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新コミュニティ(掲示板)オープンのお知らせ

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[▲前のスレッド]

[4913] ブルーフィシュ投稿します。 
  【魚図鑑参照】
2003/2/26 (水) 09:01:25 BlackfishHomePage
◆画像拡大
Bluefish G.cyaneaを投稿します。
オーストラリアで釣ったメジナ科魚類の中で最もきれいな魚だと思っています。
初めて釣った時、唇の幅が薄く、鰓蓋の後縁が黒く、そして尾鰭の後縁の切れ込みが深いので、クロメジナに似ているかなと思いました。

Blackhish

[4917] 図鑑>豪州メジナ科4種>登録しました 
2003/2/26 (水) 20:07:54 小西英人HomePage
▼ Blackfishさん

 ブルーフィッシュなど、ほとんど情報がないと思われます。Blackfishさんさえ、よければ、この豪州メジナ科の記載は、BlackfishさんのHPから引用させてもらえませんか?

 一次情報ですし、ほんとうに貴重な情報だと思います。

 いちおうブラックドラマーまで4種とも、引用させてもらう形で登録して公開しています。問題があれば、すぐに閉じます。とりあえず見てください。それで了承して頂けるなら、ここに書いてください。

                              英人

[4920] Re:図鑑>豪州メジナ科4種>登録しました 
2003/2/26 (水) 21:00:27 BlackfishHomePage
小西さん

私のHPの内容でよければ、使ってください。
間違いがありましたら、どんどん加筆修正してください。私の勉強にもなりますので。

Blackfish

[4921] Re2:図鑑>豪州メジナ科4種>登録しました 
2003/2/26 (水) 21:12:44 小西英人HomePage
▼ Blackfishさん

 ありがとうございます。図鑑などの分布情報も、ほんとあてになりませんね。ニュージーランドの分布も入れようと思ったのですが、とりあえずやめます。

 そうそう。

 ルダリックですが、ぼくはいままで釣りサンデーに書くとき、ルーダリックと音引きをいれて表記していました。発音に近い表記で、ルダリックになるのでしょうか?

                        英人

[4926] Re3:図鑑>豪州メジナ科4種>登録しました 
2003/2/26 (水) 23:06:26 BlackfishHomePage
小西さん


小西さん
私がHPを作るときに引用した文献は以下の2つです。

図鑑
Hutchins, B. & R. Swainston. 1999. Sea Fishes of Southern Australia. Complete Field Guide for Anglers and Divers. Swainston Publishing. pp. 180.

消化管内容物についての論文
K.D.Clements & J.H. Choat. 1997. Comparison of herbivory in the closely-related marine fish genera Girella and Kyphosus. Marine Biology. 127: 579-586.

上記の図鑑に書かれている分布は、オーストラリアに限定されたもので、ニュージーランドについては全く触れられていません。したがって、ニュージーランドにいないというわけではありません。

例えばブルーフィシュの分布は以下のHPで紹介されていますが、ニュージーランドの島にも分布しているようです。
http://www.amonline.net.au/fishes/fishfacts/fish/gcyanea.htm
http://www.seafriends.org.nz/enviro/fish/kypho/kyphosid.htm
http://www.divenz.co.nz/Fish/drummers.htm
http://www.afma.gov.au/environmental%20management/environment%20updates/update-16.php


Luderikの表記としてルーダリックあるいはルダリックのどちらがよいか、自信ありません。ルダリックと聞こえたようでもNativeの人はルーダリックと発音しているのかも知れないです。釣りサンデーで、ルーダリックと音引きをいれて表記しているのであれば、今回もルーダリックに表記を統一したほうがいいですね。

Blackfish

[4927] 豪州メジナ>貴重な文献情報ありがとうございます 
2003/2/27 (木) 07:13:10 小西英人HomePage
▼ Blackfishさん

 文献・論文・HP情報ありがとうございます。

 文献は日本のアマゾンでも売っていました。この著者が2冊だしています。

 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/search-handle-url/index=books-us&field-author=Hutchins%2C%20Barry/250-1691772-4770601

 オーストラリアの魚類図鑑は、何冊か持っていまして、このメジナ科を調べたり、タイ科のクロダイ属を調べたりするのですが、分布をオーストラリア内部に限っているので、苦労します。また、かなりアバウトだったり、逆に細かい情報しか載っていなかったり、記載が図鑑によって、かなり違ったり、よくわかりません。

 まあ、魚を文献だけで調べるのは無理で、やはり現場を踏まなきゃいけないのですが…。

 クロダイ属の情報も、よく調べたのですが、ほんと、よく分かりません。日本のキチヌと同じ種がいることになっていますが、ぼくは疑っています。オーストラリアキチヌと、日本のオーストラリアキチヌが別種であることは、間違いなくなってきて、日本のオーストラリアキチヌは、オキナワキチヌに変更されていますけど、学名は決定されていません。いろいろ見てみたいのですが、オーストラリアは広いし、ぼくはオーストラリアは、ノーザンテリトリーのバラマンディしか釣りに行ったことがないもんで…。

 それで、メジナ科のうちニュージーランドにいるものは、分布に含めようかなと思ったのですが、ニュージーランドも、小なりといえども日本と同じくらい広く、北島と南島に別れて、まったく環境が違い、それにしっかりした魚類図鑑が無く、きちんとした分布情報がないので、まあ、きっちりと分かれば追加していこうかなと思っています。メジナ科の魚は、釣り人にほとんど知られていないようですね。

