さかなBBSトップ
魚のことならおまかせ。WEBさかな図鑑
釣具の通販・Gear-Lab
HOME 似たもの検索  携帯版  | Gear-Lab

新コミュニティ(掲示板)オープンのお知らせ

WEB魚図鑑では、2013/7/25より新しいコミュニティをオープンしました。 「このお魚何?」というQ&A専用のページもあります。是非新しいコミュニティを使ってみてください。新コミュへの投稿はズカンドットコムへのアカウント登録が必要です。2013年1月以前にWEB魚図鑑へ投稿したことのある方はアカウントの引き継ぎを行うことができます。


[このスレッドを表示]

[841] 乱麻>魚類学会★希少魚の現状と保全公開シンポの巻 
2002/5/18 (土) 17:04:09 小西英人
 5月の11日に神奈川県立生命の星・地球博物館で日本魚類学会の公開シンポジウムがありました。

 どんなものだったか、ちょっとプログラムを引用しますね。

■日本魚類学会公開シンポジウム
 メダカも消える?―日本の希少魚類の現状と保全―

開催日時 2002年5月11日(土)午後1時〜5時
開催場所 神奈川県立生命の星・地球博物館ミュージアムシアター
主 催 日本魚類学会
後 援 神奈川県立生命の星・地球博物館、日本分類学会連合、自然史学会連合、魚の会
協 賛 鈴廣かまぼこ

<プログラム>
開催にあたって(13:00-13:10)
 後藤 晃(魚類学会自然保護委員会)

基調講演(13:10-13:50):「生物多様性と希少野生生物の保全」
 鷲谷いづみ(東京大学大学院農学生命科学研究科)

第1部 希少魚類の現状を知る(13:50-14:50、各20分)
 1)日本の希少淡水魚類の現状
   細谷 和海(近畿大学農学部)
 2)日本の希少汽水魚類・通し回遊魚の現状―ハゼ亜目魚類を中心に―
   鈴木 寿之(兵庫県立尼崎北高等学校)
  3)日本の稀少海産魚の現状と絶滅の危機に瀕するトカゲハゼについて
   吉野 哲夫(琉球大学理学部)

休 憩(14:50-15:00)

第2部 希少魚類の保全策を考える(15:00-15:40、各20分)
 1)希少魚保護のための法整備と行政対応のあり方
   田村 省二(環境省自然保護局野生生物課)
 2)希少魚類の系統保存の方法と今後の発展
   酒泉 満(新潟大学理学部)

総合討論・意見交換(15:40-16:30)
 司会進行(瀬能・後藤)
終わりにあたって(16:30-16:40)
 松浦 啓一(魚類学会会長)

