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[12115] 地方名>キス科>書きだしてみました 
2004/7/14 (水) 18:46:46 小西英人HomePage
▼ みなさん

 ランダムな地方名の採集も続けますが、おもな釣魚は、ときどき重点的にまとめてみたいと思います。ぼく、経験と文献から、書きだしますので、意見や注文はお書き下さい。また、うちの地方ではこういうでというのも、書きこんでください。

 また、この科をまとめて欲しいという要望があれば書いてください。できるだけ、要望のある魚から、優先的に、まとめていきましょう。

 まあ、ひまひまにやりますので、その辺は、ご理解下さいね。

 それでは、夏の魚、キス科からやりましょう。日本産キス科キス属の5種からはじめます。5種、分かりますよね? 書いておきましょうか?

 え!? 日本産キス科は4種と違うのと、言わないでくださいね。

 1)シロギス Sillago japonica Temminck et Schlegel,1842
 2)アオギス Sillago parvisquamis Gill,1861
 3)ホシギス Sillago aeolus Jordan et Evermann,1902
 4)モトギス Sillago sihama (Forsskal,1775)
 5)アトクギス Sillago macrolepis Bleeker,1859

 まず、漢字名をあげます。断っておきますが、標準和名は、きっちりした決まりはありませんがカタカナ表記です。漢字表記はありません。漢字は、あくまで当て字だと思ってください。それでも漢字で魚名を表したいという要望が、いろいろなところからあります。まあ、別名の一種として、標準和名の漢字表記も採集してみます。

■白鱚●シロギス●漢字●(シロギスの漢字、鱚は国字。喜ぶはキスの意味とは関係なく音のキからとったもの)
■青鱚●アオギス●漢字●(アオギスの漢字、鱚は国字)
■星鱚●ホシギス●漢字●(ホシギスの漢字、鱚は国字)
■元鱚●モトギス●漢字●(モトギスの漢字、鱚は国字。モトギスは1984年に沖縄で発見された。それまで知られていなくて日本産第4のキス属となった。日本産キス属の元になったと考えられ、和名は元鱚と名づけられた)
■海鵜鱚●アトクギス●漢字●(アトクギスを漢字で表記してみた。大当て字である。アトクギスは2001年、21世紀になってから西表島の浦内川で発見されて日本産第5のキス属となった。アトクとは採集された浦内川河口にあるアトク島から名づけられた。アトクを表記する漢字はないようだ。アトクとは海鵜のことである。それで海鵜の漢字を当てた)

 ふう。さっそくぼくの、大当て字も並んだなあ。国字というのは中国の漢字ではない、日本で創られた「漢字」のことをいいます。

 つぎ英名 common name もいれておきます。これ、なかなか難しいです。欧米では、日本のように、すべての種に学名以外の名前を、きちんとつける気はないようです。しかし、それでは、やはり不便なようで、FAO(国連食糧農業機関)が名前をつけたり、いろいろな試みがでてきています。そのなかでも、フィッシュベースが、ほとんどの種に名前をつけていますので、【WEB魚図鑑】では、そのフィッシュベースネームを、英語のコモンネームとして採用します。フィッシュベースはインターネットで開かれている、世界最大の魚のデータベースです。

■フィッシュベース FishBase
http://www.fishbase.org/home.htm

■Japanese sillago●シロギス●英名●(ジャパニーズシラゴ。シロギスのフィッシュベースによる英名)
■Small-scale sillago●アオギス●英名●(スモールスケールシラゴ。小さな鱗のきすという意味。アオギスのフィッシュベースによる英名)
■Oriental sillago●ホシギス●英名●(オリエンタルシラゴ。ホシギスのフィッシュベースによる英名)
■Silver sillago●モトギス●英名●(シルバーシラゴ。モトギスのフィッシュベースによる英名)
■Large-scale sillago●アトクギス●英名●(ラージスケールシラゴ。大きな鱗のきすという意味。アトクギスのフィッシュベースネーム)

 キス科魚類の、英名は smelt-whiting とされることが多いのですが、フィッシュベースは、sillago を使っていますね。これ、キス属の学名 Sillago と同じで正確な呼称ではあるでしょう。しかし、ふつうの英和辞書にはでていないと思います。sillago の意味は不明です。生物系のラテン語、ギリシャ語辞典をあたりましたがわかりません。「きす」の意味が不明なのと同じでしょう。古い名詞は、意味が分からなくなったのが多くあります。榮川省造氏は、『難訓辞典』に、生直(きす)、キは接頭語、スは性質が素直で飾り気がないことと出ていると書いています。氏は、これが気に入ったようで、きすは「生直」の字義にぴったりだと喜んではるが、まあ、そうであればいいなあという願望でしょう。

 あの馬面、しげしげ見ると、間抜け面なんだけどなあ。けっこう、清楚な魚だと喜ぶ人が多いんだなあ。きれいな薔薇には刺があるよ。桑原桑原!