 オーストラリアとニュージーランドは並んでいるようですが、タスマン海があって、かなり深く、強い寒流が流れていて、ここで生物地理学的な分断があります。暖海の浅海にすむキス科魚類などはオーストラリアはキス天国なのに、ニュージーランドまでいけていません。メジナ科も、ニュージーランドの方が種数が少ないです。このオーストラリアとニュージーランドの魚類相を、生物地理学的に分析したらおもしろいだろうなと思います。

 オーストラリアのイシダイ科の情報も集めたいのですが、これも、なかなか実像がつかめずにいます。どうも深いところにいて、なかなか釣れないのか、まあ船からの底釣りがあまりないからか、日本のように磯から釣れないのか、よくわかりません。

■Knifejaw
■Oplegnathus woodwardi (Waite,1900)
http://filaman.uni-kiel.de/Summary/SpeciesSummary.cfm?ID=14409&genusname=Oplegnathus&speciesname=woodwardi

 また、いろいろ教えてください。

 それにしても、もう、日本に帰るのですか?

                      英人
ps
 ルダリック、ルーダリック。まあカタカナで表記するのは難しいのですが、いままで、そうしていますので、混乱を防ぐために、ルーダリックと音引きを入れさせてもらいますね。

[4929] Re:豪州メジナ>貴重な文献情報ありがとうございます 
2003/2/27 (木) 09:16:03 BlackfishHomePage
◆画像拡大
小西さん

私、日本では広島湾でチヌ釣りをやっていたので、オーストラリアのクロダイ属魚類も気になってました。シドニーのキビレ A.australisは、図鑑によると最大65cmになると書いてあるのですが、いざ釣ってみると、魚が思った以上に小さくて30cm越えるのが難しく、40cmオーバーは釣ったことがありません。

オーストラリアにはA.australisの他に、A.butcheri, A.breda, A.latusが分布しているとされていますが、オーストラリアは広すぎてこれらを狙いに行けなかったので、図鑑に書いてある以外のことはわかりません。

シドニーで釣ったクロダイ属の画像1枚載せておきます。この2匹の魚、同種かどうかよくわからないのです。下はA.australisでいいと思うのですが、上が別種だとすればA.butcheriかなと思うのですが自信ありません。鱗の数は写真だと数え難いですし、鰭の色は識別の決め手になるのでしょうか?

オーストラリア人はどんな魚でもルアーやフライで釣るのがお気に入りのようで、
キビレをソフトルアーで釣るプロトーナメントが盛んであり、またルーダリックやブルーフィシュをフライで狙う人もいます。

オーストラリアのイシダイ科の情報ですが、私の知っている限り、釣り雑誌に載っているをみたことがありません。磯からも釣ったのを見たこともありません。釣り人の多くはKnifejawの存在すら知らないのではないでしょうか。

日本には明日帰ります。もっとはやくこのWEB魚図鑑の存在を知っていたら、もっといろいろと情報交換できたのにと思うと残念です。日本に帰ってもこのWEBを見たいと思いますので、よろしくお願いします。

Blackfish

[4930] 豪州クロダイ>オーストラリスだと思います。 
2003/2/27 (木) 13:04:29 小西英人HomePage
▼ Blackfishさん

 写真では、はっきりしたことは言えませんが、Acanthopagrus australis だと思います。両方ともです。

 うちで調べたシドニーでのクロダイ属は、すべて Acanthopagrus australis
 でした。いちいち学名もなんだな。種小名を読んで、オーストラリスといったりもしますが、オーストラリアでは、イエローフィンブリームと呼ぶことが多いようです。フィッシュベースではサーフブリームとなっています。

 このオーストラリアの呼び名から、キチヌと間違えたりしますが、また、このキチヌがはっきりしません。キチヌ、Acanthopagrus latus は、オーストラリアの図鑑によっては、ウェスタンイエローフィンブリームと記載されていたりします。

 Acanthopagrus butcheri はブラックブリームとか、フィッシュベースではサザンブラックブリームと、コモンネームはなっています。うちでいえばフリーマントルで釣れたクロダイ属は、これでした。ひとことでいうと、白っぽいクロダイ属です。あまり、いい写真はありませんが、また、あとでアップしましょう。

 ナンヨウチヌ、Acanthopagrus berda は、うちはオーストラリアはケアンズで確認しています。この写真もあまりよくはないですが、なんでしたら、あとでアップしましょう。これは、ほんとアフリカまでひろがる広域分布の魚ですが、このまえ、ある研究者と話をしていたら、これも、世界中のがほんとうに同種かどうか、ちょっと怪しいというような雰囲気もありました。タイ科って、けっこう大変ですものね。

 タイ科といえば、マダイとゴウシュウマダイも、2000年にミトコンドリアDNAの研究から、亜種とされ、Pagrus auratus major とマダイ、Pagrus majorの学名がかわると騒いでいましたが、もうちょっと研究を積みあげてからと、棚上げになっています。

