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[2862] 魚あれこれ>シガテラ中毒…得体の知れない毒 
2002/10/4 (金) 06:32:38 小西英人
▼ 忠さん

 まえに、このボードで『釣魚図鑑』から転載した「シガテラ毒」の話です。もういちど転載しておきますね。そうそう渦鞭毛藻は、ふつう「うずべんもうそう」と読みます。けんきゅうしゃによっては「かべんもうそう」と読む人もいますが…。

 シガテラを書くんだったら、どうぞ参考にしてください。お好きに引用していただいてもいいですよ。

                             英人

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 ふぐ毒に続いては、得体の知れない毒、シガテラ毒についての話を転載しましょう。小笠原のイシガキダイなどでシガテラにやられた釣り人は増えています。とくに南の楽園にいくと、どこで、どう、やられてしまうか、わかりません。

 ふぐ毒の200倍も強いのに、ほとんど死亡例はないという、知られざる毒について迫ってみます。

                           英人


■『釣魚図鑑』(小西英人編著・週刊釣りサンデー・2000年)より転載
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魚あれこれ
ぎょぎょ事典A

それはヒトに復讐を始めた! のかもしれない
シガテラ中毒■


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■ヒラマサ、カンパチ、イシガキダイ、オニカマス、ロウニンアジ、ハタ類、フエダイ類、ベラ類、サメ類、ニザダイ類、ウツボ類、ブダイ類、カワハギ類…。
■これらから何を想像するだろうか、わかるあなたは酸いも甘いも噛み分けた「磯師」だ。わからない人は「ひよっこ」だ。離島遠征など、ひとりで行かないこと。
            ■
■意地悪をいわずに書いてしまえば、みんな「毒魚」である。いや、正確に書けば「毒」を持っていないこともない。そしてその毒は、あらゆる海洋生物の毒のなかで「最強」の毒であり、密かにあなたを狙うのだ。
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■カリブ海にシガと呼ばれる巻貝がいる。このシガによって引き起こされる食中毒のことをシガテラ ciguateraといった。いまでは「熱帯および亜熱帯海域の、おもに珊瑚礁周辺にすむ魚によって起こる、死亡率の低い食中毒の総称」を「シガテラ」というようになった。
■シガテラは北回帰線と南回帰線にはさまれた、カリブ海、太平洋、インド洋などの広い海域で発生し、世界中で20000人以上の人が毎年中毒しているといわれる。日本では琉球列島や小笠原、伊豆諸島に多い。
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■シガテラ毒素は、最近になってやっと大筋が見え始めた。この中毒のややこしいのは、同じ魚でも場所によって毒があったりなかったり、季節によってもあったりなかったり、とにかく、その条件によってまったく違ってしまう。また、同じ魚でも特大級になると毒があるということが多い。こういう「ふるまい」をする毒は食物連鎖によって濃縮される「毒」のことが多い。しかし「誰が」つくる毒なのか長いことわからなかった。
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■渦鞭毛藻、または渦鞭毛虫とも呼ばれる生物がいる。動物か植物かさえわからない謎の生物であった。
■単細胞生物なのに、外部形態は変わっていて変異が多い。そして葉緑体を持つものが多く、そのために藻類、つまり植物だと思われていた。しかし、DNAの解析から、渦鞭毛藻類は大きくいえばゾウリムシやマラリア病原虫などに近い原生動物だと最近わかった。回転しながら渦のように泳ぐのでギリシャ語の渦巻き、回転の意味の dinesから、英語ではダイノ dino と呼ぶのだが、一般に、なじむ名前さえない大きな「動物群」である。
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■シガテラ毒素は渦鞭毛藻がつくる。いちばんはじめに分離された毒はシガトキシン。毒性の強さは実験動物の半数が死亡する「半数致死量」であらわすことが多いのだが、マウスの半数致死量でシガトキシンは「ふぐ毒」のテトロドトキシンの約20倍も強い。シガテラ毒素のひとつとされているマイトトキシンは、半数致死量はシガトキシンの約9倍、テトロドトキシンの約200倍もある猛毒で、いま知られている海産生物毒で最強である。
