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[230] 知彼知己>メジナの骨 
2002/2/16 (土) 11:09:10 小西英人
 釣りサンデーの隔月刊誌『磯釣りスペシャル』に、ちいさなグレ(メジナ・クロ)のコラムを書いています。【知彼知己百戦不殆】カレヲシリオノレヲシレバヒャクセンアヤウカラズ…というタイトルですけど、たぶん、なんもわからないけどね。ぼくの文章じゃあね。

 そのなかのひとつを転載します。
                         英人


■磯釣りスペシャル■2001年11月号より
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知彼知己
百戦不殆

メジナの骨


ぼくらとクロメジナはお仲間
同じ骨を体に持っているんだ


 「尾長はなあ、かみそり持っとんや。ハリスをすっぱり切るんや…」と真剣にいう磯師は多い。かみそり?そう、クロメジナに限らず、ほほにかみそりを持つ魚は多い。ふつう鰓蓋の前に小さな鰓蓋があるが、この縁辺は鋭く、かみそりのようになっている。スズキで俗に「鎌」と呼ぶ部分と同じである。
 クロメジナが向こうに走るとき、ここを立てて、すっぱりとハリスを切るというのである。真偽はわからないけど、ここが鋭くて危ないのは事実だ。この「かみそり」は鰓蓋の骨、前鰓蓋骨と呼ばれる。ふつうはぴったりと閉じられていることが多く気がつかないままに、すっと触れると、ほんとうにエッジがかみそりのようになっていて深い切り傷になることが多い。
 ところで「鯛の鯛」は知っているだろうか。胸鰭を支える骨が魚に似ており、鯛の中にミニチュア鯛がいるから「鯛の鯛」と呼ばれる。クロメジナのクロメジナもいる。この骨の魚の頭部にあたる骨は「肩甲骨」で、胴体と尾部は「烏口骨」だ。
 えっ、なんで魚に肩甲骨があるのだろう…と驚くだろう。
 魚と人は共通祖先から分岐した。ぼくらは、脊椎動物という「お仲間」なのだ。クロメジナは肩甲骨で胸鰭という自由肢を支え、ぼくは肩甲骨で腕という自由肢を支える。それなら烏口骨って何なのと聞かれそうだ。人の肩甲骨の上部には突起があり烏口突起と呼ぶ。ここで上腕二頭筋と烏口腕筋を支える。
 ほら、ぼくとクロメジナは同じ祖先の骨を持っているんだ。

[243] 知彼知己>メジナの血族 
2002/2/20 (水) 06:24:36 小西英人
 釣りサンデーの隔月刊誌『磯釣りスペシャル』のちいさなコラム【知彼知己百戦不殆】カレヲシリオノレヲシレバヒャクセンアヤウカラズ…から、もうひとつ。

                        英人


■磯釣りスペシャル■2002年1月号より
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知彼知己
百戦不殆

メジナの血族


メジナの分布を世界で見ると
とても奇妙…出生に秘密あり


 日本のメジナ科メジナ属はクロメジナ、メジナ、オキナメジナの3種いる。世界のメジナの血族はどれくらいいるのか?
 ネルソンの『世界の魚』を読むとイスズミ科メジナ亜科は世界で2属17種。日本はメジナ科とされるが世界ではイスズミ科にする研究者が多い。洋書で科名索引するときは Kyphosidae で探すこと。インターネットの『フィッシュベース』で検索すると、有効なメジナ属は16種あり、もうひとつ帰属のはっきりしない属をメジナ属だとすると世界のメジナは17種になる。
 赤道で南北に分け大雑把に区分してみる。「西北太平洋」が日本で3種。「西南太平洋」がオーストラリア・ニュージーランドで5種。「東北太平洋」カリフォルニア沿岸で2種。「東南太平洋」のペルーとチリで5種。「東北大西洋」に2種。
 なぜか固有種が多く「東南太平洋」でいえば、ガラパゴス島固有種、イースター島固有種、ファンフェルナンデス島固有種など4種あり、広く分布するのは1種のみ、あと分布の狭いのを見ると、カリフォルニアで1種、ニュージーランドで1種、大西洋はカーボベルデ固有の1種と、周辺にちょっと広がる1種。17種のうち、なんと11種が大洋のど真ん中に浮かぶ孤島群の固有種…こんな変な分布は知らない。広域種でいうとオーストラリア・ニュージーランドは4種もいてメジナの天国だ。
 これはメジナ属が起源し、種分化するとき、かなり特殊な事情があったと思われる。誰かが研究したら面白いのだけど…。