 オーストラリアと日本、反赤道分布の研究も面白いんでしょうね。

 ぼくは、研究者ではないから、ああでもない、こうでもないと、面白がるだけですけど…。

 そか、日本に帰っちゃうのですね。

 それでも、久しぶりの日本も、またいいでしょう。

 こちらこそ、よろしく。           英人

[4950] 豪州クロダイ>サーフブリーム 
2003/2/27 (木) 21:37:39 小西英人HomePage
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サーフブリーム22cm■1996年4月8日、オーストラリア・シドニー・パラマッタリバー

 小ぶりですけど、Acanthopagrus australis をアップします。フィッシュベースのコモンネームは、サーフブリームとなっていますので、あまりなじみのない名前ですけど、これを使います。

                           英人

[4951] 豪州クロダイ>サーフブリーム>頭部アップです 
2003/2/27 (木) 21:38:33 小西英人HomePage
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サーフブリーム22cm■1996年4月8日、オーストラリア・シドニー・パラマッタリバー

 頭部のアップです。               英人

[4952] 豪州クロダイ>サーフブリーム>もう1個体 
2003/2/27 (木) 21:39:33 小西英人HomePage
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▼ 小西英人さん
サーフブリーム■1996年4月8日、オーストラリア・シドニー・パラマッタリバー

 違う個体です。やはり小ぶりですが…。         英人

[4953] 豪州クロダイ>サザンブラックブリーム 
2003/2/27 (木) 22:04:30 小西英人HomePage
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サザンブラックブリーム■1994年9月20日、オーストラリア・西オーストラリア・フリーマントル沖

 Acanthopagrus butcheri です。やはりフィッシュベースの名前で、サザンブラックブリームにしておきます。

                           英人

[4954] 豪州クロダイ>ナンヨウチヌ 
2003/2/27 (木) 22:06:20 小西英人HomePage
◆画像拡大
ナンヨウチヌ■1994年11月20日、オーストラリア・ケアンズ

 Acanthopagrus berda ナンヨウチヌです。       英人

[4955] 米国クロダイ>羊頭鯛 
2003/2/27 (木) 22:12:39 小西英人HomePage
◆画像拡大
シープスヘッドシーブリーム■アメリカ・フロリダ

フィッシュベースネームで Sheepshead seabream 学名は Archosargus probatocephalus をついでにアップしておきます。クロダイ属、Acanthopagrus ではありません。この Archosargus をタイ科の赤崎こと赤崎正人博士は、アメリカチヌ属という和名をあたえています。タイ科アメリカチヌ属ですね。

 フロリダでは、有名な釣魚だそうですが…。     英人

[4957] 米国クロダイ>羊頭鯛>転載します 
2003/2/28 (金) 06:48:01 小西英人HomePage
シープスヘッドシーブリーム■アメリカ・フロリダ

 この直訳すれば「羊頭鯛」になるクロダイの近縁種について、今年の新年に週刊釣りサンデーの『似たモン魚譜』で、クロダイとくらべて書いた原稿があるので、転載しておきましょう。また、『ちぬ倶楽部』に前に連載した『くろだい●とくほん』からも転載しておきましょう。

 そうそう。シープヘッドシーブリームは、フィッシュベースネームで、ふつうアメリカでは、シープスヘッドと呼ばれているようです。ただし、このままの呼び名だとベラ科の魚であったり、数種に、同じ呼び名があるようです。そのためにフィッシュベースでは、語尾にシーブリームをつけていると思われます。シーブリームは直訳すれば「海の鯛」です。

■似たモン魚譜■『週刊釣りサンデー』より転載
=================================================
羊頭鯛 Archosargus probatocephalus
体側に明瞭な黒色横帯がある
VS
クロダイ Acanthopagrus shlegeli
体側に明瞭な黒色横帯はない

連載■228

■あけましておめでとうございます。今年は未年、羊にちなむ標準和名を探してもない。英名のゴートフィッシュしか浮かばない。これは山羊だけどヒメジ科の魚のこと。オジサンでも引っぱりだそうと思ったとたん、ひらめいた。そうだシープスヘッド・シーブリームだ。これは直訳すると羊頭鯛になるな。
■この魚、いったいなんなんだ。イシダイなのかクロダイなのかと叱られそうだ。結論からいおう。タイ科で西大西洋に広くすむ魚、1962年に「鯛の赤崎」とうたわれた赤崎正人博士はアメリカチヌ属という和属名を提唱している。クロダイ属とかなり近い仲間だ。フロリダの汽水域では釣魚としても有名だ。
■英名で、なぜ羊頭なのか分からない。羊頭とは英語古語で「とんま」という意味もあるらしいから「とんま鯛」だろうか。東洋なら羊頭を懸げて狗肉を売る、なんて羊はいい意味に使う。羊が大きく育つと「美」と感じる古代中国の遊牧民族の心が知らず知らず、いまの日本にも伝わっているのだ。義・善・祥など羊部の漢字はいい意味が多い。ほら羊頭鯛、こいつは春から縁起がいいわい。初夢はフロリダの羊釣りに決まりだな。小西英人■


■くろだい●とくほん■『ちぬ倶楽部』より転載
=================================================
ナイフの歯を持つ進化した黒鯛?


