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[21967] 魚類学会>標準和名について 
2005/9/27 (火) 09:47:09 小西英人HomePage
▼ みなさん

 魚類学会関連の話題など、軽く、流していきますね。

 まずは、標準和名について。総会での委員会報告から引用します。

 日本魚類学会の標準和名検討委員会では、9月2日に、西田睦会長あてに、答申をだしています。

 ■定義■
 目、科、属、種、亜種といった分類学的単位に与えられる固有かつ学術的な名称である、などとされています。

 これは、かなり踏みこんだもので、ぼくは驚きました。「学術的な名称」ということになると、その手続きとか、命名法についても、きちんと議論されなければなりません。学名のように、原則的にはひとつの標本につける名と違い、標準和名は「種」などの個体群につける名になりますから、いろいろ難しくなります。

 どう規定していくか、楽しみです。

 ■起点■
 起点は「原則として」という言葉が入りつつも、『日本産魚類検索 全種の同定 第二版』(中坊徹次編 東海大学出版会 2000年)とされています。

 これは、絶対に必要なことなのですが、そこまではっきりとさせるとは思っていませんでした。凄いことだと思います。

 いままで、標準和名というのは、学術的には、あくまでも便宜的なものであって、そういう意味では、あまり学術的には重視されてきていません。

 学名は、シノニムリストといって、その学名のいままでの間違われてきた名のリストを、かならずつけますし、とにかく、整理が進んできています。

 標準和名については、「流れ」で、やってきているので、そんなシノニムリストもないし、だいたい、誰がいつ提唱したのかも、ほとんど追跡されておらず、分からないというのが現状です。

 ホンソメワケベラは、ホソソメワケベラだったのを、「そ」を誤植して「ん」にして、めんどくさいからほっておいたものだと、雑学本などには、まことしやかに書かれていますけど、ホンソメワケベラの新称提唱は、松原喜代松の名著、『魚類の形態と検索』(1955年)でされています。ぼくは、松原先生が、そんなことをするとは思われないし、だれかが面白がって書いたものが、ひろがったんだろうと思っています。

 閑話休題。

 とにかく、和名の提唱と変遷を追うのは、研究者でも、けっこう難しいのです。1913年の、ジョルダン・田中・スナイダー以来、「適当に」提唱されてきているからです。この1913年当時の日本産魚は1230種。こんど起点とされる中坊、2000では、3863種にもなっています。このあいだ、標準和名は、紳士協定として名づけられてきているから、きちんとした記録がないのです。

 『日本産魚類検索』の巻末にある、「分類学的付記と文献」では学名の変更など、必ず議論と、文献が明示されています。

 ところが、標準和名は、改名されていたり、いままであまり使われなかったものが採用されていても、議論は、ほとんどなされていません。

 標準和名が「学術的な名称」であって、起点が『日本産魚類検索』だとすると、学名の起点が『自然の体系 第10版』リンネ、1758年になったような重さが、『日本産魚類検索』にはあり、第3版からは、標準和名の議論も明記されなければならないと思います。

 これは「えらいこっちゃ」だろうと思います。

 実際、あまり、この件について話してはいませんけど、中坊博士は、「重い、重い」と、おっしゃっていました。

 ぼくは楽しみです。ほんとに。早く、第3版にかかっていただければ嬉しいな。

 あと、差別的名称については、12目16科32タクソンにあったとされ、これは改名素案を公表してパブリックコメントを募り、それから討議するとされています。

 いまのところ、これらは、答申されただけですが、この方向で進めはるでしょう。

 研究者が、学術的だと認めると、それにつれて背負う物は、ほんとうに重たくなります。それでも、研究者がやろうとしているのですから、ぼくら魚好きは、できるだけ、いろいろな協力をしていきたいと思います。

※参考

■標準和名【WEB魚図鑑】用語集より
http://fishing-forum.org/zukan/sanhtml/Y000154.htm

■学名【WEB魚図鑑】用語集より
http://fishing-forum.org/zukan/sanhtml/Y000151.htm

                            英人

[21980] 魚類学会>キツネメバルとタヌキメバル 
2005/9/27 (火) 22:55:30 小西英人HomePage
▼ みなさん

 まず、これを読んでください。

■狐をば化かして帰る古狸(ふるだぬき)
■狐来て猫なで声で狸さん
■古川柳にも、よくうたわれているキツネとタヌキ。古来より人まで化かすくせにアイドル?である。そのアイドル、魚に化けた。
■関東や日本海の釣り人が「そい」もしくは「まぞい」というとキツネメバルを指す。このキツネメバルに近縁なタヌキメバル、コウライキツネメバルに研究者は悩んでいる。
■1943年に松原はコウライキツネメバルとキツネメバルに分けキツネメバルに2型を認めた。1976年にチェンとバルスコフはキツネメバルの2型を別種とみなしタヌキメバルという新種をたてた。1983年に金山と北川、1985年に石田は、これら3種をキツネメバル1種とみなした。1993年に中坊は要再検討としながらチェンとバルスコフの3種に従った。
■こういう扱いに困るものはけっこう多い。キツネメバルの尾鰭後縁には白色帯がないか目立たない。タヌキメバルでは白色帯が目立つ。コウライキツネメバルは体色が一様に黒いということで、いま見分けられている。
■狸のいびき就中(なかんずく)念が入り
■また古川柳で終わっておこう。小西英人■

