2008年6月13日

ビジネス本を読むこと

もともと、あまり本を読まない。仮に13歳から読み始めるとして年に50冊のペースなら、とうに1500冊に達しているはずなのだけど、とてもそんなには読んでいない。

振り返るに、10代の頃はよく読んでいた。それもエンターテインメントなんか読む時間がもったいないと考えるような、非常に了見のセマイ読書であったため、SFを読み始めたのは18になってから。ミステリーは、ほとんど何にも読んでいない。ここ10年ほど、海洋冒険小説を好んで読んでいるけど、20代くらいまではそれすらも守備範囲でなかった。

一番苦手なのはビジネス書で、中でも自己啓発本というやつだった。何につけ、モノゴトになじめない子というのは本質的になじめない資質というか、ものの考え方をもっているもので、たとえば数学の苦手な子は、公式ひとつ覚えるのでも、いちいちその意味を考えてしまったりして素直に受け入れることができない。

自己啓発本が苦手なタイプは、おおむね二通りあって、「こんな世間を上手に渡るようなことばかり考えているようなのはなんだか恥ずかしいことだ」という薩摩武士のようなタイプと、「それはあなたはその方法でうまくいったかもしれないけれど、ぼくはあなたではないし、あなたのように考え、ふるまったところで環境も何もちがうんだから同じ結果が出る方がおかしいんじゃないか。人間というのはもっと本質的な価値が大事なんじゃないか」という専守防衛タイプがある。読みもしないうちから、「読まないぞ」と心に刻んでしまうわけである。

ぼくもそういう人たちと同様に、ビジネス書というものをまったく読まずに過ごしてきたのだけど、ここ5年くらい、たまに読んでいる。というか、オクサンがロバート・キヨサキだのベンジャミン・フランクリンだのを買ってきて楽しそうに読んでいるので、読むものがない時など、つい寝床に引っ張り込んでしまう。ろくに読書はしてこなかったけれど、活字中毒ではあるので、寝床に入って活字がないと禁断症状が出るのだ。

で、ここ5年くらい、時々読むようになった。これは、つまり他人の書いた成功への道しるべのようなものを、ふんふんと受け入れることができるようになったということで、それだけでニンゲンとして大進歩ではあると思う。それに、あらかた、そんなに悪いことは書いていない。

今、ゴーマンな親父となったワタシは、自分が18歳だった頃のことも顧みず、18歳のムスメに『夢をかなえるゾウ』をアマゾンから送ってやろうとしている。まあ、爆笑本ではあるので、笑って読んでくれればそれでいいのだけど。

『夢をかなえるゾウ』を読んでいて、ひとつガクゼンとしたのは、この本の核心のひとつともいえる重要なメッセージであるところの、「やってこないで後悔していることをやりなさい」だった。つまり、それが何にも思いつかなかったのだ。

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コメント

少し昔、イケイケの会社にいた頃、ナポレオン・ヒルの成功の哲学をテキストととして研修でかなり洗脳というかマインドコントロールされた覚えがあります。例の「やれば出来るんだ!」式の自己啓発研修で今から思ってもその当時はかなり傾倒してたと思います。
私は、それ自身は悪いことでは無かった・・と今はそう思えるのですがその会社は、そういった研修と実際の仕事内容があまりにもかけ離れてたので醒めてしまった・・ということがありました。
当時は電車に乗ってても周りの人間と自分は違うんだ・・と本気で思い込んでて、涙さえ出てくるくらい愉快な気持ちでいましたね。
醒めてからは一転、そういう類の成功本、ビジネス本、あるいは経営コンサルタントの講習も鬱陶しく感じてしまうようになりました。
だからビジネス本を読まないタイプで言えば後者にあたるのでしょうが、やっぱり今でも読まないです。ただ、先述したとおりハイな気持ちのまま人生送りたいな・・とは思います。

サルモサラーさん

そうか、研修となるとまた話は濃くなってきそうですね。ぼくは経験はないですけど。こういったものとつきあうのは、その距離感でそれぞれあるようで、ぼくはあまり成功というキーワードに敏感でないので(^^;)。とりあえず思い立ったが吉日で、どんどん動いてしまう方なのでそれが成功だとか失敗だとかも、あまり考えたこともなく(^^;)。

ども、JUNさん。
新卒で入った会社を辞めてフリーになった頃、なかなか仕事が入って来なくて悩んでいた頃に読みましたね~。既に20年近く前なんで何を読んだかは全く覚えてないけど

ビジネス本=実用書

として読んでいたので、ちっとも役に立った記憶はありませんね。前記の意識で読んでたんで、役に立たなきゃ意味がないってんで、数冊読んで止めてしまいました。読んだものから吸収した物もなかったように思う。
考えてみると、ビジネス本読んで為になるような人間ならフリーになんかなってなかったんだろうね。

近頃では、悩めるサラリーマン(ビジネスマン)が気休めに読むのがビジネス本なんだって考えてます。
僕としては、ヘタなの読む時間があれば、周五郎でも読んだほうが身になると思う。

じゅん坊さん、山本周五郎好きですね。ぼく、ほとんど読んでいないので、おすすめがあれば教えてください。

自己啓発本、なんだかすごい現象が起こっていますね。「夢をかなえるゾウ」が和書売上げ1位というのは、昔では考えられなかった。何か、新しいジャンルができているということなのかもしれません。

人は気の持ちようですから、気の持ちようがうまくいかなくて悩んでたり困ってたりする人が、ちょっと楽になったりする。今の世の中、そういうものを求める人が増えているのかもしれませんね。

淀川長治さんが、「私は、映画で人生を学びました。私にとって、映画は、人生の教科書なんですね」と言っていて、若い頃は「?」だったけど、最近はそういうのもありかもなあと思います。

周五郎は好きですね~。30代前半に、新潮文庫を読み漁ったな。お勧めっていうと、一番はやっぱり「樅ノ木は残った」かな、ラストは何度読んでも泣けてしまうのです。後は、「正雪記」「天地静大」なんてのもイイ。とぼけたところで、「寝ぼけ署長」なんてのは軽くてイイかもね。

じゅん坊さん

「樅の木は残った」ですね。けっこう多作な方のようなので、いろいろ読んでみようと思います。

自己啓発本って、ものの見方がいろいろあるんだということがわかるだけでも意味はあると思うのですが、最近、何冊か読んでみて、タイトルも著者もちがうのに、ほぼ同じ内容というのもあったりしました。

まあ、それもいいのですが、一冊の本で自分を変えようとする読み手の気持ちの切実さが、今のブームの基なんだろうなと思います。一方で、楽しく読み進めながらじっくりと血肉になっていく小説って、たしかにありますね。

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