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[1840] スズキ目は何パーセント? 
2002/8/10 (土) 18:23:17 じゅん坊
 今、さかな図鑑の目名対応をやっているんですが、CGI自体は大体出来上がってます。それでテストしてるんですが、それで気が付きました。

 現在のさかな図鑑に登録されている魚種の50%近くが「スズキ目」なんですね。スズキ目**科ってのが矢鱈と多い。まさか!と思うようなのまで「スズキ目」なんです。

 こうなって来ると、素朴な疑問として、海に居る魚のうち何パーセント位を「スズキ目」が占めてるんでしょうね?

[1841] スズキ目>日本産で半分 
2002/8/10 (土) 20:59:51 小西英人
▼ じゅん坊さん

 ぼくのデータベースに入っている日本産魚は、3900種あります。

 このうちスズキ目をカウントさせると1934種ありました。49.589%です。じゅん坊さんのおっしゃるように、だいたい半分近くがスズキ目です。鰭があって、魚らしい格好をしたものは、たいていスズキ目です。ネズッポ科もスズキ目です。コチ科はカサゴ目ですけど…。

 世界でみても、この比率はそんなに変わらなかったと思います。地球の魚類で種分化だけに限っていえば、いちばん成功したグループだといえるでしょう。

 そういう意味で、ほんというとスズキ目だけは亜目のレベルまで入れた方が整理はいいのですが、まあ、それも難しいでしょうしね。

 いろいろ動いてくださっているようで、もうしわけなし。    英人

[1843] Re:スズキ目. 
2002/8/11 (日) 01:01:13 西潟正人
3900種もスズキ目だったですか!
素朴な疑問ですが、なぜスズキになったのでしょうね。タイ目じゃ都合が悪かったのかなぁ・・。

[1846] Re2:スズキ目. 
2002/8/11 (日) 06:20:25 小西英人
▼ 西潟正人さん

> 3900種もスズキ目だったですか!

 3900種が日本産全魚種です。そのうちの1934種がスズキ目ね。

 しかし、このスズキ目っていうのも、なんていうのか、ふつうにスズキをイメージしてしまうと意味がありません。

 たとえばスズキ科というのは、いままで Percichthyidae にはいっていました。これが、まあパーチ、まあホタルジャコ、まあオヤニラミ、まあケツギョなどの類であって、なんとなくすっきりしていませんで、ほんと、こういう言い方をすると分類屋は嫌がるのですが、分けられないのを放りこんでおくという「ゴミ箱」のようなものでした。

 それで『日本産魚類検索第2版』から中坊徹次は、スズキ科を大きく見直し、ジョンソン(1984)にしたがって、それぞれ独立の科に移したりして、結局、スズキ科は スズキ、ヒラスズキ、タイリクスズキのスズキ属だけにして、日本語ではスズキ科と変わらないんですが、学名では Moronidae に移しました。これはストライプドバスなどの仲間になります。そして、いちおうここにいれながら、スズキ属は Moronidae にふくまれるかどうか、検討の要ありと注記を入れています。

 スズキ目と日本語ならそうなりますが、学名で言うと Perciformes であり、パーチ・フォームで、パーチのことを指しています。

 だいたい国際動物命名規約では、学名は科と属と種と亜種しか決めないのですが、名前の付け方の規則だけのことであって、その名前が系統分類を表すようにしなさいなどとは書いていませんし、実際にできません。

 Perciformesを、スズキ目と訳した人が誰か、ちょっと不勉強で知りません。また、勉強しておきます。

 しかし、昔の系統分類は、あまり変化しにくい安定した形質と考えらていた、たとえば骨学などをもとに、組み立てられています。

 ここ数年、ミトコンドリアDNAのさまざまな場所をもとに系統類縁関係を研究することが可能になってきて、いま、東京大学海洋研究所の西田睦博士らを中心に、ひじょうにダイナミックに上位分類の見直しを進めています。

 いちぶの成果が学会などで発表されていますが、ひえええひえええと驚きますよ。常識から何からひっくり返され、かなりのことが変わってしまうのではないかと思われます。やはり形態から分けた系統分類は無理があったようです。

 あまり上位分類群だと難しくなるので、科の単系統群で、京都大学が研究しているところを、ちょこっと書きますと、たとえば、タカベ科、ユゴイ科、イシダイ科、イスズミ科、カゴカキダイ科、メジナ科などがミトコンドリアDNAを解析すると非常に近く、単系統群を形成するようです。

 イシダイ師も、メジナ師も、怒ってね!

