さかなBBSトップ
魚のことならおまかせ。WEBさかな図鑑
釣具の通販・Gear-Lab
HOME 似たもの検索  携帯版  | Gear-Lab

新コミュニティ(掲示板)オープンのお知らせ

WEB魚図鑑では、2013/7/25より新しいコミュニティをオープンしました。 「このお魚何?」というQ&A専用のページもあります。是非新しいコミュニティを使ってみてください。新コミュへの投稿はズカンドットコムへのアカウント登録が必要です。2013年1月以前にWEB魚図鑑へ投稿したことのある方はアカウントの引き継ぎを行うことができます。


[▲前のスレッド]

[13742] 書評>『決定版 日本のハゼ』>@恐ろしくマニアック 
2004/10/1 (金) 18:38:48 小西英人HomePage
◆画像拡大
■『決定版 日本のハゼ』(瀬能宏・監修 矢野維幾・写真 鈴木寿之・渋川浩一・解説 平凡社 定価3800円+税)

▼ みなさん

 【WEB魚図鑑】をたちあげるとき、JUNさんや、じゅん坊さんに、とにかく走ってみなければ分からないから、走りながら考えればいいじゃないかといわれました。

 言葉なんて便利だし、言うだけなら簡単なんだよね。

 図鑑を何冊か編んだことがあるといっても、ぼくは、魚に関して素人に近く、それに、淡水魚とハゼ科は、分かりません。まあ淡水魚が分からないと言っても、コイ科なんで、種数が少なく、まあ、どうにかなるさというのがありました。

 問題がハゼ、これは、究極の問題なのです。こんなもの、分かるわけがない。

 それでも、まあ、ぼくも、釣り人の撮った写真を集める、投稿型の魚類図鑑を、みんなでインターネット上に構築することに、興味があったので、走りはじめることにしました。

 初期のころ、ぼく、淡水とハゼはやめてね…、淡水とハゼはやめてね…と呪文のように書いていたのを覚えてはる人はいるだろうか。

 研究者でさえ、ハゼをやっていない人は、ハゼは分からないのだから…。

 いつやら、学会の茶飲み話で、誰かが、「本日のハゼ」情報って流してくれなきゃ、訳が分からないぞなんていってて、笑いながら、みんなで納得していました。

 それほど、ハゼ学はややこしく、それほどハゼ学は進んでいるのです。ある面で言えば確実に生物学の最先端を走っています。

 それで、怖いので、何人かの研究者に、【WEB魚図鑑】に、ややこしい写真同定依頼が来たら、見てよね、見てよねと、同定してねと、お願いしておきました。

 そのひとり、瀬能宏さんが監修し、そのひとり、鈴木寿之さんが著者になった、ハゼ学の最先端が詰まった本がでました!

 これほど嬉しいことは、ぼく、ありません。

 ハゼは厭だ!

 なんて、インターネットの中心で叫んでも、釣り人は、何言っているんだろうなと思うでしょうね。

 『決定版 日本のハゼ』によると、2004年7月までに、きちんとした印刷物で、標本に基づいて公表されている日本産のハゼ亜目魚類は、425種います。

 425種ですよ!!!

 本書に収録されたハゼ亜目魚類は、335種、それにプラスして、日本の未記録種、それに未記載種をあわせて135種をいれたそうです。

 未記録種、未記載種が135種!

 135種ですぜ!!!

 あわせて470種のハゼですぜ!!!