 これは週刊釣りサンデーに連載していた「似たモン魚譜」です。キツネメバルvsタヌキメバルの巻です。

 これをもとに、【WEB魚図鑑】ここで見分けろ!を書こうと思って用意していましたけど、京都大学の甲斐嘉晃博士が研究をしていたので発表を待ちました。

 「キツネメバルとタヌキメバルの形態的・遺伝的差違」甲斐嘉晃・中坊徹次 と言う形で、今回、発表されました。

 聞いて驚きです。

 ややこしい。

 キツネメバル複合種群と呼ばれる、キツネメバル、タヌキメバル、コウライキツネメバルのうち、キツネメバルとタヌキメバルを、1976年のチェンとバルスコフに従って形態的に分けて、遺伝学的な研究をされています。

 結果は…。

 キツネメバルとタヌキメバルは分化して間もない別種の関係にあるそうです。

 それはいいのだけど、キツネメバルと、コウライキツネメバルが、チェンとバルスコフの記載で曖昧になっており、学名、標準和名など変わる可能性があるといいます。タイプ標本をあたって、これから研究されていかなくてはならないでしょう。

 いままで、ぼくは、キツネメバルとタヌキメバルを、尾鰭後縁の白色体で見分けていましたが、これは変異が大きいようで使えないみたいです。

 ちょっとキツネメバルとタヌキメバルの見分けを、甲斐さんから教わって、きちんとしようと思いましたけど、まだまだ変わりそうなので、もっと、はっきりするまで待とうと思います。

 甲斐さんに、【WEB魚図鑑】のキツネメバル、タヌキメバル、コウライキツネメバルを見ていただいて、2,3直しました。

 いまは、暫定的に、チェンとバルスコフに従って分けています。

 これから、また、変わっていきそうです。

 目が離せないぞ!!                     英人

[22023] Re:魚類学会>標準和名について 
2005/10/2 (日) 07:35:41 小西英人HomePage
▼ みなさん

 日本魚類学会のHPで、標準和名検討委員会の答申が公表されましたので、いれておきますね。

                           英人

■魚類の標準和名の定義等について(答申)
http://www.fish-isj.jp/iin/standname/opinion/050902.html

[22256] 魚類学会>ウミタナゴについて 
2005/10/13 (木) 09:49:30 小西英人HomePage
▼ みなさん

 ウミタナゴは、アカタナゴ型とマタナゴ型とが知られており、同種とされたり、別種とされてきたりしています。

 今回の魚類学会で、このウミタナゴについての講演もありました。

 『ウミタナゴの分類学的再検討』片渕弘志、中坊徹次

 です。

 この、ウミタナゴの色彩2型はややこしい。

 体色、背鰭縁辺の黒色帯、臀鰭基底の黒色線、眼下の黒色斜帯、鰓蓋後方下縁の斑紋、これが、それぞれ微妙に違い、また同じであったりします。

 また、こういう形態の違いは、100%ではなく、たとえば、80%違いが見られるというような、そういう極めて入り混じった状態であるようです。まだ口頭発表の段階でもあり、ぼくもきちんとは理解できなかったので、ここでは、形態の差違は書かないでおきますね。

 とにかく、結論を書くと…。

 アカタナゴ型とマタナゴ型は別種になるようです。

 Ditrema temmincki Bleeker,1853 これがマタナゴ型に

 Ditrema jordani Franz,1910 これがアカタナゴ型になるようです。

 面白いのは、このマタナゴ型で、上に書いたような細かい形態的な差違を、きちんと解析していきますと、マタナゴ型は太平洋型と日本海型の地方変異があるようです。

 これは、ちょうど、キヌバリ太平洋型と、日本海型の地方変異に、よく似ており、キヌバリの瀬戸内海型が、中間型を示すようなことが、あるようです。

 このキヌバリの地方変異は、面白いので、【WEB魚図鑑】でも、ここで見分けろ!で取り上げたいのですが、【WEB魚図鑑】には、太平洋型と、瀬戸内中間型があるのですが、日本海型がありません。だれか日本海型のキヌバリを写してきてね。

 閑話休題。

 キヌバリとウミタナゴに、このような地理的変異があるのですから、ほかにもあるのかもしれないですし、生物地理学上、この辺を研究してみると、また面白くなるかもしれません。

 ウミタナゴはアカタナゴ型、マタナゴ型のような変異があり、そのマタナゴ型に地理的変異が隠れていたから、なかなか見抜くことが難しかったようです。

 まだまだ研究中で、これからも細かい解析が、集団遺伝学的にも研究されると思いますが、いまのところ、この地理的変異は、亜種か別種かわからないようです。ただ、亜種くらいの分化はあるようです。

 つまり…。

 ウミタナゴは、三つに分けられる可能性が出てきています。

 目が離せませぬぞ!                   英人

ps
 しょうもないことで、ばたばたしていて、仙台で開かれた魚類学会のことなど、書けませぬが、まあぼちぼち書いていきます。

[22257] 魚類学会>年会発表の研究がインターネットで… 
2005/10/13 (木) 09:58:38 小西英人HomePage
▼ みなさん

 宮城県仙台の東北大学で9月22〜25日に開かれた、2005年度日本魚類学会年会ですが、ここで発表された研究が、一部ではありますが、インターネットで公開されています。


■2005年度日本魚類学会年会で発表された研究紹介
http://www.fish-isj.jp/event/2005/net_03.html

 また、講演要旨は公開されていませんが、プログラムはインターネットで入手できます。

■プログラム・講演要旨集
http://www.fish-isj.jp/event/2005/prg.html

 興味のある人は見てくださいね。

 ちなみに来年の年会は静岡市の東海大学で行われます。

                           英人

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