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新コミュニティ(掲示板)オープンのお知らせ

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[33789] Re2:図鑑裏話2>みんなで創った! 
2007/5/7 (月) 08:07:21 小西英人HomePage
▼ ぷいぷいユッケさん

> 掲載魚種の選定についてです。

 これ、図鑑にとって、いちばん重要なことです。ぼくは先に400ページを見切り発車したと書きましたが、いくらいっても、何もないのに頭の中で整理しながら進めるわけにはいきません。

 ぼく、この【WEB魚図鑑】のもとにもしたものですが、日本産全魚種と海外の主な釣魚で4000種あまりの、ぼく専用のデータベースをつくって持っています。

 この魚種別データベースには、ぼくの持っている写真のチェックも入っていますし、ぼくが持っていなくても、誰が持っているかのチェックもある程度は入っています。

 すごく簡単に言えば、写真を、ぼくが持っていて、他の釣り人も持っていたら、それは釣魚です。そういう考え方が基本です。

 『新さかな大図鑑』は釣り種別で、これ、けっこう難儀で、船でも、投げでも、防波堤でも、磯でも、ルアーでも釣れる魚はどこに入れるかと言うことを、ひとつひとつ悩まなければなりませんが、今回は、目を基準に大別して、釣り人の好きな順に並べればいいのです。

 これ、もっと簡単に言うと、ぼくの好きな順に並べます。

 編集者というのは、社会をよく知らなければいけません。テレビ、雑誌、新聞、インターネットなどを通じて、いまの「みんな」が持っている「実感」を身につけなければなりません。

 それを身につけてしまうと、編集者、彼は、読者の最大公約数になっているはずです。そうなると自信を持って、彼の好きな物を好きな順に選べば、「いい本」ができるのです。これが、ぼくの編集者としての理想像です。日頃、そういう社会を知る努力をしていれば、あとは自信のままに行動すればいいのです。

 ぼくの場合、この社会を知るために、ここ【WEB魚図鑑】と【さかなBBS】は大きいです。

 たとえば、釣り雑誌社にいて、名人などを話をしますと、彼らは魚を好きではありません。どうでもいいのです。自分が、いいかっこうしたり、メーカーからお金をもらったり、インタビューを受けるために、必要なだけなのです。

 たとえば、10万円の竿と10万円のリールを使って、100尾釣っても片手の手のひらに十分に乗ってしまうくらいの生まれたてのシロギスを釣って、楽しいと思う人などいません。トーナメンターというのは、そういう連中です。40万円の竿を使って、曳き船から逃げだすからと、ベストのポケットに小さいアユをいれて審査場に戻ってくるようなのがトーナメンターだったのです。いまは知りませんけど。そういう世界に、ぼくは嫌気がさして、釣りフォーラムで、いろいろな釣り人と話をしていたのです。

 そこには、ふつうの釣り人がいましたし、魚の好きな釣り人しかいなかったのです。

 そこで、ぼくは、ふつうの釣り人の感覚を磨いたのです。(なんて偉そうに言っても、変なフグを釣って、初めて見たぞと興奮して写真を撮りまくるのは、変な釣り人ではあるなあ…)

 いやいや、脱線しているなあ…。

 とにかく、ぼくが選ぶと釣魚なのです。

 見切り発車はしましたけど、図鑑の作業のトップに、4000種あまりのデータベースから、目の単位で、釣り人の好きな順に並べ替え、それぞれの中で、釣り人の好きな科の順に並べ替えをしています。それから、頭の中にある写真を見ながら、1200種ほどのリストをつくりました。この作業には、じっくり1週間をかけています。

 この1200種リストが、『遊遊さかな大図鑑』の基本設計図です。

 あとは分類群ごとに、とっかかり、いらないものを落としながら組み立てていくのです。本ですから、見開き2ページか、1ページ単位で、見やすいように配置します。ちょっと余ったり、ちょっと足りなかったりしてはいけません。その調整用に、多めに選んであるのです。

 基本的には、あとは刈り込むのみです。1200種は、釣魚なのですから…。

 ぼくは図鑑は刈り込み作業だといったのは、こういうことがあるからです。

> あ、綺麗な写真があるか、ないか、という要素も強く関わってくるのでしょうか?

