2007年9月23日

映画>沈黙の艦隊

『沈黙の艦隊』(高橋良輔監督/1995)。

かわぐちかいじが描いたコミックが原作。これ、読んでいないのだけど、全32巻を1本のアニメ作品にして、なおこれだけ密度を保つというのは、原作が相当、骨の太いものなんだろうということをうかがわせる。

それが問いかけるものは、国家防衛、憲法9条、日米安保、国にとっての正義、そもそも国ってなんなのだといったところ。いずれも、似たようなテーマを扱った『ローレライ』や『亡国のイージス』のように安ものではない。まあ、この二作品がひどすぎたのだけど。

好感を持てるのは、こうした大きなテーマと個人の感情を対比させて描くような、ありがちでせこい了見が一切ないこと。国と家族を捨てて、日本初の原潜の乗組員になった100人を越す連中の感情というものは、一切描かれない。

それどころか、原潜を乗っ取って、米第7艦隊を手玉にとりながら、艦として独立宣言をしてしまう主人公・海江田二海佐の個人的な事情、感情といったものもまったく描かれない。これは、かなり特異なドラマではないかと思う。ぼくとしては、そこが気持ちよかった。女や子供もまったく出てこない。この割り切りはすごい。ホームドラマではないのだから、これでいいのだ。

同年に続編も出ているらしいので、こちらも観る予定。

ちなみに、作中、モーツアルトの40番を大音響で流して他の潜水艦に感知させるシーンがあるのだけど、原作では41番「ジュピター」だった由。どっちでもいいけど、ジュピターでは、あんまり脳天気ではないかなあ。水中音の伝わりやすさからいえば、ジュピターだろうけど。

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