●クロダイ師というのは、マニアの多い釣り師の中でも、マニア中のマニアだと思う。むっちゃ、こだわる。キチヌでさえ、それはクロダイではない。「ふん、黄鰭や」なのである。もしクロダイの外道にヒラマサが釣れても、顔色ひとつ変えずに、海にお帰り願うのがクロダイ師というものなんだ。もし外国で「まんまクロダイ」が釣れるなら行きたいかもしれないが、それが「くろだいもどき」であるなら、まったく興味はない。
●しかし、オーストラリア南部の「くろだい」そして西大西洋の「くろだいもどき」などとつぶやくと、あまりにも「けったい」だから、つい聞き耳を立てていただけないだろうか。
       ●
●フランスに行きたしと思へども、フランスはあまりに遠し…というとき、萩原朔太郎は、せめて新しき背広を着て、きままなる旅に出てみん…としはったけど、ぼく、異国を想い、まだ見ぬ魚を想うとき、書斎で文献の旅に出るのである。インターネットにフィッシュ・ベースという世界中の魚を集めたデータベースがあるのだが、そこの名前で Southern black bream というのがオーストラリア南部の「くろだい」で、直訳し「南部黒鯛」と呼ぼう。西大西洋にいる「くろだいもどき」は、同じく Sheepshead seabream だ。なぜ「羊頭鯛」か分からない。羊頭とは英語古語で「とんま」という意味があるらしいから、「とんま鯛」だろうか。東洋なら羊頭を懸げて狗肉を売る…などと立派な物のたとえなのにねえ。直訳し「羊頭鯛」と呼ぶ。どちらも学名は写真に添えておくので、参考にして欲しい。
       ●
●「南部黒鯛」は、名のようにオーストラリア南部、いわゆるグレートオーストラリア湾、お向かいは南極、というところにすむ固有種である。クロダイ属の基本パターンそのままの魚なので、まえにオキナワキチヌと同種とされていた、オーストラリアのイエローフィンブリームと、よく似ていて、また、キチヌとも、よく似ている。そんなこんなで、文献上、はっきりしないところもある。世界中のクロダイ属は、なんども書くが見直さなければいけないだろう。見ての通り「まんまクロダイ」なので、いちど釣ってみたい。海、河口、川、湖と、海水から淡水まで、ふつうにいて釣り師を楽しませているらしい。
       ●
●「羊頭鯛」は、写真をちょっと見て、それから、ゆっくり見て、どちらにしても驚いて欲しい。もし、日本に、これがいれば、釣り師の、海の、国魚になったかもしれない。写真がカラーでないのが残念だが、色は、ちょっとクリームがかるけれどもイシダイの色とそっくりである。イシダイだとすると鱗が大きいので違和感はあるけれど、とにかくイシダイのような模様のクロダイなのである。
●まえに「くろだい」を定義するなら、いろいろややこしいので、クロダイ属、アカントパグルスに含まれるものを「くろだい」とすると書いた。残念ながら羊頭鯛は、クロダイ属ではない。タイ科のアルコサルグス属になる。赤崎正人博士が1962年に、この属を和名ではアメリカチヌ属と記載している。
●クロダイ属は、フィッシュ・ベースによると世界中に9種いて、インド洋と西太平洋にしかいない。アメリカチヌ属は世界中に3種いる。ひとつはブラックスポット・ポーギィ、太平洋だが、ガラパゴス諸島固有種。あとは西大西洋に分布する。ウェスタン・アトランティック・シーブリームは、アメリカのニュージャージー州からブラジルのリオデジャネイロまで分布するが、ふつうにはマングローブ林の泥底に見られるという。
●どちらも形は「くろだい」に似るが、鰓蓋後部に大黒斑があり、7本ほどの黄色縦線が体を走って、釣り師の目には「くろだい」に見えないだろう。
●さて残った羊頭鯛。フィッシュ・ベースによると、バハマ諸島、西インド諸島をのぞく、カナダのノバスコシア、北部メキシコ湾からブラジルの西大西洋に分布。フロリダの汽水域で釣魚として有名であるようだ。
●さて、このアメリカチヌ属、どれだけクロダイ属に近いか。鰭条数は、あまり違わない。背鰭棘が強く幅の広い棘と幅の狭い棘が交互に並ぶとか、臀鰭第2棘が強大であるとか、クロダイ属の特徴は、きちんと持つ。歯を見てみよう。クロダイ属の顎は6本の門歯状歯が前部にあり、続いて3〜5列の丸い臼歯状歯が並ぶ。アメリカチヌ属の顎には8本の門歯状歯が前部にあり、続いて2〜3列の丸い臼歯状歯が並ぶ。よく似ている。ただし、文献にあるのは図なのだが、アメリカチヌ属の門歯状歯は、横にびっしり並び、先はまっすぐになって、ほんとうの門歯のような形で、噛み切りやすくなっている。クロダイ属の門歯状歯は不完全で、犬歯のような形態だが、基部の断面が犬歯の円状と違い楕円状になっているから門歯状と呼ばれる。羊頭鯛は大西洋クロダイと呼んでもいいぐらい近縁のようだ。
       ●
●羊頭鯛、ナイフエッジの前歯を持ち、藻類をすぱすぱ噛み切って暮らす。雑食を、より進化させた「先鋭黒鯛」なのか。
●大西洋に行って釣ろうぜ。

●FishBase;A Global Information System on Fishes のアドレスは http://www.fishbase.org/search.cfm

