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新コミュニティ(掲示板)オープンのお知らせ

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[1179] シズって、イボダイ? 
2002/6/11 (火) 19:23:12 西潟正人
◆画像拡大
伊豆地方の干物屋さんに、並んでました。イボダイと表示してあり、不信に思って尋ねると大型のイボダイは、こうなんだと返事が返ってきました。
店頭には輸入されたままの冷凍箱が山積みになっており、この魚もおそらく輸入物です。

例の小学館「食材大図展」のイボダイの項に・・・市場ではエボダイともいわれる北米大西洋でとれる輸入魚のシズ(バターフイッシュ)とは異なる・・・。
シズの項には・・・観光地などではイボダイの干物の代用としてシズを使っているところが多い。

そこで私は、この魚はシズであると結論付けたのですが・・・小西さん、どうも違うようですね。イボダイよりは大型です、25センチくらいのもありました。
一年間、間違った考えで生きてきたのかなぁ。同定をよろしくお願いします。

[1180] ホシゴマシズ>マナガツオ科の魚です 
2002/6/11 (火) 21:00:05 小西英人
▼ 西潟正人さん

 ほんと流通名はややこしいよね。

 この魚は原産国のチリで Pampanito といいます。分布は南アメリカの太平洋沿岸、主としてチリ沿岸、希にペルーのカヤオ附近まで出現します。

 学名は Stromateus stellatus Cuvier, 1829

 日本名は(決して標準和名と呼びたくないです)ホシゴマシズで、その名の出典は『パタゴニア海域の魚類』(海洋水産資源開発センター・1986年)です。この本、まえに古書店で手に入れ損ねて(競争が厳しいのよね)以来、まだ見つかりませんので、ぼくは持っていません。欲しいよう!

 イボダイ科ではなく、マナガツオ科の魚になります。イボダイ科もマナガツオ科も近縁であり、英語では、その粘液から、どちらの科の魚もバターフィッシュと呼びます。

 九州ではイボダイ科のイボダイが、ときに大量に獲れて、「しず」として出回ります。この名が、そのまま西日本に流れたり、関西では「うぼぜ」と呼ばれたりします。

 流通名で、マナガツオ科のこれを、「しず」とか「えぼだい」と呼ぶようですね。

 詳しくは、したのアドレスで見てください。     英人


http://www.jamarc.go.jp/zukan/i/i-m061/i-292.htm

 また、千葉県水産研究センターに下のような告知があったので、アドレスと、これは引用もしておきますね。

http://www.awa.or.jp/home/cbsuishi/04kakou107.html

ホシゴマシズ、ゴマシズの取り扱いについて

 アルゼンチン沖で漁獲され、我が国に輸入されたホシゴマシズ、ゴマシズによる食中毒と疑われる事例が平成11年6月と10月に発生しています。それに関連して平成11年12月22日付けで厚生省生活衛生局乳肉衛生課長から、当該魚については、当面の間、販売等を差し控えるよう通達が出されましたのでお知らせします。
 マナガツオ科に属する両種は、業界では『シズ』および『エボダイ』として流通しており、6月の事例は長野県上伊那郡、10月の事例は大阪府貝塚市で、いずれも学校給食として職員、生徒及び児童等に提供され、腹痛、下痢、嘔吐、吐き気の発症がみられます。
 食品及び患者からは食中毒菌が検出されないため、脂質成分を調べた結果、毒性は低いが、摂取量によっては下痢などを起こす可能性があるとされているジアシルグリセリルエ−テルの含有量が高いことが判りました。
 分布水域は、ホシゴマシズが南米の太平洋岸のうち主としてチリ沿岸域、ゴマシズが南米の大西洋岸のうちブラジルからフェゴ島にかけてです(図1)。形態は、極めて類似し見分けがつきにくいが、ホシゴマシズはその名のとおり背の部分にゴマを撒布したような黒い斑点があるのが特徴となっています(写真1)。しかし、日本近海で漁獲されるヒラサバとゴマサバの例でも、体表の斑点からは識別しにくいことがまゝあるので、他の特徴も参考にして見分ける必要があります。(網仲)

