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[191] そい>21世紀の「そいチェーン」をつくろう 
2002/2/10 (日) 07:34:22 小西英人
 『釣魚図鑑』の読者だという、北海道の人から、激烈な抗議文をいただいた。

 クロソイの記載で、「味はメバル属にしては劣る。死ぬと磯臭くなるので、きちんと処理したい」というところに怒ってはる。

 そいの中で、もっとも美味なクロソイを劣るとは何事だ、馬鹿も休み休みにいえ、古くなったものしか食べていないからだろう。アイナメ類が美味しいってなんだと、まあ、そんな感じで怒りくるってはった。

 悪いから、お手紙を書こうかなと迷っていたけど、いろいろ難しそうなので、あきらめました。

 まず、「そい」はという釣り人で、その「そい」を、どの魚か分かっている人が、非常に少ないことがひとつ。とくに北海道の「そい」は、ぼくはクロソイではなくて、キツネメバルを指しているのではないかとも疑っていること。キツネメバルではないですかと聞くと、ごく普通の釣り人は、おまえは「そい」と「めばる」も知らないのかと怒りだすことが多く、また、そういう人に限って、クロソイとキツネメバルの見分けもできないことが多いから、説明はややこしくなるのです。

 それぞれの故郷がいちばんよくて、お国自慢になってしまい、客観的なものではなくて、主観的なものになることが多いこと。たとえば、瀬戸内地方で育った者なら、アイナメとクロソイなら、どちらが美味しいか、決まっている。というより、本当に繊細で美味しい魚がいっぱいあって、クロソイなどは、その中にはいってこないもんね。北海道で美味しいといわれているギスカジカ(釧路では、これを真かじかとしていた)でも、船の上でさばいて鍋にして食べたけど、ちょっと磯臭かったし、美味しくないことはなかったけど、大味に感じたこともあります。ただ、これは北海道からは反論大ありでしょう。残念ながら、北海道のクロソイは、標本に京都大学に送りこんだので、ぼくは食べていません。

 以上のことから、お手紙を書いても受け入れてはもらえないでしょうから、関西の釣り人は、味も知らない野蛮人だと思いこんではるほうが、北海道人にとっての幸せなんだろうなと思っております。

 ただ、この手紙で1999年の冬に、@Niftyの釣りフォーラム【さかな会議室】でやった、「そい議論」を思いだしました。

 この「そい議論」は、長い長いチェーンになって、いろいろ勉強させてくれましたが、そのすべてを転載すると長くなるので、ぼくが、リードするために書いた、「そい」の話、1〜4+補足だけを転載しておきます。

 読者の猛烈な抗議をきっかけに、ここで、もう一度、釣り人と「そい」を見直したい気がします。

 みなさん、それぞれの、お国自慢でもけっこうです。

 北海道の人で、ぼくを痛罵したい人がいれば、どうぞ、痛罵してください。ただし、魚の情報だけは、正確に書いていきましょう。

 そうすれば、みんなのお勉強になりますから…。

 21世紀の「そいチェーン」をみんなでつくりましょう。

                              英人


[192] そい>1>「まぞい」って、なんやねん? 
2002/2/10 (日) 07:42:41 小西英人
@Nifty【さかな会議室】より転載
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01216/01781 PDG00606 小西英人 そい>1>「まぞい」って、なんやねん?
(14) 99/01/23 10:26 コメント数:5


 「そい」という魚名が、釣り人の間で、いろいろ混乱しているように思うので、ちょっと書いてみましょう。

 地方によって、いろいろ思いこみがあるようで、文献を見ても、なかなか分からないことも多いのですが、まあ、おつきあいください。そして、みなさんと議論をしたいと思います。

 もともと、ぼくが、「そい」という言葉に引っかかったのは、関東の釣り師たちが雑誌や本などに書くものからです。

 「まぞいが釣れた…」「正真正銘のそいだった」などなど書いているのです。

 「まぞい」って、なんやねん?