 タカベやらユゴイやらカゴカキダイやらイスズミやらが、お仲間だというのだもの。

 単系統群とは、これ、ぼくのようなものでは説明できず、分類屋は定義をめぐって殴り合いの喧嘩になりかねないのですが、ぶっちゃけて、素人が言うと、どういったらいいのかな、同じ「ところ」から生まれてきた家族、親戚かな。

 どれくらい、ややこしいかを知るためだけに、岩波の『生物学辞典』から、「単系統」の説明のほん一部を抜いてみましょう。読まなくてもいいです。

 W.ヘニック(1950,1966)は,厳密な単系統性を基盤とする論理的秩序体系としての(*)系統分類を追求する分岐論の立場から,‘ある一群の種が単一の幹種(stem species)に由来し,かつその幹種に由来したすべての種を含んでいるとき,その種群は単系統群(monophyletic group)である’と定義した.P.D.Ashlock(1971,1972)は,進化分類学派の立場から,ヘニックの定義した単系統が伝統的な意味からはずれていることを批判し,ヘニックの意味での単系統を完系統(holophyly)と名付け直し,その完系統と側系統とがいわゆる伝統的な意味での単系統の両側面をなし,これらと多系統とを対比した.単系統性および関連概念(多系統性,(*)側系統性)の定義・内容は多様であるが,それは主として理論性と実用性との評価をめぐって生じているものである.分岐学派は,厳密な単系統群だけが分類において意味をもつとして,非単系統群を分類から排除しようとする.一方,進化分類学派は,側系統群をも単系統群とみなし,分類に残そうとする.そしてこの点が,両者の分類哲学における大きな違いともなっている.

 と、恐ろしげな世界になるんです。

 まあ、分類とは、ただただ記載していくだけではなく、進化の系統樹を反映しようとする、簡単に言えば「自然分類」を目指しています。

 しかし、進化の過程を表せる方法も、推定の方法も、実証の方法もなかったので、とりあえず組み立ててみたのです。人為分類ですね。

 ところが、近年、直接DNAを解析して、それをコンピュータで解析して、類縁関係を推定する研究が、本格的になりつつあります。まだまだ、方法やら評価やらで、不安定なところもあるのですが、形態からでてくる思いこみを排除して、とにかく驚くような系統樹がダイナミックに描かれつつある激動期を迎えています。

 というようなところを理解してくださいね。

 スズキ目は、驚くほど激しく種分化して、そういう意味では非常に成功したグループなんでしょう。しかし、どれが中心的なグループで、どう種分化してきたのか、いっさい分かっていません。スズキ目という名前でくくられる、大きなグループがあるのであって、スズキから派生してきたのでも、スズキが偉いのでも、スズキが中心であるのでもありません。

 また、いつやら、ある研究者に、スズキ目は激しく種分化して成功しているんですね…と質問したら、たとえば軟骨魚類(サメやエイ類)も、長いこと残ってきていて、そういう意味では成功者であって、いまを見て、成功か失敗か論ずることに意味はないと諭されました。

 なるほどです。

 スズキ目は激しく種分化したのだなあと、よく分からないなんだなと、とりあえず素人の立場としては、そう感心するのが正しいようです。

                              英人

[1849] Re3:スズキ目. 
2002/8/11 (日) 11:23:57 西潟正人
▼ 小西英人さん
目の眩むような解説!ありがとうございました・・。

[1850] 生物の分類方法 
2002/8/11 (日) 12:34:53 じゅん坊
 英人さんのを読んで、スズキ目が多い理由は何となく判りました。判った気になんたんだけど、またもや素朴な疑問。