[1181] Re:ホシゴマシズ>マナガツオ科の魚です 
2002/6/11 (火) 23:38:06 西潟正人
▼ 小西英人さん

なるほど、北米産ではなく南米さんですね。
できることなら、ホシゴマイボダイのほうがわかり安かったかな。でも、マナガツオ科ですもんね・・・・しかし、質問されたら、どう説明すればよいのか、まだちゃんと理解できてないようです。

標準和名ではなく、日本名ですね!深い意味がありますもんね、心掛けます。

[1187] Re2:ホシゴマシズ>マナガツオ科の魚です 
2002/6/12 (水) 05:44:53 小西英人
▼ 西潟正人さん

 流通名はいりまじりますから、とりあえず、使わないようにしたらいいのではないかと思います。とくに「しず」や「えぼだい」は、関西では絶対に、イボダイ科のイボダイだと思ってしまいます。活字にしたりしたら、怖いですよね。

 イボダイ科のイボダイ。そして南米産のマナガツオ科の「ほしごましず」でいいのでしょうが、また、標準和名とか、そういう考え方や呼称は、みんな知りませんものね。

 まあ、流通名ではありませんが、地方名でいえば、関東の「もろこ」関西のクエ、九州の「あら」みたいなもので、絶対に注釈をつけなければ、人に、その魚を伝えられないケースはあります。「しず」もそうなんでしょう。

 関西で「しず」とか「うぼぜ」とかいうのも流通名です。

                         英人
ps
 外国産魚でも、きちんと同定された標本があって、それをもとに和名が提唱された場合、標準和名だと考える方が自然です。ホシゴマシズの和名提唱がされている『パタゴニア海域の魚類』(海洋水産資源開発センター・1986年)というのは、流通する外国産魚の知識を正確にするために研究者に委嘱されてつくられた学術書です。ぼくホシゴマシズの記載は、本を持っていないので見ていませんが、きっちり記載されているはずで、標準和名だと考えていいでしょう。

 しかし、外国産の市場流通魚にすべて標準和名をつけて、なにか分からなくしてしまうような名前は厭ですね。それで、日本名と書いたのです。

 ホシゴマシズの場合、たとえば、「パタゴニアマナガツオ」とでもしておけば混乱はないのですが、それなら、一発で輸入物とわかるので、市場関係者は嫌がるのでしょう。

 ぼくらが、中国産スズキを「ほしすずき」と呼んでいて、実際に和名提唱のときになって中坊さんが「タイリクスズキ」としたのは、外国産魚であるということを明確にしたかったからです。そこで「ちゅうごくすずき」としたら味気ないですが、大陸…としたところが偉くて、さすがのネーミングだと思います。このタイリクスズキを、「ひらすずき」と呼ぶ流通系の人も多いようですね。

 和名は難しいです。

[1188] 標準和名>という名の紳士協定 
2002/6/12 (水) 05:57:08 小西英人
▼ 西潟正人さん

 標準和名という「考え方」は、なかなか難しいものがあって、大手一流出版社の図鑑編集者でさえ、知らないことが多いのです。だいたい、ぼく、魚類学会に参加して、ほかの編集者と会ったことは、ほとんどないもんね。研究者でさえ、きちんと認識している人は少ないのです。

 その標準和名のことを書いた『怪投乱麻』が、ここの過去logにありますので、再録しておきます。いま、外国産魚に対する日本名命名の考え方などまったくありません。日本水族館動物園協会の内部の話し合いで、国名+魚名の命名はやめようという内規があると噂を聞いたことはありますが…。たとえば、まえまで標準和名になっていた、オーストラリアキチヌのような例ですね。これ、たしかに、ややこしくなる危険性がありますし、実際ややこしくなったので、オキナワキチヌに変更されました。

 閑話休題。再録します。            英人


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 いま、魚類の標準和名というのは、決まりがあるようで、まったくない、ちょっと「ぬえ」的なものであります。

 そのために、ちょっと見えにくいものになっています。

 2000年の魚類学会のシンポジウムで、標準和名の問題がテーマになりました。そのときのレポートを、『怪投乱麻』で書いていますので、ここに転載しておきます。これで「標準和名」という考え方はわかっていただけると思いますが、いろいろな側面がありますので、疑問があれば書いてください。

 このときのコンビナーの瀬能さんたちが中心になって、魚類学会の中で和名委員会のようなものができかけたのですが、そのあとすぐにブッラクバスなどの外来魚問題が起こって、そちらの対策に魚類学会も追われて、いまのところ、進展はありません。