 さあ。文献渉猟の冒険のはじまりはじまり。ことわっておきますけど、釣り人系のライターで、間違って書いていたり、よく知らないのに書いていたり、いろいろあるようで、いろいろ語弊もありますので、参考文献は記しません。情けないことに釣り人系のライターで魚のことが分かって書いている人はいません。魚のことが分かっている風に書く人はいるけど。ああ、これ、ぼくのことか。また魚類学系の参考文献も、やたら難しくなるので記しませんね。また標準和名の「メバル」と、一般名称の「めばる」がややこしいので、標準和名はカタカナ、一般名称は「ひらがな」で表記します。

 さて、さて、「真ぞい」とおっしゃるからには、真でない「そい」群がいるはずです。だいたい「そい」群ってなんなんでしょう。

 で、気になって、釣り人に聞きまくってみたけど、「めばる」は当然知っていて、「そい」も当然知っているけど、どれくらい種類があって、どれが「そい」なのか、まるではっきりしません。でも、なんとなく、この手の磯魚、分類群でいえばメバル属の魚を、「めばる」類と「そい」類とに分けているふしもあります。あと「かさご」類という分け方もありますけど、これはカサゴ属やフサカサゴ属の話になり、話が、もうひとつ、ややこしくなるので、ここでは省きましょう。また機会があればね。

 それでは、まず、いまの分類ではどうなっているのでしょうか。『日本産魚類検索』(東海大学出版会、1993年)から、標準和名をぬいてみましょう。「めばる」類と「そい」類は分けられておらず、すべてメバル属に含まれています。

 1)アラメヌケ      ★ Sebastes aleutianus
 2)アコウダイ        Sebastes matsubarae
 3)アラスカメヌケ    ★ Sebastes alutus
 4)ウケグチメバル    ● Sebastes scythropus
 5)ハツメ          Sebastes owstoni
 6)ヒレグロメヌケ    ★ Sebastes borealis
 7)バラメヌケ      ★ Sebastes baramenuke
 8)サンコウメヌケ    ★ Sebastes flammeus
 9)オオサガ         Sebastes iracundus
 10)クロメヌケ      ★ Sebastes glaucus
 11)ヤナギメバル     ● Sebastes itinus
 12)ガヤモドキ        Sebastes wakiyai
 13)アカガヤ         Sebastes minor
 14)ヤナギノマイ       Sebastes steindachneri
 15)エゾメバル      ● Sebastes taczanowskii
 16)トゴットメバル    ● Sebastes joyneri
 17)ウスメバル      ● Sebastes thompsoni
 18)メバル        ● Sebastes inermis
 19)クロソイ       ■ Sebastes schlegeli
 20)タケノコメバル    ● Sebastes oblongus
 21)コウライキツネメバル ● Sebasles ijimae
 22)キツネメバル     ● Sebastes vulpes
 23)タヌキメバル     ● Sebastes zonatus
 24)ゴマソイ       ■ Sebastes nivosus
 25)シマゾイ       ■ Sebastes trivittatus
 26)コウライヨロイメバル ● Sebastes longispinis
 27)ヨロイメバル     ● Sebastes hubbsi
 28)ムラソイ       ■ Sebastes pachycephalus pachycephalus
 29)ホシナシムラソイ   ■ Sebastes pachycephalus nigricans
 30)オウゴンムラソイ   ■ Sebastes pachycephalus nudus
 31)アカブチムラソイ   ■ Sebastes pachycephalus chalcogrammus

 と、日本産メバル属は31種います。多いのに驚くでしょう。このうち標準和名にくっつく一般名称は●=「めばる」が12種。■=「そい」は7種。おまけに★=「めぬけ」が6種あります。フサカサゴ科魚類は魚類図鑑によって標準和名がけっこう変わっていますので、みなさんのお手元の図鑑とも対比できるように、学名もいれておきました。

 あれあれ、「めぬけ」類も入ってきましたね。これもメバル属なのです。しかし、釣り人が見て、ああ「めばる」の仲間だなあと思うのは、メバル、トゴットメバル、ウスメバルの3種かな、もうちょっと譲っても、あと、アカガヤとエゾメバルくらいが含まれるかな。呼び分けには、どうも、基準がないようです。標準和名は「記号」で、どういう一般名称がついていようが関係ないようです。

 この「めばる」「そい」「めぬけ」を、小学館の『日本国語大辞典』(これ、ぼく、いちばん信用しています。広辞苑は信用していません。広辞苑に載っているから、この日本語は合っているという編集者を、密かに馬鹿にしています。ぼくは、日本語に迷ったときこの20巻の大辞典と、あと、いくつか調べることにしています)で調べてみました。

 「めばる」はメバルの説明をかなり正確にしています。この呼び名は古いようで、鎖国が完成された1639年の『仮名草紙』に、その名が見え、徳川吉宗のころ(1715)の『大和本草』には「目ばる、目大なる故名づく。黒赤二色あり」と書かれているそうです。

