さかなBBSトップ
魚のことならおまかせ。WEBさかな図鑑
釣具の通販・Gear-Lab
HOME 似たもの検索  携帯版  | Gear-Lab

新コミュニティ(掲示板)オープンのお知らせ

WEB魚図鑑では、2013/7/25より新しいコミュニティをオープンしました。 「このお魚何?」というQ&A専用のページもあります。是非新しいコミュニティを使ってみてください。新コミュへの投稿はズカンドットコムへのアカウント登録が必要です。2013年1月以前にWEB魚図鑑へ投稿したことのある方はアカウントの引き継ぎを行うことができます。


[このスレッドを表示]

[8197] 書評>黒潮の魚 
2003/8/31 (日) 06:43:36 小西英人HomePage
◆画像拡大
『以布利 黒潮の魚』(中坊徹次ら編・大阪海遊館・2001年・6000円)

 いま、WEB魚図鑑のトップページに、さかなにまつわるエッセイを集めたコーナーをつくろうとおもっていますが、それようにまとめた中から、『黒潮の魚』の書評を転載してみます。

                            英人

=================================================================
■週刊釣りサンデー■2001年6月3日号から転載
=================================================================
■黒潮に新顔が増えた!■


  小西英人
=================================================================
●イブリカマス☆カイユウセンニンフグ
○日本初記録種が2種記載された図鑑がでたぞ
●水族館と研究者と漁師が出会い
○ユニークな黒潮の図鑑が生まれた
=================================================================
■書評■『以布利 黒潮の魚』中坊徹次ほか編・大阪海遊館 定価6000円


■「新種発見!!!」なんて夢とロマンがある。二十一世紀になっても、どんどん魚の新種は発見されていくのだろうか?
■このほど大阪海遊館から一冊の魚類図鑑が刊行された。非常にユニークな図鑑である。その図鑑で「日本初記録種」が2種報告された。われわれの黒潮の仲間に「ふたつ」の新顔が増えたのである。イブリカマスとカイユウセンニンフグの2種だ。日本初記録種ってなんだろう。新種とどう違うのだろう…。
       ■
■おもしろうてやがて悲しき水族館、なんていわれることがある。楽しみに来たのに、なんとなく閉じこめられた魚ばかり見て厭になっちゃったというわけである。こういう人は水族館を知らない。水族館とは博物館法で博物館の一形態とされる。そしてその活動は@資料の収集、A展示、B保存、C調査研究が柱とされ、これらを通じて生涯教育に対応し、環境保護を啓蒙し、種保存の活動などをしていく。大阪海遊館はでっかい見せ物小屋だけではない。それを釣り人なら分かっていてほしい。水族館の研究活動というのは市民の理解によって支えられる。「娯楽」の裏に「研究」があり「苦労」がある、これこそほんとうに重要なことなのだ。
■大阪海遊館は、あの大水槽を支えるため高知県の土佐清水市の以布利に、1997年、海遊館海洋生物研究所以布利センターを開設した。大型水槽と研究管理棟のあるそのセンターで、三年間にわたって、海遊館スタッフと京都大学と高知大学が共同で大敷網を中心に採集した以布利の海産魚を研究した。
       ■
■『以布利 黒潮の魚 ジンベエザメからマンボウまで』という本書はその成果である。まずジンベエザメとマンボウの概説がある。この2種は、ほとんど生態の知られない謎の魚だったが、大水槽で飼育研究のできる海遊館ならではの新知見に満ちている。あと、以布利周辺の潜水観察による生態写真図鑑と大敷網に入った魚を中心にまとめた標本写真図鑑の二部構成。生態図鑑は66科253種、標本図鑑は130科434種、あわせて136科567種が載る。
■日本産カマス科カマス属魚類は、いままで9種報告されていた。なじみの魚だが、互いによく似ていて見分けの難しいグループでもある。このうち以布利で獲れるのは6種で、ふつうに見られるのはタイワンカマス、アカカマス、ヤマトカマスの3種、このタイワンカマスのなかに「変な」カマスが混じっていた。それがイブリカマス、発見された以布利にちなんで命名された。いままでタイワンカマスと混同され日本にはいなかった種なのだから「日本初記録種」だ。次に、このイブリカマスの学名がいままで記載されていたかどうか世界中を調べなければならない。本書で土居内龍さんは「未記載種と思われ、学名については現在検討中」と書いている。平たくいえば「新種の可能性がある」のだ。「新種」とは新しく発見されて、これまで論文として学名の記載されていないものをいう。イブリカマスの場合、珍しくもなく、ふつうにいるのだが、混同されていたため未発見であった。こういう形の新種は、これからもかなり出てくると思われる。まったくの未知種がでてくる…シーラカンス発見物語のような…新種発見は、そうないだろうけど。
       ■
■フグ科サバフグ属は日本産で6種報告されていた。見分けの難しいものもいるが、センニンフグはメーターを優に超える大型種で、遊泳性が強く、沖合に多く、間違えようもなかった。幼魚や若魚では背面に複雑な模様があるのだが、成魚になると背面の模様は小黒点になると考えられていた。ところが、以布利では、複雑な模様を持った個体と、小黒点を持った小型個体が、ほぼ同サイズで同時期にでた。そうなると同種ではない。調べてみると「複雑な模様」の個体は外国で報告されていた。これは「日本初記録種」だけれど未記載種ではない。海遊館にちなみカイユウセンニンフグという標準和名が提唱された。
       ■
■釣り人は、この日本初記録種を含む「標本写真図鑑」部は面白くためになると思う。たとえば幼魚類など圧巻である。幼魚は同定が難しいが標本として精査した個体の写真でのみ構成されている本書では可能なのだ。シマアジも2型あるといわれていたが本書ではじめて2型の写真が示された。じっくり見ていくと、いろいろ発見は多い。
■以布利の三年のもうひとつの成果は、水族館スタッフと京都大学と高知大学の若手研究者と漁師さんが交流し、話しあったことだろう。本書は以布利の地方名は必ず収録されている。
■一地域の標本に基づき、すべての標本番号が明記され勝れて学術書でありながら、日本語も併記して普通の魚好きに読みやすい…漁師と研究者を合わせて繋いで、成果を市民にも報告する。「娯楽」と「研究」を合わせる海遊館ならではの「活動」がこの魚類図鑑であろう。