 もちろん、きれいな写真があれば、それは重要な釣魚であります。釣り人が、うわあっと眼をひかれるでしょう。それが滅多に釣れないものであったとしても、それは十分に「釣魚」であると考えるのです。

 こういう基本方針は楽しいし、ほんとうに、創りたいように創ったぜと言う実感が、ぼくにはあります。

 まあ、こういうことができるのも、4000種のデータベースを持ち、誰が写真を持っているか、チェックをして、そのうえに、毎日毎日、みなさんと【さかなBBS】で話して【WEB魚図鑑】のメンテナンスをしているからなのです。

 はじめて創った『さかな大図鑑』のとき、基本方針として、釣り種別に魚を並べるとういのだけ決まっていましたが、まったく、なにをしていいか分からず、呆然としていました。それを見かねたのでしょうね。京都大学瀬戸臨海実験所にいた荒賀忠一さんが、収録魚種リストを、釣り種別に分けて創ってくれました。これ、きれいな表にしてあって、あの頃のことですから手書きです。

 ぼくは、この荒賀魚種リストをもとに、解説者の分配、写真の有無と手配、すべてを書き込んで、なんとか図鑑を創りあげることができたのです。

 『新さかな大図鑑』で、はじめて、ぼくがリストつくりをしまして、やっと、ひとりで図鑑ができるようになったと感じました。

 図鑑って、ふつうの人は、ただ並べたらいいように思って、簡単だと思います。日本産全種を並べるのならば、それでいけるかもしれませんが、それより少ない場合、何らかの基準で「選ぶ」のですから、ここに編集者、図鑑の場合は特に編者と言いますが、この編者の意識が入ります。これが、しっかりしていなければしんどいのです。

 すごい魚類分類学者でも、図鑑を編んだことのない人は、この辺の機微が分かりません。自分の専門分野は得意でも、それ以外との整合性が悪くなります。だから、全体を考えずに編んでしまうと、がたがたになってしまいます。

 結局、魚種選択というのが、図鑑を編むためのAであり、Zでありますから、ほんとうに難しいです。しかし、ぼくは、ぼくの好きなものを並べただけですから、申し訳ないかなあ…。

 いままで書いたようなことを、『遊遊さかな大図鑑』の後書きに入れいています。後書きを最後に引用しておきます。

 荒賀忠一さんと、『魚類図鑑−南日本の沿岸魚』のことは、ここに書いています。

■『魚類図鑑−南日本の沿岸魚』【遊魚亭】より
http://hideto.fishing-forum.org/001bookzukan/post_41.html

                            英人

■あとがき『遊遊さかな大図鑑』より

 ■すべての釣り人と研究者に…感謝します
 釣り人、研究者、魚が好きで好きでたまらないみんなが集まって、連日連夜の大パーティーをやっています。
 ポットラック・パーティーです。ポットラックとは、あり合わせの料理のこと、あり合わせをみんな持ち寄ってパーティーをやっているのです。「あり合わせ」とは釣った魚の写真だったり、調べた情報だったりします。とにかく「魚のごちそう」です。場所はインターネットです。しかしバーチャルではありません。騒いだあと、どんどん図鑑に登録していきます。読者参加型の魚類図鑑が、いま民間では日本最大のネット魚類図鑑に育っています。それが【WEB魚図鑑】【さかなBBS】です。
 ぼくは、ただの魚好き、ただの釣り人にすぎません。しかし、三十歳の時に『さかな大図鑑』(1985)を創りました。いや、これは創っていただいたのです。そのころ京都大学瀬戸臨海実験所にいた荒賀忠一先生に、手取り足取り図鑑の創り方を教わったのです。荒賀さんは日本の魚類図鑑を、たった1冊で劇的に変えてしまった『魚類図鑑−南日本の沿岸魚』(1975)の著者のひとりで、のちに日本産全魚種を写真で収録した『日本産魚類大図鑑』(1984)を創った研究者です。その荒賀さんに図鑑の「いろは」を教わったぼくは幸せでした。その後『新さかな大図鑑』(1995)で荒賀さんとともに、京都大学の中坊徹次博士に教わりました。中坊さんは『日本産魚類検索』(1993)『日本産魚類検索第二版』(2000)で、やはり魚類図鑑を劇的に変えた研究者です。ぼくは釣り人代表として、京都大学のふたりの先生に、いろいろ教わったのです。これほど幸運に恵まれたのならば、みなさんにお返しをしなければならない…と、強く思いました。そのひとつがネット図鑑です。釣り人の気持ちと、研究者の心が分かるようになったぼくは、釣り人と研究者が集まる場所をつくり情報交換をしたかったのです。そうしたら千客万来です。連日連夜、日本中、世界中の魚を見せていただき遊びながら勉強させていただいています。それらの成果をまとめたのが本書なのです。
 まとめるにあたり、たくさんの研究者に魚の同定をお願いしました。突然のお願いに、お忙しい中、すぐに同定や、ご教示をいただき、本当にありがとうございました。
 中坊徹次博士には監修をお願いいたしました。浅学非才の身、中坊さんの厳しいご指導はほんとうに嬉しく、ほんとうに勉強になり、ほんとうにありがたいものでした。ネット仲間の生き生きした写真も数多く使わせていただきました。エンターブレインの柴田一樹さんには東京からいつも支えていただきました。多くの人に助けられ多くの人の夢を満載して、本書はできあがりました。幸せをかみしめつつ、いったん筆をおきます。小西英人