 というものです。

 『怪投乱麻』に書きましたので、転載しておきます。

                        英人


■小西英人■週刊釣りサンデー6月2日号より転載
==================================================

釣り人よ。青鱚の声が聞こえるか


魚類学会
希少魚の現状と保全公開シンポの巻


■われわれは、いつも耳を澄ましていなければならない。
       ■
■われわれは、数十億年の生命のドラマを演じ続けてきた地球の動物の一員である。そして生命の誕生以来、いちども命脈を途絶えさせたことがない。われわれひとりひとりはもちろん、たとえ蚊の一匹一匹といえども連綿と続く血脈の中で生きてきた。それは変容の歴史でもあるし、これからもどんどん変容していくであろう。しかし自然の流れに棹さし強引に変えるとどこに流されるかわからない。
■われわれは自然の動物の一員なのだから、われわれのすることすべて自然なのだという人もいる。しかし自然と呼ぶにはあまりにいびつな「力」を手に入れてしまった。この力で生物を変えたらいけない。連綿と続いた血脈を切ったらいけない。
■その「力」は、「生活」と呼ばれたり「産業」と呼ばれたり「食料」と呼ばれたり「資源」と呼ばれたりするが、そんな呼び名を隠蓑にしてはいけないのだ。いま危急の時なのだ。いま魚たちは悲鳴をあげている。
       ■
■日本魚類学会では魚の危機的な状況に対応するため後藤晃博士を委員長に二〇〇一年一月、自然保護委員会を設置した。そして二〇〇一年六月、国立科学博物館で第一回公開シンポジウム「ブラックバス問題を科学する−なにをいかに守るのか?」を開き、このほど第二回「メダカも消える?日本の希少魚類の現状と保全」を神奈川県立生命の星・地球博物館で開いた。
■今回は希少魚の枠を少し広げ淡水魚、汽水魚と通し回遊魚、海水魚から講演があった。枠を広げたのはいいけれど、微妙にまとまらなかったように思う。しかし会場にいる研究者たちの思いはそれほど違わなかった。その、すべてを、お伝えするわけにはいかないので、海水魚を中心に少し紹介してみたい。
       ■
■「日本の稀少海産魚の現状と絶滅の危機に瀕するトカゲハゼについて」という琉球大学理学部の吉野哲夫助教授の講演から簡単に引用する。海産魚の生息状況を把握することは困難で生物学的情報も少なく、希少魚の選定が難しいこともあって環境省のレッドデータブックには淡水魚と汽水魚のみしか扱っていない。しかし、世界で見ると国際自然保護連合のレッドデータブックには絶滅危惧および準絶滅にあたるものが三十二種あげられ、二十種がサメ類、七種がヨウジウオ類、あとの五種が、その他の硬骨魚類だという。
■これは特定の分類群にかたよりがあり、選定基準も納得できないということだった。サメ類は、フカヒレの漁業が問題になり、ヨウジウオ類はタツノオトシゴなどのことで漢方薬として大量に獲られ売買されている。そのほか日本にもいるものとして、チョウザメ、メバチ、メガネモチノウオ、タマカイ。食材として人気のある魚たちだ。日本は海産魚王国だ。日本の海産魚の調査も急がれるだろう。
■吉野助教授があげた日本の希少海産魚を列挙する。チョウザメ、アオギス、エツ、アリアケシラウオ、ムツゴロウ、トカゲハゼ、そして東京湾と沖縄島のトビハゼである。チョウザメは北海道で遡上産卵の記録があったがいまはない。アオギスは東京湾、伊勢湾、和歌山、徳島から消え、いまは豊前海一帯と山口県、そして鹿児島の吹上浜からしか報告がない。エツ、アリアケシラウオ、ムツゴロウは、あの有明海にすむ。トカゲハゼはインド洋から西太平洋まで広く分布する普通種だが日本には沖縄島の中城湾に多いときでも二千尾ほどいただけだ。干潟を這うので海産魚に珍しく双眼鏡でカウントし全生息個体数がわかっている。生息場所の半分は埋め立てられ数は激減した。トビハゼも普通種だが東京湾と沖縄島の地方個体群は隔離されている。これら地方個体群の遺伝子を調べると面白い。いま遺伝子解析は進み、テープレコーダーの記録を読むように、その種が辿ってきた道が読める。いま貴重な記録を消去している。
       ■
■遺伝的に存続不可能になった小さな個体群を、どう考えて保存するかという重い問いかけに総合討論では答えがでない。研究者として、とにかく調査記録して、分類の定かでない種をどんどん消す努力をしよう、できることからやっていこうではないかという意見が多かった。
■北海道からの報告で第五種共同漁業権、つまり内水面の放流義務をともなう漁業権があり、産業サイドでは、放流が許されるのに、なんで釣りのサイドでは許されないのか…、そういうことで、釣り人のコンセンサスが得られない。絶滅する種を守る前に、生態系をいかに守るかを考えなければいけないのではないかとも問題提起された。
■そうである。ぼくも釣り人と話すときに苦労する。水産系の研究者には、放流はいいことであるという人が多いのも困る。よくないのである。希少魚に対する圧力ももちろん、普通に見られる重要な種群に遺伝子攪乱を起こしたり、ウィルス汚染や寄生虫汚染を起こしたり、産卵場所を失ったことに気がつかなかったり、産卵場所、生息場所を無理に占有させることでほかの種が駆逐されたり、どんな問題を引き起こすかわからない。ことは内水面だけではない海面でも深刻である。しかしなんとなく議論されない。希少種はダメージを受けやすく見えやすいので「指標生物」にもなるが、それが示すのは水辺の疲弊、水辺の病害だ。すべての生物の問題だ。その原因を除くのに例外はない。少なくとも研究者の議論の場では、例外なく議論されなければ解決策は見えない。
       ■
■水辺の危機的な状況に、いちばん敏感な人たちは釣り人だろう。魚だけ見ても精妙で複雑なシステムであり、まったくの謎である。釣り人というのは偏愛する。黒鯛命、石鯛命、眼張命そんな変な人たちが、ごろごろいる。そんな偏愛者が、ひとつの魚を見つめ続けてこそ見える全体、見えるシステムがある。これは貴重な情報、それを社会に伝えていこうではないか。
■よき偏愛で水辺を見つめていきたい。人の利害で考えてはいけない。危機は危機としてとらえ、ひとつへの偏愛が、いびつな力になるのだったら、率直に反省して、ちがう形に変えなければならない。ブラックバス問題しかり。しかし、問われているのはブラックバスだけではない。アユでも、ヘラブナでも、アマゴでも、スズキでも、クロダイでも、なんでもなのだ。
■それぞれ、好きな魚の声を聞こうよ。ほら耳を澄まして。