[4959] 豪州クロダイ>ナンヨウチヌ>悲運の博物学者 
2003/2/28 (金) 07:31:01 小西英人HomePage
 ナンヨウチヌのこと書いた原稿を転載しておきます。

 このフォシュスコールが悪性のマラリアで死んだのは31歳という若さでした。彼によって記載された(正確には彼が集めて記録して出版したのは、ただひとり生還したニーブール)魚は多いのです。興味のある人がいれば、また、詳しく書きますけど…。

                         英人


■魚あれこれ■棘鯛の系譜D■『釣魚図鑑』より転載
================================================
紅海でマラリアに倒れる。悲運の博物学者を想う

ナンヨウチヌ■
■インド洋太平洋の覇者


■思わぬところで思わぬ人に出逢うことがある。思わず心ときめいたりしてね。
■釣り人の場合、それが、いい女ではなくて、いい魚だったりする。それで、心ときめきまくったりするんだから、ほんとツリビトって変な人種だなあと思う。まさしくそれだった。ぼくとナンヨウチヌとの出逢いは。
            ■
■Field Guide to the Freshwater Fishes of Tanzania.
■そんな図鑑を眺めていた。英語って長ったらしくて厭だ。長くなけりゃ読んでやってもいいのだけど。『タンザニア淡水魚の野外案内』と日本語なら簡単なのに。とにかく、そういう図鑑をぱらぱらとくって眺めているとタイ科 Sparidae という言葉が眼に飛びこんできた。
■クロダイ属 Acanthopagrus この連載タイトルにもしている「棘鯛」という言葉まで眼に飛びこんでくる。
■ええっ!
■淡水魚の図鑑とちゃうのん。アフリカのタンザニアの図鑑とちゃうのん。なんでやのん。
■Acanthopagrus berda (Forsskal,1775)
■学名はこう書かれていて、国連食糧農業機関名はピクニック・シー・ブリーム。地方名はクング。国連食糧農業機関名というと、たいそうだが FAO Namesといって、FAOが英語、フランス語、スペイン語で決めている名前のことだ。FAOはいま世界中の魚のカタログを世界中の研究者に委託しまとめつつある。日本は標準和名という「考え方」があるが、外国ではあまりなく魚名は混乱している。「標準世界名」のようなものが国連食糧農業機関名になるだろう。この図鑑もFAOがだしている。
■そんなことはどうでもいい。眼が釘付けになってしまったのは、最大寸法だ。75pとある。
■淡水に75pもあるクロダイ属がいるのか?
■しかし、そのあとには…普通30pとも書いている。汚いぞ。その手は桑名の焼き蛤だい。
            ■
■日本の図鑑で調べてみて、またまたまたまた大びっくり。それはナンヨウチヌだったのだ。
            ■
■日本では西表島以南にしかすまないクロダイ属で、鱗が大きく、体高が高く、ぬめっとし、尾鰭の後縁はハート形のように切れ込み、なんというか、日本産のクロダイ属の中では、いちばん「変」な黒鯛である。
■クロダイ属で、よく問題になる背鰭棘条部中央下側線上方横列鱗数は3.5枚、それで鱗が大きく見える。キチヌと同じだが、キチヌは琉球列島にはいないので間違えない。また、キチヌの臀鰭は、中央が黄色か淡色だが、ナンヨウチヌは暗色になっている。淡水性が強く、西表島でも、マングローブ林から河の中に多いようだ。日本では、ほとんど知られていない変な黒鯛なのだが、世界で見るといちばん広く分布し、いちばん古くから報告され、いちばんよく知られていた黒鯛なのだ。台湾、香港から東南アジア、オーストラリアの東岸、北岸、西岸、インド洋、紅海、アフリカ東岸まで、インド洋と西太平洋のほとんどを制覇したのがナンヨウチヌなのだ。
            ■
■2000年1月1日から、かちっと音をたてて動きだしたものって知っているだろうか? 2000年問題ではない。
■ICZN,1999 だ。国際動物命名規約の第4版が1999年に出版され、2000年1月1日から「かちっ」と発効した。
■国際動物命名規約・第4版。International Code of Zoological Nomenclature,Fourth Edition.略称が ICZN,1999 英語とフランス語で書かれた、この書物こそが、すべての動物学名を決める「法律」なのだ。
            ■
■学名って、なんだろう?
■学名、二名法というのは、スウェーデンの大植物学者(医学者・分類学者)カール・フォン・リンネ(1707〜1778)をもって嚆矢とする。すべての動物学名は、このリンネの『自然の体系・第10版』 (Systema Nature,10th Edition,1758)から出発するのだ。
■リンネの時代は大博物学時代といってもいい時代だった。世界中が探検され、ヨーロッパにさまざまな動植物が持ち込まれ博物学者たちはどんどん記載していった。すべて新種だった。地球は「発見」に満ちていた。そして、てんでに名前をつけ発表し、混乱もすごかった。
■リンネも先の『自然の体系』で、ライオンを Felis cauda elongata,corpore helvolo とした。訳すと尾の長い体が淡黄色の猫となるらしい。ほかにも「ふさふさした長い尾を持ち上半身にたてがみのある猫」なんて名前も書いた。そして本の欄外にLeo という略号を振る。この『自然の体系』の欄外の略号が学名のはじまり。
■もちろん、このままはじめたものではなく制度化されたのはずっとずっと遅れた。1889年のパリの第1回国際動物学会議で草案が提出され、1900年の第5回ベルリン大会で採択された。そして1961年にいまの命名規約のもとになった「新規約」の第1版が出版されている。
            ■
■ライオンの学名を書く。
■Felis leo Linnaeus,1758
■フェリスが属名、レオが種小名、ふたつあわせて種の学名である。これがリンネの二名法。イタリック体で表記する。その後ろのリンネウスはリンネの英語表記で著者名、年号は出版日付。1758年出版のリンネの『自然の体系』で記載されているという意味で、これらは学名につけても、つけなくてもいい。
■簡単に考えると、学名とは出版された「名前」の引用だと思ったら、実状に近いのかもしれない。
■1758年の『自然の体系 第10版』以後に世界中で出版されたものすべての中から、国際動物命名規約で厳密に定めた条件に合う名前で、いちばん最初に出版された名前を有効にしましょう…というのが「学名」なのだ。
■反対にいうと、242年の間に、出版されたすべての記載の名前を調べなければならないのが「学名」だ。そして、記載だけでは生物は分からない。その記載には「標本」が指定されている。いろいろあるが、いちばん重要な標本は「ホロタイプ」と呼ばれる「完模式標本」で、ぶっちゃけていうと学名とは、その、世界でたったひとつの「標本」の名前のことだと思うとよい。
■そんなむちゃくちゃなと思うだろう。そう、そんなむちゃくちゃな世界なのだ。世間は新種か新種でないかとすぐ騒ぎたがるけれど、研究者たちが慎重で「新種」ともいわず「未記載種」などといい、なかなか研究が進まないのは、こういう「壮大」な事情があるのだ。
            ■
■もういちど、ナンヨウチヌの学名を書く。
■Acanthopagrus berda (Forsskal,1775)
■Forsskal とは、スウェーデンの博物学者、ペーテル・フォシュスコール(フォルスコルとも)のことで、有名な「リンネの使徒たち」のひとりである。リンネから「学名」が始まるのは、彼の生物分類体系がすばらしかったこともあるのだが、彼が「使徒」と呼んだ弟子たちを世界中に派遣し、標本を集め記載したことにもよる。リンネの使徒のひとりでもあるツューンベリ(ツンベルグとも) Thunberg は1775年に日本にも来て『日本動物誌』などをまとめている。1775年とは安永4年、杉田玄白らが『解体新書』を出版した翌年にあたる。
■フォシュスコールは、1761年にデンマーク王によって編成されたアラビア調査探検隊に加わり、世界ではじめて紅海の魚類調査を行った。調査中の1763年にイエメンでマラリアによって客死した。この探検隊で生きてデンマークに帰ったのはひとりだけだったという。この探検の時にイエメンの紅海で採集されたのがナンヨウチヌ。彼の死後、整理され1775年に出版された。完模式標本はZMUC P5055 デンマークのコペンハーゲン大学動物博物館に収蔵されている。もちろん見たことはないけれど文献によると dry skin となっている。乾燥した皮なのだろう。江戸時代に記載された学名の標本がきちんと保管されている。「ヨーロッパ」という文化の底力を思う。
            ■
■学名ひとつで225年の時空を超え、いろいろな空想もできる。魚類分類学とは、そういう「遊び」もできる。