 研究者でさえ、「本日のハゼ」情報が欲しいとぼやくというのは、数字で言えば、こういうことなのです。

 寿命が短く、浅海の、激しく変化し厳しい環境のなかに適応放散したハゼ類は、激しく種分化していて、ほんとうにエキサイティングではありますが、ほんとうに難しい研究対象であります。

 魚類学会の中でも「ハゼ屋」さんたちは、マニアックな連中が集まり、いつもいつも熱心に議論して、最先端を走ってはります。

 この本は、「本日のハゼ」情報に対する、ひとつの答えです。いや、ひとつではないですね。135の答えです。ぶっ飛びまっせ。

 また、この本のマニアック度には、恐れ入ります。

 ■日本産ハゼ亜目で水中写真があるのを、すべて集めたら470種。

 ■それは自然の生態写真であって、水槽内写真を一切使わず、泥の中のものを採集した後に別のところで撮影した写真も使っていません。あくまでも、自然に撮った水中写真で、鰭が立って、きちんと同定できるものだけを集めている。

 ■地理的変異などで、ややこしくなる恐れがあるから、海外での撮影はいっさい行わず、日本国内で撮影されたものだけに限っている。

 ■その厳しい写真の撮影は、ほとんど、矢野維幾さん。

 以上の厳しい写真基準を、泥の中に住む種などで満たせなかったハゼ亜目魚類は掲載されておらず、本書未掲載のハゼ亜目魚類として、90種のリストが載せられています。

 90種は、載せていないぞ!!と、わざわざ書いてしまう本も、凄いことなら、こんな厳しい基準の写真だけで470種も集めてしまう「ひと」たちがいるというのは、ほとんど信じられないことなのです。

 これこそ「ハゼ屋」さんのなせるわざであり、著者たちが、筋金入りの「ハゼ屋」さんだからこそ、できたのでしょう。

 ふつうの「ひと」では、こんなことできません。

 ともあれ、もういちど、書名と著者名を書いておきましょう。

 『決定版 日本のハゼ』(瀬能宏・監修 矢野維幾・写真 鈴木寿之・渋川浩一・解説 平凡社 定価3800円+税)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4582542360/qid%3D1096615338/249-3639817-6813112

                         英人

[13743] 書評>『決定版 日本のハゼ』>Aハゼにはまろうぜ! 
2004/10/1 (金) 18:40:16 小西英人HomePage
◆画像拡大
■『決定版 日本のハゼ』より、マハゼとアシシロハゼのページ。

▼ みなさん

 縦が20cm、横が13cmほど、ややコンパクトな縦長の判型の本書は、全536ページのオールカラーになっています。

 釣り人には、なじみがありますが、ハゼ屋さんには面白くない、マハゼと、アシシロハゼのページを引用してみました。

 基本的には、このように、1種1ページのレイアウトになっていて、写真が1種に2葉あります。持ち運べるくらいの判型でありながら、写真同定するのに十分な写真の大きさを確保しています。

 これは、ほんとうに嬉しいことです。

 また、水中生態写真といえば、美しくても、同定に使えないのものが多いのですが、本書の、こだわりは、半端ではありません。そのほとんどの種が、水中でいながら、鰭をめいっぱいに立てて、写真同定のテキストになってくれます。

 種の解説は、【WEB魚図鑑】でも、おなじみの鈴木寿之さんが書いてはりますが、ストイックな短い文章で、生息状況、分布、特徴、文献をいれてあります。

 特に、近似種の見分けは、きびきび、書いてくれてはります。

 30年間、西表島に通い詰めて、西表島に青春のすべてをかけているあいだに、見かけは、ただの、おっさんになってしまった鈴木寿之さん。彼の手元には、その青春と引き換えにした膨大な標本と、膨大な写真と、膨大なフィールドノートが散乱しているはずです。(行ったことはないので、人から聞いた噂からの伝聞推定ですが…)

 その膨大な散らかった青春、じゃなかったデータを見直して、他の研究者のデータ、論文をすべてあたって、頭の中に入れてから、これだけ簡潔に書くのは、ほんとうに大変だし、ほんとうにストイックだと思うのです。

 けれども、そのように情報を刈り込んで、エッセンスだけ470並べてくれているからこそ、ほんとうに、この本は、いま、ハゼ亜目魚類の原点に立てる本だと思います。

 巻末の参考・引用文献リストだけでも308あります。これだけでもハゼ学の文献リストとして貴重です。

 鈴木さんは、単なるガイドブック図鑑としても、ハゼ入門書としても、ハゼ専門書としても、かっこうのものになったと自画自賛していると書かれていますけど、ほんとうにそうだと思います。

 釣り人はハゼを知らない!