※フィッシュベースのアドレスは
http://www.fishbase.org/home.htm

[254] 知彼知己>メジナの色 
2002/2/24 (日) 07:16:03 小西英人
 釣りサンデーの隔月刊誌『磯釣りスペシャル』のコラム【知彼知己百戦不殆】カレヲシリオノレヲシレバヒャクセンアヤウカラズ…から転載します。

                            英人

■磯釣りスペシャル■2002年3月号より
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知彼知己
百戦不殆

メジナの色


アドレナリンが放出されると
魚体は光輝き命輝かせるのだ


 釣り人って簡単な質問に答えられなくて、議論をしまくる人種である。そんなことないというあなたたち。それならメジナの色をいってごらんなさい。
 青や、茶や、灰色や、いやいや赤やで、ちゃうで青緑や、知らんな緑や…、きりがない。
 魚って鱗に包まれているように思うけれども、やはり基本は皮膚に包まれている。外側からいうと表皮、真皮、皮下組織になっており表皮には粘液腺、神経末端部などがある。真皮というのは分厚く、鱗、色素細胞、血管、神経繊維などがある。体色を決めるのは色素細胞で、ほとんどがこの真皮中にある。
 色素細胞は細胞に含まれる色素顆粒によって、黒色素胞、赤色素胞、黄色素胞、白色素胞、虹色素胞などにわけられ、最近では青色の色素細胞も見つけられている。虹色素胞とはグアニン、といってわからなければタチウオの「ぴかぴか物質」などが主成分で、反射させる。これらの色素細胞が組み合わさり、反射させ、光の干渉現象をおこし、などなどして、複雑で微妙な色をかもしだすのである。
 色素は自律神経やホルモンで凝集したり拡散したりする。たとえばアドレナリンが放出されると黒色素胞内のメラニンが凝集し色は淡くなる。アドレナリンが放出されなくなるとメラニンは分散し色は黒くなる。
 釣りあげたとき、メジナがひときわ色を変え、斑紋をだすのはアドレナリンが放出されて興奮しているのである。可哀想なこともしている。それもきっちりと自覚し釣りを楽しみたい。

[367] 知彼知己>メジナの鰭 
2002/3/19 (火) 06:32:25 小西英人
 釣りサンデーの隔月刊誌『磯釣りスペシャル』のコラムから…。

 【知彼知己百戦不殆】カレヲシリオノレヲシレバヒャクセンアヤウカラズ…今回は鰭(ひれ)の話です。

                        英人


■磯釣りスペシャル■2002年5月号より
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知彼知己
百戦不殆

メジナの鰭


とげは骨に見えても違うんだ
遊泳のために高度に発達した


 きれいな花には「とげ」がある。きれいな魚にも「とげ」がある。「とげ」…漢字で書くと刺もしくは棘で、魚類学では棘と書いて「きょく」と呼ぶ。
 この棘っていったいなんなんだろう。骨やんかという貴兄、とりあえず間違っているよ。
 いろいろ議論もあるが、鰭は骨化しているけれども鱗から変化してきたと考えられている。そのためサメ・エイ類以外のふつうの魚の鰭は鱗状鰭条と呼ばれる。この鰭には2種類あってひとつは軟条、ひとつが棘だ。軟条は一度よく見て欲しい。分節があり、左右一対の鰭条がひっつき、先端部が前後に分枝していることが多い。棘は左右の接合線も分節もなく鱗状鰭条の特徴を失って骨化している。この棘、軟条と、間をつなぐ鰭膜で鰭条は構成され、畳んだり拡げたり、鰭の面積を変える。
 背鰭、臀鰭、尾鰭は、魚類が発生したときからある古い鰭と考えられ、体の正中線に垂直にあるから垂直鰭もしくは不対鰭という。胸鰭と腹鰭は左右一対あるので対鰭と呼ぶ。対鰭を原始魚類は前肢と後肢に変化させわれわれの手と足になった。
 メジナの鰭は、背鰭、尾鰭、臀鰭、胸鰭、腹鰭からなり、多少ばらつきはあるが、背鰭は15棘14軟条、臀鰭は3棘12軟条、胸鰭は20軟条、腹鰭は1棘5軟条からなる。ふつう棘は背鰭、臀鰭、腹鰭の前部にあり鰭条を支える役目を果たしている。
 メジナの棘は、ちくちくして痛くて面倒なだけだと思わず、遊泳のため高度に発達した機能美なんだとも感じてやろう。

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