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[898] 魚あれこれ>遊泳…筋肉について 
2002/5/21 (火) 14:20:57 小西英人
 魚あれこれを、下から救いだしておかなければ、深く静かに潜行しているもんで…。

 このまえ不調の時のテストに使ったテキストなので、見た人もいるかもしれないけれど、あげておくね。

                           英人


■『磯釣りスペシャル』2001年3月号より転載
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魚あれこれ
ぎょぎょ事典 番外2

それは泳ぎながら泣いている! のかもしれない
遊泳■

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■ヒトとウオは似ている。そら共通の祖先から生まれてきた兄弟なのだから。しかし決定的に違うところも多いよね…。
       ■
■陸上を歩行する四足動物、われわれはいつも重力と闘わなければならない。水中に棲むと水の密度は大きいので大きな浮力を受けて、ほとんど「無重力」で過ごすことができる。そのため陸上動物は重力と闘うための筋肉が発達することになったが魚の筋肉、体側筋は前進のための推進力を発生したらよく、そのためにだけ発達している。
■魚の遊泳のための推進力は、ふつう尾鰭によってうみだされる。四足動物の四肢と同じ器官である胸鰭と腹鰭は平衡をたもつための補助器官になる。われわれは四肢が前進のための器官となって、反対に尾は平衡をとるための補助器官になり、ヒトなどは、なくしてしまって痕跡的な尾しか持っていない。
■重力がない世界で推進力を発達させた魚たち、自分の体重と同じくらいの魚と闘ったことのある磯師なら、彼らがどれほど強いか、身にしみて知っているだろう。まともに引っ張りあうと海に引きずりこまれる。しかしその最高の筋肉によって「美味しい」「面白い」などといわれ、水上から追い回され狙われるような羽目に陥るとは…。
       ■
■釣り人なら「血合」くらいは知っているだろう。お造りにしたときなどに、はっきりと違って見えるあの赤い肉である。この血合肉を血合筋、もしくは赤色筋、赤筋と呼ぶ。それ以外のほとんどの筋肉は普通筋、もしくは、白色筋、白筋と呼ぶ。ごくふつうに魚の筋肉をわけるとき、赤身魚、白身魚と分けることが多い。このときの赤白とは普通筋の色で呼ばれている。赤身魚の普通筋は、白身魚の血合肉、つまり赤色筋より赤いことも珍しくない。間違えないように、ここでは赤白を使わず、血合筋と普通筋と書いていく。
■ブリの血合筋重量は体側筋の9lを占める。東京大学海洋研究所の塚本勝巳博士によれば多くの魚で血合筋の占める割合は10lを超えず、ボラ9・3、マサバ8・4、マアジ6・5、ギンブナ3・9、ヘダイ3・2、コイ2・7、ニジマス2・5、シロギス1・2だという。この血合筋はふつう体側中央の表層部にあり、脊椎骨と網状の腱でしっかりとつながっている。血合筋は、持続力に欠かせない筋肉だ。またカツオやマグロ類はこの血合筋が脊椎骨の深いところにある。これらは真性血合筋とか深部血合筋と呼ばれる。
       ■
■東京水産大学の有元貴文博士によれば、遊泳能力を考えるときには、遊泳速度、持続時間、疲労の3要素が重要だという。そして遊泳速度は、持続速度、中間速度、突進速度の三つに分類するのが一般的だという。
■@持続速度=血合筋による疲労しない速度、1〜2時間以上継続して遊泳できる。さらに最小持続速度とは魚体沈下を防ぐ揚力のための前進速度で、最大持続速度とは普通筋を利用しない遊泳の境界速度のこと。
■A中間速度=血合筋と普通筋が関与する速度。速度に応じ持続時間は減少する。@とAの速度を合わせて巡航速度。
■B突進速度=普通筋が主体の瞬間的な速度、数秒間のみ持続できる高速遊泳。なかでも筋肉の能力としての理論的な最大値を最大遊泳速度という。