 「そい」は目張の異名と書かれています。この呼び名も古いようで、アメリカ建国の前年(1775)の『物類呼称』に「目張、めばる。陸奥仙台にて、そいと云」と書かれています。この辞典には書かれていませんが、物の本によると、どうも磯魚(いそいお)をコギャル風にちぢめた仙台方言が「そい」の語源のようです。

 「めぬけ」は、カサゴ科(いまはフサカサゴ科です)の海魚のうち、赤色を帯びた大型種の総称とありまして、漁業の重要魚、釣り上げたとき水圧の変化で目が飛びだすからと書いています。かなり正確ですね。たぶん「めぬけ」という言い方は漁業者からきています。流通用語でしょう。この「めぬけ」の中心は「あこう」になると思います。ついでに「あこう」も調べましょう。

 赤魚=「あこう」はアコウダイの解説をしています。この呼び名も古く、赤穂浪士の討ち入りの4年前(1698)の『書言字考節用集』に「緋魚、アコウ」とあり、生類憐れみの令が廃止された3年後(1712)の『和漢三才図会』に「緋魚(アカヲ)赤魚」とでているようです。

 さて一般名称として、いちばん簡単なのは、「めぬけ」と「あこう」でしょうか。これは、深いところの赤い大型になるフサカサゴ科魚類を指す一般名称でいいのでしょう。標準和名でいうと、アコウダイ(やはり釣り人には、これが中心でしょうね)サンコウメヌケ、オオサガ、アラメヌケ、アラスカメヌケ、バラメヌケ、ヒレグロメヌケなどでしょうか。ホウズキ、ベニメヌケも「めぬけ」類と感じるでしょうが、これはメバル属ではなく、ホウズキ属になります。

 クロメヌケは、この分け方なら、「めぬけ」には入りません。赤くないもの。まあ、「くろ」とつけているからいいのかな。クロメヌケの標準和名で、一発で分かる釣り人は少ないだろうな。北海道で「青ぞい」というのが、クロメヌケです。黒っぽくて、少し黄色が混じる魚で、ぼくには「青く」は見えませんが、北海道の人には青く見えるのかしら。どちらにしても、ほらほら「そい」もでてきたぞ。

 まあ、とりあえず、日本産メバル属から、「めぬけ」「あこう」類をのぞいたものが、「めばる」と「そい」であって、「めばる」と「そい」は、同じものであって、呼び分ける必要はないというのが答えなのでしょうか?

 と、一回目は、この辺で「息切れ」して終わりましょうか。みなさんが興味を持ってくれるようなら、続く…、と思うけど。

                               英人
ps
 ぼくは「そい」という魚名で、みなさんが、何を思い浮かべるか、まだ、はっきりとしたイメージがつかめていません。ひとつには、ぼくが少年時代を瀬戸内海地方で過ごしたためで、瀬戸内海地方でふつうに「そい」と呼ばれる魚はいません。「そい」という一般名称としての魚名は、やはり北方系、仙台方言説が正しいのでしょう。関西で「そい」という言い方が聞かれだしたのはは、最近での話だと思うのです。

 いま、たぶん、瀬戸内とか、大阪湾で「そい」といえば、クロソイを指すと思うのです。日本海地方で「そい」といえば、キツネメバル。関東で「そい」といえばキツネメバル。北海道で「そい」といえばクロメヌケが、それぞれの「そい」の原イメージではないかと思うのですが、釣り人ライターの書くことや解説があまりにも混乱していて、分かりません。

 北海道で「そい」といえば、もっといろいろな種類を指すのでしょうか?

 北日本で「そい」といえば、どれくらいの種類を指すのでしょうか?

 東京の「そい」は、これはもうキツネメバルだけの感じがあるのですが?

 ムラソイの仲間は、分布が広く、太平洋岸にも多く、たとえば紀伊半島のような黒潮域にも浅いところにいますが、これらは、それぞれの地方で、なんと呼ばれているのでしょうか?

