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[72] 魚あれこれ>魚眼…視覚について 
2002/2/3 (日) 09:50:37 小西英人
 このBBSの兄弟BBS、「すなはまBBS」で魚の色覚が話題になっています。

 ぼく、釣りサンデーの隔月刊誌、『磯釣りスペシャル』で、魚をめぐるさまざまな話題を連載していて、それを『釣魚図鑑』にまとめています。

 そこから、転載していきましょう。

 いきなり色覚にはいると、戸惑うかもしれませんので、とりあえず魚の「視覚」からはじめて、色覚や、嗅覚、要望があれば聴覚なども転載しましょう。一度にあげるとしんどういでしょうから、ゆっくりとアップしていきます。

                             英人


■『釣魚図鑑』(小西英人編著・週刊釣りサンデー・2000年)より転載
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魚あれこれ
ぎょぎょ事典E

それは海のゴルゴ13である! のかもしれない
魚眼■

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■煮つけ、鍋、塩焼きなどで、魚の頭を「せせって」いるときの釣り師ほど幸せなものはいないかもしれない。頬、かまなど、頭は美味しいところが多いのだ。黙々とせっせていると、白い「目玉」があったりする。ほうほうこれが「レンズ」か、さすが魚眼レンズというだけあって、まん丸だわい…なんてなんとなく納得しているのではないか。丸くて歪んだ世界に「連中」は生きているんだなあと、みょうに納得しているのではないか。
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■ヒトの眼と魚の眼は基本的に同じだ。同じ祖先を持つ「兄弟」なのだから当然である。あのぽろっと落ちる白い球は「目玉」ではないのだが眼球の中の「レンズ」である。「水晶体」と呼ばれる。水晶体はクリスタリンという透明の蛋白質でできているが熱で変性するので白く濁る。ヒトの眼球の中の「レンズ」が「虫眼鏡」の形ならば魚類のそれは「ビー玉」だ。虫眼鏡ははっきり見えるがビー玉ごしの世界は歪んで見えるのではないか。
■眼の表面にある透明の角膜は薄いが1.36と高い屈折率をもつ、しかし、水の屈折率も1.34であり、ほぼ角膜の屈折率と同じ。ヒトなどの陸上動物は角膜でかなり屈折できるので水晶体は焦点あわせなどの微調整を担当すればよい。だから、かなり扁平なレンズ形でいい。ところが魚類の場合、角膜では屈折できず水晶体だけで光を屈折させて網膜に結像させなければならない。そのため球形になる。魚の水晶体は中心部と周辺部で屈折率が違う特殊な構造になっており、光学ガラスで作った均質な球形レンズに比較しても、魚の「球形レンズ」は高性能であり解像力は素晴らしい。「ビー玉」ではないのだ。
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■この角膜の空中と水中での屈折の違いは実感できる。海に潜って瞼を開くと、強い遠視の状態になり、見えない。そのためにヒトは泳ぐとき、ゴーグルをして角膜と海水の間に「空気」の層をつくってやるのだ。
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■ヒトの水晶体はレンズ形なので、それを厚くしたり薄くしたりして遠近の調節、ピント合わせをする。ならば球形レンズの魚類はピント合わせはどうするのか。
■サメ・エイ類のピント合わせは謎が多いが、ふつうの魚のピント合わせは、水晶体を前後に動かしてピントを合わす。そうカメラレンズと同じことをしている。
■水晶体の移動距離から焦点の合う距離が計算できる。30pのイシダイで水晶体を動かす水晶体筋がリラックスして、10〜15pくらい前方にピントを合わせ両眼視しており水晶体筋の収縮時には無限遠までピントが合う。
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■水晶体が移動してピント合わせというと出たり引っ込んだりしていると思うだろう。違う。両眼視野の中心の方向を「視軸」といい、この方向に視精度はよく、遠近調節も行われる。瞳孔の中心を通り虹彩面に垂直な軸を「光軸」というが、ヒトの眼では視軸と光軸はそうずれない。魚類では、ほぼ直角になる。魚は横をぼけっと見ているのではない。前を見つめている。多くの魚で視軸は体軸とほぼ平行で水晶体は尾から吻の方向に動く。
