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[11330] すいませんが聞いてください 
2004/5/10 (月) 18:04:32 とおる
はじめて書き込みするものですがよろしくおねがいします。魚が好きでいろいろ見ています。実際釣りに行きたいのですがあまり暇もなくいけていないのが実際のところです。(泣)さて、今回は皆さんにお聞きしたいことがあるのですが、魚で科・属・種において形態的違いはありますよね?例えば、コイ科とアジ科などは見かけからも明らかに違うのは分かりますが学問的に聞かれたときに答えるにはどうしたらいのでしょうか?背鰭の棘が何本あり、胸鰭の棘が何本あり…などという風に説明しなければいけないのですか?場にあわない質問で申し訳ありません。

[11331] 上位分類>ちょっとややこしいのです… 
2004/5/10 (月) 23:18:26 小西英人HomePage
▼ とおるさん

 分類群は、いったいどう分けているのか…。

 ぶっちゃけていえば、そういう疑問ですよね。これ、ちょっと本質的で、ぬかるみにはまって、どうしようもないことになるのです。だから、答えにくいのですが…。

 たとえば、現象だけを書けば、コイ科とはウェーバー小骨片があり、咽頭歯が、よく発達する一群で…。とか、アジ科とは臀鰭遊離2棘があり、多くの種の側線鱗の一部が変化して稜鱗となる…。とか、そういう説明はできるのですが、これが、なかなか本質的でなかったりします。

 同じ祖先種から種分化してきた一群を、まとめているはずなのですが、この推定が、なかなか形態からだけでは難しいところがあり、いろいろと問題になっています。

 そういう意味で、科以上の分類群になると、研究者により、かなり意見が分かれる事が多いのです。属でも、研究者によりかわります。

 カサゴ目をめぐるシンポジウムが、去年の魚類学会でありました。

 そのときのレポートがありますので、引用しておきます。

 読んでみてください。                英人

■怪投乱麻Vol.105■週刊釣りサンデー2003年11月2日号より転載
==========================================================
メバルだ。名がわかればいいのか

