2009年10月19日

Oメソッドを検証してみた

パイプのマウスピースには、主にエボナイト製とプラスティック製があるわけだけれど、それぞれ一長一短。単純に喫い心地の良さからいうとエボナイトの圧勝だけれど、これは紫外線や水分によってすぐに変色するという欠点があって、使うたびにきれいに拭いて、ポーチなり箱なりに入れて保管しなくてはならない。

放っておくと、こんな具合になるわけである。
1.jpg

手前はJan Zeman 作のロード・オブ・ザ・リングシリーズのGandorr というパイプで、とにかく煙草がおいしい。現在はうちのラタキアのエースとなっている。向う側は、あるぽさんオリジナルのALPO3 で、こちらも喫味が素晴らしく着香系の2番手くらいで活躍している。

ところがどちらもエボナイトのマウスピースであるため、ちょっと気を抜くとこの有様である。これを見て「ああ、エボナイトだから紫外線には弱いよね」とか「年季の入った渋いパイプですな」とか言ってくれる人は、広い世間といえども皆無であろう。普通は、「きちゃないパイプだなあ」である。自分だってそう思う。

ワタシにしても手をこまねいていたわけではない。ホームセンターに行ってバフがけのマシンを買い、なんとかいうワックスを買い、研磨にトライしてみたこともある。ただ、これはなかなかむずかしい技術がいるもので、うっかりマウスピースを焼いてしまいそうになった。焦げた匂いがあたりにたちこめ、有機材であるマウスピースはやばい色になっていた。これで断念。

サビネリのDeniCare(吸い口用)も試してみたのだが、強い溶剤の匂いがするし、あまり研磨の効率がよくない感じだったので、適当なところで断念。根気のある人は、これでもいけるのかもしれない。

有名パイプ店では研磨を引き受けてくれるところもあるので、そういうのを利用しようかと考えていたところ、Oメソッドなる言葉が飛び込んできた(参考サイト)。発信源はアメリカらしいのだが、オキシクリーンという酸素系漂白剤を使う。なかなか優秀らしいので、どんなものだか検証することにした。以下、手順を説明する。

1)適当な容器に60度のお湯500CCを入れ、オキシクリーン10gを溶かして、マウスピースを放り込む。
2)30分ほどで引き上げて水洗い後、乾燥させる。
3)「激落ちくん」などのメラニンフォームで研磨。
4)400~600番の耐水ペーパーで歯型などの大きな傷を研磨。
5)耐水ペーパー1000~2000番で全体を水研ぎ。
6)乾燥後、プラスティック用コンパウンドで仕上げ。

オキシクリーンはワイドハイターなどの酸素系漂白剤で代用できそうだったのだが、とりあえず本家の流儀に従った。マウスピースのダメージが、それほどシリアスなものでなければ、4)および5)は省略可能。今回は省略した。

下は、オキシクリーンの溶液に浸けているところ。薄いビールのような色になる程度で、思ったほど盛大に汚れが出てこないので、こんなものかという印象。
2a.jpg

ところがマウスピースを引き上げて乾燥させてみると、汚れというか不純物のようなものが表面に皮膜を形成している。これにはちょっと驚いた。この浮き出た部分を、メラニンフォームで研磨していく。
3.jpg

メラニンフォームで磨いた後、コンパウンドで仕上げて出来上がり。写真以上に、良い出来になった。
4.jpg

作業時間は、オキシクリーンから引き上げて約1時間(2本分)、使ったメラニンフォームは45mmx32mmx20mmの超小型のやつを6個。研磨はやればやるほどきれいになるのだが、例によって、まあまあ適当。

結論。Oメソッドは優秀。マウスピースへのダメージが少なそうなのもいいと思う。

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コメント

本題からまったく外れますが(^_^;)
サックスのマウスピースもエボナイト製が多いです。
定番の名品と呼ばれるものはほとんどそうですね。
中古でも見かけますが、ビンテージものはJUNさんの写真のように、ほとんど変色してます。

サックスにしてもパイプにしても、結局歯のアタリ具合がよろしいので使われるのでしょうかね?

ひろすけさん

サックスもそうなんですね。やっぱり、当たりが優しいというのがエボナイトのいいところですね。万年筆の軸に使われるくらいのもので。

パイプも値の張るやつは、たいていエボナイトなのですが、プラスティックの手軽さも捨てがたいので、私はどっちでもいいなと思っています。

オキシクリーンを使うのは、表面の艶出し目的よりも、むしろ煙道の浄化目的のような気がします。

もっとも簡単な方法は、#800か#1000ぐらいの耐水ペーパーに、研磨用の青棒・白棒を軽くこすりつけて、そいつで磨いて行くと良い感じになります。あと、自作パイプキットに入っているワックス入りの固形研磨剤(これもほぼ青棒・白棒と似たようなもの)を、タオルウェスに塗って、それでせっせと磨いてます。

両頭グラインダーによるバフ掛けは、電動機の速度を落とさないと、下手をしたらマウスピースだけでなく、ブライヤーですら焦げるほど摩擦熱でダメになります。

ポール・ウインズローのパイプはアクリルマウスピース、かつφ9フィルター仕様なのですが、見た目は格好よいのですけど、どうもあの、アクリルの噛み心地が嫌になって来て、最近どうも手が伸びません。どんなにパイプそのものが安物でも、マウスピースはエボナイトに限りますね。

オーストリアのデビッド・ワーグナーにこれまで2本、ダイレクトオーダーでカスタムメイドして貰いましたが、エボナイトの中でもさらに噛み心地の良い、カンバーランド、これはなかなか良いです。

仕事が再び順調に軌道に乗って、やりくりに余裕が出たら、ミニ旋盤を買おうと思っています。目的は、マウスピースの自作です。今、持っていて噛み心地の気に入らない奴を、全部自分の気に入ったエボナイト材を購入して全とっかえしてやろうかと思ってます。

噛み心地にこだわる一派も、きっといるのでしょうね。私は空気の通りの良いパイプの吸い口に、キスをするように軽く唇を当てることが多いので、まあ、材質はどちらでもいいのです。というか、こういう喫い方をしているとパイプを選びますね。カーステンを3本買いましたけど、ちょっとこれには向きませんでしたので、売りに出そうと思います。

オキシクリーンの役割ですが、煙道もきれいになりますけど、汚れを浮かせる効果が絶大でした。耐水ペーパーを使わなかったのは、Gandorrの方の形状が複雑なので、柔軟なメラニンフォームの段階できれいになれば御の字、とやってみたところ、ほとんどこれだけで落ちてしまったので。

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