 謎は謎をよんでいます…。
英人

[193] そい>2>釣り人の「そい」の原形 
2002/2/10 (日) 07:51:52 小西英人
@Nifty【さかな会議室】より転載
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01242/01781 PDG00606 小西英人 そい>2>釣り人の「そい」の原形
(14) 99/01/28 12:43 01216へのコメント コメント数:1


 みなさんの協力で「そい」という呼び名が、浮き彫りにされつつあり、ぼくも、いろいろと考えております。

 とりあえず、今回は、釣り人の「そい」の原形を見るために松崎明治で「そい」を見てみました。

 『釣技百科』松崎明治著 朝日新聞社刊 1942年です。たぶん関東の釣り人の「そい」はこの辺から始まったのだと思います。

 そい(メバル科)と紹介しています。いまメバル科はなくて、フサカサゴ科にするのが一般的です。ちょっと引用します。漢字は略字にかえます。

 ソイにはムラゾイ(別名シマゾイ、キゾイ)クロゾイ、ゴマゾイ、アヲゾイの区別あるが、釣でソイを問題として持て囃すのは北海道である。釣遊者のみならず北海道沿岸ではソイ釣りがなかなか盛んに行われている。

 これで分かったような分からないような…。とにかく、関東で昔から「そい」を追いかけたのではなく、西別川さんの報告どうり、北海道が、キーだったようです。

 それで、呼び方は、北海道を基準にしていると思われます。ちょっと標準和名と対照してみましょう。

 1)■ムラゾイ(別名シマゾイ、キゾイ) ■シマゾイ  Sebastes trivittatus
 2)■クロゾイ             ■クロソイ  Sebastes schlegeli
 3)■ゴマゾイ             ■ゴマソイ  Sebastes nivosus
 4)■アヲゾイ             ■クロメヌケ Sebastes glaucus


 1)はムラソイではなくて、シマゾイでしょう。縦縞があり、縞の所がかなり黄色っぽく見えます。あとは、問題ないでしょう。もし、順番に意味があるのなら、北海道で囃される「そい」はシマゾイが1番、クロソイが2番ということになりそうですが、どうなんでしょう? 西別川さん? シマゾイは「偉いそい」ですか?

 次に松崎明治は、呼称として、ソイの地方名をあげています。それらの地方名を抜
て整理してみます。

 ■ソイ
 ツヅノメ(新潟)
 ウジノミ(富山)
 ■クロゾイ
 クロカラ(富山)
 モハツメ(富山県魚津)
 ワガ(愛知県熱田)
 クロスイ(塩釜)
 ゴマゾイ(北海道室蘭)
 ■シマゾイ
 キゾイ(北海道)
 ムラゾイ(北海道)
 ■ソイ
 クロアタガシ(和歌山)
 スイ(宮城)
 チョオセンメバル(長崎)
 モゴイ(長崎)

 となっているようです。「ソイ」と混称しつつ、微妙に分けているので、読み解いてみて、上のように整理できるかなとは思うのですが、よく分かりません。長崎や和歌山などの呼称は、「このソイである」と断言してはるけど、どのソイか分かりません。たぶん和歌山のはムラソイ、長崎のはクロソイだと、ぼくは思うのですが、この地方に住んではる人、どうなのでしょうか?

 棲息は北海道以南、本州各地の沿岸、九州方面に多く、東京近海では外房太海方面にみらる。などなどと書いていますが、よく分かりません。太海に多いのは、ムラソイになるのでしょうか? hiroboさん? 東京の魚河岸には多く、外房、常盤方面から鮮魚として入荷するとも書いています。

 あと、北海道での熱愛ぶりを紹介しています。引用します。

 北海道方面の釣人のソイに対する熱愛は非常に強いものがあり、最近室蘭の一釣人からの手紙によればソイは陸釣舟釣の別なく夜釣りの魚で内地の黒鯛と外観、引き共に酷似した所多く、味も非常によく似て室蘭に於いては味覚の王座に推されているという。

 クロダイと外観、引きが似ているといわれると困りますが、クロソイか、クロメヌケかなんでしょうか? 味もクロダイと似ていたら、まずそうと思うのですが…。

 西別川さん、室蘭で珍重するのは、クロソイでしょうか?

 あと北海道の4カ所のソイ釣りを具体的に紹介しています。

 1)■北海道のソイ夜釣り(岩内郡雷電、古宇郡沿岸、岩内港湾)
 8〜12号のナツメおもりをつけた探り釣りで、舟か岸壁です。餌は活きドジョウか、イワシの新鮮なもの。「この魚」はどう猛で、鋭い歯があり、毒素をふくむトゲがあって、この毒素だけは閉口とあります。魚は何なのでしょうか?

