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[175] 書評>『日本産魚類検索 第二版』 
2002/2/8 (金) 14:47:14 小西英人
 この【さかなBBS】と【WEBさかな大図鑑】では、学名と標準和名を『日本産魚類検索 第二版』に準拠します。

 それでは、『日本産魚類検索 第二版』って、なんなんだろうと思う人もいるでしょうから、とにかく、この本が出たときに、ぼくが週刊釣りサンデーに書いた書評を、転載しておきましょう。

 読んでみてください。            英人


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■これは絶対にマダイである…
それを確かめるのにはどうしたらいいのだろう。
新世紀…釣り人も「最高」まで簡単に踏みこめるようになった
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小西英人■週刊釣りサンデー2001年3月4日号より転載


■『日本産魚類検索 第二版』■発刊の衝撃■
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分類学はここまで来た

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 これは絶対にマダイである。間違いないマゴチである。などとおっしゃる釣り人は数多い。特に名人と呼ばれるほどの人になると、ちらりと魚を一瞥して言い切りはる人が多い。
 釣り人って、ほんとうに羨ましいばかりの「自信家」集団だなあと思う。この世の中に「絶対」などないのである。釣りほど「絶対」のない遊びをしているのに、愛らしい釣り人たち、なんで気づかないのか…。

■間に合った!


 ならば「間違いない」魚の名前って、どう決めるのか言ってみよと叱られそうだ。そう、ぼくは『新さかな大図鑑』『釣魚検索』『釣魚図鑑』の三冊の魚類図鑑の編者、それが、絶対などない、分からないなどと呑気なことも言ってはおれない。
 まあ、いい機会だから、ほとんど知られていない、魚の名前の調べ方、同定というが、その方法などを書いてみよう。
 むちゃくちゃ簡単に言う。
 一七五八年に出版されたスウェーデンの大植物学者カール・フォン・リンネの書いた『自然の体系・第十版』以降に出版された、すべての学名を記載した出版物の中から決める。そして生物は、いくら記載されてもその実体は分からない。記載文には標本が指定されている。いろいろあるが世界でただひとつの標本につけられた名前が学名だと思っていい。二四三年間に書かれた、すべての論文と標本を調べて、やっと、動物の名前は確定するのである。名前を調べることを同定というが、厳密にいうと学名を担う標本と同じかどうか確かめることをいう。
 そんなことできない。ならばどうするか。とにかくすべての記載を見て合わせていく。
 そんなことできない。ならばどうするか。図鑑の中の図鑑、最高の図鑑を見るのである。
 そんな図鑑はあるのか…。
 ある。
 二〇〇〇年十二月二十日に刊行された『日本産魚類検索 第二版』がそれだ。二十一世紀に十日あまり早く間に合ったのである。日本の魚類分類学は、ここまで来たんだと二十世紀の終わりに高らかに宣言できた。

■みんな立った


 『日本産魚類検索』という魚類図鑑は、とても変わった図鑑である。世界でも例がない。あまりにも変わっているので釣り人のみなさんで購入した人は戸惑ったのではないかと思う。
 一般に魚類図鑑というと「絵合わせ」である。写真でもいい図版でもいい、とにかく、そこに載せられた「絵」と実物を合わせて、その名を決めていく。これは、ほんとうは、とても修練と能力のいる方法であり、ふつうには確実な同定などできない。また絵合わせだと、変異などになかなか対応できない。
 きちんと同定するときには、その分類群のリビジョンとかレビューとかいうが、とにかく最新のよくまとまった「再検討論文」か新種記載論文を調べる。そこには、すべての標本や、すべての間違えてつけられた名前のリストがあるはずである。そして、たいてい検索表がある。それは、ある分類群について絶対に間違いのない「キー」に従って落としていくと名前に行きつくというものだ。これはふつう文章で書かれている。このキーをもとに絵合わせもして同定ができ、名前が決定できる。
 ところが検索表の文章のキーというのは専門知識がなければほとんど分からないだろう。
 京都大学の中坊徹次教授は、好奇心旺盛で、水を見るとすっ飛んでいって中を覗きこまなければ気がすまないという「好きもの」の研究者であり、ありとあらゆる魚類分類群に強い。しかし、もともとネズッポ科で学位をとった「がっちょ博士」である。その博士、日本海区水産研究所から依頼され日本海産ネズッポ科魚類の同定用の「検索表」をつくった。そのとき分かりやすいようにと「検索図」を工夫してみた。これが世界にも例のない「絵解き検索図鑑」のヒントになった。キーを言葉ではなく部分図にして、図から分岐をたどって知りたい名前の所に落ちるようにした。それから壮大な話になる。日本産全種をその検索図で表現してしまおうと考えた。十四人の研究者で十年かかって仕上げたのが『日本産魚類検索』だ。初版第1刷は一九九三年十月十二日。この日魚類を扱う者みんなが、同じプラットフォームに立った。