 閑話休題。

 いけない。大脱線。やっと地方名に入ります。シロギスの地方名は少ないと思います。

■きす・鱚●シロギス●東日本●(東日本でシロギス。単純に、きすと呼ぶのは東日本が多いようだ。西日本では、きすごと呼ぶことが多い)
■きすご・鱚子●シロギス●西日本●(西日本でシロギス。辞書には鱚子と当てて表記されることが多いが、シロギスの幼魚を呼ぶのではなく、ごは魚名の語尾。大きなシロギスでも、きすごと呼ぶ。このごろ、あまり聞かれなくなってきている)

 こんなもんだろうか?

■ひじたたき・肘叩●シロギス●関西●(関西で大型シロギスの釣り人呼称。ハリを外そうと魚体を握ると尾が肘を叩くほど大きいという意味。インフレ傾向にはあるが、せめて尺鱚から呼びたい)
■てっぽうぎす・鉄砲鱚●シロギス●(関西で大型シロギスの釣り呼称。小さな魚体に似ず大きな魚信を送ってくるが、とくに大型になると鉄砲のように、いきなり竿をひったくられ驚かされるから。インフレ傾向にあるが、せめて尺鱚から呼びたい)

 こういう釣り人の俗な呼称も、安定して言われているものについては採集しておきたいと思います。

■ぼらぎす・鰡鱚●アオギス●東京湾●(東京湾でアオギスの老成魚。ボラのように大きいという誇張表現。東京湾のアオギスの絶滅とともに消えた呼称)
■ひね●アオギス●東京湾●(東京湾でアオギスの老成魚。ひねはアオギスに限らず老成魚に使われる。東京湾のアオギスの絶滅とともに消えた呼称)
■やぎす・矢鱚●アオギス●東京湾●(東京湾でアオギスの小型魚。気をつけなければいけないのは、1913年の『日本産魚類目録』で日本産キス属は、きす、あおぎす、やぎすの3種と誤って記載された。それ以来、長く日本産キス属の分類学的な混乱が続いて、古い魚類図鑑では「やぎす」が標準和名にされていたりする)
■からかさ・唐傘●アオギス●(徳島、吉野川河口でアオギスの老成魚。唐傘のように大きいという誇張表現。徳島のアオギスは絶滅のようで死語になった)
■なかね・中魚●アオギス●(徳島、吉野川河口でアオギスの若魚、中型魚。徳島のアオギスは絶滅のようで死語になった)
■ろうそく・蝋燭●アオギス●(徳島、吉野川河口でアオギスの幼魚、小型魚。徳島のアオギスは絶滅のようで死語になった)

 アオギスの呼称は、『新釈魚名考』(榮川省造著・1982年・青銅企画出版)を中心に拾いました。

 さてさて、やっと大詰め。琉球列島のキス科魚類を書きましょう。

■うじゅる●ホシギス●沖縄●(沖縄でホシギス。モトギスも混称するようだ)
■ちんぐゎ●ホシギス●沖縄●(沖縄知念でホシギス)
■うじゅる●モトギス●沖縄●(沖縄でモトギス。ホシギスも混称するようだ)
■あんじぬいゆ●モトギス●沖縄●(沖縄馬天でモトギス)

 『原色沖縄海中動物生態図鑑』(白井祥平著・第3版・1980年・沖縄教育出版)から拾いました。

 モトギスは、沖縄の小さな川の河口干潟にいて、かなり数は少ないようです。研究者も1984年まで知らなかったことですし、あまり分けられていないと思います。このモトギス、種子島からも採集しましたが、ほとんど、知られていないので、ふつう分けられることはなく、ちょっと変なシロギスだと思われることが多いようです。

 アトクギスは、現在のところ、採集例は西表島からだけです。インド洋・西太平洋に広く分布するポピュラーなキス科魚類ですが、日本にはいないとされていました。それが、2001年に西表島で発見されました。これは、もともと棲んでいたのではなくて、温暖化に伴って、生息域を拡げてきたのではないかと考えられています。だから、地方名は、存在しないと思います。

                       英人