■それほど強い毒なのに、「シガテラ中毒」の死亡例が少ないのはなぜか、わかっていない。スカリトキシン、シガテリンなどの毒も知られていて、シガテラは複数の毒が混じると思われる。1993年にマダガスカル島で起こったメジロザメの仲間による中毒では188人が入院し、そのうち50人が死ぬという大惨事になり、未知のシガテラ毒素の中毒かもしれないといわれている。
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■シガテラ中毒による死亡例は日本ではないと思われるが、現在までに5人の死亡例が知られているのがアオブダイ中毒。これはパリトキシンという、マイトトキシンが分離されるまで最強とされた毒による中毒で、シガテラとは症状が違うので分けられていたが、同じように渦鞭毛藻によってつくられた毒素と最近わかってきた。
■1986年11月23日、三重県尾鷲市三木浦の漁港で漁師から購入した約5sのアオブダイを、愛知県津島市の54歳の釣り人が持ち帰った。これを刺身、切身と肝臓の煮付け、切身のみそ汁にし、釣り人と79歳になる、その義母が食べた。翌日、全身の筋肉痛、発語障害などが起こって、釣り人は一時重症になってしまうが、一カ月半の入院後に無事退院した。義母は食べて四日後に筋肉崩壊による呼吸停止により死亡してしまった。
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■シガテラ毒の例では、沖縄県の那覇市立病院の11例の報告をみると、沖縄で「みーばい」と呼ばれるハタ類での中毒がほとんどで、有名なシガテラ毒魚のバラフエダイは1件、イシガキダイが1件。神経症状はドライアイスセンセーション(冷たいものを触ったり飲んだりすると、火傷したような感じになったりぴりぴりと痛かったりする異常感覚のこと)と手足の痛み。あとは痒み、頭痛、手足のしびれの順に多かった。これらの症状は食べた翌日か、翌々日に出る。腹部の症状は下痢、悪心、嘔吐、腹痛の順に多く、平均して7、8時間後に発症している。あと低血圧になったり、冷汗をかいたりする。症状は数週間でおさまるが、数カ月続くこともある。
■シガテラ中毒の治療にはマニトールがきくとされるが24時間以内に投与しないと効果が落ちる。そしてドライアイスセンセーションは24時間以上たってから発症することが多い。魚を食べて数時間後に下痢や悪心があれば冷たいものを触ってドライアイスセンセーションを試してみよう。もし「シガテラだ」と思っても普通の病院ではシガテラを知らない。沖縄に問い合わせてみるようにたのまなければいけない。愛媛と東京で小笠原諸島で釣れたイシガキダイのシガテラ中毒があったが、病院で原因がわからず「シガテラ」にたどりつくまで、かなり苦労があったようだ。このときの報告では、何カ月も仕事もできないくらい手足が痛み、不安であったという。
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■渦鞭毛藻は、さまざまな細胞と共生することでも知られ、どこに、どういう形で潜んでいるかわからない。
■珊瑚が死滅すると周辺生物が毒化する、つまり有毒渦鞭毛藻が増える。南の島の都市化、港湾工事、大量の降雨、はたまたムルロア環礁の核実験など、珊瑚がやられると、いままでなかった毒が急にでてくる。
■1975年、尾鷲で日本初の有毒プランクトンによる赤潮が発生、アサリとムラサキイガイが毒化した。それから麻痺性貝毒などの毒が問題化している。これも渦鞭毛藻の仕業だ。北アメリカのチェサピーク湾では、観光に来た親子が川に入っただけで、原因不明の病気に長く苦しめられ、空気を吸った研究者や漁師が記憶を喪失してしまうような病気に苦しめられるという「怪事件」が多発した。『川が死で満ちるとき−環境汚染が生んだ猛毒プランクトン』(ロドニー・パーカー著、草思社)に詳しいが、これも渦鞭毛藻の仕業である。どこかに潜んでいた「殺し屋」たちが、環境汚染の富栄養化で目を覚ましてしまい、魚を殺し、人への攻撃をはじめたのだ。
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■シガテラを防ぐ王道はない。地の人とよく話して「海人の知恵」を身につけ、地の人が食べないものは食べない。謙虚に海と共生しなければ、磯師とはいえない。


初出●『磯釣りスペシャル』1999年9月号