2007年11月10日

映画>人生劇場

『人生劇場』(加藤泰監督/1972)。

や~ると思え~ば、どこま~で~やるさ~の人生劇場である。もっともこの作品はこれまで14回映画化されていて、今回観たのは、その中で二番目に新しいと思われる72年の加藤作品。正式な?タイトルは『人生劇場 青春・愛欲・残侠編』となっているようだ。

主演の青成瓢吉が竹脇無我、飛車角に高橋英樹、宮川が渡哲也、そして吉良常が田宮二郎。この吉良常がとてつもなくよろしい。

60年代から70年代にかけて青春を過ごしたヒトビトにとって、加藤泰という監督は、時代をともに過ごしたような特別な思い入れとともに語られる人であるらしい。その加藤作品の中でも、この『人生劇場』は指折りの映画ということになっているらしい。

原作は、中学生くらいの頃に、父の書棚から引っぱりだして読んだ。なかなかたいした小説だなあと思ったことを覚えている。ちょうど、この映画が封切られた頃だったかもしれない。以来、この作品の世界にまったく触れることなく35年ばかし経過して、またこうやって再会できるというのは、映画はなるほどタイムマシンだなと思う。

さて、その加藤演出だけど、冒頭、ピストル自殺する青成瓢太郎(森重久弥)の、闇の中に逆光で浮かび上がる白い無精髭だとか、雨のシーンだとか、ストーリーに直接関係ないようなところで、おっといわせる独特の美学を感じた。徹底した娯楽作品ではあるので、時にややくさくもなるのだけど、掘り下げはかなり深い。もっとも原作が良いということもある。

とにかくこの映画は、田宮二郎の吉良常だけでも観る価値はある。そして、高橋英樹の飛車角。63年制作の『人生劇場 飛車角』(鶴田浩二主演)は、ヤクザ映画の原型となった作品らしく、その流れをくんでもいるのだろう。この作品も、いずれ観るつもり。

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