 ほんとうに、知らなさすぎると思います。

 ハゼ屋さんをマニアックだと書いてきましたが、魚の好きな連中は、みんな知っているのです。

 ハゼの多様さ、その面白さ…。

 研究者が、ハゼ屋さんたちに、いろいろ言うのは、一種の妬みなのです。そら、あんな面白そうなこと、やっているんですもの。

 釣り人よ、ハゼなんて、それほど釣れないから、知らないなんて思うのが間違いです。あなたの足元に、いろいろなハゼが、ひしめいています。磯のゴロタ石のところでも、ちょろちょろ伏流水が流れていたら、めくってみたらいいよ。ひょっとしてミミズハゼ属の未記載種が、あなたに発見してもらうのを待っているかもしれないのです。

 ハゼの魅力に、矢野さんの写真と、鈴木さん、渋川さんの解説で、はまってみてください!

 そうそう。

 鈴木さんの青春だった、西表島の浦内川が、えらいことになっています。

 浦内川の河口にリゾートホテルが建ってしまったのです。

 琉球大学で行われた、公開シンポジウムで、鈴木さんは、このリゾートホテルによって、日本一多様な生態系を保っている浦内川の危機を訴えました。

 台風の影響で、連絡がついたひとだけが集まった、非公開シンポジウムになっちゃったのは残念でしたが、それでも、いろいろな人が集まり、鈴木さんの講演の後、熱心な討議がありました。

 日本に、これほどのところがあることを、みんな、知らない!

 鈴木さんは嘆いてはりました。

 魚類学会でも要望書をだしています。
 http://www.fish-isj.jp/info/030612b.html

 矢野さんは、西表島でダイビングをしてはります。

 いま、「ハゼ学」が、まとめられたのは、多様性にかけては世界一の、西表島、浦内川が基礎にあったからです。「西表学」があったからこそ、まとめられたのです。

 その辺にも、ちょっと心してほしいなと思います。

                        英人

[13798] 書評>『決定版 日本のハゼ』>和名について 
2004/10/4 (月) 09:31:09 小西英人HomePage
▼ みなさん

 『決定版 日本のハゼ』では、日本未記録種や未記載種を135種も収録していますが、これらの和名の扱いについて、書いておきますね。

 学名が決定されていないけど、和名が固まってきていて、○○属の1種と表記し、それに識別記号がついているものは、和名も、識別記号も、いままでと同じように扱っています。

【例】
 シマヨシノボリ Rhinogobius sp.CB
 オオヨシノボリ Rhinogobius sp.LD

 学名が決定されていなくて、和名が固まっているものについては、和名を採用して、学名は○○属の1種と表記して、数字をふった、sp.1 sp.2 をやめて、sp.A sp.B としています。

【例】
 イズミハゼ Mugilogobius sp.A
 タヌキハゼ Mugilogobius sp.B

 学名が決定されていなくて、和名がないものについては、無理に和名をつけず、○○属の1種−1と表記して、学名も同じように表記しています。

【例】
 イトヒキハゼ属の1種−1 Cryptocentrus sp.1
 イトヒキハゼ属の1種−2 Cryptocentrus sp.2

 という形です。

 いろいろ難しい問題はありますが、現状、きわめて妥当な判断と扱いだと思われます。

 でも、批判も集まるだろうなあ。

 琉球大学の日本魚類学会年会の、口頭発表第一会場の一発目の発表は、国立科学博物館の松浦啓一博士で「名無しのゴンベはなぜ減らない?」というものでした。

 松浦博士は、1995年のシンポジウム(この京都大学であった魚名のシンポは懐かしいです。ぼく新さかな大図鑑で、無理に無理を重ねて、結核になり、四ヶ月間、入所命令により療養所に放りこまれていたのですが、その間に開かれています。ぼく外泊許可をとってシンポに参加したのですが、数カ月も社会と隔離されていたものだから、なんにも頭に入らず、研究者の顔も忘れていて、ほんと、しんどくて困ったのです)でも、同じような趣旨の発表をされています。

