも化学物質に対する感覚だからである。ヒトが匂いとして感じるものは魚も匂いとして感じ、ヒトが味として感じるものは魚も味として感じると思われていた。しかし、ヒトが感じるのは空中であって水中で水に溶けたひとつの「化学物質」を魚は匂いとしても味としても感じとっている。魚のこの感覚を明確に分けるのは難しい。餌に対する魚の行動を、匂いで起こしたものか、味で起こしたものか分けにくいのだ。魚の嗅覚中枢は「終脳」にあり味覚中枢は「延髄」にある。解剖学的にはふたつは違う。しかし実際に分けるのは難しいのだ。
            ■
■ふつう魚の鼻孔は口の上、眼の前の左右にある。鼻孔はふたつあって、前のものを前鼻孔、後ろのものを後鼻孔という。魚が泳ぐと前から水が入って後ろから抜ける「トンネル」になっている。哺乳類のように口とはつながっていない。メバルのようにあまり泳がない魚は副鼻腔が鰓の呼吸運動にあわせて広がったり狭まったりして水流を起こす。鼻腔には嗅房があり、これは嗅板という「ひだ」が集まり、その「ひだ」にはいっぱい繊毛があり、その繊毛の間に匂いをとらえる感覚細胞がある。魚はそれで化学物質を感じとって「匂って」いるのだ。
            ■
■味は味蕾で感じる。魚もヒトと同じだ。魚が違うのは味蕾が口の中だけでなく「ひげ」や鰭や体表にまであることだ。魚類の味蕾は体表、ひげ、鰭などの外表面と、口腔内上皮、鰓、食道などの内表面に分布している。外表面、唇、口腔内上皮の一部は顔面神経に支配されていて「顔面味覚系」といい、他は舌咽−迷走神経に支配されているから「舌咽−迷走味覚系」といわれる。顔面味覚系は餌の探索と口の中への取りこみ、舌咽−迷走味覚系は餌の呑みこみと吐きだしに関与するという。このふたつの味覚系は異なった感受性を持つようなのだが、いまのところ詳しくはわかっていない。
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■4基本味質というのがある。甘味、鹹味、酸味、苦味だ。甘い、塩辛い、酸っぱい、苦いである。この基本を配合したら、あらゆる「味」がつくれると考えられていた。ところが「アミノ酸」などの生物組織成分も味覚として研究されはじめ「旨味」なども、このごろは独立した「味質」として注目されている。コイやナマズの淡水魚は、4基本味質に感受性を持つことが1960年代には分かってきていたが、いろいろ調べてみると魚類の味覚の「応答性」は哺乳類とは、かなり異質なものであり魚種によってかなり違う。また海水魚は淡水魚とも違った。そして多くの魚種で生物組織成分に、よく応答した。たとえばシマイサキの味蕾は、生物組織成分であるアミノ酸のグリシンが、10万トンの水に茶匙一杯あれば感じとれる。一般に嗅覚は遠くのものを感じ、味覚は接触したものを感じると思われていたが、一部の魚種では味覚でも遠くのものを感知できることが分かってきたのだ。
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■アミノ酸はヒトには無臭の物質である。揮発性の低いアミノ酸に魚類の嗅覚器が高い感受性を持つなどと誰も想像していなかったのだが、嗅覚もアミノ酸への感度が高いこともわかってきた。味覚と嗅覚を比較してみると嗅覚の方が味覚より感度が高いこと、嗅覚ではアミノ酸に対する感受性が魚種によってあまり変わらないこと、味覚は魚種によって感受性がかなり変わることなどから嗅覚は離れたところにある餌を探しだして近づくために重要であり、味覚は餌と接触して口の中に取り込み、それを呑みこむか吐きだすかの判断をするのに重要なのではないかといわれている。大海原に「ぽつん」とある小さな小さな餌を、魚が喰うのって、いつも不思議であった。アミノ酸って。まあぶっちゃけていえば「餌の汁」である。ほんの微量のそれを、高感度の味覚と嗅覚で追いかけることができるのが魚たちなのだ。ぼくたちは腕で釣っていたのではなかったのだろうか。
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■アメリカナマズを研究したアテマは、匂いは記憶できるが味は記憶できないことを示した。そしてキハダで実験をした。いつもの餌には活発に反応するのに餌を変えると反応は弱まり二カ月後に反応は強くなったという。それを、魚は匂いにより「餌」を「化学的イメージ」として学習し、その化学的イメージにあった匂いに刺激されると餌をとろうとするのだろうと考えた。
■味の好みは変わらんけれど、匂いは「勉強」できて変えられまっせということだろうか。
■「撒き餌」釣り、一種の「飼いつけ」のような釣りの場合、餌は、いつも撒いているものでなければ、なかなか難しいということは、釣り人は体験的に知っているだろう。変わった餌をたまに欲しいのではないかなどと持っていったりしても、なかなか「合わない」し、どこかで爆発的にきく餌だからと、密かに持っていってもなかなか「合わない」ことが多い。それでも何かのきっかけで、みんなが一斉に餌を変えて辛抱すると、それがいい餌になったりする。こういう魚の「保守性」というのは「匂いの学習」に時間がかかるからなのだろうか。
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■鹿児島大学の川村軍蔵博士は『魚との知恵比べ』という本の中で夏に水槽水が泥臭くなるのはジオスミンと、MIBという2種の化学物質のためで、生活排水などで水の汚染が進んでしまうと放線菌がこの化学物質をつくり魚が臭くなるのだと書いている。ひどい悪臭なのに、魚が逃げないのは、匂いを感じないのかもしれないと実験したら、コイ、ニジマス、ティラピアの嗅覚でヒトの103〜105倍、味覚で10倍の感度があったという。
■魚は匂いに鈍感なのでは決してなかった。とても「よく感じて」いるのに、ただ逃げださないというだけだったのだ。なんとも凄まじい話ではないか。
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■松の事は松に習へ竹の事は竹に習へと芭蕉はいった。魚の事は魚に習わなければ。魚の「化学感覚」を、さまざまな行動実験で研究者は魚から習おうとしている。
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■煙草を吸いすぎ、ついに「ばち」があたった。肺気腫になったのだ。手術した。痛くて痛くて辛かったけれど「禁煙」できた。よし釣れるぞ。なのに釣れない。まったく釣れない。なんで、なんで、なんで、なんで?

初出●『磯釣りスペシャル』2000年11月号