 2)■北海道の青ゾイてんてん釣り(網走町)
 これはクロメヌケだと思います。余市の水産試験場で聞いたとあり、疑似餌の漁のようです。タラの延縄で、アヲゾイが掛かったときにやるそうです。おもしろいのは、始めに掛かったのをおとりとして、延縄にかけておいて、群を散らさないようにするのがこつだそうです。

 3)■北海道のソイごろた縄(美国町)
 水深15〜40尋の飛根のところで、どうつき釣りの漁です。漁獲物はムラソイ(マゾイ)の他にシマゾイ、アブラコ、ガヤ、タコだそうです。

 4)■北海道のソイごろた縄(出崎村)
 水深30〜50尋で、上と似たようなものです。漁獲物は、クロゾイ、ムラゾイ(マソイ)、シマゾイだそうです。

 これらのムラソイ、ムラゾイは、キツネメバルのことなんでしょうかね?

 以上で松崎明治の引用を終わります。

 松崎明治は、昭和4年(1929年、うわっ、世界大恐慌の年だ)から十数年にわたり朝日新聞の学芸部で釣魚欄を担当して、正確さで評判になりました。昭和17年(1942年、うわっ、ミッドウェイ海戦の年だ)に『釣技百科』をだして記者生活を終えています。鹿児島出身です。『釣技百科』は、現代の釣りの古典中の古典です。

 どうも、釣り人の「そい」という呼称は、北海道から伝わってきたものらしく、関東で、もともと「そい」といったのでもなさそうだとだけは、分かりました。

 「そい」と確言し、いろいろ解説を加えながら、実際には、どの魚を指すのか分からないと言うのは、昔からのようですね。

                                   英人

[194] そい>3>旧メバル属と旧ソイ属 
2002/2/10 (日) 07:53:19 小西英人
@Nifty【さかな会議室】より転載
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01290/01781 PDG00606 小西英人 そい>3>旧メバル属と旧ソイ属
(14) 99/02/24 14:05 01216へのコメント コメント数:1


 「そい」チェーンのみなさん、ごめんなさい。

 ちょっと、ばたばたしていて、間があいちゃいました。しきり直します。

 分類学で、「そい」が、どう扱われていたか見てみましょう。

 『魚類の形態と検索』(1955,松原喜代松・石崎書店)という、いまの分類学の出発点(日本の魚類分類学は東京大学の田中茂穂(ジョルダン・田中・スナイダー)からはじまりました。しかし、東大は、あるところで、もう分類学のように後ろを見る学問はよろしという号令がかかってしまいました。分類学は決して後ろを見る学問ではないのですが。そのあと京都大学の松原喜代松が大きなスケールで魚類分類学をまとめあげて集大成して、現在の分類学、そして魚類図鑑の基礎をつくりあげました)になった名テキストから、見てみます。

 太平洋産のメバル系魚類は、メバル属 Sebastodes (現在のメバル属は Sebastes です)とソイ属 Sebastichthys に分けられていました。このふるいメバル属は、風雲急を告げはじめる幕末の、1861年にアメリカの魚類学者、ギルによって、ソイ属もギルによって1862年に、分けられたのです。

 ギルは、さまざまな違いをあげているようですが、骨格とかはややこしいから、外部形態だけについて松原から引用してみますと。

■旧メバル属              ●旧ソイ属

■両眼の間隔は比較的広く、突出するか、 ●両眼の間隔は狭くへこんでいて
 平坦か、わずかにへこんで
■下顎は上顎より著しく前方に突出し   ●両顎は同じ長さか下顎が短く
■頭蓋骨の棘や隆起線は発達が悪いか、  ●頭蓋骨の棘や隆起線は強く立つ
 まったく発達しない。
■両顎と鰓条骨は一様に鱗を被る     ●両顎と鰓条骨は無鱗
■胸鰭下部軟条は細い          ●胸鰭下部軟条は著しく肥厚

 となっているようです。『水産動植物慣用名集覧』(1953,水産庁編・農林協会)から今のメバル属魚類が、それぞれ、どう分けられていたか、抜き出してみましょう。

■旧メバル属              ●旧ソイ属

■クロメヌケ              ●クロソイ
■ヤナギノマイ             ●キツネメバル
■エゾメバル              ●ゴマソイ
■ヤナギメバル             ●シマゾイ
■メバル                ●タケノコメバル
■トゴットメバル            ●ムラソイ
■ウスメバル              ●ヨロイメバル
■サンコウメヌケ
■アコウダイ
■オオサガ
■バラメヌケ
■ウケグチメバル