 簡単にいいますと、和名が決定されても、学名が決定されていなければ、それは分類学的には認知されていない種になります。分類学は、国際的に進められますが、国際的には、いない種が、日本の研究者の間にだけ、和名などの身内に分かる「記号」を使って流通し、議論されていて、それの学問的な実態がないのは、困ります。

 こういう状況は日本だけであって、おもに「名無しのゴンベ」は図鑑により生まれ出てていて、名著といわれる図鑑ほど、名無しのゴンベを多く産みだしており、ハゼ科がいちばん多いと指摘しています。

 1995年の発表の時に、約130種の名無しがあって、いま、そのうちの10種しか、学名が決定されていないと松浦博士は言います。

 松浦さんは、期限を切らなければ、いつまででも解決しないから、たとえば科博が期限を決めて論文集を出版するから、それまでに学名を決定する論文を投稿してもらう。それに投稿しなかった人は、その学名が決定されていない魚を、ほかの研究者が研究しても、文句を言えないという形にしたらどうかと、提案されてもいました。


 あえて新和名を提唱しないという、ストイックなハゼ図鑑にしたのでしょうが、和名をつけようが、つけまいが、学名以外の「記号」によって識別している状況に変わりはありませんから、批判は集まると思います。

 ただ、それなら、学名決定まで発表せずにおいておくと、こんどは、研究が、なかなか進まなくまります。

 とにかく、分からない種も含めて、いまの状況を知らせておいて、よーいどんで走ろうよと言う態度は、非常に大切なことだと思います。

 難しいです。

 とにかく、これから、ハゼ屋さんたちは、どんどんどんどん論文を書いて、学名を、決定していかなければならないという、社会的な義務が生まれたのは、間違いないでしょう。

                           英人

[13882] Re:書評>『決定版 日本のハゼ』>Aハゼにはまろうぜ! 
2004/10/6 (水) 22:22:27 中村
 小西様、初めまして。中村と申します。まさにこの図鑑のアシシロハゼを
撮影した者です。釣り好きの友人が《オマエのページが載ってるぞ!》と
教えてくれ喜んで遊びに来ました。まさかこの図鑑が、このような
釣り師のBBSで取り上げられ、また絶賛されているとは思いも
よりませんでした。個人的には、当時水質調査でワースト1を記録していた
鶴見川にヘドロまみれになりながら潜って撮った思い出深い一枚です。
そして、こんな劣悪な環境でも頑張って生きている数種のハゼ達に
感動したものです。ダイバーも釣り師も、魚やその棲み家を愛する
気持ちは一緒です。互いに情報を交換し合って、水辺を守っていきましょう。


[13884] Re2:書評>『決定版 日本のハゼ』>Aハゼにはまろうぜ! 
2004/10/6 (水) 22:30:26 小西英人HomePage
▼ 中村さん

 はじめまして、アシシロハゼ、ヘドロまみれになって写したとは思えません。きれいに写してはりますね!

 ぼく、潜らないから、水の中のことは知らないのですけど、同じ魚好きとしてダイバーの仲間も増えています。

 ここ【WEB魚図鑑】も、ダイビングの魚も扱いたいなあとは思っています。

 これからも、よろしくお願いいたします。        英人

[14089] 書評>『決定版 日本のハゼ』>を読んだら… 
2004/10/20 (水) 13:18:47 小西英人HomePage
▼ みなさん

 『決定版 日本のハゼ』(瀬能宏・監修 矢野維幾・写真 鈴木寿之・渋川浩一・解説 平凡社 定価3800円+税)を、読んだ人や、手に入れた人は、ここに感想を、ぶら下げてくださいね。

 もちろん書評なども歓迎します!             英人

[▼次のスレッド]