初出●『ちぬ倶楽部』2000年4月号

[4956] 豪州クロダイ>サーフブリーム>あす登録します 
2003/2/27 (木) 23:50:32 小西英人HomePage
▼ みなさん

 サーフブリームと、サザンブラックブリームと、シープスヘッドシーブリームの3種は、まだ書いていないのに、うっかり登録してしまいました。

 きょうは、しんどいので、あすにでも書きますね。

 ごめんなさい。                 英人

[4960] Re:豪州クロダイ>サーフブリーム>あす登録します 
2003/2/28 (金) 12:06:50 小西英人HomePage
▼ みなさん

 記載して登録しておきました。          英人

[4958] 豪州クロダイ>サーフブリーム>オキナワキチヌのこと 
2003/2/28 (金) 07:15:46 小西英人HomePage
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オキナワキチヌ■香港にて

 このサーフブリームというのは2000年まで日本の沖縄から香港くらいにまで分布する極東のクロダイ属と同種とされ、オーストラリアキチヌと呼ばれていた。

 2000年から『日本産魚類検索』により「オキナワキチヌ」が提唱され、Acanthopagrus australis と 別種だとされているが、このオキナワキチヌの学名はまだ決定されていない。

 このオキナワキチヌの遺伝子的な研究が発表される前に、釣りサンデーの『ちぬ倶楽部』に書いた「オーストラリアキチヌ」の原稿があるので、それを転載しよう。ただし、この情報が古くなったと書いた『怪投乱麻』の原稿を先に抜き書きしておこう。ややこしくて、ごめんね。