 松原は、ギルの分け方で、矛盾点をひとつひとつ上げていって、両属を区別することは妥当ではないとして、現在の、メバル属 Sebastes に統合する(Matsubara,1943)としています。

 それ以来、ソイ属というのは消えたのですが、「そい」の原型の中に、この考え方も、ある程度は残っているように思えます。この旧ソイ属に含まれるのが、広い意味での「そい」というグループであろうと、ぼくは思います。

 松原の言うように、なかなか、ひとくくりにはできないのだけど、両眼の間が狭くへこんでいて、両顎がそろっていて、頭の周りがごつごつしていれば、「そい」なんだなあと感じるのではないかということです。

 まあ、この辺まで書いておいて、最終的な、「そい」の釣り人的な「語感」は、もうちょっと、みなさんの意見を聞いてから、書いてみようと思います。

                              英人

[195] そい>4>それでは最終結論をば… 
2002/2/10 (日) 07:55:14 小西英人
@Nifty【さかな会議室】より転載
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01300/01781 PDG00606 小西英人 そい>4>それでは最終結論をば…
(14) 99/02/28 11:49 01216へのコメント コメント数:1


 「そい」チェーンのみなさま、それでは、とりあえずの結論を書いておきますね。

 驚かないでね。

 ■黒っぽいカサゴを「そい」だと思う人がいる。

 ■「そい」の中心はクロソイであるが、間違えやすい「まぞい」とは言いたくない。

 これが最終結論です。あんまり簡単だとか、それ、みんなが言った事じゃないかとか、怒りっこなしね。

 釣り人向けの魚類図鑑と称するものの、ほとんどは、キツネメバルの地方名として「まぞい」をあげていますが、これは、誰かがちょんぼしたのを、受け売りしているのでしょう。松崎明治の文章からも、関東や、北海道の釣りフォーラムメンバーからの証言でも、キツネメバルより、クロソイの方が、中心になるようです。

 だいたい、釣り人向け魚類図鑑としているもので、フサカサゴ科のことが分かっていると思えない。イズカサゴをめぐる釣り人の大混乱も、こいつらのせいだと思う。

 「釣り人向け」というのは、魚など知らない奴が、どうでもいいこと書いて、金儲けしている、「馬鹿向け」ということでなければいいのですが…。

 さて、あまりにも単純な最終結論で、こんなのなら、はじめから分かっているのじゃないかと怒られそうですが、ぼくとしては、だいぶ、いろいろ勉強になりました。

 形になりつつあると言うことです。

 いちおう最終にはしておきますが、まだまだ、勉強してみたいとは思っています。

 ■黒っぽいカサゴ型魚類

 というのだけでも、説明しようとすると、ややこしい。だいたいカサゴはカサゴ属で、メバル属とは違うのです。カサゴ属の特徴は…と書きたい気もするけど、書き始めると、。また「そい」チェーンくらいになってしまうから、とりあえずは書かない。

 まあ、釣り人の「感じる」「そい」の特徴を、とりあえず言葉にしておきましょう。

 ■体高が低く体の断面は円筒形に近い
 ■尾鰭後縁が円形である
 ■両眼の間が狭くへこんでいる
 ■両顎がそろっている
 ■頭の周りがごつごつしている
 ■体は黒っぽい

 ついでに、釣り人が「めばる」と感じる特徴も書いておきましょう。

 ■体高が比較的高く体の断面はどちらかといえば平たい
 ■尾鰭後縁が截形(まっすぐ)である
 ■両眼の間隔は広く突出するか平坦である
 ■下顎が長い
 ■頭の周りはつるんとしている
 ■体は赤っぽいのが多い

 日本産メバル属31種を、一般名称としての「めぬけ★☆」「めばる●○」「そい■□」の三つに強引に分けてしまいましょう。それぞれのマークは、ソリッドが強くて、アウトラインが弱いということです。

