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[382] 魚あれこれ>聴く…聴覚について 
2002/3/25 (月) 19:03:06 小西英人
 このBBSの兄弟BBS、「すなはまBBS」でシロギスの聴音が話題になりました。

 シロギスではないのですが、アオギスやモトギスには、鰾(うきぶくろ)に枝状に発達した複雑な側突起があり、これは聴音に関係していると思われます。この転載した文章にでてくる「聴音スペシャリスト」だと思われるのです。

 こういう体構造を持っているために、アオギスは音に敏感で、船でねらっても船縁をたたく波の音を嫌うと言われ、江戸前の脚立釣りなどを釣り人は工夫したのでしょう。アオギスも偉いけど、釣り人も偉い。そういう工夫を絶滅によってなくしてしまった、釣り人でない、ただのヒトは、あほだなあ。

                          英人


■『釣魚図鑑』(小西英人編著・週刊釣りサンデー・2000年)より転載
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魚あれこれ
ぎょぎょ事典G

それはすべてを聴いている! のかもしれない
聴く■

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■「ちょっと弁当でも食おうかな。ちっとも釣れへんもんな。魚いいひんのやろ…」なんて大声で言ってみることはないだろうか、とくに石鯛など釣ってるときに。
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■魚は「そっと」聞いているのである。君が竿尻を離れのんびりしたとき竿は舞いこむのである。恐るべし「地獄耳」の魚たち…、よし裏をかいてやろうと大声で言ってみて竿尻を「離れたふり」をすると…。こんな、しょうもないこと考えるようになると、その日の釣りは「君の負け」だもんね。ほんと負けてばかりだ、ぼくは。
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■冗談はさておき、魚は「聴こえて」いるのだろうか?聴覚とは水や空気の中を伝わる「波」を適刺激とする機械的な「感覚」のことで、視覚に比べて系統発生上はるかに「遅れて」出現してきた「感覚」である。そのためなのか脊椎動物と昆虫類にしかないとされている。
■音を「ただの振動」ではなく「音」としてとらえるためには、周波数を聞き分けられるということが重要になるのだが、動物に周波数の弁別能力があると実証されたのは魚類だけで、それも1992年と最近のことだ。それまで、魚は「音」を感知できないとか、音の方向感はないという議論さえあった。魚の聴覚がやっと「見えはじめた」のは、つい最近のことなのである。
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■魚が「音」を感じる器官はふたつある。このふたつの器官は卵から発生のときに、同じところから分化していくので、「聴・側線系」とまとめられる。
■ふたつとは、「側線」と「内耳」のことだ。
■「内耳」なら知っているぞ。「耳」のことなんやろ。だけど側線って体の横を走っているただの「線」のことやろ。なんで線で音が「聴ける」んやと叱られそう。
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■側線とは魚の体表を縦走する「細い管」のことで、ふつうは左右の体側中央部に1本ずつある。多くは鱗に孔が開き、それが点々と連なって「線」に見える。この側線管の管内には「感丘」と呼ばれる器官があり、そこで水中の振動によって起こった水粒子の変化や圧力変化を感じとる。この感丘には「有毛細胞」と呼ばれる「毛」がある。この毛は1本の長い「動毛」と30〜40本の短い「不動毛」のセットになっており、振動などの水流により不動毛が動毛の方向に歪んだときだけ「スイッチ」が入って神経に伝達されるという方向性を持った、精妙な「センサー」になっている。管内にはリンパ液が満たされており側線孔からの「水の動揺」が伝わってくる。
