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[34081] 図鑑裏話3>AB判にしたこと… 
2007/5/13 (日) 22:26:57 小西英人HomePage
 「横にのばしたら、何か、いいことあるの?」

 『新さかな大図鑑』はB5判である。次の『遊遊さかな大図鑑』はAB判にするんや…新図鑑の構想を、ある人に話しながらプロトタイプを叩いていたら、ぼくがあまりにもAB判にこだわっていたのか、こう言われた。

 ぐっと詰まった。

 いいことあるの…どころか、こんどの図鑑の、ぼくの目玉なんだけどなあ。しかし、これは、なかなか分かってもらえないと思う。魚類図鑑を度も何度もレイアウトして、やっと気がつくことだから…。

 こういうことを遊びとしてでも、仕事としてでも、いつでも真剣に考えながら暮らしている幸せな男って、ちょっといないものなあ…。

 ということで、『遊遊さかな大図鑑』成功の鍵となった判型のことについて書こうと思う。

 と、書いて、我ながら強気だなあと思う。まだ、すべての色校正が上がったばっかりのところで、印刷さえもしていない図鑑の「成功の鍵」って言われてもねえ、みなさん。

 でも、長年の編集者の勘(著者なんだけど、やはり、こういう仕事をすると編集者としての感覚になります)で言わせてもらえるならば、こんどの図鑑もまた成功です。

 いまのところ、地球上で、エンターブレインの柴田さんところと、ぼくのところにしかない、色校正をきちんと切ってAB判のクリアブックに入れた『遊遊さかな大図鑑』を、ぱらぱら繰りながら書いています。

 編集者って、いちばん初めの読者です。これが気持ちいいんだよね。

 閑話休題。

 AB判って、知らない人もいるだろうから、ちょっと説明します。

 A判系列と、B判系列は知っていますよね。

 A4判は 210×297mmになります。 写真集や美術全集など、本や雑誌で言えば大型本になります。

 B5判は 182×257mmで、 週刊誌やふつうの雑誌などの大きさです。『新さかな大図鑑』は、この大きさでつくりました。

 AB判は正規の規格ではありません。 大きさは、210×257mm になります。そう天地がB5判と同じで、左右がのびてA4判とおなじになります。そのためにB5ワイド判などともいったり、A4変型判といったりします。

 とにかく『遊遊さかな大図鑑』はAB判、『新さかな大図鑑』と天地は同じで、左右が1ページで28mm、見開きの2ページで、56mmのびたのです。

 これが大きい!

 魚って、ふつうは左右に長いのです。

 この28mmで、魚は大きくなり、生き生きします。

 とにかく、こんどの図鑑は、魚の写真を大きくして、魚の絵合わせ同定をやりやすくするように腐心しましたが、この、「のび」が大きいのです。

 左右にのびたら、それほどいいのならば、天地ものばして、A4判の大型本にしたらどういかといわれそうです。

 これをやると、こんどは「間のび」するのです。やたらに大きい図鑑は、重たい感じがするのです。学術用はいいけれど民生用はしんどいです。AB判こそ魚を大きく扱い、なおかつ締まる判型だと思います。

 また、この左右ののびのおかげで、横2段組と、横3段組をきちんと混在させることができました。

 簡単に言うと、魚種などの解説文は、ゴチック体の紺色の文字にして、3段組にしました。一般の解説文は、明朝体の黒文字にして、2段組にしました。『新さかな大図鑑』は、左右の長さが足りず、このゴチック体の解説文字を3段組にできなかったのです。そのため非常に微妙に調整しつつ、文字と写真をレイアウトしています。また、基本の魚の写真の左右の長さは横2段組の1段、つまりページの半分の長さが基本となっています。

 『遊遊さかな大図鑑』は、横3段でのうち、2段が、基本の写真の大きさとなっています。ページ左右の3分の2の長さが、基本の魚の写真の左右の長さなのです。これは、かなり大きく感じると思います。写真と文字のレイアウトに無駄が無くシンプルに組み上げることができました。

 コンセプトは明快で単純なほどいいのです。

 写真が大きくなり、2段組と3段組が、きちんと混在して微妙な調整の必要なしというのが、AB判にしたメリットです。

 これは、ぱっと見た感じが、まったく違います。そのはずです。

 『新さかな大図鑑』も『遊遊さかな大図鑑』も同じ人間がレイアウトしています。そのために似てくるでしょう。

 しかし、このAB判にしたおかげで、写真の大きさと自由度が飛躍的にあがったのです。

 このAB判に決めて、2段組と3段組のレイアウトを作り、このふたつがバッティングせずに、きっちりと混在できると感じたとき、ぼくは「勝った」と確信したのです。だから強気なのです。

 基本ができたら、あとは、当てはめるだけです。編集者にとって、それは壮大なる「消化試合」に過ぎません。

 それほど初めのコンセプトは重要です。

 しかし、こういうことがはっきり見えて、きちんと実行できるようになるのは、いろいろな失敗が必要なんですよね…。

 『新さかな大図鑑』『釣魚検索』『釣魚図鑑』の細かな失敗があってこそ『遊遊さかな大図鑑』ができたのだなあと、いまさらながら思います。

                         小西英人