 1)アラメヌケ      ★ Sebastes aleutianus
 2)アコウダイ      ★ Sebastes matsubarae
 3)アラスカメヌケ    ☆ Sebastes alutus
 4)ウケグチメバル    ○ Sebastes scythropus
 5)ハツメ        ○ Sebastes owstoni
 6)ヒレグロメヌケ    ★ Sebastes borealis
 7)バラメヌケ      ★ Sebastes baramenuke
 8)サンコウメヌケ    ★ Sebastes flammeus
 9)オオサガ       ★ Sebastes iracundus
 10)クロメヌケ      □ Sebastes glaucus
 11)ヤナギメバル     ○ Sebastes itinus
 12)ガヤモドキ      ○ Sebastes wakiyai
 13)アカガヤ       ○ Sebastes minor
 14)ヤナギノマイ     ● Sebastes steindachneri
 15)エゾメバル      ● Sebastes taczanowskii
 16)トゴットメバル    ● Sebastes joyneri
 17)ウスメバル      ● Sebastes thompsoni
 18)メバル        ● Sebastes inermis
 19)クロソイ       ■ Sebastes schlegeli
 20)タケノコメバル    □ Sebastes oblongus
 21)コウライキツネメバル ■ Sebasles ijimae
 22)キツネメバル     ■ Sebastes vulpes
 23)タヌキメバル     ■ Sebastes zonatus
 24)ゴマソイ       ■ Sebastes nivosus
 25)シマゾイ       ■ Sebastes trivittatus
 26)コウライヨロイメバル □ Sebastes longispinis
 27)ヨロイメバル     □ Sebastes hubbsi
 28)ムラソイ       ■ Sebastes pachycephalus pachycephalus
 29)ホシナシムラソイ   ■ Sebastes pachycephalus nigricans
 30)オウゴンムラソイ   ■ Sebastes pachycephalus nudus
 31)アカブチムラソイ   ■ Sebastes pachycephalus chalcogrammus

 ということに、ぼくはしちゃいますが、このこと自体に、何の意味もないことも分かっておいてくださいね。

 案外、尾鰭後縁の形状(まるいか、まっすぐか)と、下顎が出ているか出ていないかということが、この類の印象として重要なのですが、これを「キー」にひとくくりにすると、どれほど例外が出て苦しむか、ぼくは、実感しているのです。『釣魚検索』のフサカサゴ科で、それらのキーで抽出したページは、やり直しが相次いだのです。

 とにかく、「そい」は、ゆるい釣り人の「感覚」なのです。

 この「ゆるさ」を、「はっきり」とぼくらのものにしていって、新しい「釣り文化」という形に昇華(青臭い、あのころの言い方なら、アウフヘーベンだけどな)していきたいなと、ぼくは思います。

                                 英人


01338/01781 PDG00606 小西英人 そい>4>最終結論>訂正です
(14) 99/03/22 09:40 01300へのコメント


 あれからも、折に触れ、「そいって何」って聞き回っている英人です。

 ちょっと訂正があるので書いておきます。

 「まぞい」の件なのですが、東北地方、それと北海道でも札幌の釣り人は、キツネメバルのことを「まぞい」というようです。

 だから、「そい」の中心はクロソイで、あとキツネメバルなどということでいいのでしょうが、「まぞい」をキツネメバルの地方名とする地方もあるようです。

 だいたい、キツネメバルという標準和名が「誤解」を招いているもとになっているのかもしれません。

 とにかくキツネメバル(ふくむタヌキメバル、コウライキツネメバル)の地方名として「まぞい」を使う地方も多いということに訂正しておきます。

                               英人
ps
 宮崎、もう2週間以上も波浪注意報がでているようです。

 宮崎のオオニベは中止しました。精進の悪い英人です。嵐を呼ぶ男なのでしょうか。

[354] 図鑑>キツネメバル・マガレイ>登録しました 
2002/3/15 (金) 23:15:30 小西英人
 馬鹿凡さんが、北海道積丹のキツネメバルとマガレイをアップしてくれました。

■キツネメバル
http://fishing-forum.org/cgi-bin/zukan/zkanmei.cgi?sel_no=2&seq=000264

■マガレイ
http://fishing-forum.org/cgi-bin/zukan/zkanmei.cgi?sel_no=2&seq=000265

 ありがとうございました。            英人

ps
 キツネメバルで、この「そい」チェーンと関係があるので、ここにぶら下げました。

pps
 もし、キツネメバルとクロソイの涙骨の棘の違いを見たい人がいるのなら、写真をアップしますけど。



[355] Re:図鑑>キツネメバル・マガレイ>登録しました 
2002/3/16 (土) 08:49:00 馬鹿凡
はじめまして。
アップさせていただいた、馬鹿凡でございます。
早速の掲載、大変ありがとうございます。