■批判こそ進歩


 日本の「図鑑の中の図鑑」になるための要件を書く。
 @日本産魚類の全種が記載されていること。
 A最新の論文に基づくものであり、それらの引用論文が明記されていること。
 Bそのうえで、問題や変更などがあれば、その議論が明快になされていること。
 Cそれらの裏付けのある明快なキーを示して、それによる同定が可能であること。
 この要件を満たす図鑑は、いま『日本産魚類検索』以外にはない。これらの要件があるから素人でも部分図を見ながら落としていっただけで、二四三年間に書かれた、すべての論文と標本を調べて名前を同定するのとほぼ同じことができる。研究者にとって魚名とは学名であって標準和名の取り決めはない。しかし標準和名を、もしきっちりとしたものと考えるなら過去の論文を精査し混乱のないように整理しつつ学名と対照できるような日本産全種が載っている図鑑で決めなければならない。そういった意味から、乱暴に言ってしまうと、標準和名とは『日本産魚類検索』に使われた和名だと考えてもいいだろう。
 この図鑑の重要性がお分かりいただけただろうか。三六〇八種の日本産全種を絵解き検索してしまった図鑑が刊行された、一九九三年は、魚を扱う者にとって衝撃の年だった。分類学者も生態学者もダイバーも釣り人も魚屋も、その辺の魚好きおっちゃんまで、すべて同じ土台にあがれてしまったのである。
 こうなると学問は進む。土台ができると批判が集まる。批判こそが進歩であり、その批判を吸収して大きくなるものこそ本物であると思う。『日本産魚類検索』は一九九五年に初版補訂第2刷がでた。これ以後、魚類の論文の参考文献には必ず(中坊、一九九三)か(中坊、一九九五)という引用が見られるようになった。ちなみに『新さかな大図鑑』はこの初版の業績があったからこそできあがった図鑑であり、『釣魚検索』そして『釣魚図鑑』はこの初版補訂第2刷があったからこそできあがった図鑑なのである。

■分類学揺れる


 魚類分類学にとって、また一九九〇年代、二十世紀の最後の数年というのはエポックメイキングな数年でもあった。現代の分類学というのは進化の結果を反映した系統類縁関係を表現したものになっている。そして一九六〇年代から分岐学という理論がひろまって激しい議論が世界中で闘わされている。そして遺伝子の分子データを用いて系統解析ができるようになったのは、ごく最近のことで、ここ数年、魚類分類学は揺れに揺れて日進月歩で進んでいると言ってもいい。その成果を貪欲に取りこみ分類体系を最新データに変え、二〇〇〇年八月までに世界中で公表されたすべての種と、二〇〇〇年十一月までに公表された日本初記録種、さらに研究中のものを予報的に公表したものまで含めて三八六三種を同定できるようにしたのが『日本産魚類検索 第二版』である。本文は一四八〇ページだったのが一七五二ページになり、二分冊になった。ただの第二版ではない。まったく新しいものだ。
 「英さん。まったく変えてるからな。悪いけど、学問の進歩というものはそんなものや。たのんだで」…。『新さかな大図鑑』を増刷しようと世紀末に中坊研究室に電話したら、師はのたまう。学名も分類群も最新のものにしたから、第8刷からは『日本産魚類検索 第二版』に準拠しようということなのだ。『新さかな大図鑑』は主要沿岸魚八四五種である。その変更といっても大したことないと安請け合いしチェックしてみて驚いた。かなり変わっていた。
 標準和名で変わったのはオーストラリアキチヌがオキナワキチヌに、チカダイがナイルティラピアに、クィーンフィッシュが日本からも記録されてオオクチイケカツオに。学名はかなり変わった。学名の変更は、普通の釣り人には関係ないと思われるが、大きな意味を持つ。そして科などの変更もかなりの数に及んでいる。スズキ科だけで言えば、アラ属はハタ科に、イシナギ属はイシナギ科に、ホタルジャコ属とオオメハタ属はホタルジャコ科に、オヤニラミ属はケツギョ科に変更された。日本産スズキ科はスズキ属2種と移入種1種の3種になった。大幅に変えた『新さかな大図鑑』の第8刷は三月末に刊行する。

■読者への挑戦


 とにかく二四三年間の論文と標本を凝集した図鑑が世紀末にでた。日本魚類分類学は最高点に達し、そしてまた新たな出発点に立った。これからである。二十一世紀の分類学はこれから面白くなる。いま、みんなの目の前で変わりつつあるのだ。
 −−日本にはまだまだ名称が付けられていない魚がいる。本書を手引きにして、新しい発見をしていただきたい。それが著者一同の願いである。−−著者を代表して中坊博士の言葉である。これは読者への挑戦状でもあり二十一世紀をみんなで面白くしようぜという呼びかけでもあろう。これこそ魚の名前を完全に調べられる図鑑の中の図鑑であるし、これに載っていない魚こそ二十一世紀に発見されるべき「新種」なのである。


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『日本産魚類検索 第二版』2000年12月20日 第1版第1刷発行
東海大学出版会 定価28,000円+税

■編者
 中坊徹次
■著者
 藍澤正宏
 青沼佳方
 明仁
 池田祐二
 岩田明久
 坂本勝一
 島田和彦
 瀬能宏
 中坊徹次
 波戸岡清峰
 林公義
 細谷和海
 山田梅芳
 吉野哲夫

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