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[10375] イボダイの呼び名のことなど… 
2004/2/25 (水) 07:46:58 小西英人HomePage
▼ あららさん

 「よよし」ありがとうございます。

 書いていただいて嬉しいので、ちょっとイボダイの呼び名のことなど書かせてもらいますね。

 イボダイ Psenopsis anomala (Temminck et Schlegel,1844)

 一般的には、なかなか、この標準和名が通じなくて、「しず」「うぼぜ」などと呼ばれます。

 釣りの対象にはなっていませんが、重要な水産魚種で、特に西日本では「しず」と呼ばれて流通しています。

 この「しず」という名前に、おもしろい由来があるので、ちょっと書いておきましょう。

 1959年の『日本魚名の研究』澁澤敬三著・角川書店から、ひっぱりだします。

 澁澤によると、松井佳一博士からの示教として、黄海、南シナ海のトロール業者たちが、イボダイに「おしず」という呼び名をつけたといいます。また、それを受けて、戸畑、下関の魚市場や、日本水産戸畑販売課が荷送する東京、京阪神の市場でも「おしず」いいならわしているそうです。もちろん昭和初期のはなしです。

 イボダイは鱗が小さく、はがれやすくて、鱗のない可愛らしい姿になるので、「かわらけおしず」と呼ばれた女性の通り名から、トロール船の乗組員が、いつのまにやら「おしず」と、イボダイを呼び始めたらしいのです。澁澤が聞いた時点で、もう二十年以上、そう呼ばれていたようです。

 お静さんというのは、大正12年頃、長崎県北松浦郡大島村の的山(あずち)という、初期のトロール船の避難港の遊女であったといいます。当時20歳くらい、鼻丸みを帯び、歯小さく、イボダイを連想させる可愛らしい人であったというが、現在、その消息は不明だと、澁澤は、生真面目に書いています。

 たぶん、この記述を受けたのだと思いますが、内田恵太郎は『さかな異名抄』1966年・朝日新聞社で、お静は、鼻がまるくもち肌で液が多く、イボダイを連想させる姿で漁船員に騒がれたというようなことが書かれています。イボダイは粘液が多いのです。それにしても、稚魚学の大家、内田が、こんなこと書いているのは、けっこう笑ってしまいます。

 榮川省造の『新釈魚名考』1982年・青銅企画出版では、「しず」の項で地名が間違っているようですが、おなじ話を書き、イボダイの違う地方名の、ようお(三重)よよし(舞鶴)の解説で、「夜魚・夜好し」の意の呼名ならば、前記「しず」などと関連するが、語意不詳としています。ほんと眉唾です。

 標準和名のイボダイについて、榮川は、「やいと」のただれた跡を俗に「疣生」(いぼお)というが、イボダイの鰓蓋上方の暗色円斑が、やいとの跡のように見えて、「いぼお」となり縮語して「いぼだい」だろうと推論しています。この議論は、まあまあ説得力がありますね。

 ところで、近年、南アメリカで採れる、マナガツオ科の類が、「しず」として流通して、それを書いている本もあり、混乱もしています。

 【さかなBBS】で過去に議論しています。

■ほしごましず・ごましず
http://fishing-forum.org/cgi-bin/zk_bbs/zcyclame.cgi?ol=200206&tree=s1180#1180

 興味のある人は、上のスレッドを読んでみてください。

                            英人