メバルとかソイの論議は興味深く読ませていただきました。
北海道でのソイ類の呼び名ですが、地方によって多少の差があるのですが、
大体は、以下の通りです。

クロソイ(Sebastes schlegeli Hilgendorf)=クロソイ、ナガラ、ナガラソイ
キツネメバル(Sebastes vulpes Doderlein)=マゾイ
シマソイ(Sebastes trivittatus Hilgendorf)=シマソイ、シマゾイ
ムラソイ(Sebastes pachycephalus Temminck et Schlegel)=ハチガラ
エゾメバル(Sebastes taczanowskii (Steindachner))=ガヤ

味についてのことも書いてありましたが、たしかに磯臭いかもしれません。
しかし、漁師の孫として育った私には、あの磯臭さがたまらなく美味です(笑)。
釣った直後に食べるより、下ろしてから冷蔵庫で一晩寝かせた方が、味が
はっきりとしてきます。

それでは、これからも宜しくお願い致します。


[356] Re2:図鑑>キツネメバル・マガレイ>登録しました 
2002/3/16 (土) 09:15:58 小西英人
▼ 馬鹿凡さん

 北海道の情報、ありがとうございます。

 北海道の釣りは、4回ほどしかしていませんが、いろいろ楽しかったです。とくに、いわゆる外道が、こちらとまったく違うので、おもしろくておもしろくてて。

 これからも、さまざまな北の情報をお願いいたします。

 そうですか、漁師さんの孫ですか、うらやましいな。

                             英人
ps
 きょう、朝の十時から、じゅん坊さんがシステムのメンテナンスをしてくれます。

 ぼくは、きょうから、あすまで、大阪で開かれる淡水魚系研究者の研究発表会に泊まりがけで参加してきますので、しばらく留守をしますね。

[359] Re3:図鑑>キツネメバル・マガレイ>登録しました 
2002/3/16 (土) 18:24:03 馬鹿凡
◆画像拡大
たびたびすいません。
エゾメバル(ガヤ)の画像もありますのでアップします。

ガヤの名前の由来は、がやがやとうるさいくらいに居るからだそうです。
こいつは、体長15cm程で、雄冬の通称七つ岩と言う、地磯で釣れました。
咥えているルアーは、ラパラのSR-7です。


[360] Re4:図鑑>キツネメバル・マガレイ>登録しました 
2002/3/17 (日) 20:59:34 小西英人
▼ 馬鹿凡さん

 エゾメバルの画像、ありがとうございます。

 釧路に行ったときには、がやがやいるから「がや」だけど、いなくなったなあと、かなりぼやいてはりました。

 鱗に淡色斑があるのが特徴で、すぐに見分けられます。馬鹿凡さんの写真は、ちょっと小さいからわかりにくいけど、よく見ると、淡色斑があります。

                            英人


[364] エゾメバル>画像をアップしておきます 
2002/3/18 (月) 12:36:21 小西英人
◆画像拡大
▼ 馬鹿凡さん

 釧路沖のエゾメバルの画像です。           英人

[366] Re:エゾメバル>画像をアップしておきます 
2002/3/18 (月) 18:29:34 馬鹿凡
でかいですね〜
沖で釣れるエゾメバルは、種類が違うのでは?と思うほど別物ですね。
浅瀬に居着いているものと、沖から産卵に来るものも、大きさが同じでも
かなり色や模様が違ったりします。
ちなみに、防波堤や地磯で釣れるのは、大きくても25cm程度です。

▼ 小西英人さん
> ▼ 馬鹿凡さん
>
>  釧路沖のエゾメバルの画像です。           英人

[365] 涙骨>キツネメバル・クロソイ>見分け方 
2002/3/18 (月) 12:42:12 小西英人
◆画像拡大
 涙骨って、いわれても難しいかな?

 眼の下、上顎の上の骨です。この涙骨の下方に棘(きょく)が何本あるかが、キツネメバルとクロソイの見分けになります。


 写真の上がクロソイ、はっきりした棘が3本あります。個体によっては4本のこともあります。

 写真の下がキツネメバル、ゆるくて、まるい棘が2本あります。

 写真のスキャンなんて、最近はじめたばかりで、加工やらなんやら、まったくわかりません。写真の汚いのはご愛敬ね。

                            英人

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