                             英人

■怪投乱麻Vol.33■週刊釣りサンデー2000年10月29日号から
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標準和名。紳士協定なんだけどな


魚類学会
「魚の和名を考える」シンポジウムの巻


■ぼくは、このごろメジナと表記したり「ぐれ」と表記したりする。クロダイなら「ちぬ」である。シロギスなら「きす」である。そう書き分けることが多い。なぜかは分かると思う。標準和名を片仮名表記、あと地方名、釣り人の俗称、流通名などは平仮名表記か漢字表記にするように心がけているのだ。標準和名というものを、文章の中ではっきりさせるためである。
■それなら「標準和名」って、どんなもので、どこで決めているか、ご存じだろうか?
       ■
■標準和名の定義は……ない。どこも決めていないし誰も決めていない。正式なルールはまったくない。研究者でさえ、標準和名のことを正式名称とか、学術的な名称とか、つい説明してしまう人がいるので、当然、どこかできちんと決めているのだろうと思われるが、まったく何もないのだ。正式もしくは学術的な魚の名称とは、あくまでも学名である。国際動物命名規約で厳密に定義されたラテン語の二名法で表記するのが学名であり、正式な動物の名前である。日本魚類学会では学名しか扱わず標準和名などは「ほうっておいたら」よいという「感じ」がいままで大勢をしめていた。
       ■
■話を簡単にしよう。「標準和名」とは「考え方」であって、ルールはまったくない。しかし学名では名前が普及しないし、教育上もよくないので研究者たちは学名とともに標準的な和名を提唱してきた。それが標準和名である。一九一三年(大正二年)に出版されたジョルダン、田中、スナイデルの『日本魚類目録』で日本産すべての魚類に標準和名をあたえる試みがなされている。このとき東京帝国大學の田中茂穂博士は、海水魚は東京魚市場の名称、なければ神奈川県三崎の名称、淡水魚は琵琶湖沿岸での名称を用いるようにしている。東京の呼び名のメジナと琵琶湖の呼び名のオイカワが標準和名になっているのを不思議がる人がいるがこういう理由である。だいたいこの『日本産魚類目録』(原文は英語)から魚の標準和名という考え方が始まったと思っていい。それから研究者たちは「標準的な和名」を、さまざまな「出版物」に載せるようにしてきた。
■標準和名の定義らしいものがあるとすれば、出版物により提唱されて安定してきた、ひとつの和名…であろうか。その提唱の時の考え方は、あくまでも研究者の「紳士協定」のような暗黙のルールで培われてきた。それが日本では、非常に安定したものになっており、標準和名と呼ばれるものになっている。
■詳しくは書かないが厳密なルールのある学名は、その厳密さゆえ変更が多い。ゆるやかな和名はその曖昧さがゆえに、非常に安定している。マダイの学名は、いつ変わるか分からないけれど、マダイの標準和名が変わることはあり得ない。また、マゴチの学名はなく正式には「いない」魚なのだが、マゴチという標準和名で研究者も釣り人も共通に認識できる。その和名を学名のように厳密に扱うと、かえって標準和名が不安定にならないかという恐れもある。
       ■
■標準和名は「紳士協定」だと書いた。もうひとつの性格があってコンピュータ業界などでよくいわれる「業界標準」的でもある。「業界」とは「学会」ではない。「出版により提唱」されながら安定していくのだから「出版業界」なのである。出版することにより和名を提唱し安定させなければならないのだから出版社の責任は重大である。週刊釣りサンデーも魚類図鑑を出版しているから、これに関しては重大に考えているし、そのためにこそ、ぼくは魚類学会に入り顔を出すようになった。ところが、日本を代表するような出版社の図鑑類の編集責任者でも、この認識はない。ふつうの釣り人と同じ、どこかで決められているんだろう、研究者がやればいいことだという認識なのである。出版にまったく責任はないと考えている。それで平気で新しい魚だからと和名の新称の提唱をしてしまい大混乱におちいる。それで一九九五年の日本魚類学会シンポジウムでは神奈川県立生命の星・地球博物館の瀬能宏博士が、学会で標準和名のガイドラインを起案することを提唱した。しかし学会は和名には関与しなかった。
       ■
■十月九日、今年度の魚類学会シンポジウムは標準和名に絞ったテーマになった。「魚の和名を考える−差別的名称をどうするか」である。瀬能博士と徳島県立博物館の佐藤陽一博士がコンビナーになり、水族館からは串本海中公園センターの内田紘臣博士、また「人権からみた生きものの名称」で大阪人権博物館の朝治武さん、「視覚障害者からみた差別的名称と展示について」で手でみる博物館の桜井政太郎さんが話題を提供して、活発な総合討論がなされた。
■イザリウオ類、メクラウナギ類などの、差別的な名称をどうするのかというのが、このところ問題になっていた。ところが定義もルールもない標準和名の場合、そういう差別的な名称が問題になっても、検討もできないし、改称もできない。
■ぼくも連載中の『似たモン魚譜』のイザリウオの項で、イザリウオの語源説には二説あり、海底を這う格好から膝行だという説と、吻のうえの「ルアー」で小魚を「釣って」捕食するから漁(いさり)魚からきたという説があると書いた。そして魚名の安定性と教育的な配慮からイザリウオをイサリウオに改めるようなことも考えてはどうかと書いた。改名するかどうかはおいておいても、いま、こういう議論をする場所さえない。
       ■
■朝から夕方まで白熱した議論が続いた。結論として、魚類学会の中に「標準和名委員会」のようなものをつくり、和名の定義と提唱や変更についてのガイドラインを議論する場を設け、学会内だけではなく、広く意見を聞きながらすすめましょうということになった。これは研究者たちが社会に対して「標準和名」まで責任を持ちましょうと宣言したことにもなる。このことによる研究者の負担というのは想像以上に大きいのだ。
       ■
■それぞれの地方でそれぞれの魚名をつかい、愛着を覚えるのは当然だ。しかし、せっかく研究者が踏みだしてくれたのだから釣り人も「標準和名」をきちんと考え、理解して欲しい。そして「それぞれの名」が標準和名と対応できるようにしてほしい。そして不適切な和名は、適切な和名になるように、みんなで考えていきたいと思う。

