2009年10月 5日

リアスピーカーを作ること

2006年1月頃から、スーパースワンに合わせるリアスピーカーを何とかしなくてはなんない、と考えていた。考えてはいたのだが、なかなか決まらなかったのは、自作・既製品含めて、これといったものがなかったからだ。

長岡鉄男設計の「クレーン」というリアスピーカーがあって、もともとスワンに合わせることを念頭に設計されたものであるから、これがベストマッチであったことは間違いないのだけれど、それも1990年頃のお話である。

当時は、ドルビーサラウンド、ドルビープロロジックの時代であり、まずソフトがなかった。それで多くの場合、2chステレオ録音された音源をAVアンプで加工してサラウンドを作り出していたのだが、音質は当然劣化する。ドルビー方式の利点は認めるとしても、現実的にはへたなAVアンプを通すよりも、スピーカーの結線だけでサラウンドを実現するスピーカーマトリクスの方が、はるかにましな音がするではないか。という長岡師の提案を形にしたものが、「クレーン」であって、それは確かにその通りだっただろう。

しかし、現代の標準はドルビーデジタル、DTSになっている。ソフトもDVDで大量に供給されている。スピーカーマトリクスでは、左右チャンネルの差成分だけをリアに受け持たせればよかったので、低域も超高域も必要なく、高能率で反応のいいスピーカーが理想だったのだが、今の方式では、リアにもフロントと同じくらいの低域が入っている。これを無視することはできない。

できないのだが、ほんとうにワイドレンジなスピーカーをリアに置こうとすると、マルチウエイかフルレンジでも巨大な箱が必須になる。さらにワタシの場合、映画のDVDをサラウンドで鳴らしつつ、ピュアオーディオもマトリクスで楽しみたいという欲がある。

むしろ、当座はスピーカーマトリクスで鳴らしながら、いずれAVアンプを導入した時にも使えるリアスピーカーがほしい。マルチウエイだとレンジは十分なのだが、マトリクスで使えない。スーパースワンに比べて能率が低すぎるのだ。マトリクスはAVアンプを通さないから、リアの音量は能率に頼るしかない。かといって巨大な共鳴管やバックロードホーンでは置き場がない。こういうジレンマの狭間で、3年ほどうろうろしていた。

で、2007年6月の時点で、以下のような理想を描いていた。

1)振動板の性質を合わせるために、フォステクスのFEシリーズかこれに準じるユニット。口径は10~12センチ程度。
2)音質や特に低域のスピードを合わせるために、バックロードホーン、共鳴管が理想。
3)映画鑑賞時にセットして、それ以外にはすぐに撤去できるように、そこそこの重量であること。
4)床の占有面積が、それほど大きくないこと。背は高くても可。
5)低域のレンジ、周波数特性は、フロントと同等か、これに準じるものであること。

今でも、理想は変わらない。変わらないのだが、理想はあくまで理想であって、これをすべてクリアするシステムは、なかなかない。特に5)が大問題となってくる。1~4を実現しながら、フロントと同等の低域を確保するというのは、相当困難である。ネッシーMINI が近いけれど、音源の高さが足りないし、超強力な限定ユニットを前提にした設計だから、ことがおおげさになりすぎる。

しかし、無理を承知で理想に一歩でも近づこうとするのが、人生というものである。そういう人をネットで見つけた。ひょせんさんという自作派マニアで、この方が今年のステレオ誌7月号で発表していたバックロードホーン(実際には共鳴管動作と半々くらいか)によるリアスピーカー「R-101」の図面を譲っていただき、本日から工作スタートなのである。

R-101は、ひょせんさんのサイトにもまだ登場していないのだが、高さ1412mm、幅184mmのトールボーイ。ユニットはFE108EΣを使う。これなら、マトリクス再生にもそのまま使え、いざとなれば低域もそこそこがんばってくれるのではないかと思う。

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