■ヒトの網膜には中心窩と呼ばれる場所がある。ここには色覚をつかさどる錐体が密集していて視力がもっともよい大切な場所だ。魚もヒトの中心窩にあたる錐体密度の高い「よく見える場所」がある。遠近調節はこの「場所」にむかってなされ、その「視軸」の方向は、その魚の「摂餌行動」と一致するという。ハタ類では視軸は前方にあり網膜後部が「見える場所」だ。マダイやクロダイでは視軸は前下方で、スズキやカツオなどは視軸は前上方になる。反対にいうとハタ類は前の餌、タイ類は下方の餌、スズキやカツオなどは上方の餌を捕まえるため「進化」してきた、食べるためのマシンなのだ。
■魚の眼は魚眼レンズで、丸い歪んだ世界を「眺めて」いるのではない。前方の「敵」を両眼で見つめ、ピントを合わせている。それはプロフェッショナルの「スナイパーの眼」だ。その性能は想像以上に高いのだ。
■おもしろいことに、このピント合わせは得意な魚と苦手な魚がいる。イシダイ、メジナ、スズキ、ハタ類、マダイ、クロダイ、カワハギなどなどは得意な魚。ニジマス、アユ、フナ、コイなどは苦手な魚。ナマズ、ギギ、ウナギなどは、まるでピント合わせなどできない。
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■魚のレンズが高性能ならば、その視力はフィルムともいえる網膜の分解能で決まることになる。網膜の錐体密度から魚の視力を計算した人がいる。その計算から磯魚だけを、人の視力と同じ数字に直して眼のいい順に並べる。マハタ0.24、マダイ0.16、ウマヅラハギ0.16、クロダイ0.14、メジナ0.13、ニザダイ0.12、ブリ0.11、スズキ0.11などなど。「学習法」という実験で魚の行動から直接視力を測っても推定値とだいたい同じになる。
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■魚の眼は体の「横」にあるのに、なぜ「前」が見えるのか。魚の眼にも虹彩はある。サメやエイなど光によって虹彩は伸縮し瞳孔の形が変わり「猫の眼」のようになる。サメなどが「意地悪」に見えるのはそのせいか。ふつうの魚は虹彩はほとんど動かず瞳孔は開きっぱなしになっている。「鯖の眼」などといわれ死人のように嫌うヒトもいるのはそのせいか。ともかく硬骨魚類の虹彩は開きっぱなしであり球形の水晶体の半球は虹彩面より突出している。背中から魚の眼を見ると水晶体の半球がでているのが分かる。そのため単眼視野は驚くほど広く、ほぼ180度になる。マダイの場合で前下方20度のところに視軸がありそこで約30度の両眼視野がある。死角は後方だけになる。ふつうの魚では、たいてい、前方左右に30度という両眼視野を持っており、重要な機能だと思われるが、いまのところ研究はあまり進んでいない。
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■魚の左右には広大な「単眼視野」があるのだが、この領域ではピント合わせもできず遠距離にある物体は見えにくくなる。しかし「動いている物」は見える。魚にとって動く物は外敵か餌だ。運動物体への視覚はかなり重要なものだと思われる。スズキの幼魚の行動観察から遠距離にある餌を認め、これに接近するときの感覚は「運動物体への視覚」だという。速い速度の不規則運動にはとても敏感で、これが遅いか等速直線運動になると静止している物体と同じ程度にしか注意しない。
■魚類の視覚中枢には「運動物体検出型のニューロン」がありそれは「特定の方向」に動く刺激に応答し、その反対方向に動く刺激に抑制されるという。ふつう魚には背から腹の垂直方向ではなく、吻から尾の水平方向に反応するニューロンが多く、コイなどの観察から尾から吻の方向に応答し、その逆は抑制されるようだ。
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■高性能な視覚を持つ魚類、彼らを攻略するには、彼らの横を後ろから前に「不規則」に動かして、彼らのニューロンを刺激したあと、前方、つまり視軸の方向に「ずばり」と「餌」をいれたらいいのだ。それだけだ。
■わっはっは。われ釣りの奥義見つけたり。わっはっは。

初出●『磯釣りスペシャル』2000年5月号