■週刊釣りサンデー2000年12月24日号【快投乱麻】より一部抜粋
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■この「棘鯛の系譜」でオーストラリアに棲むオーストラリアキチヌと、沖縄に棲むオーストラリアキチヌ、そしてミナミクロダイの関係は「いまのところ研究者でさえ、しっかりしたことは、なにもいえないという困りもの…」だと書いた。琉球大学理学部海洋自然科学科大学院生の粂正幸さん、吉野哲夫助教授、東京大学海洋研究所の西田睦教授によってオーストラリア産と沖縄産のオーストラリアキチヌとミナミクロダイとナンヨウチヌの遺伝子分析がされ、すべて同じ程度の遺伝的分化が確認された。つまりオーストラリアのオーストラリアキチヌと沖縄のオーストラリアキチヌはやはり別種であり、ミナミクロダイとも別種であると遺伝子からも確認された。(2000年度日本魚類学会年会講演要旨)
■この日本魚類学会年会は神奈川県立生命の星・地球博物館で十月六日〜九日まで行われた。そのポスターセッションという展示発表会場を歩いていたら声をかけられた。クロダイ属の話をするときに、眼を輝かせ、くりくりくりくり動かす好青年、琉球大学の粂さんだった。彼からオーストラリアキチヌとミナミクロダイの識別点をご教示いただいた。ただし、彼の研究は発表されていないので、まだ書けない。とにかく『釣魚図鑑』に書いたことは古くなりそうなのだ。また一九九七年に赤崎正人博士はオーストラリアキチヌを「おきなわきちぬ」という和名に変えようと提唱されたけどその提唱の方法が乱暴だから、しばらく使わないと書いた。しかし十二月二十日に出版されるであろう『日本産魚類検索・第二版』では、この赤崎博士の提唱を受けオキナワキチヌを採用したようだ。世紀末になってクロダイ属研究が動き始めた。


■魚あれこれ■棘鯛の系譜@■『釣魚図鑑』より転載
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白い。強い。大きい。ちんしらーを実感してみたい