 生物って「類」→「目」→「科」→「属」って分類されているんですよね? その分類基準って何なんでしょう? 何処まで似てれば「目」で、どこが違うと「科」になるんでしょう? 類・目・科・属と分けていく時の明確な基準ってあるんでしょうかね。

 DNAのどの部分が形態の何処を指すのかを特定するのは、かなり困難だと聞いた事があります。そうなると、形態的な分類とDNAでの分類方法との擦り合わせって相当難しい作業になるんでしょうね。

 僕なんかは、進化の過程として種分化したんだと思ってたけど、種分化と進化は直接的な関係には無いなんて事を聞いた事もあります。こうなると、素人には訳がわかりません。

 英人さ〜ん。その辺の初心者向きの書籍ってありませんかね?

[1852] Re:生物の分類方法 
2002/8/11 (日) 13:49:58 小西英人
▼ じゅん坊さん

 生物の分類は、いろいろ細分はされているのですが、基本的なものは、7階級です。

 界、門、綱、目、科、属、種です。かい、もん、こう、もく、か、ぞく、しゅ、です。

 イシガキダイなら動物界、脊索動物門、硬骨魚綱、スズキ目、イシダイ科、イシダイ属、イシガキダイです。

 ヒトなら動物界、脊索動物門、哺乳綱、霊長目、(真猿亜目、ヒト上科、こういう風に細分化され、すべてあわせると20くらいの階級がある)ヒト科、ヒト属、ヒトです。いまは、ネアンデルタール人は、ヒトの亜種と考えられているので、ほんとうは現生ヒトも亜種となりますけど。

 それぞれの階級の判断基準とは何か…。

 これ、ぼくのような素人が書くと怒られそうなんだけど、その分類群で広く研究して広く比較し研究者のみ、やっと判断できる「常識」でしかないと思います。生物学とか分類学とかが、科学ではないと、攻撃されるのも、こういうところでして、客観的な基準がなかなか示せないのです。

 基本的に、DNAで分類をやるときは、DNAの置換が問題になり、それにより発現する形質は問題にしません。ほとんどの遺伝子コードが、発現に関係ないので意味がないのだと思われます。それで、遺伝子の解析と、それの発現形質のすりあわせなど、分類学ではまったく考えていないのではないかと思います。

 このDNAの置換による種分化の推定というのは、これ、ほとんど数学で、統計学です。多変量解析をコンピュータでやれるようになってから、集団遺伝学というのが、どんどん進んでいます。そういう意味では、ぼく文科頭で、まったくついていけないのですが、じゅん坊さんのような数学頭には、かなり知的興奮がある分野だと思いますよ。

 ちょっと分類学とは離れてしまうかもしれませんが、中立進化説を唱え、世界的にリードし、数年前に亡くなりはらなければ、ノーベル賞も夢ではなかった、木村資生の『生物進化を考える』が、最高の教科書でしょう。木村博士が一般向けに岩波新書で書いてくれてはります。定価680円です。

 これほど凄い日本人も少ないのだけど、ほとんど日本ではしられていないんだよなあ。

                             英人

[1854] Re2:生物の分類方法 
2002/8/11 (日) 16:59:13 じゅん坊
 ども、英人さん。

 昨年、甑島でお会いした時に出た多変量解析の話しがやっと繋がりました。

 多変量解析を実際的にやろうとすればコンピュータが無いと無理でしょうね。人間が紙にシコシコ計算式書いてやるには手間が掛かりすぎます。現代じゃ実際的じゃないでしょうね。

 それにしても、
>のだと思われます。それで、遺伝子の解析と、それの発現形質のすりあわせなど、
>分類学ではまったく考えていないのではないかと思います。


 って、何か虚しさが漂いますね。現実の世界との摺り合わせを行わないと数字ゲームに成りかねない。シュミレーションの世界で満足してる現代社会学と同じに成りかねない危険性を十分持ってる気がします。

 実際の魚を見て、ウンヌン言っている僕らとは懸け離れた存在になるかもね。でも、知的刺激って点じゃあ面白そう。まあ、基本を知らなきゃ、それも無いんだけどね。取り敢えず、教えて頂いた本を読むことから始める事にします。

