2008年2月 8日

映画>無法松の一生

『無法松の一生』(稲垣浩監督/1943)。

ご存じ、無法松の一生。なんだけど、どこでどうご存じであったのか、自分でもよくわからない。とにかく、小倉に富島松五郎という、祇園太鼓を叩いたりする無法者の車引きがいて、そいつが吉岡中尉の未亡人にはかない恋心を抱くのだが、そのようなことを口に出すわけにもいかず、純愛を貫きつつ、夫人と子供のためにこつこつを貯金をしていたことが、その死後にわかって涙を誘う。

というような物語は、なんとなく知っていた。もちろん、 58年の三船敏郎版を見た記憶もないし、原作を読んだこともない。映像としては、唯一、西川のりおの、「ぼん、ぼんじゃござんせんか」というあれが、この映画のパロディなんだろうということに気づいていたくらいだ。

さて、阪東妻三郎の『無法松の一生』である。1989年に文藝春秋から発刊された「大アンケートによる日本映画ベスト150」では、8位に入っているくらいで、20年前の映画ファンにとっては、ゆるがせにできない作品だったわけだ。

にもかかわらず、この映画はそもそも戦時中の公開時に、松五郎の告白のシーンが時節に合わないということで10分もカットされ、戦後になると今度はGHQから封建的であると8分もカットされ、制作サイドからすれば、いわばずたずたの状態のものしか、人は観ていないはずなのだ。

そして、この映画は、これほどの名作という評のわりには、DVD化がずいぶん遅れた。2年ほど前に発売直前までいって延期され、ようやく昨年秋に角川から発売されたばかりだ。カメラの宮川一夫の遺品から、戦後のカットシーンが発見されるということがあり、それが特典映像に入っているらしいので、その関連かもしれない。ぼくは日本映画専門チャンネルで観た。

画質はよくないし、無理なカットでよくわかんないし、よくもここまでコマ切れにされたものが名作として残るもんだと思わないでもないけれど、とにかく阪妻は圧巻。宮川一夫のカメラも圧巻。映画ファンというのは、なるほど見るところを見てるんだなと思う。

ぼん役の少年、沢村アキオは後の長門裕之。吉岡夫人役の園井恵子という女優さんは、公開の2年後に、広島の原爆で亡くなっている。切り捨てられたフィルムも、阪妻の笑顔も、その豪放な演技も含めて、何もかも、はかない気のする映画。

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://fishing-forum.org/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/5

コメント

お久しぶりです。

いつも見ていますが投稿は初めてですね。
名作とは聞いていましたが実は映画はまともに見たことがありません(滝汗)。(絵文字も打てない)
私がカラオケで必ず歌うのが「無法松の一生(度胸千両入り)」です。
個人的に名曲だと思っております。
しかし、私が歌うと、長唄など知らない人が聞いても、純邦楽のにおいがするらしいです。

勝三郎さん

なんと、音源がありました。村田英雄ではないですけど。
http://8.health-life.net/~susa26/ikoi/muhoumatu.html

おそらく、「富島松五郎」というのは、ぼくらの親父くらいの世代の、
ヒーローみたいなものだったんだろうなあと思います。
しかし、かなりむずかしい歌ですよね。
ぼくには、とても歌えません(^^;)。

コメントする