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[13798] 書評>『決定版 日本のハゼ』>和名について 
2004/10/4 (月) 09:31:09 小西英人HomePage
▼ みなさん

 『決定版 日本のハゼ』では、日本未記録種や未記載種を135種も収録していますが、これらの和名の扱いについて、書いておきますね。

 学名が決定されていないけど、和名が固まってきていて、○○属の1種と表記し、それに識別記号がついているものは、和名も、識別記号も、いままでと同じように扱っています。

【例】
 シマヨシノボリ Rhinogobius sp.CB
 オオヨシノボリ Rhinogobius sp.LD

 学名が決定されていなくて、和名が固まっているものについては、和名を採用して、学名は○○属の1種と表記して、数字をふった、sp.1 sp.2 をやめて、sp.A sp.B としています。

【例】
 イズミハゼ Mugilogobius sp.A
 タヌキハゼ Mugilogobius sp.B

 学名が決定されていなくて、和名がないものについては、無理に和名をつけず、○○属の1種−1と表記して、学名も同じように表記しています。

【例】
 イトヒキハゼ属の1種−1 Cryptocentrus sp.1
 イトヒキハゼ属の1種−2 Cryptocentrus sp.2

 という形です。

 いろいろ難しい問題はありますが、現状、きわめて妥当な判断と扱いだと思われます。

 でも、批判も集まるだろうなあ。

 琉球大学の日本魚類学会年会の、口頭発表第一会場の一発目の発表は、国立科学博物館の松浦啓一博士で「名無しのゴンベはなぜ減らない?」というものでした。

 松浦博士は、1995年のシンポジウム(この京都大学であった魚名のシンポは懐かしいです。ぼく新さかな大図鑑で、無理に無理を重ねて、結核になり、四ヶ月間、入所命令により療養所に放りこまれていたのですが、その間に開かれています。ぼく外泊許可をとってシンポに参加したのですが、数カ月も社会と隔離されていたものだから、なんにも頭に入らず、研究者の顔も忘れていて、ほんと、しんどくて困ったのです)でも、同じような趣旨の発表をされています。

 簡単にいいますと、和名が決定されても、学名が決定されていなければ、それは分類学的には認知されていない種になります。分類学は、国際的に進められますが、国際的には、いない種が、日本の研究者の間にだけ、和名などの身内に分かる「記号」を使って流通し、議論されていて、それの学問的な実態がないのは、困ります。

 こういう状況は日本だけであって、おもに「名無しのゴンベ」は図鑑により生まれ出てていて、名著といわれる図鑑ほど、名無しのゴンベを多く産みだしており、ハゼ科がいちばん多いと指摘しています。

 1995年の発表の時に、約130種の名無しがあって、いま、そのうちの10種しか、学名が決定されていないと松浦博士は言います。

 松浦さんは、期限を切らなければ、いつまででも解決しないから、たとえば科博が期限を決めて論文集を出版するから、それまでに学名を決定する論文を投稿してもらう。それに投稿しなかった人は、その学名が決定されていない魚を、ほかの研究者が研究しても、文句を言えないという形にしたらどうかと、提案されてもいました。


 あえて新和名を提唱しないという、ストイックなハゼ図鑑にしたのでしょうが、和名をつけようが、つけまいが、学名以外の「記号」によって識別している状況に変わりはありませんから、批判は集まると思います。

 ただ、それなら、学名決定まで発表せずにおいておくと、こんどは、研究が、なかなか進まなくまります。

 とにかく、分からない種も含めて、いまの状況を知らせておいて、よーいどんで走ろうよと言う態度は、非常に大切なことだと思います。

 難しいです。

 とにかく、これから、ハゼ屋さんたちは、どんどんどんどん論文を書いて、学名を、決定していかなければならないという、社会的な義務が生まれたのは、間違いないでしょう。

                           英人