[1189] 標準和名>ちょっと補足 
2002/6/12 (水) 06:06:43 小西英人
 標準和名のこと、いろいろ書くと、日本は遅れていると思われ勝ちですが、すべての日本産魚に学名とは別の標準和名が種別につけられ、一般に流布しているという、この日本の状況は、かなり先進的というか、こんな国はありません。

 外国の場合、種を認識したいのなら学名、ざっと知るのなら、まとめて適当な名前で呼ぶことが多いのです。

 それで、不便なので、FAOが、FAOネームをつけたり、FISHBASEが、FISHBASEネームをつけたりしはじめています。ぼくは、次の図鑑での外国産魚の名の取り扱いは、FISHBASEネームに準拠しようかなと思っています。それで、ホシゴマシズのFISHBASEネームを調べたら…ありませんでした。

 あああ、日暮れて道遠し…。        英人

[1190] Re3:ホシゴマシズ>マナガツオ科の魚です 
2002/6/12 (水) 06:24:03 小西英人
▼ 西潟正人さん

 ぼくのあげていたアドレス

http://www.jamarc.go.jp/zukan/i/i-m061/i-292.htm

 のホシゴマシズの中村泉さん(京都大学大学院農学研究科の助教授でしたが、今年、定年退官されてカリフォルニア州のスタンフォード大学の特別研究員として研究されています。サバ科、とくにマグロ類の専門家です)の記載は、これ、JAMARCの図鑑でした。海洋水産資源開発センターの図鑑のインターネット版なのです。

 パタゴニア海域の重要水族 IMPORTANT FISHES TRAWLED OFF PATAGONIA というのもので、ぼくのあげていた、和名の出典とおなじもののインターネット版です。

 このごろ、インターネットも、ほんと便利になりましたね。

                            英人

[1191] Re4:ホシゴマシズ>頭スッキリ! 
2002/6/12 (水) 12:40:13 西潟正人
▼ 小西英人さん

ありがとうございました。
イボダイ科イボダイ、南米産マナガツオ科ホシゴマシズ。
頭が、ようやくすっきりしました。
漁師町でわかってるヤツは、なかなかいないだろうなぁ。
ちょっと、得意になった気分です。

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