オーストラリアキチヌ■
■いちばん謎の多い黒鯛


■ある日、ある時。仲間と世界の「くろだい」の話になった。いったい地中海に黒鯛はいるのか、いないのかという話である。イタリアに旅行した「ちぬ師」は、まんま黒鯛が市場で売られていたと驚いてしまったのだ。
■地中海にすむタイ科魚類の種数は日本よりもかなり多い。赤い「たい」もいるし、黒い「たい」もいる。しかし黒い鯛も体に横帯や斑紋があり、特に尾柄部に大黒斑を持つものが多くてこれは、どちらかといえば「くろだい」でなく「へだい」に近いグループなのである…。
■ぐだぐだぐずぐず説明していたら、件のちぬ師、なにやら、ぶつぶつぼそぼそ、つぶやいている。
■「それでも黒鯛はいる…」
■あかん。ガリレオを迫害した頑固爺みたいやんか、よし、きちんと調べてやろうと思いたったのである。
            ■
■まず「くろだい」を定義しよう。ちぬ師には、さまざまな思いこみがあるから、それぞれの「くろだい」があり、楽しくていいのだが、世界の「くろだい」の話をするのなら、その範囲を決めておかなくっちゃね。
■ここは簡単にいく。タイ科クロダイ属に含まれる魚を「くろだい」と呼ぶ。それではクロダイ属とは、どういう魚類のことだろうか、『魚類の形態と検索』(松原喜代松、1955)からクロダイ属の特徴を引用してみる。
■@背鰭棘は強く、1側から見ると幅の広い棘と狭い棘が左右交互に並ぶ。
■A臀鰭第二棘は大いに肥大し、甚だ強い。
■B背鰭軟条部及び臀鰭は基底部に密に鱗を被る。
■C各顎には前部の4〜6本の門歯状の歯に続いて、3〜5列の円い臼歯状の歯があって、各々は大きさほとんど又は全く相等しい。
■以下Hまであげているが専門的になるので省略。
■なるほど。研究者というのはしっかりと見ているもんだ。この背鰭棘が強く、幅の広いのと幅の狭いのが並んでいるのがクロダイの特徴だと知っていただろうか。
            ■
■Acanthopagrus というのがクロダイ属の学名だ。acantho とはギリシャ語の akantha からきていて「棘」の意味。pagrusとはギリシャ語の pagros からきていて「鯛」の意味。クロダイ属の学名は「棘鯛」という意味なのだ。クロダイ属の特徴を、よく表している、いい学名だと思う。1855年だから、ペリー来航の2年後、安政2年にピータースが命名していたが無視されていて、1984年の『日本産魚類大図鑑』(益田一・ほか編)の赤崎正人博士の記載から有効とされた。赤崎博士は1962年には『タイ型魚類の研究』で、ピータースの Acanthopagrus を使おうと提唱していたのだが、日本語論文なので無視されていた。そんなこんなで、ちょっと古い魚類図鑑では、Acanthopagrus を使っていないものが多い。
            ■
■世界のクロダイを見てみようといっても、赤崎博士以降、クロダイ属はあまり総合的に研究されてはおらず、最新のいい文献が見あたらない。仕方がないので世界中の魚類図鑑を片っ端からひっくり返し、ぼくが探せた範囲の世界のクロダイ属魚類を並べてみる。
■日本産クロダイ属は、クロダイ、キチヌ、ミナミクロダイ、オーストラリアキチヌ、ナンヨウチヌの5種。
■あと、オーストラリアには、Black bream(ブラックブリーム)とNorthwest black bream(ノースウエスト・ブラックブリーム)というのがいて、ペルシャ湾からアフリカ大陸東岸にTwobar seabream (ツーバーシーブリーム)がいて3種。
■なんとクロダイ属は世界で8種しかいない。そして魚類学用語でいうインド・西太平洋域にしかいない。その8種のうち、5種が釣れてしまう日本はクロダイのパラダイスなのである。地中海にクロダイ属魚類はいない。ただし、タイ科魚類の分類が難しいのは、普通の魚の形をしていて、特徴にとぼしいことであり、平べったい黒っぽい魚なら、ぱっとみて、「まんま黒鯛」に見えることはある。ヨーロッパを旅行する「ちぬ師」諸兄、こんどからは、背鰭棘と、顎の臼歯を見てくれたまえ。
■ただしスエズ運河なるものがあるので、分布が広く紅海にもいるナンヨウチヌなどが地中海に入っていても、ぼくは知らない。またツーバーシーブリームも紅海にいるので、地中海に入るかもしれない。ただし、この魚、英名のように眼とその後ろに世にも派手な黒色横帯が2本走り、尾鰭、背鰭軟条部、胸鰭、眼前部に、世にも派手な黄色がはいる。いぶし銀に慣れた「ちぬ師」には、百歩譲ってもクロダイに見えない。臀鰭軟条数などを見ても、ヘダイにも近い中間的な存在である。
■英名 common name は、その地域で中心になると思われる魚類図鑑のトップに載っている名前を使った。外国は日本のように「標準和名」という考え方はなく、英名はたくさんある。実際に調べたのは学名だ。この8種以外にも学名はあったが、同物異名という同じ物に違う名前をつけたと考えられるものと、混乱していてはっきりしないものは、とりあえず外した。ただしクロダイ属の整理は、まだまだついておらず、これからの研究に期待したい。なお「たい」のことを英語では Sea bream または Porgyという。Porgy は、属の学名と同じギリシャ語の「鯛」Pagrosからきている言葉だ。
            ■
■ははは。脱線しまくっているな。いよいよ本題、オーストラリアキチヌを考えてみよう。
■オーストラリアキチヌ。Acanthopagrus australis というのが日本にもいるといいだしたのは赤崎博士。『日本産魚類大図鑑』(益田一・ほか編、1984)で、沖縄のミナミクロダイの中に、腹鰭と臀鰭が黄色く、臀鰭第2棘が長いのがおり、それはオーストラリアにすんでいるAcanthopagrus australis と同種だとし「オーストラリアキチヌ」の標準和名を提唱した。
■『日本産魚類検索』(中坊徹次編、1993)で林公義さんは、赤崎博士が Acanthopagrus australisとした沖縄島産の標本と、オーストラリア産の Acanthopagrus australis と同定できる標本を比較すると、外部形態、斑紋などに差異があり、再検討が必要であると注記をいれた。「ちゃうんちゃうのん」というわけだ。
            ■
■沖縄のミナミクロダイは、たしかにふたつに分けられる。釣り人も分けて、ひとつを「ちんしらー」と呼ぶ。「白いちぬ」だ。ただし、その差は非常に微妙である。「ちんしらー」とは種内変異なのかもしれないし老成魚がそう見えるだけなのかもしれない。
■ぼくは、沖縄産のオーストラリアキチヌの実物を見たことがなく、長年疑問だったのだが、1999年に思いがけなく中国の香港でオーストラリアキチヌと思われるクロダイを釣り、しげしげ見ることができた。
■ミナミクロダイにくらべて、オーストラリアキチヌはここが違うという、ぼくなりの外見から見た「キー」をあげておく。ともに背鰭棘条部中央下側線上方横列鱗数は4.5枚、日本産で4.5枚は、この両種だけだ。
■体色が白っぽい。(黒っぽいのもいる)
■臀鰭中央が黄色い。(黄色くないのもいる)
■腹鰭と臀鰭は淡色。(淡色でないのもいる)
■尾鰭後縁が黒い。(尾鰭全体が黒いのもいる)
■背鰭縁辺が黒い。(黒くないのもいる)
■こんな例外だらけの「キー」しか、いまのところはない。でも、これらを複合的に組み合わせるとオーストラリアキチヌは、ミナミクロダイから分離できる。
            ■
■さて、日本の「オーストラリアキチヌ」をまとめておこう。沖縄本島から台湾、香港に分布。オーストラリア東北岸の Acanthopagrus australis と同種だといわれていたが、東アジアの固有種のように思われる。日本産クロダイの中で、いちばん謎の多いクロダイである。
■感覚でいう。ぽかっと浮いたとき「白い」クロダイ。力が異様に「強い」クロダイ。そして「大きく」なるクロダイ。それが「オーストラリアキチヌ」なのだ。
■「棘鯛の系譜」の中に混乱したのがいる。よし。釣ってみよう。釣り人が魚を「知る」のには、とにかく「引っ張り合い」をすることだ。いざ行かん。沖縄へ。

初出誌●『ちぬ倶楽部』1999年8月号

[4922] 図鑑>ブルーフィシュ>登録しました 
2003/2/26 (水) 21:14:39 小西英人HomePage
▼ Blackfishさん

 ブルーフィッシュの図鑑へのアップありがとうございました。登録しておきました。記載はBlackfishさんのものを使わせていただきました。

                          英人

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