2008年4月 3日

福留孝介メジャーデビュー

十何年か昔、オフクロが「コースケが、コースケが」と言っているので、何のことか聞くと、知り合いの息子にコースケという野球のうまい子がいて、今、PLに通っている。1年から4番を打つような選手でうんぬん、というような話だった。

そのコースケを初めてテレビで観たのは、たぶん1996年の春。アトランタ五輪をめざす全日本とミナソタ・ツインズの練習試合が中継された。デイゲームで、芝生は青いけれど小さな球場。もちろん天然の空。心がなごむような「野球」の試合。

当時、日本生命に進むことが決まっていた福留孝介は、史上最年少の18歳で全日本入り。この試合で、たしかセンターにホームランを打ったはずだ。でもぼくの目は、彼と三遊間を組んでいた井口資仁に釘付けになった。

青山学院の3年生だった井口は、俊足・強打・巧守の遊撃手で、なるほど次世代の野球選手というのは、こんなのかと思わせた。パンチ力があってスピードがあり、身体能力が高い。それまでの野球の役割分担を無意味にしてしまうような、オールマイティの選手だった。

その井口の躍動は、この球場にとてもよく似合った。当時の全日本は、全員がアマチュアで、エースが杉浦正則、四番が松中信彦。今岡誠や谷佳知も、このチームにいた。かたやツインズには、この時すでに3000本近い安打を打っていたポール・モリターがいた。モリターは40歳のこのシーズン、161試合に出場して打率.341、生涯最高の225安打を放っている。そんなスターもまた、どこか牧歌的な雰囲気の漂う球場に、よく似合っていた。

4月1日、福留孝介がシカゴカブスの5番打者としてデビューした。3打数3安打3打点1本塁打。そして、井口もまた同じシカゴにいて、彼はすでにワールドチャンピオンになっている。

あの練習試合で、妙にアメリカのグラウンドが似合う若い二人に、メジャーでやってくれないかなという夢を抱いたものだけれど、いざそれがかなってしまうと、さびしい気持ちの方が強い。

ドーム球場が増えるごとに、鳴り物の応援が複雑に華やかになるごとに、野球人気が下火になってきていることに、誰も気づかないのだろうか。もはや、日本の球場に「野球」が現出する瞬間は、とても稀なことになってしまっている。

メジャーへの才能の流出を防ぎたければ、まず巨人のホームとして、野球専用の球場を作らなくてはならない。チーム名は東京ジャイアンツ。ドームではなく青天井。内野まで天然芝。楽器・太鼓の持ち込みは禁止。試合後のヒーローインタビューも廃止。投手がモーションに入ったら、応援団は沈黙。渡辺恒雄も沈黙。

この当たり前のことができていないから、「野球」を求めて、うまい者から順にアメリカへ出ていってしまう。秋空の下の日本シリーズがなくなった頃から、日本には野球がなくなってしまった。

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コメント

こちらでは昔から野球が盛んで、私たちの子供ん頃は一つの小学校でいくつもの野球チームがあり、近辺の小学校3校合わせて(同じ中学校校区なんですが)数十チームで年に何回か大会が行なわれてました。男子は殆どそれらのチームに入り(地区別)、大会ともなればそりゃ賑やかなものでした。それが今では1校に1チーム。少子化の影響もあるのですが、それにしても人気が分散したり野球に人気が無かったりで寂しいもんですわ。

私が高校在学中に夏の甲子園に出場し、2回戦目に清原・桑田率いるPLにものの見事に破れさったのも良い思い出で(私は野球部に入部するつもりでその高校に入学しましたが、色気づいてきてたのか坊主がいやで同じ野球は野球でも、軟式野球部に入りましたので、彼らとは対戦出来ませんでしたが・・・^^;  )、その桑田ももう引退。清原も満身創痍。私は彼らと同級ですが、もうそんな歳なのか・・・と思い知らされることでもありました。

まず、チーム名に企業名を出すのはやめたいですね。東京ジャイアンツ、名古屋ドラゴンズ、阪神は微妙ですね。地域名として「阪神」は存在しますがやっぱり都市名ではないので不公平感もあるので「兵庫タイガース」。甲子園は兵庫県ですからね、大阪ではございません。(^^ゞ

応援はね・・、メジャーリーグのような大人な観戦の仕方が私も好きですが(甲子園なんかに行くと、まず、落ち着いてゆっくり見られませんからね・・・)、どうなんでしょう。ヨーロッパにおけるサッカーと同じで、激しい応援合戦、アウェーとホーム、鳴り物応援・・・、個人的には好きではありませんが、野球人気面から考えるとありかな・・なんて思います。

世間でしきりに言われてるように、ワールドワイドに考えて、アメリカ、日本、韓国あたりで国の垣根を越えてリーグ戦を行なうっていうのもありかな・・なんて思ってます。そうなれば、ダルビッシュもマー君もメジャーに行く意味がなくなるかも知れませんよね。

一部の球団をのぞいて、騒いでいるのは、外野席の少数の人たちなのですけどね。あれがほんとにうるさく感じます。

野球って、球場で観てると、ぼーっとしてるとなんだかわかんないですよね。盗塁なんてしょっちゅう見落とすし、時にはホームランまで打球の行方が追えなかったり。あの小さな球を、投手と捕手が延々とキャッチボールをして、時々、バッターがバットに当てる。そしてボールが生きている間の数秒間。その後は、また延々と18mのキャッチボールが続く。

そういった緩急の間が野球の面白さと思うのですが、あのようにのべつ幕なしにわあわあやられると、興をそがれてしまいます。野球にとって、あの応援は本質的には相容れないと思うのですけどね。日本の野球は、禅と茶道の国にしては、静寂に耐えられないようです。

特に、いいゲームになってきて、球場の空気がぐっと凝縮されてきそうな、そこに野球の神様が降りてきそうな気配の時に、場違いな応援をやられると、ああ、だめだなあと。野球って、変な応援なんかやらなくても、球場の一体感なんてものを無理に作らなくても、もっと面白いものなんだけどなあ。

JUNさん

>渡辺恒雄も沈黙
ぶはは(^O^)沈黙してほしい人No1ですね。
しかし、あのトシでなんにでも首を突っ込むバイタリティーは
怪物なのかもしれませんね。

余談ですが、来月小さなライブで数曲ギター伴奏やることに
なりました。久しぶりの人前演奏に緊張しております。

>>野球って、球場で観てると、ぼーっとしてるとなんだかわかんないですよね。盗塁な>>んてしょっちゅう見落とすし、時にはホームランまで打球の行方が追えなかったり

ほんま、そうですね。
またまた甲子園の話題で申し訳ないですが、野球が好きでも甲子園に行こうと思わないのは、JUNさんと同じです。甲子園は外野席なんかに入ってしまうと座っては見られません。グッズも持ってないと場違いな雰囲気です。選手毎の応援歌、場面場面の応援パターンを知っとかないと一人浮いてしまいます。(;^_^A
その場の中にいると、今勝っているのか負けているのかさえ分らなくなります。

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