■コイやギンブナはたまに急発進するが、ふつうは静止している。このタイプの魚はAの中間速度がない。またシロギスやヘダイには@の持続速度がない。じっとしていても大丈夫。
       ■
■ここで速度の定義に血合筋と普通筋が使われているのに注意して欲しい。ものすごく簡単に書いてしまうけど、血合筋は筋繊維が細く、毛細血管が多く、多量の血液が供給されて、血液から酸素を取りこむ色素蛋白なども多く含まれている。血合筋は血液から供給される酸素により脂肪を分解させて運動エネルギーを得ている。普通筋はグリコーゲンを分解させて運動エネルギーを得ていて多量の酸素は必要ない。カツオの筋肉の酸素消費量を測ってみると血合筋は普通筋の5倍の酸素を使うという。血合筋に瞬発力はないが疲れにくい。普通筋は瞬発力はあるが疲れやすいのだ。
■釣り人は魚に走られると、スピードと力と重さを、その竿から感じると思う。スピードがあると感じるのは血合筋の発達した魚、力があると感じるのは普通筋の発達した魚、重さは、そのものずばり魚体の重さを感じているのだろうと思う。このすべてにバランスのとれている魚こそが、釣り人にとっての素晴らしい魚ということになる。
       ■
■さて、実際の遊泳スピードはどれくらいあるのだろうか。魚のスピードの単位は1秒間にその魚の体長の何倍進めるかという体長/秒で表すことが多い。BL/sだ。ベインブリッジは1960年に突進速度はどの魚でも体長に関わらず10BL/sになることを見つけた。1bの魚なら毎秒10b、時速になおすと36`になる。しかし、それなら体長12bのジンベイザメは時速432`になってしまうのですべての体長というわけではない。ブラウントラウトでは体長10aのとき17・5BL/sで、40aになると1・5BL/sになるという。魚の突進速度は、だいたい10〜15だと考えられていて、大きくなると水の抵抗が増えるので、この体長の倍数の数字では下がっていく。
       ■
■一般に魚の推進力は、体は紡錘形で、尾柄部がくびれ、尾は強く二叉し、尾鰭が硬いほど強いとされる。カツオ・マグロ類や、アオザメなどの外洋表層性の大型サメの形が強いのだ。
■カツオ・マグロ類の尾鰭は翼である。前縁はまるく後縁はとがっている。翼の性能をあらわすのに翼幅の二乗を翼面積で割るアスペクト比が使われる。グライダーのような翼はアスペクト比が大きく、ジェット戦闘機のようなデルタ翼は小さい。翼としての性能はグライダー型の方が高い。アスペクト比はカツオがもっとも大きくて7・2、ヒラソウダ6・5、クロマグロ5・5、マサバ4・6だ。
■彼らは高性能翼を強烈にはばたかせて推進力にし、背鰭と腹鰭は抵抗を減らすために畳み、胸鰭と尾柄部の隆起線は水平翼のように使って揚力を得て沈んでいくのを防いでいる。背鰭と臀鰭の後ろにある小離鰭は整流板の役目を果たす。その呼吸は口と鰓蓋を開いて圧力差によって鰓に水を通す、ジェットエンジンの空気取り入れと同じ方法なのでラムジェット換水法と呼ばれる。外洋の表層を高速遊泳する彼らは航空力学と流体力学の権化のような構造になっている。しかし、その高性能を維持するために彼らは生涯を高速遊泳する。泳がなければ死ぬ。
■京都大学の中村泉博士は、見事に適応しているマグロ属魚類を「進化の袋小路に陥ってしまった」と表現し、華やかな魚の王者は哀れだと書いている。
       ■
■過ぎたるは及ばざるが如し。重力に不様にさからって不細工に生きているぼく、よく眠れるもんね。幸せなんだなあ。

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■参考文献リスト■ありがとうございました■
■『魚類生理学』板沢靖男・羽生功編 恒星社厚生閣 第17章 『遊泳生理』塚本勝巳 1991年
■『魚の行動生理学と漁法』有元貴文・難波憲二編 恒星社厚生閣 1996年
■『日本動物大百科6魚類』中坊徹次・望月賢二編 平凡社 1998年