[1856] Re3:生物の分類方法 
2002/8/11 (日) 17:36:21 小西英人
▼ じゅん坊さん

 ごめんごめん。ぼくの説明が悪かったなあ。遺伝子だけでやるというと乱暴に聞こえるかもしれませんが、発現形質はいまの情報なのです。遺伝子の置換というのは、数億年、数千万年、数百万年という時間の流れの中のことなのです。比べることに意味はありません。どちらにせよ、これは実証できないのです。進化論が哲学であって社会学であって科学ではないという批判は、実証できない、追試できない、不可逆的な歴史の流れを読み解くところにあるからです。そこに、数学を持ちこんで、ある程度の実証性科学性を導入したのが木村たちの功績なのです。これ、ぼくで説明できないでしょうね。木村資生を読めば、わかると思います。

 もうひとつ。せっかくヒトの分類までいれて説明しようとしていたことを忘れていました。

 分類体系の客観性のなさと、人為分類であって、けっして自然分類ではないという、簡単な例です。

 哺乳綱霊長目で問題ないですよね。
 硬骨魚綱スズキ目で問題ないですよね。

 一見整合性があるように見えます。

 しかし四足動物は硬骨魚綱から出ていますよね。ということは、ヒトは硬骨魚綱にいれなければおかしいのです。硬骨魚綱に四足動物(両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類)がはいってから、そのしたで哺乳類、霊長類を分けなければいけないのです。こういう風に系統図をつくっていったら、いったいどうなるのでしょうね。

 いま、手元に本がないのですが、実際にアメリカのネルソンは、1994年の"Fishes of the world,3rd edition" から、硬骨魚綱の下に四足動物をいれた系統樹を掲げています。魚類の上位分類の本ですから、四足動物は「四足動物」といれているだけで、そのしたの分類まではしていませんが…。

 ぼくらは、遺伝的な距離で言うと、マダイやスズキに近いのです。アオザメやアカエイとマダイやスズキの遺伝的な距離よりも、ぼくらとマダイやスズキの遺伝的な距離の方が近いのです。

 これで、階級がいま、むちゃくちゃになっていることが実感できますか?

 また遺伝子の置換率と、形態が、同じように扱えないことも分かりますか?

                            英人

[1858] 木村資生「生物進化を考える」 
2002/8/11 (日) 17:48:06 JUN
▼ じゅん坊さん

英人さんから紹介のあった「生物進化を考える」、面白いですよ。
ぼく、けっこう目から鱗でした。

ちょうどバス問題を考えていた時だったのですけど、
生き物の成り立ちみたいなところの基礎知識があるかないかで、
この議論もだいぶ変わってくるなと思いました。
それなしで、害と益でくくろうとするから、口角泡ということになるわけで、
広く生き物ってなんだというところからみれば、答えというか、
方向はおのずと見えてきます。

まあ、それはそれとして、進化論(学?)の概要をおさらいしながら、
木村の説いた中立説というのを紹介しているのですけど、
かなりエキサイティングな読書でした。

おすすめですよ。

[1860] Re3:生物の分類方法 
2002/8/11 (日) 20:15:38 小西英人
▼ じゅん坊さん

 どうも素人なもんで、うまく書けていないことに気がつきました。

 だいたい、ミトコンドリアDNAは発現しないDNAでした。これは囚われのDNAともいわれ、母系遺伝しかしないので、進化に対して中立的だから、変異が多く、そのぶん感度が高く、種間の類縁関係を調べるのによかったと思います。そのなかでも調節領域と呼ばれる変異の高い部分で研究することが多いようです。これと、実際の形態とは関係ないのです。核DNAの直接解析なども、もちろん行われていますけど、系統関係の推定には、ミトコンドリアのDNAを使うのです。

 中立的とかなんとか、木村を読めば分かります。

 なんか、書けば書くほど、勉強不足が露呈されて怖いなあ。

 もちろん遺伝子による推定、化石記録による推定、形態学などからの推定、そういうさまざまな方面からの研究を、どう総合的に重ねていくかの方法論を模索中だと思います。なにせ、遺伝子を直接解析できるようになったのは、ここ数年のことですから、いま目の前で、どんどん進歩しているところなのです。

                         英人

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