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[14020] 書評>『魚類の社会行動3』 
2004/10/17 (日) 10:45:15 小西英人HomePage
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『魚類の社会行動3』(幸田正典・中嶋康裕 共編 海游舎 2004年 定価2600円+税)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4905930790/qid=1097974597/sr=1-3/ref=sr_1_8_3/249-0959025-2737906

 性淘汰を、動物行動学から解き明かしていく桑村哲生博士の岩波新書の新刊『性転換する魚たち』を紹介しましたが、その桑村博士も編集委員をしている『魚類の社会行動』の3巻目が、このほど刊行され、シリーズが完結しています。

 第2巻が出たのが、2003年の4月でしたから、1年半かかっていますね。もう出ないのかななんて思っていましたら出てきました。

 第1巻と第2巻の内容が、どんなものだったか…。魚類学会のHPに簡単な紹介がありますので、そちらを見てください。

 http://www.fish-isj.jp/publication/book.html

 さて、第3巻。

 簡単にいうと、水中に潜って、個体識別して、生態を観察して、社会行動を考察する研究を集めています。論文というより、初めのテーマ設定から、いろいろな試行錯誤、そして現状と、ひとつの研究テーマのさまざまな裏話を描いて、研究とはどういうものかを生き生きと教えてくれます。もちろん、いまの最先端の考え方や、批判、反省などなども盛り込まれています。

 タイトルだけ書いていきます。

 1)カザリキュウセンの性淘汰と性転換 狩野賢司
 2)なぜシワイカナゴの雄は縄張りを放棄するのか 成松庸二
 3)クロヨシノボリの配偶者選択 高橋大輔
 4)なわばり型ハレムをもつコウライトラギスの性転換 大西信弘
 5)サケ科魚類における河川残留型雄の繁殖行動と繁殖形質 小関右介
 6)シベリアの古代湖で見たカジカの卵 宗原弘幸

 おもしろそうでしょう?!

 内容は書かないもんね。読んでみてください。

 といいながら、ちょっとだけ。

 カザリキュウセンは「ルーズなハレム」を形成するらしいのだけど、そのハレムの雄が消えると、大きな雌が、あたかも雄のような産卵ディスプレイを小さな雌に対してはじめて、小さな雌も応じて、産卵行動をはじめるといいます。すわ、レズビアンか…。なんて研究者は思わないよね。

 また、雄を戻すと、とたんに、大きな雌は雌として行動をはじめるといいます。

 雄がいなくなると、それが引き金になって、そう社会的な動機で、アルファ雌(大きな雌)が性転換をはじめるのは、ふつうなのですが、なぜ性転換をはじめてもいないし、雌の姿のままなのに、雄として振る舞いはじめるか…。この研究と論考は面白いですよ。

 また、カザリキュウセンの雄の消失率には、思わず同情してしまいます。

 沖縄で4月から10月までの繁殖期間で、4月にいた雄のうち、無事にシーズンを終えるのは5%だそうです。ハレムを持って、女の子に好かれるように派手に振る舞うと、それだけエソなどに食べられちゃうんですね。

 珊瑚礁魚類の厳しさの一端を数字で見られます。

 クロヨシノボリの配偶者選択というと、なにか、ぴんとこないかもしれませんが、女の子の選り好みなんですよね。いつも男は、これに泣かされます。

 性淘汰と書きましたが、この性淘汰のひとつに、雌の選り好みがあるのです。大きい雄を好むとか、派手な模様の雄を好むとか、産卵行動時の、こういう選り好みに勝って、雌が獲得でき、子孫を残せるように、雄は、大きくなったり、派手になったりしてしまうのです。自然淘汰では説明できない進化をしてしまうのですね。

 種によって、何を好むかは、まあ女の子のことですから、いろいろあるのですが、それでも、大きいとか、派手だとか(派手な奴は生存リスクが大きいのですが、それに打ち勝てるのですね。強い。また寄生虫などにやられると体色などくすんでしまうようで、健康のバロメーターにもなります)だいたいの好みは決まっています。

 ところが、クロヨシノボリの雌は、大きさでもなく、派手さでもなく、なんかわからんけど、選り好みをしているのですね。

 ここからの推論と、実証研究は、ほんと面白いですよ。

 クロヨシノボリの女の子は、流れの強いところにいる男の子を好むのです。

 なぜでしょう?!

 あんまり書いちゃうと、もったいないなあ。

 とにかく、魚が見えてきて面白い。          英人