日本魚類学会シンポジウムよりより
大いなる混沌が姿あらわしたぞの巻


■ずず黒い、変な魚を釣ってしまった。これなんだと聞いてまわる。誰もわからなかったら不安になるか、ひょっとして凄いええもんちゃうやろかと有頂天になったりする。「未知」に、どきどきしてしまうのだ。ああそれはメバルだよなんて誰かにいわれると、ああメバルかとたちまち納得する。「既知」になってしまうのだ。けれど名前だけで知ったことになるのか。
       ■
■一七五八年一月一日。動物に名前がつきはじめた。この年に発表されたスウェーデンの大博物学者、リンネの書いた『自然の体系』第十版などの書物から動物命名法が始まる。この本の出版は一月一日ではないのだが一月一日に公表されたと国際動物命名規約はみなす。リンネが偉かったのは、動物や植物をグルーピングして階層構造に考えたこと。これはイメージとしても、言葉としても美しかった。属名と種小名の二名法だ。この階層が基礎になった。いま、リンネの頃とはまったく違うが、簡単にいうと界・門・綱・目・科・属・種の七階層である。メバルなら動物界・脊索動物門・硬骨魚綱・カサゴ目・フサカサゴ科・メバル属・メバルだ。
■眼下骨棚という骨がある。眼の下側の骨が、よく発達して、頬を横切り後下方にのびるが、この骨のことをいう。比較動物学の祖、フランスのキュビエらが、この特徴的な骨を持つ一群の魚に気づき、一八二九年にまとめた。これが現在のカサゴ目である。この眼下骨棚により、頬甲類と呼ばれたりもした。リンネもキュビエも、自然は神が創造したと信じていた。その神の秩序を解き明かし記述するのが分類学であった。キュビエは用不用の進化論で有名なラマルクを徹底的に攻撃し失脚させたことでも有名である。その後、ダーウィンの進化論が受けいれられ、分類体系は神の体系を記述するものではなく、自然分類と呼ばれる進化の歴史を反映させ記述するものへと変わる。それでも、リンネの階層は美しかったのでそのまま発展する。
       ■
■インターネットにブックファインダーという世界の古書を検索するエンジンがある。ここで遊んでいたら松原喜代松博士の"Studies on the scorpaenoid fishes of Japan" が安くでていて喜んで注文した。届いてびっくり、ていねいに製本されてはいたがコピーであった。そのサインを見て驚いた。アメリカのハブス博士のサインがあり、一九四六年の十月八日の蔵書印があった。それを中国のチェン博士がコピーし蔵書印を捺していた。いまの日本の魚類分類学は、京都大学の松原喜代松博士に負うところが大きい。いまでも多くの松原門下生が分類学を支えているし、いまでも魚類学の教科書は松原喜代松のものしかない。その松原博士が徹底的な比較解剖によりカサゴ目を論じたのが、ぼくが手に入れたコピー本であり、出版されたのは一九四三年の三月である。戦時中に、世界でも最高水準の研究をして、それを英語でまとめて出版したことに驚かされる。そして松原博士の恩師、ハブス博士に届いたのは一九四六年の十月、太平洋戦争にひき裂かれた師弟であったが、遅れてもしっかり届いたんだと、じーんとさせられるコピー本であった。
■一九四三年の、この松原論文は、眼下骨棚で特徴づけられるカサゴ目内の分類を決定づけ以後六十年間支持されてきた。
■共有派生形質という言葉がある。簡単にいうと、外群と比較して、特徴的な形質を推定して派生的と判定された形質のことで、それをその系統群がもっていたとすれば、同じ祖先生物から由来してきたと推定できる。このように共有する派生形質をもっているものを単系統群と呼ぶ。これはもちろん生物が進化してきた道筋を示すものだ。
■雑学本などで、ネズッポ類は実はスズキの仲間であるなどと書かれていることがある。ネズッポとスズキが近い親類であるという意味なら間違い。ネズッポ科はスズキ目に属するという意味なら正解であるが、それにあまり意味はない。目くらいの高位分類になると、きっちりした定義があると思われるが、実は、ほとんどない。高度に進化したスズキ目は、目立った特徴を引き算した、残りのグループのようなところがあり、スズキ目は研究者を悩ましている。
■カサゴ目は、まとまったグループであるといわれる。眼下骨棚を共有派生形質とする単系統群だと松原の先進的研究で信じられた。しかし、急速に発展した遺伝子研究により、さまざまなものが含まれる多系統群であると明らかになりつつある。
       ■
■二〇〇三年度の魚類学会年会が故松原博士が分類学を打ち立てた京都大学で開かれた。四百人以上が集まる盛会となり、さまざまな発表が行われた。シンポジウムもふたつ開かれ、ひとつが「カサゴ目魚類の分類と系統」だった。釣り人になじみのあるところを書くと、カサゴ目フサカサゴ科メバル属、いわゆる「偽同胞種」が多く、難しいグループを松原の弟子の弟子の弟子にあたる甲斐嘉晃さんが詳細な遺伝子解析で分析した。メバルは三種にわかれた。学名もほぼ決定した。ハブス所蔵の松原論文をていねいにコピーして研究したチェン博士に献名されている学名も復活しそうだ。もうすぐ和名提唱もされ、図鑑も書き換えられることだろう。
■高位分類に目を転じると、形態からも、遺伝子からも、眼下骨棚ではカサゴ目はグルーピングできないことが、はっきり示された。分子系統学者は遺伝子解析から、いままでのリンネ的な階層分類を批判した。それらしく見えても、まったく表現できないと。また、レプトケファルス幼生を経るとか、雄が卵を保護するとか、そういう生態や性質がグルーピングの基本になることもあると批判した。分類学は伝統的に解剖学によって進められたが、進化は、形態だけではなく、その生態、その性質による可能性も大きいのだ。
■分類学者たちは茫然とし言葉を失った。リンネにかわる表現法を手に入れて、いままでの分類を書きなおさなければいけない。美しく階層化されていた動物たちは、この日、消えた。しかし、これは新たなる旅立ちでもある。分類学は新地平に立って歩き始めようとしている。
       ■
■学問上の大変革を目前にし、上気し、火照った。シンポジウムを終え、ふらふら京の町を歩いた。小鳥はさえずり人々はさんざめいている。なにも起こっていない。地球の動物たちの階層は消えたのに、地球はそれを知らず、ただ平和であった。

[11332] Re:上位分類>ちょっとややこしいのです… 
2004/5/10 (月) 23:44:40 とおる
▼ 小西英人さん

分かりました。分類学はとても難しい学問なんですね。カサゴの例ありがとうございます。参考にしてみます。こんな質問に答えていただいてありがとうございました。

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