■魚の発生初期の「感丘」は、すべて遊離感丘といってばらばらの状態になっている。それが皮膚内に沈下し孔のように見える「孔器」となり、その孔器が管で横につながると「管器」と呼ばれる。ふつう管器は体側の側線管と、頭部の眼の周りや鰓蓋のところに発達する。流れの少ないところで、ゆっくり泳ぐ魚には孔器が多く、流れが激しく活発に泳ぐ魚では管器が発達する。この管器と孔器をふたつあわせて「側線系」というが、この側線系の一部が体内深くに落ちこみ渦巻き状に複雑に変化したのが「内耳」なのだと考えられている。
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■魚に内耳があるのだといえば「耳の穴」ってどこにあるのと、よく聞かれるが、そんなものはない。外耳と中耳、それに鼓膜や蝸牛管などは魚にはない。「内耳」だけが頭の奥深く耳殻のリンパ液の中に浮かんでいる。左右ふたつの内耳には三半規管がある。前後、左右、水平の直交する3平面にリング状の管があり迷路になり、それぞれカルシウムからできている石がある。年齢査定などに使われる「耳石」だ。この石は側線系と基本的には同じ有毛細胞の上に乗って加速度を検出するセンサーになっている。体の平衡感覚は、この石と毛によって保たれるのだ。船酔いに苦しむあなた、この「センサー」がちょっと敏感すぎるだけなのだ。けろっとしている奴らは鈍感なだけなのだ。気にすることはないよ。
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■「聴音スペシャリスト」ってご存じだろうか?
■オーディオ専門なのだろうか、作曲家なのだろうか。違う、コイとかナマズなどの仲間のことをいうのだ。
■「骨鰾類」って聞いたことがあるだろうか?
■「こっぴょうるい」と読む。鰾とは「うきぶくろ」のことであり、骨でできた「うきぶくろ」などを想像してしまうと沈みそうで、ちょっと困ってしまうだろうが骨とはウェーバー骨片という小さな4個の骨のことで、鰾と内耳がこの骨でつながっており振動が伝わるようになっている。このウェーバー骨片をもつグループを骨鰾類と呼ぶ。コイ目、ナマズ目などがそうなのだ。
■振動板が水の中で前後に動くと音波が発生する。水中では1秒に約1500mという空気中の音速の5倍に近いスピードで伝わる。この音波の圧力変化を「音圧」という。音圧は魚体を振動させることはできないが気体に満たされた鰾を振動させることができる。鰾のある魚は音圧を感じ、鰾のない魚は音圧を感じとれない。カレイ類、アイナメ類など、鰾がないので遠くの音は聞こえない。
■この鰾の振動を内耳に骨で伝える骨鰾類や、鰾の前端から一対の細長い管がのびて内耳に届いているニシン科やイットウダイ科など、音に対して特殊な構造を持つ一部の魚種のことを「聴音スペシャリスト」と呼ぶ。
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■音源が振動すると振動面に接している水粒子は前後に動く、この粒子運動は音源近くで大きく、離れると急激に減少する。この「粒子運動」を感じとるのが側線系なのだ。魚は側線系という水力学的センサーと、内耳という音響的センサーを備える。「側線系」は近くの低周波音を聞き、内耳や鰾からなる「聴覚系」は遠くからの音を聞き可聴帯域も広い。このふたつの「聴・側線系」センサーからくる信号を処理するのが魚の「水中聴音」である。実際には、水中の音は複雑であり、センサーも処理も複雑であり、よくわかっていないことの方が多い。たとえば水中の音速は速く、左右の内耳の間隔は短いので、音源の方向を知るのは無理だろうと解剖学的に思われてきた。しかし、音の方向を探り、逃げたり、集まったりすることは、よく知られている。なぜなのか、諸説あるが、まだはっきりとはわかっていない。魚の「聴音能力」というのは、理論をはるかに上回るのだ。
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■山屋は「ハーケンが唄う」とよくいう。ハーケンを岩に打ちこむとき「がんがん」と鈍い音のあいだはハーケンは「きいて」いないのだ。「かんかん」となり「きいんきいん」と高音になってきてハーケンが唄いだせは、それは「きいて」おり安全なのだ。石鯛のピトンを打ちこむとき、ピトンが唄いだすと嬉しいのだが、ふと聴かれていないか、逃げたのではないかと心配になる。
■石鯛にしたら、そんな「音」は脅威でもなんでもなくて、なんかしらんけど「奇特」なおっさんが、えらい、ええ餌を持ってきてくれて、たくさん撒いてくれはるという「おいしいおいしい」合図だったりしてね。

初出●『磯釣りスペシャル』2000年9月号